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2007年2月25日 - 2007年3月3日

『ドリームガールズ』この映画を見て!

第147回『ドリームガールズ』
Dream_girls  今回紹介する映画は先日行われた第79回アカデミー賞で映画初出演となるジェニファー・ハドソンが最優秀助演女優賞に輝いた『ドリームガールズ』です。
 『ドリームガールズ』は1981年にブロードウェイで初公演され大ヒットを飛ばし、翌年のトニー賞で6部門を受賞した伝説のミュージカルです。ストーリーはシュープリームスとダイアナ・ロスの実話を基にしており、仲の良い友人3人で作った黒人コーラスグループの栄光と挫折、そして再生までを60年代のアフリカ系アメリカ人の音楽の歴史と共に描いていきます。
 監督はアカデミー作品賞を受賞したミュージカル映画『シカゴ』の脚本家ビル・コンドンが担当。彼は今回監督だけなく脚本も手がけており、華やかなショービジネス界で生きる人間たちの夢や苦悩そして哀しみといったものをエンターテイメントとして見事に描いています。
 出演者も大変豪華で、主人公ディーナ役にグラミー賞歌手ビヨンセ、脇役の男性陣にジェイミー・フォックス 、エディ・マーフィ 、ダニー・グローヴァーといった芸達者の役者が出演しています。
 そして、今回の映画で何といっても光り輝いていたのがアカデミー賞で最優秀助演女優賞に輝いたジェニファー・ハドソン!。新人とは思えない演技力と歌唱力があり、映画を見ている間は主演のビヨンセより彼女の存在感に目が釘付けになってしまいます。私は途中までこの映画の主演はジェニファー・ハドソンかと思ってしまったほどでした。
 もちろんビヨンセやジェイミー・フォックスも素晴らしい演技を見せてくれますし、エディ・マーフィはここ最近の映画で最高の演技を見せてくれます。
 
 ストーリーはショービジネス界の裏側の嫉妬や裏切りといったドロドロした世界で何とか生き残っていこうとする人間たちの奮闘が描かれていきます。また大ヒットを目指せば目指すほど自分たちが求めていた音楽と離れたものになっていく矛盾や葛藤が描かれていきます。白人中心のアメリカ社会の中で黒人たちが何とか這いあがろうと、自分たちの音楽を白人に売り込んでいく中で自分たちの音楽の文化や魂が変質し失われていく悲しみ。ただこの映画で売り上げばかりにこだわるプロデューサー・カーティスが悪い奴かといえば、そういう訳でもなく、彼は彼なりに自分の理想とする大衆が望む音楽を追求していただけですしね。また彼のような.プロデューサーがいたおかげで、無名の歌手たちが注目を浴びるわけですしね。ショービジネスの世界でアートとエンターテイメントの狭間で上手く生きていくことの葛藤や難しさというものが見ていて伝わってきました。

 もちろんミュージカル映画であるので、歌の素晴らしさは折り紙つきです。R&Bの魅力が余すところなく詰め込まれています。特に私の好きな歌は『family』です。私はなぜアカデミー賞で歌曲賞をこの映画が取れなかったのか未だ持って不思議です。

 ミュージカル好きな人はもちろんの事、そうでない人もきっと満足できる映画だと思います。ぜひ良い音響の映画館でこの映画を堪能してください。歌の持つ力に感動すると思います。 

製作年度 2006年 
製作国・地域 アメリカ
上映時間 130分
監督 ビル・コンドン 
製作総指揮 パトリシア・ウィッチャー 
原作 トム・アイン 
脚本 ビル・コンドン 
音楽 ヘンリー・クリーガー 
出演 ジェイミー・フォックス 、ビヨンセ・ノウルズ 、エディ・マーフィ 、ジェニファー・ハドソン 、アニカ・ノニ・ローズ 、ダニー・グローヴァー 、キース・ロビンソン

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『クラッシュ』この映画を見て!

