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2007年7月1日 - 2007年7月7日

『300 <スリーハンドレッド>』この映画を見て!

第165回『300 <スリーハンドレッド>』
300  今回紹介する作品はスパルタの兵士300人がペルシアの巨大軍と戦う姿を描いたアクション映画『300 <スリーハンドレッド>』です。この作品はペルシア戦争のテルモピュライの戦いをアメリカで人気のフランク・ミラーがコミックノベルとして描いた原作を基に制作されています。その為に歴史的事実とは違う部分も多く、ペルシアの血を引くイランの人々からは数多くの批判が挙がっています。確かに中近東やアジアの人を暴力的な野蛮人として誇張して描いている箇所が多く、批判が出るのも仕方ないかと思います。この作品を見るときは歴史映画として見るのでなく、歴史にインスパイアされた架空の世界のファンタジー映画として見る必要があるかと思います。
 
 ストーリー:「紀元前480年。スパルタ王レオニダスのもとに、圧倒的な軍力を誇るペルシア帝国・クセルクセス王の遣いがやって来た。ペルシアの支配国にならないと国を滅ぼすという申し出に対して、レオニダスは遣いを殺して、ペルシア軍と戦う道を選ぶ。テルモピュライでの決戦に挑むスパルタの300人の兵士たち。ペルシアの100万の大軍を相手に想像を絶する闘いを繰り広げる。」

 この作品はストーリーを楽しむというより、グラフィックノベルをそのまま実写にしたかのような独特な映像美を楽しむ作品です。ストーリー自体は人間ドラマとしては物足りないところも多く、闘う兵士たちの複雑な感情といったものはあまり感じられません。普通こういう作品だと悲壮感が漂っていることが多いのですが、この作品はそういった所はなく終始兵士たちが闘いを楽しんでいる雰囲気があり、ポジティブな勢いが感じられました。
 ストーリーに関して私が残念だったのは主人公たちの政治的な発言の数々です。自由や正義をあまりにも声高々に叫ぶ場面はアメリカの独善性みたいなものが感じられ興ざめでした。
 
 この作品の最大の魅力は先ほども言ったように映像の美しさです。私が今年見た映画の中では映像的には一番インパクトのある作品でした。「映画でグラフィック・ノベルを作る」という決意を持って監督は制作したそうで、全編にわたって視覚効果を施した映像はまるで絵画を見ているかのようです。
 戦闘シーンは血しぶきが飛び散り、兵士たちの手足や首が飛ぶなど結構残酷な描写が多いのですが彩度を落としたセピア調の画質が生々しさを緩和しています。
 またスローモーションを多用した戦闘シーンは臨場感を削ぐものの、躍動感に溢れており、闘う男たちの美しさやカッコよさを見事に表現していたかと思います。
 
 敵のスパルタ軍の描写は巨人に、巨大なサイやゾウ、忍者っぽい敵と現実離れしており、まるでファンタジー映画に登場する敵のような印象を受けました。ただ残念なのが敵の大将であるクセルクセス王の描写です。威厳と言うものが感じられず、変態っぽくて迫力に欠けていたかと思います。
 
 出演している俳優たちは有名でない人ばかりですが、鍛え上げられた肉体と低く渋い声は魅力的でした。個人的にはロード・オブ・ザ・リングでファラミア役を演じたデヴィッド・ウェンハムが美味しい役どころになっており嬉しかったです。
 
 この作品はマッチョな男たちの肉体美やケレン味あふれる戦闘シーンを楽しみたい人にはお薦めです。しかし残酷な描写も多いので、その手の描写が苦手な人はご注意してください! 

製作年度 2007年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 117分
監督 ザック・スナイダー 
製作総指揮 フランク・ミラー 、デボラ・スナイダー 、クレイグ・J・フローレス 、トーマス・タル 、ウィリアム・フェイ 、スコット・メドニック 、ベンジャミン・ウェイスブレン 
原作 フランク・ミラー 、リン・ヴァーリー 
脚本 ザック・スナイダー 、マイケル・B・ゴードン 、カート・ジョンスタッド 
音楽 タイラー・ベイツ 
出演 ジェラルド・バトラー 、レナ・ヘディ 、デヴィッド・ウェンハム 、ドミニク・ウェスト 、ミヒャエル・ファスベンダー 、ヴィンセント・リーガン 、トム・ウィズダム 、アンドリュー・プレヴィン 、アンドリュー・ティアナン 、ロドリゴ・サントロ 、

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『かもめ食堂』この映画を見て!

