« 2007年6月10日 - 2007年6月16日 | トップページ | 2007年6月24日 - 2007年6月30日 »

2007年6月17日 - 2007年6月23日

『平成狸合戦ぽんぽこ』この映画を見て!

第163回『平成狸合戦ぽんぽこ』
Ponpoko  今回紹介する作品は『火垂るの墓』の高畑勲監督が、人間による自然破壊から自分たちの生活を守ろうとするタヌキたちの奮闘を描いた『平成狸合戦ぽんぽこ』です。
 ストーリー:「多摩ニュータウンの宅地開発で自然が失われて故郷を追われた狸たち。彼らはタヌキ連合軍を結成して化学(化け学)を駆使して人間に闘いを挑むが・・・。」
 この作品はスタジオジブリの数ある作品の中で一般的な評価は低いですが、個人的には大好きな作品です。

 個性的な狸の面々たちが化け学を一生懸命学んで、人間に挑んでいく姿はユーモア満点で見ていて楽しいですし、日本各地の民話をさりげなく取り入れたエピソードの数々は民俗学に興味のある私にはたまらない設定でした。特に中盤の見せ場である狸たちによる百鬼夜行のシーンは日本の妖怪のオンパレードで妖怪好きには見ごたえ満点でした。(さりげなく、パレードの中でトトロや紅の豚そしてキキも登場しています。気づかなかった人はぜひビデオでも借りて、どこにいたか探してみてください!)
 また高畑監督が好きな作家・宮沢賢治の『双子の星』のエピソードの挿入や、以前から映画化を希望している平家物語の名シーンの再現も見ていて監督の熱い思いが伝わってきました。
 
 所々に挿入されるシニカルなエピソードも印象的で、狸がマクドナルドのハンバーガーを食べるシーンやテレビの料理番組で天ぷらを揚げるところをじっと見つめるシーンなどは、狸も人間の文化の中で生きているという皮肉な現実を見事に象徴していたと思います。
 
 後半は中盤までのユーモラスな展開から打って変わり、悲壮感漂う展開になっていき、見ていて胸が締め付けられます。
 人間に闘いを挑んで玉砕する狸たち、死出の旅に向かう狸たち、人間社会に迎合していく狸たち。大きな力の前に屈していく狸たちの姿は涙なしでは見れませんでした。ラストシーンで生き残った仲間たちが人間社会の中で健気に生きる姿は何とも物悲しいものがありました。
 
 この作品は環境問題や自然保護を訴えた作品という感想が多いですが、私の中ではこの作品はそれらのテーマと合わせて、60年代の全共闘による学生運動の顛末を描いた作品だと思っています。
 なぜそう思うのかというと、私の知り合いに60年代に学生運動に身を投じていた人がおり、当時の状況についていろいろ教えてもらっていたからです。
 共産主義を目指して資本主義国家を倒すために、時にデモやストライキをして自らの意志をアピールし、時に国家権力の手先である警察や機動隊に向かっていく・・・。しかし、次第に権力の弾圧も強まり、次第に運動から離れる人も増え、残った人たちもセクト同士で内ゲバを始め自壊していく・・・。
 そんな当時の学生運動の顛末を知っていたので、この作品を見たとき、単なる自然保護の映画というより、自分たちの理想を目指して運動に投じた人間たち(狸たち)が権力の前に敗北していく姿を描いた作品として見たものでした。
 映画のラストの栄養ドリンクを飲みながら社会に溶け込もうとする狸の姿は、学生運動から身を離れ資本主義の中で必死に生きていこうとする元運動家の姿にダブって見え、切ないものがありました。

 あと、この映画の大きな魅力として声優がとてもはまっているところがあります。スタジオジブリは大物タレントや俳優を声優として起用することが多いですが、話題性だけで違和感のある場合があります。
 この作品でもたくさんの俳優やタレントが起用されているのですが、違和感が全くなくキャラクターにぴったりあっています。
 また桂米朝[3代目] 、桂文枝 、柳家小さんなどの有名落語家の起用も狸を主人公にしたユーモアと悲哀に満ちた今回の作品には抜群の効果があったと思います。

 この作品はスタジオジブリ作品の中ではあまりパッとしませんが、非常に完成度の高い作品だと思います。  

製作年度 1994年
製作国・地域 日本
上映時間 119分
監督 高畑勲 
原作 高畑勲 
脚本 高畑勲 
音楽 紅龍 、渡野辺マント 、猪野陽子 、後藤まさる 、上々颱風 、吉澤良治郎 
出演もしくは声の出演 野々村真 、石田ゆり子 、三木のり平 、清川虹子 、泉谷しげる 、芦屋雁之助 、村田雄浩 、林家こぶ平 、福澤朗 、山下容莉枝 、桂米朝[3代目] 、桂文枝 、柳家小さん 、神谷明 

| | コメント (0) | トラックバック (1)

『フラガール』この映画を見て!

