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2007年7月15日 - 2007年7月21日

『旅立ちの時』この映画を見て!

第168回『旅立ちの時』
Running_on_empty  今回紹介する作品は『セルピコ』などの社会派作品で知られる名匠シドニー・ルメットと若くして亡くなったリバー・フェニックスが組んだ青春ドラマの傑作『旅立ちの時』です。
 
 ストーリー:「ベトナム戦争当時に反戦活動家としてナパーム工場を爆破した罪でFBIに指名手配中の両親を持つ17歳の青年ダニー。彼は2歳のときからアメリカ各地を転々としていた。彼は家族と共に新しい生活の場としてニュージャージーに引っ越してくる。そこでダニーは高校の音楽教師にピアノの才能を見出され、有名な音楽大学への進学を薦められる。また音楽教師の娘ローナに恋もするようになるが、両親のことを考えて進学も恋も躊躇していた。」

 私がこの作品に出会ったのは高校生の時でした。自分の親からの自立や将来について悶々と考えていた時期だったので、この作品を見た時は大変共感したものでした。
 この作品の主人公のダニーは家族を大切にしたいという思いと自分の人生を歩みたいという思いの中での激しい葛藤に苛まされます。その葛藤が当時高校生だった私には痛いほど伝わってきたものでした。
 映画のラスト、ダニーは家族から旅立つのですが、子の旅立ちに際して両親が贈るメッセージが大変素晴らしく、自然と涙が溢れたものでした。子どもの自立に対してあのようなメッセージを贈れる両親に深い感銘を受けたものでした。(どのようなメッセージかは皆さんも映画を見て確認してください。)
 私はこの映画に出会ってから、大学受験や就職、一人暮らしなど人生の岐路に立った時には必ず見返して、ラストシーンの両親のメッセージを聞いて自分を奮い立たせたものでした。

 最近久しぶりにこの作品を見返す機会があったですが、やはりラストは泣いてしまいました。ただ、高校の時と違って主人公のダニーの自立よりも、ダニーを温かく見守ろうとする両親の姿に共感してしまいました。子が親元を離れて別の道を歩む時、それは親にとって嬉しくもあり、切なくもあり、不安でもあるでしょう。そんな親の複雑な気持ちが痛いほど伝わってきました。
 子どもとずっといることを望む父親。そんな父親の子どもを手放すことに対する激しい葛藤。そんな父親が最後の最後に子どもの自立を後押しする。高校生の時は主人公が親から旅立つ作品だと思っていたのですが、それだけではなくて、親が子どもから旅立つ子離れの作品でもあったことに今回気づきました。

 また今回久しぶりに見返して、主役のダニーを演じたリヴァー・フェニックスが若くして亡くなった事が返す返す残念に思いました。当時は『スタンド・バイ・ミー』や『インディー・ジョーンズ最後の聖戦』などに出演して大変人気があったものでした。この作品ではアカデミー主演男優賞にもノミネートされ、役者としての将来を期待されていたものでした。彼が今生きていたらどんな役者になっていたのか想像してしまいました。
 それにしても本作品のリヴァーの抑えた演技は素晴らしく、思春期の複雑な心境を見事に表現していたと思います。リヴァーの境遇自体も親がカルト教団に入っていたこともあり各地を転々としていたそうで、映画の主人公と境遇が被っていたようです。そんなこともあり、主人公にすっと感情移入して演技が出来たんだろうなと思います。

 監督のシドニー・ポラックの演出は地味で淡々としていますが、その静かで抑えた演出方法が登場人物たちの微妙な心情の揺れを捉えるにあたって成功しています。
 また映画の中の挿入歌であるジェームズ・テイラーの「FIRE AND RAIN」が映画の内容とマッチしており、観客の耳と心に深い印象を与えます。
 
 この作品はとても地味な青春映画でありますが、涙なしでは見られない傑作です。ぜひ皆さんもご覧ください!

製作年度 1988年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 116分
監督 シドニー・ルメット 
原作 ナオミ・フォナー 
脚本 ナオミ・フォナー 
音楽 トニー・モットーラ 
出演 リヴァー・フェニックス 、クリスティーン・ラーチ 、マーサ・プリンプトン 、ジャド・ハーシュ 、アリス・ドラモンド 

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『Vフォー・ヴェンデッタ』この映画を見て!

