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2007年2月4日 - 2007年2月10日

『ブッダの人と思想』街を捨て書を読もう!

『ブッダの人と思想』 著:中村元・田辺祥二・大村次郎(写真) NHKブックス
Budda  ブッダの人生と思想を分かりやすい言葉で説明した『ブッダの人と思想』。この本は仏教に興味のある人にとってはお薦めのテキストです。
 約2500年前にインドで生まれた仏教。開祖であるブッダは裕福な家庭で生まれたものの、25歳で出家し、35歳で悟りを開きました。その後は、常に怠りなく一生努め続けて「法の道」を歩みました。
 ブッダの思想は人間の持つ欲望と苦悩に焦点を当て、如何に欲望や苦悩から自由になるかを説きます。人間と言う存在に巣くう「無明煩悩」(人生の事物の真相や固定的なものはなにもない(無我)という事実に無知が故に、心身を乱し悩ませ、正しい判断をさまたげる心のはたらき。)を如何に克服し、平安を得るか。ブッダは一生をかけて、その課題に真摯に挑みました。
 
 ブッダの教えは欲望を追及する現代社会の歪みや閉塞を正すたのヒントが示されており、現代人にとっても学ぶべきことが数多くあります。
 欲望に振り回されず、穏やかに生きるために、ぜひ多くの人にこの本を読んで欲しいです。

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北野武新作『監督・ばんざい!』について

 昨日、北野武の新作映画『監督・ばんざい!』の6月公開が発表されました。2年ぶり13作品目となる今回の作品『監督・ばんざい!』は小津安二郎監督風、ラブストーリー、昭和30年代の郷愁感、ホラー、忍者時代劇、SF等さまざまなジャンルの映画を取り込んだお笑い映画ということです。
 ストーリーは今分かっている範囲では、北野武扮する映画監督が新作の構想を練る苦悩から始まり、さまざまなジャンルの新作を映画化するも途中で頓挫し、ラストは予想外のオチが待っているとの事です。
 キャストも江守徹、松坂慶子、岸本加世子、吉行和子、宝田明、藤田弓子、内田有紀、木村佳乃、鈴木杏と大変豪華であり、北野映画でどのような演技をするのか大変興味深いです。
 また、さまざまなジャンルの作品が劇中映画として登場するそうですが、SFやホラーなどの作品をどのように北野監督が仕上げているのか今から楽しみです。
 
 前作『TAKESHIS’』で今までの作品の総括を行った北野監督がどのような新境地を見せるのか、公開が待ち遠しいです。

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『ありがとう』街を捨て書を読もう!

『ありがとう』 著:山本直樹 小学館
Arigatou  家族とは何かを真正面から描いた傑作マンガ『ありがとう』を今回は紹介します。
 この作品の原作者である山本直樹は成人向け漫画でデビューして、一躍人気が出ました。山本作品の大きな特徴として露骨な性描写と人間の弱さや脆さに焦点をあてたストーリー展開があります。彼の作品は居場所を見失った人間たちが居場所を探し彷徨う展開の作品が多いです。
 彼の作品は完成度の高さの割りに、過激な描写が多いために有害指定を受けている作品も多く、認知度や売り上げは今ひとつです。
 そんな彼の代表作である『ありがとう』はイジメ・ドラッグ・新興宗教・監禁・若者たちの非行など現代日本社会を取り巻く問題を上手く取り込みながら、「父親の役割とは?」、「家族の役割とは?」を読者に問いかけます。
 
 私がこの作品をはじめて読んだときは、前半部分のあまりにも過激な性描写と暴力描写に圧倒されてしまいました。しかし、読み進めば進むほど、この作品が単なる過激な描写を売りにしている作品でなく、現代の家族の問題について真面目に考察した作品であることが分かり、ラストにいたっては爽やかな感動させ覚えました。
 崩壊した家庭を何とか立て直そうと孤立奮闘する父親。しかし、父親が頑張れば頑張るほど崩壊していく家族。その描写には近代家族の家父長制の敗北が感じ取れました。
 また家族と言う集団が所詮他人の集まりであり、そんな集団を家族の絆や愛と言う幻想で何とかつなぎとめようとして限界があることをシニカルに描きます。家庭は家族にとって安住の居場所になるとは限らず、むしろ苦痛すら与えてしまう場所であることをこの作品は訴えます。

 家族について考えたい人、家族に嫌気がさしている人、家族に幻想を抱いている人はぜひこの作品を読んでみてください。価値観が変わると思いますよ。

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『空中庭園』この映画を見て!

