『スカイ・クロラ』映画鑑賞日記
『イノセンス』以来4年ぶりとなる押井守監督の新作『スカイ・クロラ』。
原作は推理小説作家である森博嗣の同名小説で、思春期の姿のまま永遠に生きることを宿命づけられた"キルドレ"と呼ばれる戦闘機乗りの姿を瑞々しく描いています。
脚本には『世界の中心で、愛をさけぶ』、『春の雪』を手がけた伊藤ちひろを初起用。今までの押井映画にはない恋愛という要素を映画に取り入れたシナリオを手がけています。
また、音楽に川井憲次、キャラクターデザイン&作画監督に西尾鉄也、演出に西久保利彦と押井作品には欠かせない常連スタッフが参加。制作は押井作品を毎回手がけるProduction I.Gが今回も担当しています。
ストーリー:「現代に似たもう一つの世界。平和を享受する人々は“ショーとしての戦争”を求め、それがビジネスとして成り立つ時代となっていた。
そんな中、戦争請負会社のロストック社に所属する戦闘機パイロット“函南優一”はヨーロッパの前線基地に配属される。
しかし、彼にはこの基地に赴任する前の記憶がなく、分かっているのは自分が思春期の姿で成長をやめ、空で死なない限り生き続ける宿命にある「キルドレ」であること、そして戦闘機の操縦法だけだった。
優一は基地でかつてエース・パイロットだった女性司令官“草薙水素”と出会う。水素もまたキルドレの1人だった。
日々繰り返される戦闘。そんな中、“ティーチャー”と呼ばれるラウテルン社のパイロットの登場によって、彼らの戦況は日増しに厳しくなっていく。」
押井監督は製作発表の際に以下のようなコメントをしています。
『私は昨年の夏、55歳になりました。
映画監督としては、若くも、年寄りでもない。まだまだ、やりたいことは山ほどあるのですが、世間一般で言えば、壮年と言われる齢を生きている事を、自覚するようになりました。いつの間にか、周りが若いスタッフばかりになり、大人になったひとり娘と向き合うことが多くなった事が、その理由かもしれません。
今、映画監督として何を作るべきか。私は、今を生きる若い人たちに向けて、何かを言ってあげたいという思いを、強く抱くようになりました。
彼らの生きるこの国には、飢餓も、革命も、戦争もありません。衣食住に困らず、多くの人が、天寿を全うするまで生きてゆける社会を、我々は手に入れました。しかし、裏を返せば、それはとても辛いことなのではないか──と思うのです。
僕はこの映画を通して、今を生きる若者達に、声高に叫ぶ空虚な正義や、紋切り型の励ましではなく、静かだけれど確かな「真実の希望」を伝えたいのです。その為に私は、近年培ってきた演出手法を封じ、「イノセンス」とはまったく違うシナリオ・演出法をもって、この映画を、若い人へ向けたエンターテインメント作品として作ろうと決意を新たにしています。勿論、勝算はあります。
この映画に、多くの方々が賛同し、共に汗を流して下さる事を願ってやみません。』
今までの押井アニメの作風とは違う映画を作るという監督の意気込みに、製作発表の時から本作品の公開を大変楽しみにしてました。
公開と同時に期待に胸を膨らまして映画館に鑑賞に行ったのですが、正直見終わっての感想は微妙でした。
押井監督が若者に向けて言いたかった「終わりなき日常を自分で打開して生きろ」というメッセージは見ていて伝わってくるのですが、その伝え方にあまり共感することができませんでした。
その理由として、主人公が未来を変えようと取った選択の結末が私には希望よりも空しさや切なさの方が強く印象に残ったからかもしれません。
もちろん、押井監督だけあって3D-CGを駆使した戦闘機の空中戦は迫力がありましたし、昔ながらのセルアニメを使った人間ドラマの部分の映像も大変美しかったです。特に本作品では透明感溢れる青い空と白い雲の映像が大変印象に残りました。
あと、本作品は音も大変素晴らしく、聞きごたえがあります。川井憲次の切ない音楽はもちろんのことですが、『スターウォーズ』シリーズを手がけたスカイ・ウォーカーサウンドが手がけた音響はリアルで重厚です。
ストーリーは淡々としていますが、決して退屈なわけではありません。主人公たちの終わらない日常の閉塞感への鬱積が見ていて伝わってきます。
本作品、好きな人と苦手な人に分かれると思いますが、見る価値があり非常に考えさせられる作品です。
上映時間 121分
製作国 日本
製作年度:2008年
監督: 押井守
演出: 西久保利彦
原作: 森博嗣
脚本: 伊藤ちひろ
脚本監修: 行定勲
美術監督: 永井一男
編集: 植松淳一
音楽: 川井憲次
主題歌: 絢香
『今夜も星に抱かれて…』
CGIスーパーバイザー: 林弘幸
キャラクターデザイン: 西尾鉄也
ビジュアルエフェクト: 江面久
メカニックデザイン: 竹内敦志
ラインプロデューサー: 川口徹
音響監督: 若林和弘
作画監督: 西尾鉄也
色彩設定: 遊佐久美子
整音: 井上秀司
レイアウト設定: 渡部隆
声の出演: 菊地凛子、加瀬亮、谷原章介、山口愛、平川大輔、竹若拓磨
麦人、大塚芳忠、竹中直人、榊原良子、栗山千明
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