第164回『かもめ食堂』
Kamome  今回紹介する作品はオールフィンランドロケで撮影された日本映画『かもめ食堂』です。群ようこが本作品のために書き下ろした原作を元に制作されたこの作品。最初は2館だけの上映でしたが、口コミで人気が広がり、多くの単館映画館でロングラン上映を記録しました。(私が住んでいる滋賀では7月から滋賀会館でリバイバル上映されます。)

 ストーリー:「フィンランドの日本食堂を経営しているサチエ。お客は、日本おたくの青年1人。そんな青年から聞かれた質問に答えられなかったサチエは図書館で偶然知り合ったミドリに答えを教えてもらう。そのことをきっかけにミドリも食堂の手伝いをすることになる。次第に人が集まるようになるかもめ食堂。悩みをかかえたフィンランド人や荷物が出てこなくなって困っている日本人なども集まってきて、サチエたちの温かな手料理に心が解きほぐされていく。」

 この作品は映像もストーリーも決して派手ではなく、淡々とした作品です。しかし、この淡々とした作りがとても心地よく、見た後にほっこりと幸せな気分に浸ることができます。

 主人公は3人の日本女性なのですが、なぜフィンランドにやって来たのかの説明は最小限しかありません。きっと過去にいろいろな事があったのだろうと匂わせながら、その事はほとんど語らず、主人公たちの今ここでの生活だけに焦点をあてた描き方は観客の想像力を刺激すると共に深い余韻を与えてくれます。
 普通の作品だと主人公たちの人生や感情を描こうとするのですが、この作品は生活にだけ焦点を当て、その生活の中で微妙に変化していく人たちの姿を描いていきます。何気ない日常の生活を丁寧に楽しむことが生きていくうえで如何に大切なことか、この作品は気づかせてくれます。

 この作品の大きな魅力として、小林聡美さん演じる主人公のさりげない優しさや凛とした力強さがあると私は思います。
 かもめ食堂の店主であるサチエさんは決して自分のことも多く語らず、他人のことも深く詮索はしません。余計なことはせず適度な距離感を持って、相手のペースを尊重しながら付き合っていく姿勢はとても好感が持てました。
 また自分の生活に対するこだわりや信念といったものを大切にして、自分のペースを常に乱さず生きていく姿はとても清々しいものがありました。

 もちろん片桐はいりさん演じるミドリさんやもたいまさこが演じるマサコさんも個性的で味のある演技をしています。片桐はいりさんの独特な表情や目の動き、もたいまさこさんの酸いも甘いも経験した大人の女性としての風格。3人の個性派女優の醸し出す独特な雰囲気がこの作品を成功に導いたと言っても過言でないと思います。

 あと、この作品の大きな魅力として忘れてはいけないのは美味しそうなな食べ物の数々です。淹れたてのコーヒー、鮭・梅・おかかのおにぎり、焼きたてのシナモンロール、トンカツにしょうが焼き。出てくる食べ物全てが美味しそうで、観客の胃袋を刺激します。湯気の立ち方とか食べ物をこんなに美味しそうに撮影した作品は邦画では久々だと思います。
 またかもめ食堂のインテリアも無駄がなくシンプルでありながら、とてもおしゃれであり、見ていて心落ち着くものがありました。

 私はこの作品を見て、おにぎりは日本人にとってのソウルフードであることを再認識しました。ノリのぱりっとした食感、程よい塩加減のご飯、そして中に入った鮭・おかか・梅干とご飯の相性の素晴らしさ。映画の中で「おにぎりは人に握ってもらうのが良い」というセリフがありますが、その通りだと思いました。

 日々の生活や仕事に追われてゆとりをなくしている時、この作品を見ると肩の力が抜けてほっと出来ますよ。ただお腹が空いたときに見ると、無性に和食とコーヒーが欲しくなると思うので、あらかじめ腹ごしらえをしておくか、おにぎりとコーヒーを用意しておいたほうが良いですよ。 

製作年度 2005年
製作国・地域 日本
上映時間 102分
監督 荻上直子 
原作 群ようこ 
脚本 荻上直子 
音楽 近藤達郎 
出演 小林聡美 、片桐はいり 、もたいまさこ 、ヤルッコ・ニエミ 、タリア・マルクス 、マルック・ペルトラ 

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