第146回『クラッシュ』
Crash  今回紹介する映画は昨年のアカデミー賞で作品賞を始め3部門を受賞した群像ドラマ『クラッシュ』です。
 この映画の監督と脚本を手がけたのは『ミリオンダラー・ベイビー』や『父親たちの星条旗』などイーストウッド監督の最近の映画の脚本を手がけたポール・ハギス。彼は今アメリカで一番注目されている脚本家です。彼の脚本の特長してアメリカの社会の闇やマイノリティの哀しみを真正面から描く点と、人間の多面的な部分や人生の陰影といったものを巧みに描く点が挙げられます。そんな彼が始めてメガホンを取った『クラッシュ』。この映画も彼の特長がよく表れています。
 クリスマス間近のロスのハイウェイで起きた交通事故。それをきっかけに、さまざまな人種、階層、職業の人々が織り成す2日間の人間ドラマが描かれます。
 一見何のつながりもない7組14人の登場人物たち。白人の地方検事とその妻、黒人刑事と同僚でスペイン系の恋人、黒人のTVディレクター夫妻、自動車強盗の黒人の若者2人、雑貨店を営むアラブ系の家族、黒人の鍵の修理屋、差別主義者の警官とそんな彼の態度に反感を持つ若い白人の警官。それぞれの人物が持つ憎悪や哀しみ、そして苦悩。そんな彼らがふとしたことをきっかけに結ぶつき、ぶつかり合い、お互いの抑えていた感情をむき出しにしていきます。
 この映画はアメリカという様々な人種の人たちが生活していく中でどうしてもおきてくる摩擦や差別の生々しい実態を描くと同時に、そんな中でも人と人が結びつきあうことの大切さや温かさといったもののを描きます。

 私がこの作品を見て一番印象に残ったのは登場人物に悪人がいないと言うことです。この映画は黒人を蔑視する嫌な白人にも抱えている苦悩があったり、人間らしい一面があったりすることを描くことで、アメリカが抱えている差別の根深さや哀しみといったものを浮き彫りにしていたと思います。
 差別とは悪い人間がする行為でなく、誰もが差別の被害者にも加害者にもなりうる存在であるというところが悲しく恐ろしいところだとこの映画を見て改めて思いました。
 
 差別は人間がいる限りなくならないかもしれません。でも差別があったとしても、この世界は生きるに値しますし、人と人はぶつかりあいながらもつながりあうこともできる。映画のラストはかすかな希望を見る者に与えます。それは過酷な現実の中にも生きていく人々に対する監督からのエールなのだと思います。
 
 差別はいけない、そう分かっていても差別してしまう私たち。そんな私たちがどう生きていくべきか、そんなことを考えさせてくれる傑作です。
 
制作年度 2004年 
製作国・地域 アメリカ
上映時間 112分
監督 ポール・ハギス 
脚本 ポール・ハギス 、ボビー・モレスコ 
音楽 マーク・アイシャム 
出演 サンドラ・ブロック 、ドン・チードル 、マット・ディロン 、ジェニファー・エスポジート 、ウィリアム・フィクトナー 、ブレンダン・フレイザー 、テレンス・ハワード 、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス 、タンディ・ニュートン 、ライアン・フィリップ 

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エン二オ・モリコーネの魅力

Ennio_morricone  第79回アカデミー賞の授賞式が今日行われましたが、私が今回一番感動したのは何と言っても、私が一番好きな映画音楽作曲家エンニオ・モリコーネが名誉賞を受賞したことでした。
 クリント・イーストウッドがプレゼンターを務めモリコーネの紹介をした時点で個人的にはとても胸が熱くなりました。
 なぜなら無名だったイーストウッドが初主演して世界的に有名になった『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』などのマカロニ・ウェスタンシリーズの音楽を手がけたのが、エンニオ・モリコーネだったからです。
 当時テレビや舞台の音楽を手がけていたモリコーネにとってもマカロニ・ウェスタンシリーズは映画音楽の世界に進出する大きな足がかりとなった作品でした。このシリーズ以降イーストウッドもモリコーネも映画史に名を残す数多くの作品を手がけることになりました。

