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2007年11月25日 - 2007年12月1日

『近代ヤクザ肯定論―山口組の90年』街を捨て書を読もう!

Photo 『近代ヤクザ肯定論―山口組の90年』 著:宮崎学 筑摩書房 2007年
 今回紹介する本は日本最大のヤクザ組織「山口組」の誕生から現在までの歴史を日本の近現代史と絡めながら描く『近代ヤクザ肯定論―山口組の90年』です。
 著者の宮崎学さんは京都の寺村組組長の息子で小さい頃からヤクザの世界で育ってきただけあって、ヤクザが日本の近現代史で果たしてきた役割を鋭く考察しています。
 一般的にヤクザというと暴力によって市民社会を震え上がらせる悪者といったイメージがありますが、この本を読むとヤクザに関するイメージが変わります。
 明治以降、日本が近代社会に変わっていく中で、貧困や差別から逃れるため都市に流入してくる下層労働者たち。そんな下層労働者を取りまとめ、仕事を与えてきたヤクザという組織。本書を読むと明治から昭和にかけてヤクザは今で言う人材派遣業として地域の中で役割を果たしてきたことが良く分ります。またそれと併せて、日本が資本主義を導入して、利益を上げていく過程で国家や資本家が如何にヤクザという組織を重宝してきたかも良く分ります。
 
 本書では神戸港の港湾労働において山口組がいかに権力を握っていったかが、当時の港湾労働の生々しい実態を交えながら解説しているのですが、労働組合すら結成できない末端の下層労働者の非人間的な労働状態の改善にヤクザが一定の役割を果たしていたことが非常に印象的でした。
 またヤクザ組織が下層労働者だけでなく、在日朝鮮人や被差別部落出身者なども取り込み、社会から排斥された人間たちのアジールにもなっていたそうです。
 貧困や差別の中で暴力を唯一の盾として社会の中で権力を握って生きていくしかないヤクザ組織の人間たちの切なさを読んでいて強く感じました。
 本書の中でも宮崎さんはヤクザ組織を「哀愁の共同体」という呼び方をしており、ヤクザという組織に関して以下のようなことを書いています。
 「ヤクザは親権力でも反権力でもない。生きていくため、みずからを権力として社会的に立てなければならなかった者たちの対抗権力だったのだ。」

 本書の後半はヤクザが日本が高度成長期を迎える中で如何に変質して言ったかが克明に描かれます。労働の機械化や「一億総中流化」に伴う下層社会の底上げ等に伴い、今までヤクザ組織が基盤としていた下層社会・周縁社会が解体。それに伴い地域共同体の中で果たしてきた対抗権力としての役割も低下し、企業社会に食い込んで利益を追求していくヤクザ組織。80年代~90年代にかけての国家主導による激しい弾圧により、ヤクザはアンダーグラウンドな犯罪組織への変貌していったそうです。

 宮崎さんは最後にグローバル化した社会の中で国境を越えて、各国の「政治的権力」に対抗できる「社会的権力」としての「超近代的ヤクザ」の可能性を説いています。現実にそのようなヤクザ組織が現れるかどうか分りませんが、宮崎さんのロマンチシズムに強く惹かれました。

 ヤクザに興味のある人も嫌いな人も一度は本書を読むことをお勧めします!

第1章 山口組の誕生―仲仕からヤクザへ
第2章 振興山口組の発展と衰退―米騒動から敗戦まで
第3章 闇市の混沌のなかから―窮民アウトローとしての出発
第4章 港の顔役―山口組の港湾支配
第5章 大衆芸能の裏側―美空ひばりと山口組
第6章 高度成長と全国制覇―頂点に立った山口組
第7章 被差別民の前楯、後楯―被差別部落・在日コリアン社会とヤクザ
第8章 対抗権力としての近代ヤクザ―山口組壊滅せず
第9章 近代ヤクザの変質と終焉―日本のヤクザが終わるとき

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