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2008年8月

『スカイ・クロラ』映画鑑賞日記

Photo  『イノセンス』以来4年ぶりとなる押井守監督の新作『スカイ・クロラ』。
 原作は推理小説作家である森博嗣の同名小説で、思春期の姿のまま永遠に生きることを宿命づけられた"キルドレ"と呼ばれる戦闘機乗りの姿を瑞々しく描いています。
 脚本には『世界の中心で、愛をさけぶ』、『春の雪』を手がけた伊藤ちひろを初起用。今までの押井映画にはない恋愛という要素を映画に取り入れたシナリオを手がけています。
また、音楽に川井憲次、キャラクターデザイン&作画監督に西尾鉄也、演出に西久保利彦と押井作品には欠かせない常連スタッフが参加。制作は押井作品を毎回手がけるProduction I.Gが今回も担当しています。 

 ストーリー:「現代に似たもう一つの世界。平和を享受する人々は“ショーとしての戦争”を求め、それがビジネスとして成り立つ時代となっていた。
 そんな中、戦争請負会社のロストック社に所属する戦闘機パイロット“函南優一”はヨーロッパの前線基地に配属される。
 しかし、彼にはこの基地に赴任する前の記憶がなく、分かっているのは自分が思春期の姿で成長をやめ、空で死なない限り生き続ける宿命にある「キルドレ」であること、そして戦闘機の操縦法だけだった。
 優一は基地でかつてエース・パイロットだった女性司令官“草薙水素”と出会う。水素もまたキルドレの1人だった。
 日々繰り返される戦闘。そんな中、“ティーチャー”と呼ばれるラウテルン社のパイロットの登場によって、彼らの戦況は日増しに厳しくなっていく。」

 押井監督は製作発表の際に以下のようなコメントをしています。

『私は昨年の夏、55歳になりました。
映画監督としては、若くも、年寄りでもない。まだまだ、やりたいことは山ほどあるのですが、世間一般で言えば、壮年と言われる齢を生きている事を、自覚するようになりました。いつの間にか、周りが若いスタッフばかりになり、大人になったひとり娘と向き合うことが多くなった事が、その理由かもしれません。
今、映画監督として何を作るべきか。私は、今を生きる若い人たちに向けて、何かを言ってあげたいという思いを、強く抱くようになりました。
彼らの生きるこの国には、飢餓も、革命も、戦争もありません。衣食住に困らず、多くの人が、天寿を全うするまで生きてゆける社会を、我々は手に入れました。しかし、裏を返せば、それはとても辛いことなのではないか──と思うのです。
僕はこの映画を通して、今を生きる若者達に、声高に叫ぶ空虚な正義や、紋切り型の励ましではなく、静かだけれど確かな「真実の希望」を伝えたいのです。その為に私は、近年培ってきた演出手法を封じ、「イノセンス」とはまったく違うシナリオ・演出法をもって、この映画を、若い人へ向けたエンターテインメント作品として作ろうと決意を新たにしています。勿論、勝算はあります。
この映画に、多くの方々が賛同し、共に汗を流して下さる事を願ってやみません。』

 今までの押井アニメの作風とは違う映画を作るという監督の意気込みに、製作発表の時から本作品の公開を大変楽しみにしてました。
 公開と同時に期待に胸を膨らまして映画館に鑑賞に行ったのですが、正直見終わっての感想は微妙でした。
 
 押井監督が若者に向けて言いたかった「終わりなき日常を自分で打開して生きろ」というメッセージは見ていて伝わってくるのですが、その伝え方にあまり共感することができませんでした。
 その理由として、主人公が未来を変えようと取った選択の結末が私には希望よりも空しさや切なさの方が強く印象に残ったからかもしれません。

 もちろん、押井監督だけあって3D-CGを駆使した戦闘機の空中戦は迫力がありましたし、昔ながらのセルアニメを使った人間ドラマの部分の映像も大変美しかったです。特に本作品では透明感溢れる青い空と白い雲の映像が大変印象に残りました。
 あと、本作品は音も大変素晴らしく、聞きごたえがあります。川井憲次の切ない音楽はもちろんのことですが、『スターウォーズ』シリーズを手がけたスカイ・ウォーカーサウンドが手がけた音響はリアルで重厚です。
 ストーリーは淡々としていますが、決して退屈なわけではありません。主人公たちの終わらない日常の閉塞感への鬱積が見ていて伝わってきます。 