 モリコーネは現在何と450本以上の映画音楽に携わり、アカデミー賞にも5回ノミネートされるほどの実力を持った映画作曲家です。代表作としては『ニュー・シネマ・パラダイス』、『ミッション』、『海の上のピアニスト』、『アンタッチャブル』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』などがあります。
 モリコーネの音楽の魅力は甘美で感傷的なメロディー、さまざまな楽器を取り入れた音美しい音色、ミニマムミュージックなどを取り入れた実験的な作風等にあります。

 私がはじめてモリコーネの音楽を聞いたのは幼稚園の時でした。私の両親が映画音楽好きだったので、小さい時から自宅でよく映画音楽を聞いていたものでした。そんな中でも私が特にお気に入りだったのがマカロニウェスタンのレコードでした。特に『荒野の用心棒』の口笛や男性コーラスによる独特なサウンドは子どもながらに強烈なインパクトとカッコよさを感じ、よく両親に聞かせてくれとせがんだものでした。
 中学生くらいになり、映画を積極的に見るようになってからも好きになる映画の多くの音楽をモリコーネが手がけていることに気づき、それからモリコーネの手がけた映画サントラを集めるようになりました。
 私にとってモリコーネの曲は心の清涼剤であり、元気になりたい時、心落ち着かせたい時、ロマンティックな気分に浸りたい時には欠かせないアイテムとなっています。

 モリコーネには今後も数多くの素晴らしいスコアーを作ってほしいです。

☆私のお薦めアルバムBEST3

・3位『ニュー・シネマ・パラダイス』
Ennio_morricone_3  世界中の映画ファンを虜にしたイタリア映画の傑作『ニュー・シネマ・パラダイス』。監督のジュゼッペ・トルナトーレは映画に対する愛情を敗戦後のシチリア島を舞台に少年と映画技師との友情を通して見事に描いていました。
 モリコーネがこの映画に提供したスコアーは見事としか言いようのないほど素晴らしい完成度を誇っています。ノスタルジー溢れるメインテーマやロマンティックな愛のテーマ(この曲はモリコーネの息子が作曲してます)と聴いていて自然と涙がこぼれてくる名サントラです。

    
Ennio_morricone_1 ・2位『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』
 マカロニ・ウェスタンシリーズでモリコーネとコンビを組んだセルジオ・レオーネの遺作である『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』。この作品は1920年代から60年代のニューヨークを舞台にユダヤ移民の子どもたちが自衛のためギャング団を組織し、やがて崩壊していくさまを4時間近い上映時間を費やして描いた大作です。
 この映画においてモリコーネはノスタルジックな映像をさらに盛り上げる音楽を数多く提供しています。名曲「アマポーラ」を取り入れたり、パンフルート奏者ザンフィルの演奏を取り入れるなどして映画の持つ哀愁の雰囲気を見事に表現しています。特にデボラのテーマの甘美なメロディーは鳥肌ものです。

Ennio_morricone_2 ・1位『ミッション』
 17世紀の南米を舞台に宣教師と先住民の交流と白人による植民地化の悲劇を美しい自然を背景に描いた『ミッション』。1986年カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しました。モリコーネの民族音楽と18世紀ローマ・カトリック教会音楽を融合させた美しい音楽は高く評価され、アカデミー賞にもノミネートされましたが、なぜか受賞を逃しました。(このスコアーに賞を与えなかったこの年のアカデミー会員は大変なミスを犯したと私は思います。)
 モリコーネの生み出したスコアーは聴いていて心が洗われるほど美しいです。私はこの音楽を聴いた時、涙が自然とこぼれて、神に祈りを捧げたい衝動にかられました。
 このスコアーを聴かずしてモリコーネは語れません! 
 

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