第167回『Vフォー・ヴェンデッタ』
V_for_vendetta  今回紹介する作品は全体主義国家となった近未来のイギリスを舞台に革命を目指す孤高のテロリスト"V"と彼に協力するヒロイン"イヴィー"の活躍を描く『Vフォー・ヴェンデッタ』です。
 ストーリー:「第三次世界大戦後、独裁者アダム・サトラーにより全体主義国家と化した英国。国営放送BTNに勤務する女性イヴィーは外出禁止時刻に外出してしまい秘密警察ザ・フィンガーの警備員に捕まる。そこに現れた仮面を被る謎の男“V”に助けられる。Vは自分の人生を狂わせた国家への復讐から転覆を企むテロリストだった。イヴィーはVのテロ計画に巻き込まれ、国家から追われる破目に陥る。」

 この作品は『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟が担当しているので、大掛かりなアクションシーンが連続する映画と思って鑑賞すると肩透かしをくらうと思います。私も当初は爽快なアクション映画と思って鑑賞していたので、自分の予想していなかった方向に話しが進んでいき、ある意味期待を裏切られた作品でした。しかし、それは面白くなかったかというと、そんなことはなく個人的にかなりツボにはまった作品でした。管理社会によって独裁体制を敷いている国家に個人が闘いを挑むという作品は昔から数多くありますが、この作品は登場人物の魅力と現代の欧米の保守的な政治体制に対する痛烈な皮肉と批判が込められた内容の濃さで大変見ごたえがあります。
 映画の中では生物テロに怯えた国民が安全を求めて自由を捨て強権的な政治指導者を選びますが、それは911テロ後のアメリカやイギリスの政治状況を見事に反映していると思います。

 Vの仮面はモデルがあり、1605年11月5日に英国国会議事堂の爆破未遂事件を起こし、翌年処刑されたガイ・フォークスという人物がモデルになっています。今でもイギリスでは11月5日を「ガイ・フォークス・デー」として記念し、その夜は花火が打ち上げられています。
 そんなV役を演じたのが『マトリックス』でエージェント・スミス役を演じたヒューゴ・ウィーヴィング。彼は映画の中では一切素顔を現さず、声と体をつかった演技だけで主人公を演じています。演技において役者の表情は非常に大切な要素だと思うのですが、それを封じいられた中で、あれだけの存在感のある演技を見せたヒューゴ・ウィーヴィング恐るべしです。彼が流暢なクイーンズイングリッシュで語る時に哲学的、時に文学的なセリフの数々は耳に心地よく、その言葉の深遠さは胸に大変残りました。

イヴィーを演じたナタリー・ポートマンも映画の中でスキンヘッドにして熱演していますが、一番衝撃的だったのは映画の中のロリコン姿。20歳を超えてあのような姿をするとは凄いです。

 この映画は政治的な色合いの強い作品ですが、とてもロマンティックな作品でもあります。映画後半で徐々に変化するVとイヴィーのお互いに対する思い。ラストは不覚にも涙が出そうになりました。

 またラストで無数のVが登場するシーンは鳥肌が立ちました。Vが一人の超人的な人間を指すわけでなく、多くの人間が希求する自由を象徴した存在であることを見事に映像で表現していたと思います。

 この作品は決して万人受けする作品とは思いませんが、現代のアメリカ政府に不信感を持つ映画好きなら見て損はないと思いますよ。

製作年度 2005年
製作国・地域 イギリス/ドイツ
上映時間 132分
監督 ジェームズ・マクティーグ 
製作総指揮 ベンジャミン・ウェイスブレン 
脚本 アンディ・ウォシャウスキー 、ラリー・ウォシャウスキー 
音楽 ダリオ・マリアネッリ 
出演 ナタリー・ポートマン 、ヒューゴ・ウィーヴィング 、スティーヴン・レイ 、スティーヴン・フライ 、ジョン・ハート 

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『出発点―1979~1996』街を捨て書を読もう!

『出発点―1979~1996』 著:宮崎駿 徳間書店
Syutupatuten  今回紹介する本は日本を代表するアニメ監督・宮崎駿の1979年から1996年までの企画書・演出覚書・エッセイ、講演・対談等を90本以上収録した『出発点―1979~1996』です。
 この本には宮崎駿のアニメや仕事そして人生に対する考え方から、好きな本や興味のあること、そして自分のアニメに込めた思い等がぎっしり詰まっており、非常に読み応えがあります。

 私がこの本に出会ったのは大学生の時でしたが、この本を読んで私は宮崎アニメに対する見方が大きく変わりました。宮崎監督がそれぞれの映画に込めた熱い思いや細かい裏設定。それを知った上で映画を見ると、今まで以上に味わい深いものがありました。

 またそれと同時にこの本の中で語られる宮崎駿監督の仕事に対する姿勢や自然や子ども対する熱い思い、そして人間や歴史に対する独自の視点は学ぶべきことが多く、自分の人生観や生き方に大きく影響を与えてくれました。

 宮崎アニメが好きな人にぜひ読んで欲しい一冊です。
 

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『日本沈没』この映画を見て!