第141回『空中庭園』
Garden_of_sky  今回紹介する作品は小泉今日子の熱演が大変話題になった角田光代の同名小説の映画化『空中庭園』です。
 ストーリー:「家族の間で秘密は作らないというルールを定め、一見幸せに暮らす京橋家。しかし、家族それぞれが誰にも言えない秘密を抱えていた。理想的な家庭を築くことを夢見ていた主人公の絵里子は何とか幸せな家庭を保とうとする。しかし、家族の歪みは徐々に広がっていく。」

 この作品を見て、久しぶりに素晴らしい日本映画に出会えたと私は思いました。美しくも切ない映像と音楽。役者の演技の上手さ、そして家族の闇を抉り出す脚本と演出。全てにおいて完成度の高い作品です。

 この作品を見て、まず印象に残るのは独特なカメラワークです。ふわふわと不安定に揺れたり、ぐるぐると回転するカメラワークが頻繁に使われているのですが、この映画の不安定で出口のない家族関係というテーマや雰囲気を見事に表現しています。(ただ酔いやすい人は注意してください。)
 また色彩的感覚も素晴らしく、空の透き通った青さやラブホテルの毒々しい赤、そしてラストシーンの白と赤のコントラストがとても印象に残ります。

 映画の前半はブラックユーモアを交えながら、幸せな家族を演じる息苦しさと、家族と言えども他人であり言いたくない秘密を持ってしまうものであるという当たり前の事実を鋭く描きだします。映画の中盤で、幸せな家庭を懸命に演じる家族の姿に「これは学芸会だ」と家庭教師の女性が言うのですが、現代家族の本質を見事に突いたセリフだと感心しました。
 映画の後半は主人公の過去のトラウマに焦点が当たっていきます。子どものときに母に愛されなかったという思い込みから、幸せな家庭を築くことを誓う主人公。しかし、幸せな家庭を築かないといけないという思い込みが、逆に彼女の精神を追い詰めていきます。主人公と母親がバースデイケーキをはさんで向き合うシーンは張り詰めた緊張感が漂い息が詰まりそうでした。

 私はこの映画を初めて見たときは中盤まできっと後味の悪いラストになると思い込んでいたのですが、予想外にもほっと心温まる終わり方に仕上がっています。崩壊寸前の家族の再生。思い込みが生み出す呪縛からの解放。
 たとえ秘密を抱えていたとしても、たとえ幸せが虚構の上で成り立っているとしても、家族は保っていくことができる。ある種の諦めと希望が入り交ざった見事な終わり方です
映画のラストに夫が子どもたちに語るセリフは家族と言うものを考えさせられました。「幸せな家族を演じるということは、家族を大切にしている事であり、嫌だったら演じることも出来ないだろう。」

 役者の演技に関しては、小泉今日子さんの予想外に上手い演技に感心するものの、やはり主人公の母親を演じる大楠道代の演技に圧倒されました。死を目前に自由奔放に生きる母親。娘から「死ね」と言われても動じない母親。それでいて、娘のことを気にかけて電話する母親。時に笑わせ、時に緊張感を漂わせ、そしてほろりと泣かせる彼女の演技がこの作品を見事に締めています。

 「くりかえし、やりなおし、くりかえし、やりなおし、・・・・」
 家庭を築くとは、生きるとは、何度も過ちを繰り返し、そしてやり直しつづけるということ。
人は絶えず生まれ変わる存在であることをこの映画は教えてくれます。
 
制作年度 2005年 
製作国・地域 日本
上映時間 114分
監督 豊田利晃 
原作 角田光代 
脚本 豊田利晃 
出演 小泉今日子 、鈴木杏 、板尾創路 、広田雅裕 、國村隼 、瑛太 、今宿麻美 、勝地涼 、ソニン 、永作博美 、大楠道代 

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