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2007年5月13日 - 2007年5月19日

『地獄の黙示録』この映画を見て!

第158回『地獄の黙示録』
Apocalypse_now  今回紹介する作品はベトナム戦争を舞台に人間の狂気を描いた超大作『地獄の黙示録』です。
 『ゴッドファーザー』で富と名声を得たフランシス・フォード・コッポラ監督が、ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』を基に製作された本作品。コッポラ監督の完璧主義やフィリピンロケでの様々なトラブルなどで、完成までに4年の歳月と3,100万ドルの巨費がかかってしまいました。 完成した映画はフィリピンで撮影された映像の圧倒的な迫力と映像にぴったりあった選曲の素晴らしさは多くの人に支持されるものの、後半の抽象的なストーリー展開は難解で賛否両論を巻き起こしました。カンヌ映画祭ではグランプリ、アカデミー賞では2部門を受賞しました。
 ストーリー:「1960年代末のベトナム。ウィラード大尉は、ジャングルの奥地で現地の人を率いて王国を築いたとされるカーツ大佐を暗殺する命令を受け、4人部下を引き連れてナング河を溯っていく。その過程でウィラードが遭遇するさまざまな戦争の狂気。何とかジャングルの奥地の王国にたどり着いたウィラードはカーツと対峙するが・・・。 」

 私がこの作品を始めてみたのは高校生の時でしたが、当時はヴィットリオ・ストラーロの濃厚な映像とワーグナーやドアーズを引用した音楽の素晴らしさにとても感動したものでした。
 特に前半のハイライトとも言えるワーグナーの勇壮な音楽にのせて米軍のヘリコプター舞台がベトナムの村を爆撃するシーンはその圧倒的な迫力に鳥肌がたったものでした。
 また、その爆撃の理由がサーフィンをしたいというキルゴー中佐の個人的な理由に過ぎないところに戦争の狂気というものを強く感じたものでした。
 当時はジャングルの奥地にいるカーツ大佐を探してジャングルの奥地へと旅をする前半までは戦場の迫力と狂気に満ちており集中して見ることができました。
 しかし、王国に到着してカーツ大佐が出てきてから、映画のテンポが悪くなり、見ていて睡魔が襲ってきました。ただ生きた牛を切り刻むシーンだけは強烈なインパクトはありましたが・・。高校生の私には何が言いたいのかイマイチ分りませんでした。
 当時は何が言いたいのか良く分らないけど、凄い映画を見てしまったという印象が強く残ったものでした。その後も、この映画の強烈なインパクトが忘れられずLDを買っては何回も見直したものでした。

 2001年に50分の未公開映像が追加された特別完全版が公開され、私も劇場に足を運び見たのですが、その時に初めてこの映画の言いたかったことが何となく分ったものでした。
 完全版では細かな追加シーンのほかに、大きく3つの新しいフッテージが追加されています。
 1つ目が「プレイメートのその後」で、オリジナルではちらっとしか登場しなかったプレイメートがウィラードたちと交流する場面が追加されています。
 2つ目は「フランス人植民農園」のシーン。このシーンが撮影されていたことは以前から知っていましたが、オリジナル版でカットされたのが非常に惜しまれるシーンです。このシーンが加わることで、この映画のテーマの一つである「ベトナムでアメリカが戦うことの空しさや無意味さ」がより明確になっています。このシーンの幻想的な美しさは特筆もので、オリジナルにはない甘美さが与えられています。
 3つ目は「カーツ大佐のセリフ追加」シーン。オリジナルではよく分らなかったカーツ大佐の思想や狂気に至る理由が明確に分かりますし、この映画の持つ人間の狂気や反戦というメッセージ性がより分りやすく見る者に伝わるようになっています。
 特別完全版は監督の意図やメッセージがオリジナル版よりも分りやすくなっていますが、一つ欠点を挙げると3時間20分という上映時間は少し長く、オリジナル版よりもテンポが悪くなっています。