第162回『フラガール』
Hulagirl  今回紹介する作品は昨年度の日本の各映画賞を総なめにした話題作『フラガール』です。この作品は福島県の炭鉱町に誕生した常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)にまつわる実話を基に制作されています。
 ストーリー:「時代の波で閉鎖に追い込まれつつある東北の炭坑の村。次々と炭鉱が閉鎖される中、炭鉱会社が目をつけたのは東北にハワイを持ってくることをコンセプトにしたレジャー施設『常磐ハワイアンセンター』の開設だった。ハワイといえばフラダンスということで炭鉱の女性たちをフラダンサーにしようと考えるが、集まったのは盆踊りしか知らないような女性たち。そこで東京からプロのダンサーが呼ばれ、プロのダンサーになるべく特訓が始まる。」
 
 この作品、ストーリー自体はサクセスストーリーにありがちなとてもベタな内容です。親と子の軋轢と和解、主人公の挫折と成功、友人との別れ、先生に対する生徒の反発から信頼関係への発展、全てが観客の予想を裏切ることのない王道の展開です。イギリスで制作された炭坑夫の息子がバレーダンサーを目指す『リトル・ダンサー』や炭坑夫たちが男性ストリッパーを目指す『フル・モンティ』を観た事がある人なら、この作品がどんな展開になるかすぐに察しがつくと思います。
 
 ストーリーの展開だけ見るとありがちな作品に過ぎないのですが、役者の熱演と監督の演出の巧みさで観客の心を惹きつけ、深い感動を与えます。
 役者の演技で言えば蒼井優の演技がとても素晴らしく、彼女の魅力でこの映画は支えられていると言っても過言ではないと思います。炭鉱の素朴で勝気な女子高生が母の反対を押し切ってダンスに打ち込む姿は見ていて清清しいです。また肝心のダンスのシーン自体も特訓の甲斐もあって躍動感にあふれおり、見る者を虜にします。
 東京から来た訳ありのプロダンサーを演じる松雪泰子の熱演も素晴らしく、栄光も挫折も味わった女性の逞しさと不器用さといったものが感じられました。
 また他の脇役の方の演技も素晴らしいの一言でした。特に岸部一徳と富司純子の演技は味があり、この映画に奥行きを与えたと思います。

 あとこの作品で印象的だったのが昭和40年代の炭鉱の生活をノスタルジックかつリアルに描いたところでした。石油から石炭にエネルギー政策が変わり、どんどん斜陽になっていく石炭産業。その中で何とか生活と仕事を守ろうとする人々。この部分を丁寧に描いたことで、単なるサクセスストーリーとは違う奥行きが映画に加わったと思います。
 時代の流れに抗う人たちと、時代の流れの中で何とか生き延びようとする人たち。炭鉱で働いていた男たちの誇りと、その誇りを奪う時代の流れ・・・。そんな中で若い女性たちがたくましく生き延びようとする姿は時代の変化というものにどう立ち向かっていくべきかを見事に描いていたと思います。
 
 笑って泣けて、清清しい気持ちになれる『フラガール』。多くの人にぜひ見ていただきたい作品です。  

製作年度 2006年
製作国・地域 日本
上映時間 120分
監督 李相日 
脚本 李相日 、羽原大介 
音楽 ジェイク・シマブクロ 
出演 松雪泰子 、豊川悦司 、蒼井優 、山崎静代 、池津祥子 、徳永えり 、三宅弘城 、寺島進 、志賀勝 、高橋克実 、岸部一徳 、富司純子 

| | コメント (0) | トラックバック (5)

« 2007年6月10日 - 2007年6月16日 | トップページ | 2007年6月24日 - 2007年6月30日 »