 本作品、好きな人と苦手な人に分かれると思いますが、見る価値があり非常に考えさせられる作品です。 
 
上映時間 121分
製作国 日本
製作年度:2008年
監督: 押井守 
演出: 西久保利彦 
原作: 森博嗣 
脚本: 伊藤ちひろ 
脚本監修: 行定勲 
美術監督: 永井一男 
編集: 植松淳一 
音楽: 川井憲次 
主題歌: 絢香 
『今夜も星に抱かれて…』
CGIスーパーバイザー: 林弘幸 
キャラクターデザイン: 西尾鉄也 
ビジュアルエフェクト: 江面久 
メカニックデザイン: 竹内敦志 
ラインプロデューサー: 川口徹 
音響監督: 若林和弘 
作画監督: 西尾鉄也 
色彩設定: 遊佐久美子 
整音: 井上秀司 
レイアウト設定: 渡部隆 
声の出演: 菊地凛子、加瀬亮、谷原章介、山口愛、平川大輔、竹若拓磨 
麦人、大塚芳忠、竹中直人、榊原良子、栗山千明

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『ダークナイト』この映画を見て!

Photo 第214回『ダークナイト』
 今回紹介する作品は全米で『タイタニック』に次いで歴代興行収入第2位という記録的大ヒットをしている『ダークナイト』です。
 本作品は2005年に公開された『バットマンビギンズ』の続編です。前作は今まで公開されてきた4本の『バットマン』シリーズと打って変わって、シリアスでダークな作品になっており今までと違うリアル志向の作風が大変反響を呼びました。
『バットマンビギンズ』では幼い時に両親を暴漢に殺された主人公ブルース・ウェインがいかにしてバットマンになって闘うようになったのかを、内面の葛藤と成長に焦点を当てて重厚に描いてました。
 本作品も前作同様にブルース・ウェインの内面の葛藤に焦点を当てて、シリアスかつダークな作品に仕上げています。

ストーリー:「ゴッサムシティに白塗りの顔に裂けた口の“ジョーカー”と名乗る正体不明の男が突如現れて、次々と凶悪事件を引き起こしていく。そんな中、新しく赴任した地方検事のハービー・デントは正義感に燃え、バットマンやゴードン警部補と協力してマフィアによる犯罪の一掃を進めていこうとする。
 そんな頃、マフィアはジョーカーと手を組み、バットマンの抹殺を企てる。ジョーカーはバットマンを窮地に追い込むための謀略を開始。ジョーカーによる凶行にゴッサムシティは混乱と化していく。」

 本作品、私の中では今年の数ある夏休み映画であまり注目していない作品でした。しかし、ネット上での評価も高いし、アメリカでも記録的ヒットをしているし、面白いのかなあと軽い気持ちで見に行ったのですが、ここまで面白く完成度の高い作品だとは正直驚きました。
 私は今までバットマンシリーズではティム・バートンが監督した『バットマンリターンズ』が一番好きだったのですが、本作品がダントツの一番になりました。

 本作品は上映時間2時間30分とこの手の映画にしては長いのですが、盛りだくさんな内容と終始緊張感のある展開であっという間に時間が経ってしまいます。
 
 本作品の一番の見所は何といっても本作品出演後に薬物事故で亡くなったヒース・レンジャー演じる悪役ジョーカーの狂気迫る強烈な演技です!
 ティム・バートンの『バットマン』でジャック・ニコルソンが演じたジョーカーはどこかコミカルで茶目っ気がある悪人として描かれていたのですが、本作品のジョーカーは同情の余地が全くないほど極悪非道な悪人として描かれています。その凶暴かつ支離滅裂な振る舞いは次に一体何をしでかすのか、見ていて手に汗に握るものがありました。
 また本作品ではジョーカーの生い立ちに関して何も描かれていない分、どういう人間なのか分からず、得体の知れない不気味な人間としての存在感が際立っていました。

