『細雪』この映画を見て!
第201回『細雪』
今回紹介する作品は先日亡くなれた名匠・市川崑監督が谷崎潤一郎の同名小説を映画化した『細雪』です。
本作品は全てにおいて絢爛豪華で美しく、気品溢れる作品です。
主演に岸恵子、 佐久間良子、 吉永小百合、 古手川祐子という日本映画を代表する美人女優4人を据え、脇役にも伊丹十三や石坂浩二など多数の演技派・個性派の俳優を揃えるという豪華な顔ぶれとなっています。
特に本作品における吉永小百合の美しさは格別で、見ていてうっとりとさせられます。特に古手川祐子が吉永小百合の足の爪を切るシーンはドキッとするほど艶かしく官能的です。
また女優たちが着こなす着物は全て着物の老舗「三松」が全面監修しており、総額1億円以上かかっているそうです。その美しさはため息が出るほどです。本作品を見て着物の美しさや素晴らしさを改めて認識させられました。
市川監督は本作品を撮ることが長夢だったそうで、市川監督の才能が余すことなく注がれています。特に日本の美と情緒を表現した映像の美しさはため息が出るほどで、監督の才能と美的センスが最大限発揮されています。冒頭の京都嵯峨野の満開の桜の下を歩く四姉妹の艶やかな美しさは目が釘付けになります。
また映画のほとんどは会話シーンなのですが、その見せ方が大変上手く最後まで飽きることなく見ることが出来ます。本作品では主人公たちの真正面からのクローズアップのカットがテンポ良く切り返されていく手法を多用して映画に躍動感と高揚感を与えています。
また、突然極端なクローズアップのカットやその場の時間軸と違うカットを挿入するという演出を多用して、映画にアクセントを与えています。
ストーリー:「昭和13年の春。京都嵯峨の料亭で大阪の旧家である蒔岡家の4姉妹が花見の宴を催していた。長女・鶴子と次女・幸子は未婚の三女・雪子と末娘・妙子の結婚の話しばかり。そんな中、おとなしい雪子は周囲の勧めで次々と見合いをするが本人の気が進まず一向にまとまらない。一方、奔放な妙子は恋多き女性で姉たちをハラハラさせていた。」
本作品は結婚をしていない三女と四女に対して長女と次女が気を揉むという内容ですが、三女と四女の対照的な生き方が大変印象に残りました。一見何を考えているか分からないように見えて実は内心したたかでしっかり者の三女・雪子。手に職をつけ身分の違う男と恋をして封建的な家を飛び出す妙子。一見すると四女が一番自分勝手で困り者という風に見えますが、私は四女の方が素直で、三女の方が曲者に思いました。
あとストーリーで印象的だったのが、石坂浩二演じる次女の夫・貞之助が密かに吉永小百合演じる三女に思いを寄せているところです。自宅に同居している時の三女を見るときの貞之助の熱い視線や三女が結婚した時の何とも切ない表情。義理の妹に恋をしてしまった貞之助の複雑な心情は見ていて男として共感してしまうところがありました。吉永小百合のような美しい女性が自宅に同居していたら、それは惹かれてしまうのも分らないでもないです。
市川監督は数多くの素晴らしい作品を手がけていますが、映像の美しさではナンバー1だと思います。また文芸作品であるにもかかわらず、堅苦しい作りになっておらず、誰が見ても楽しめる名作だと思います。
上映時間 140分
製作国 日本
製作年 1983年
監督: 市川崑
原作: 谷崎潤一郎 『細雪』
脚本: 日高真也 市川崑
撮影: 長谷川清
美術: 村木忍
編集: 長田千鶴子
音楽: 大川新之助、渡辺俊幸
出演: 岸恵子、 佐久間良子、 吉永小百合、 古手川祐子、 伊丹十三、 石坂浩二
岸部一徳、 桂小米朝、 江本孟紀、 小林昭二、 辻萬長、常田富士男
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