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『リトル・ダンサー』この映画を見て!

第211回『リトル・ダンサー』
Photo  今回紹介する作品は私が大好きな作品の一つであり、多くの人に自信を持ってお薦めできる青春ドラマ『リトル・ダンサー』です。

ストーリー:「1984年、イギリス北部の炭坑町。11歳のビリーは炭坑労働者の父と兄トニー、徘徊癖のある祖母と暮らしていた。
 父と兄は炭鉱のストライキに参加する毎日。そんなある日、ビリーが通うボクシング教室のホールにバレエ教室が移ってきた。ひょんなことからレッスンに参加したビリーは、バレエに興味を覚えるのだった。それから家族に内緒で夢中でバレー教室に参加するビリー。しかし、父親にボクシングをさぼってバレーを習っていることがばれて激しく怒られる。
 だが、バレエの憧れが捨てられないビリーはその後もこっそり習い続ける。教室の先生であるウィルキンソン夫人はビリーの才能を見抜き、ロンドンのロイヤル・バレエ・スクールの入学オーディションを薦める。
 父もあることをきっかけに息子の才能に気づくが、バレエ学校に入学させるためのお金がないことに悩む。そして父は息子の願いをかなえるために、苦渋の決断をするのだった。」

 本作品は500万ドルという低予算の作品でしたが、イギリスを始め世界中で人気を博して約1億ドルの興行収入を記録しました。また、批評家からの受けも良く、世界中の映画賞で数多くの賞を受け取りました。
 監督のスティーヴン・ダルドリーは本作品で初の映画監督を務めたのですが、元々イギリスやアメリカで舞台監督を務めてきた経験を活かして、シンプルなストーリーをドラマチックかつ心温める作品に仕上げています。
 主人公のビリーを演じたジェイミー・ベルーは本作品が初主演作ですが、厳しい生活状況の中で夢に向かって進むひたむきな姿を見事に演じています。

 私は映画館で公開されているときに本作品を鑑賞したのですが、息子の夢を何とか支えようとする父親の葛藤と深い愛情に深く感銘を受けて涙がとめどなく流れたものでした。
自分も父親になったら本作品の父のように子どもを支えられたら良いなと心から思いました。
 主人公ビリーのダンスも技術的には荒削りで決して上手くはないのですが、その代わりエネルギーと感情に溢れており見ていて惹きこまれるものがありました。特に父親の前で見せるダンスは言葉では語ることができないビリーのバレエへの情熱が見ているこちら側にもビシビシ伝わってくるほどパワフルなダンスです。
 
 本作品が素晴らしいところは、主人公が単に才能があったから成功したのでなく、それを受け入れて支えてくれる家族や教師や友がいて成功へとつながったことを丁寧に描いているところです。特にバレエへの偏見と差別意識があり最初反対していた父や兄が葛藤しながらも、主人公の思いを叶えようと奮闘する場面は見ていて熱いものがこみ上げてきます。

 また、不況にあえぐ炭鉱の町を舞台にしているところも印象的で、先行きが見えず閉塞した炭鉱労働者の厳しい生活状況をきちんと描くことで単なるサクセスストーリーにはない奥行きが映画に与えられています。
 労働者たちはストライキをして何とか将来に希望を見出そうとするが、それも権力と時代の流れによって押しつぶされる時代。そんな暗く重い状況の中で、労働者階級とは無縁の夢が溢れるバレエの世界に惹かれていく主人公。イギリスの階級社会の壁を乗り越えて成功する主人公の姿は多くの労働者階級の希望の象徴であり、イギリスの階級社会への痛烈な批判の象徴だと私は思います。

 厳しい現状の中で、夢を叶えようとする人とそれを支えようとする人の熱い思いと行動に胸熱くなる傑作です。ぜひ未見の方はご覧ください!

上映時間 111分
製作国 イギリス
製作年 2000年
監督: スティーヴン・ダルドリー 
脚本: リー・ホール 
撮影: ブライアン・テュファーノ 
音楽: スティーヴン・ウォーベック 
出演: ジェイミー・ベル ー、ジュリー・ウォルターズ、 ゲイリー・ルイス、ジェイミー・ドレイヴン 
ジーン・ヘイウッド、スチュアート・ウェルズ、アダム・クーパー、マシュー・トーマス

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受信: 2008年7月23日 (水) 21時52分

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