 本作品ではジョーカーのほかにもう1人トゥーフェイスという悪人が登場します。こちらに関しては、正義を追い求めていた人間がどういう経過でトゥーフェイスという悪人に変貌したのかを作品中で丁寧に描き、悪に落ちていく人間の弱さや脆さを象徴するキャラクターとなっています。
 ちなみにトゥーフェイスは『バットマンフォーエバー』という作品でも登場しており、トミー・リー・ジョーンズが奇抜なメイクとファッションでコミカルに演じていました。しかし、本作品のトゥーフェイスはメイクも目を背けたくなるほどリアルになっています。

 本作品はバットマン、ジョーカー、トゥーフェイスという3人の登場人物を通して、「人間の善悪の裏表の関係」、「人間の中に潜む憎悪と狂気」、「正義とは何か?」という重い問いを観る者に投げかけます。
 バットマンが活躍して悪人を退治しようとすればするほど、より過激な悪が生まれるという皮肉。
 また、正義や善を追い求めながら、個人的憎悪から悪に手を染めてしまう人間の哀しみ。
 そして、目的や価値観もない純粋な悪に立ち向かい正義を守るには、法を犯して自らも悪として闇に染まるしかないという切なさ。
 映画をラストまで見ると、本作品のタイトルに「バットマン」がなぜ付かず『ダークナイト』(闇の騎士)であるのか良く分かると思います。 
 
 私が本作品で一番印象的だったのは、クライマックスのフェリーでのシーン。ジョーカーが作り出した極限状態の中でどういう選択をするのか手に汗握ったのですが、人間そんなに捨てたもんじゃないという展開に人間という存在に対する希望の光みたいなものを感じました。

 もちろんアクションシーンも見所満載です。特に実際にシカゴの街中で撮影されたトレーラーの横転シーンやビルの爆破シーンは迫力満点でした。
 また、前回登場したバットモービルに続き、今回登場するバットマンの新兵器バットポッドが街を走り抜ける場面もカッコよかったです。

 テーマや雰囲気が暗く重いので、スカッとしたアクション映画を期待するとイマイチかもしれませんが、ここまで重厚で深く考えさせられるハリウッドの大作映画は近年なかったと思います。是非皆さん見てください!

上映時間:152分
製作国:アメリカ
製作年度:2008年
監督:クリストファー・ノーラン 
キャラクター創造: ボブ・ケイン 
原案:クリストファー・ノーラン、 デヴィッド・S・ゴイヤー 
脚本:ジョナサン・ノーラン、クリストファー・ノーラン 
撮影: ウォーリー・フィスター 
プロダクションデザイン: ネイサン・クロウリー 
衣装デザイン:リンディ・ヘミング 
編集:リー・スミス 
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード、ハンス・ジマー 
出演:クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、ヒース・レジャー、ゲイリー・オールドマン、アーロン・エッカート、マギー・ギレンホール、モーガン・フリーマン、エリック・ロバーツ、ネスター・カーボネル

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『回路』この映画を見て!

Photo 第213回『回路』
 残暑厳しい夏、見た後に背筋が寒くなるジャパニーズホラー『回路』を紹介します。本作品はハリウッドでも『パルス』という題名でリメイクされ、続編も制作されています。(日本では残念ながら劇場未公開ですが、DVDにて現在販売されています。)

ストーリー:「観葉植物販売の会社に勤務するミチの周りで、家族や同僚が黒い影を残して消える奇妙な出来事が続発する。
 同じ頃、大学生の亮介のパソコンが勝手に「幽霊に会いたいですか」と問うサイトにアクセスする不気味な現象が起こっていた。同じ大学の春江に相談をするが、彼女もある日姿を消してしまう。」