第166回『日本沈没』(1973年版)
Nihon_tinbotu  今回紹介する作品は小松左京の傑作SF小説を映画化した『日本沈没』です。2005年に『ローレライ』の橋口真嗣監督が草薙剛と柴崎コウを主演に迎えてリメイクもされましたが、今回紹介するのは1973年に制作された方です。
 1973年版『日本沈没』は4ヶ月という短期間で制作されていますが、その完成度の高さは2005年のリメイク版を遥かに上回ります。特撮に関してはCGなどない時代だけあって、全てミニチュアで撮影されているのですが、意外にも迫力ある映像となっています。
 特に中盤の東京を襲う大地震のシーンはこの映画最大の見せ場であり、見る者を圧倒します。もちろんミニチュア丸分かりのシーンもあるのですが、火災の中を逃げ惑う人々やビルのガラスが突き刺さった人々、洪水に押し流される人々等の迫真の演技がリアリティーを醸し出しており、地震の恐怖といったものを見る者に強く感じさせる仕上がりとなっています。

 リメイク版はCGを多用して災害のスケールの大きさは表現できていたと思うのですが人間の演技が薄っぺらで逆に緊迫感があまり感じられませんでした。それに比べて、1973年版は映像こそ古臭さはあるものの、それを補って余りある重厚さと緊迫感がありました。
 1973年版の素晴らしいところは役者たちの熱演により人間ドラマが非常にしっかりと描かれているところです。特に小林桂樹演じる田所博士の狂気迫る演技、丹波哲郎演じる山本総理の祖国滅亡に対する葛藤を滲ませる演技は映画に非常にリアリティを与えています。
 
 私が印象的だったシーンが山本総理が日本が沈んだ場合の日本民族の将来をどうすべきか、渡老人と話し合う場面。渡老人が総理に『なにもせんほうがえぇ。このまま日本とともに海に沈むことが 日本及び日本民族にとって一番いいことじゃ。』と語り、首相が目頭を熱くして沈黙するシーン。日本国の首相である山本総理の絶望と哀しみ、そしてそれを認めたくない葛藤といったものが強く感じられ、私も涙が自然とあふれてきました。

 映画の後半は一億人の日本国民をどうやって世界各国に避難させるかが描かれていきますが、世界各国の対応や国連での話し合いなど非常にリアリティのある展開で、日本国民がどうなっていくのか見ごたえがありました。
 
 この作品は日本国民が祖国を失うことになったらどうなるかを映像面だけでなく、政治的、思想的に見事にシュミレーションした作品だと私は思います。
  
 ただ残念なのは上映時間の関係からか全体的に駆け足の展開となってしまい、ストーリーのつながりが強引で違和感を感じたところです。噂によると最初は3時間半近い作品だったところを1時間近くカットしたそうです。できれば3時間半バージョンも見てみたいものです。

 リメイク版を見て感動した人も、いまいちだった人もぜひ1973年版『日本沈没』を見てみてください!30年近く前にこのような重厚なパニック映画が制作されていたことに感動すると思います。 

製作年度 1973年
製作国・地域 日本
上映時間 140分
監督 森谷司郎 
原作 小松左京 
脚本 橋本忍 
音楽 佐藤勝 
出演 藤岡弘 、いしだあゆみ 、小林桂樹 、滝田裕介 、二谷英明 、中丸忠雄 、村井国夫 、夏八木勲 、丹波哲郎 、伊東光一 、松下達雄 、河村弘二 、山本武[俳優] 、森幹太 、鈴木瑞穂 、垂水悟郎 、細川俊夫 、加藤和夫[俳優] 、中村伸郎 、島田正吾 、角ゆり子 、梶哲也 、稲垣昭二 、内田稔 、大木史朗 、吉永慶 、宮島誠 、大杉雄二 、神山繁 、高橋昌也 、近藤準 、竹内均 、石井宏明 、今井和雄 、早川雄三 、中條静夫 、名古屋章 、斉藤美和 、大久保正信 、アンドリュウ・ヒューズ 、ロジャー・ウッド 、大類正照 、小松左京 

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『一期一会&昔から雨が降ってくる』

Itigoitie  お気に入りのCD NO.18 『一期一会&昔から雨が降ってくる』 中島みゆき

 7月11日に発売された中島みゆきの40枚目のシングル『一期一会』。現在TBS系列で放映されている「世界ウルルン滞在記ルネサンス」の主題歌『一期一会』とエンディングテーマ『昔から雨が降っている』の2作品が収録されています。
  今回の作品もみゆきさんらしいシンプルで力強い言葉と優しいメロディーで聞く者の心に潤いを与えてくれます。

 私も発売初日に購入して、毎日何十回とリピートして聞き込んでいますが飽きることがありません。
 
 人生という旅の途中での出会いと別れをテーマにした『一期一会』。この作品で私が感銘を受けたのは歌詞のサビの部分です。別れのとき普通なら相手に自分のことを覚えておいてほしいと願うところを、そんなことよりも相手のこれからの幸せを願うような意味の歌詞を書いており、相手への深い優しさと労わりといったものが感じられる仕上がりとなっています。

『昔から雨が降っている』は遥か昔から繋がっている自分というものを振り返るような作品となっています。いま自分が生きているということは、地球に命が初めて生まれて日から今日まで断ち切れることなく続いてきたからであるという当たり前のことを気づかせてくれます。

 今回のシングルもみゆきさんでなければ生み出せない広く深い世界観が感じられる作品となっています。

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