『ラストエンペラー』この映画を見て!
第197回『ラストエンペラー』
今回紹介する作品は清朝最後の皇帝・溥儀の人生を描いた歴史大作『ラストエンペラー』です。
本作品は溥儀の自伝「わが半生」に感銘を受けたイタリアの映画監督・ベルナルド・ベルトルッチが映画化。中国でのオールロケを敢行し、世界初となる紫禁城での撮影を行い大変話題を呼びました。完成された映画は高い評価を受けてアカデミー賞では9部門を獲得しました。
ストーリー:「わずか3歳で清朝皇帝の地位に就いた溥儀。まだ自分の立場など何も分らない子どもながら、周囲の者からは皇帝として手厚く敬われていた。しかし、紫禁城から出ることを一切許されず孤独な少年時代を過ごす。大人になり皇帝として周囲に権力を振るおうとするが、辛亥革命が起こり彼は紫禁城から追い出される。そして彼は日本軍が統治していた満州国の皇帝となるが、そこでも彼は日本軍の手先として利用されるだけの見せかけの皇帝だった。そして日本軍が降伏した1945年、彼は戦犯として逮捕され収容所に入れられる。」
本作品の最大の見所は何といっても撮影監督・ヴィットリオ・ストラーロの手による華麗な映像美です。特に紫禁城のシーンはスケールの大きさと色彩の豊かさに見とれてしまいます。
そんな美しい映像に負けず劣らず音楽も大変美しく印象的です。特に坂本龍一が手がけた部分が素晴らしく、第二皇妃が雨の降る中を去るシーンで流れる「RAIN」やラストに流れる「ラストエンペラーテーマ」のメロディラインの切ない美しさはため息が出るほどです。
ストーリーに関して言うと、権力に翻弄された1人の人間の孤独や悲哀に非常に胸が打たれます。3歳のときから皇帝として見た目はチヤホヤ扱われながらも、実質的な権力は周囲が持っており、それに振り回され従わされるだけの人生。物質的な欲望は満たされても、自分の人生を思い通りにできない主人公の歯がゆさや空しさみたいなものが全編を通して伝わってきました。
また後半の権力も奪われ一市民に転落していく姿は時の無常さといったものを改めて感じました。
年老いた溥儀が紫禁城で幼い頃に隠したコオロギの入った容器を再び見つけ、中からコオロギが出てくるラストシーン。何ともいえない切ない終わり方で印象に残りました。時代と権力に翻弄された溥儀が最後に見つめた幼い頃のコオロギ。人生の儚さを感じる素晴らしいラストシーンでした。
上映時間 163分
製作国 イタリア/イギリス/中国
製作年度 1987年
監督: ベルナルド・ベルトルッチ
製作: ジェレミー・トーマス
脚本: ベルナルド・ベルトルッチ、マーク・ペプロー、エンツォ・ウンガリ
撮影: ヴィットリオ・ストラーロ
音楽: 坂本龍一、デヴィッド・バーン、スー・ソン
出演: ジョン・ローン、ジョアン・チェン、ピーター・オトゥール、坂本龍一
デニス・ダン、ヴィクター・ウォン、高松英郎、 マギー・ハン 、リック・ヤン
ヴィヴィアン・ウー、ケイリー=ヒロユキ・タガワ
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