 私は劇場で公開されていた時に本作品を鑑賞したのですが、レイトショーで私以外にお客が全くいない貸しきり状態で見て、本気で怖かったのを今でも覚えています。

 本作品は『リング』や『呪怨』のような単なる幽霊が出てきて登場人物を怖がらせるホラー映画を期待して見ると、かなり肩透かしを食らうと思います。もちろんホラー映画なので、頭に黒いビニール袋をかぶった不気味な幽霊等が登場しますし、飛び降り自殺をワンカットで見せるショッキングなシーンもあります。
 しかし、本作品の怖さはそんなショック描写とは別のところにあります。それは何かというと、「生きていくこと」そして「死んでいくこと」の孤独に対する恐怖です。

 本作品はネットを媒介にして霊界から溢れた死者たちが人間界を侵食していく恐怖を描いていきます。いつの間にか身近な人がいなくなり、気づいた時には多くの人間がいなくなり、静かに崩壊していく人間社会。映画の後半はホラー映画というより、人類の終末を描いたSF映画のような展開になっていきます。

 黒沢監督は幽霊によって侵食され滅び行く人間社会を通して、現代社会を生きる人間たちの孤独の苦しみと人間の存在の意味について描こうとします。「生と死の境界線はどこにあるのか?」、「どうやったら孤独から逃れられるか?」を本作品は真正面から描いた非常に哲学的な映画です。

 ラストは客観的に見ると絶望的な状態と言えますが、ポジティブで希望のある終わり方をします。

 皆さんも本作品を見て、冷や汗をかきながら、人間という孤独な存在について考えてみてください! 

上映時間 118分
製作国 日本
製作年 2001年
監督: 黒沢清 
脚本: 黒沢清 
撮影: 林淳一郎 
美術: 丸尾知行 
編集: 菊池純一 
音楽: 羽毛田丈史 
出演: 加藤晴彦、麻生久美子、小雪、有坂来瞳、松尾政寿 
武田真治、風吹ジュン、菅田俊、哀川翔、役所広司

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『パルプ・フィクション』この映画を見て!

第212回『パルプ・フィクション』
Photo  今回紹介する作品はタランティーノ監督の名を一躍有名にしたバイオレンス・アクションの傑作『パルプ・フィクション』です。

 本作品のストーリーはLAのギャングのボス・マーセルスを軸とした3つの犯罪ドラマが描かれます。
・1つ目はボスの盗まれたトランクを取り戻そうと敵のアジトへと向かう二人組のギャング・ビンセントとジュールのエピソード。
・2つ目はボスの妻と一晩のデートをするハメになるビンセントのエピソード。
・3つ目はボクシングの八百長試合で金を受け取るボクサーのブッチのエピソード 

 これら3つのドラマを時間軸を前後して描いており、最後まで見ると各ドラマのつながりが分かるというユニークな構成となっています。

 私は映画好きの友人が本作品を「凄い作品だ!」と絶賛していたので、一体どんな映画なのかと思って、ビデオを借りて見ました。
 正直言って始めて見たときは面白いことは面白いけど絶賛するほどの作品とまでは思えませんでした。
 そこで、もう一度見直したのですが、2回目に見た時の方が各シーンのつながりや主人公たちが話していた会話の意味が分かり、非常に楽しんで見ることができました。
 さらに再び見直したときには、登場人物たちがテンポ良く繰り広げる本筋と関係のない雑談の面白さと非日常的な展開の中で右往左往する主人公たちの間抜けさとカッコ良さに本作品の虜になってしまいました。
 
 本作品はかなり見る人を選ぶ作品です。映画に感動や意味を求める人が見ると下らない話しばかりなので退屈でしょうし、良識的な人が見ると過激な暴力描写や不健全な登場人物のオンパレードに眉をひそめることでしょう。
 映画の題名である『パルプ・フィクション』(三文小説)が示すとおり、重厚なテーマを描く作品ではありません。お洒落な雰囲気の映像や音楽、豪華で個性的な役者たちの絶妙かつ軽妙な演技、そして伏線と無駄な会話がふんだんに織り込まれたストーリーの面白さ。本作品はタランティーノ監督のセンスの良さを味わう作品です。

 お気に入りのシーンはいくつもありますが、何といっても一番印象的なのはジョン・トラボルタ演じるビンセントとマーセルスの妻ミアがレストランのツイスト大会で踊るシーン。一時期低迷していたジョン・トラボルタが見事復活を果たした名シーンです。
 他にも、ブルース・ウィリス演じるブッチが日本刀を持って暴れるシーンやサミュエル・L・ジャクソン演じるジュールが聖書の一説を語るシーンのカッコよさも印象に残ります。
 また登場シーンは短いですが、クリストファー・ウォーケンとハーヴェイ・カイテルの存在感ある演技も忘れられません。

 あと、私は本作品を見る度に気になることが3つあります。5ドルシェイクの味、ボスのトランクに入っていた輝く物の正体、そしてジュールが奇跡の後に犯罪から足を洗ったのかどうか。見た後、毎回この3つのことを考えてしまいます。

 お洒落で面白いバイオレンス映画を見たいなら、本作品はお勧めです。

上映時間 154分
製作国 アメリカ
製作年度 1994年
監督: クエンティン・タランティーノ 
原案: クエンティン・タランティーノ、ロジャー・エイヴァリー 
脚本: クエンティン・タランティーノ 
撮影: アンジェイ・セクラ 
編集: サリー・メンケ 
出演: ジョン・トラヴォルタ、サミュエル・L・ジャクソン、ユマ・サーマン、
ハーヴェイ・カイテル 、ティム・ロス、アマンダ・プラマー、マリア・デ・メディロス
ヴィング・レイムス、 エリック・ストルツ。、 ロザンナ・アークエット、クリストファー・ウォーケン 、クエンティン・タランティーノ、スティーヴ・ブシェミ、ブルース・ウィリス

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『プロフェッショナル仕事の流儀 宮崎駿のすべて』

Ponyo  8月5日にNHKのドキュメンタリー番組『プロフェッショナル仕事の流儀』で放送された『宮崎駿のすべて』。

 同番組では昨年の3月にも宮崎監督に密着取材して『崖の上のポニョ』のイメージボードの作成過程を追ったドキュメンタリーを放映しています。普段見ることのできない宮崎監督のイメージボードの制作過程が丹念に描かれており、宮崎ファンとしては大変見ごたえのある番組でした。

 今回の番組は前回からの続きということで、絵コンテの作成過程や原画の修正作業を追ったドキュメンタリーとなっており、『崖の上のポニョ』のキャラクターや各シーンに宮崎監督がこめた思いが大変良く分る番組となっていました。

 特に私が今回のドキュメンタリーを見て、映画の気になった点に関して「そういう意味だったのか!」と納得したのが以下の2点でした。
 
 一つ目が映画の後半に宗介とポニョが不機嫌な赤ん坊に出会うシーン。映画の中でも大変印象的なシーンなのですが、宮崎監督はやんちゃでわがままなポニョが人間になった後も優しく思いやりのある女の子として生きていけることを伝えるためにあのシーンを挿入したそうです。宮崎監督の自らが生み出したキャラクターに対する愛情というものが良くわかりました。

 2つ目が映画のクライマックスに活躍するトキという老婆の存在。今回の番組では宮崎監督の母に対する思いというものが後半に語られ、トキという老婆が宮崎監督の亡き母をイメージして描いたキャラクターであることが明かされます。映画のクライマックスにはトキが宗介を抱きしめるシーンにこめた宮崎監督の亡き母への思いには胸が熱くなりました。

 また番組の中で宮崎監督が久石譲さんが映画のイメージアルバムの収録曲として製作した『ひまわりの家の輪舞曲』を聴いて、亡き母を思い出して涙するシーンも大変印象的でした。(ちなみに『ひまわりの家の輪舞曲』は『イメージアルバム 崖の上のポニョ』に収録されています。とても良い歌なので是非聴いてみてください。)

 今回の番組を見て改めて思ったのが、宮崎監督の自分の作品に対する飽くなきこだわりと愛情の深さ。監督自身が作品の中にのめりこんでいき、どうストーリーを展開させていくか格闘して、自分を追いこんでいく姿には周囲を圧倒する気迫を感じました。




 

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