 この作品は「人間の内に潜む不条理さや狂気」というものを戦争という人間の本能がむき出しになる状況を舞台にして考察した作品だと思います。戦場という生と死の狭間で生きる人間たちが陥る狂気。道徳や倫理が通用しない戦場という場所で現れる人間の心の闇を生々しく描いています。
  
製作年度 1979年 (2001年・特別完全版公開)
製作国・地域 アメリカ
上映時間 153分 (特別完全版203分)
監督 フランシス・フォード・コッポラ 
原作 ジョセフ・コンラッド 
脚本 ジョン・ミリアス 、フランシス・フォード・コッポラ 
音楽 カーマイン・コッポラ 、フランシス・フォード・コッポラ 
出演 マーロン・ブランド 、マーティン・シーン 、デニス・ホッパー 、ロバート・デュヴァル 、フレデリック・フォレスト 、アルバート・ホール 、サム・ボトムズ 、ラリー・フィッシュバーン 、G・D・スプラドリン 、ハリソン・フォード 、スコット・グレン

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『殺しの烙印』この映画を見て!

第157回『殺しの烙印』
Style_to_kill  今回紹介する作品は独特な映像美学をもつ鈴木清順監督の代表作にして、世界中に熱狂的なファンをもつカルト映画『殺しの烙印』です。
 ストーリー:「ご飯の炊ける匂いに興奮する日本でナンバー3の殺し屋・五郎。他の殺し屋に命を狙われながらも、仕事を確実にこなしていく。そんな五郎の前に謎めいた女・美沙子が現われ、4人の男の殺しを依頼する。3人は上手く殺せたが、最後の1人だけ運悪く失敗してしまう。そのために組織から抹殺されそうになる五郎。生き残るために単身組織に立ち向かうのだが、そこに伝説の殺し屋ナンバー1が立ちはだかる。」
 
 ストーリーだけ読むとハードボイルドタッチの硬派な作品のような印象を受けますが、実際に見てみるとシュールなコメディタッチの作品です。
 冒頭の主題歌からして摩訶不思議な歌詞で、聴く者に強烈なインパクトを与えます。そして映画のオープニング。主人公・五郎が女とバーに来て、バーテンダーにご飯を炊けと指示します。そしてパロマの炊飯器から立ち上がる湯気を嗅いで恍惚の表情を浮かべる五郎。主人公の理解不能な立ち振る舞いにいきなり面食らってしまいます。カッコいいけど、変態な主人公。冒頭から見る者を鈴木清順ワールドに一気に引きこみます。
 その後も意味不明なカットが突然挿入されたり、途中でいきなり話しが飛んだりと見る者を戸惑わす演出が次から次へと出てきます。この意味不明さを面白いと思うか、面白くないと思うかで、この映画の評価は真っ二つに分かれると思います。
 
 映画の前半は主人公の殺しの腕前がハードボイドタッチで描かれるのですが、その殺しのテクニックが非現実的でマンガチックであるので、見ていてカッコいいのにどこか笑いがこみあげてきます。
 また主人公の主人公が自宅で妻とセックスをするシーンが合間合間に挿入されるのですが、この描き方が過激というかコミカルというか・・・。当時にしてはかなり大胆な濡れ場だと思います。
 また謎の女・美沙子を演じる真理アンヌの無表情な演技はとても不気味であり、毎回雨に打たれて登場するシーンは強烈です。
 
 後半はナンバーワンの殺し屋との対決が描かれるのですが、この描き方がとてもシュールかつナンセンスです。
 主人公の前にいきなり現れ、お前を殺すと宣言して、主人公を追い詰めていくのですが、なぜか自ら主人公の家に乗り込んで、一緒に寝泊りをします。その上、ションベンは垂れ流すわ、主人公と腕を組んで食事に行くわ、やることなすこと変の一言です。
 
 この作品は余りにもシュールで理解不能な作品であった為に、鈴木監督が所属していた映画制作会社「日活」を解雇されたという逸話が残っているほどです。しかし、この映画は好きになれば何回も見返したくなる魅力があります。

 カルト映画好きな人は必見です!

製作年度 1967年
製作国・地域 日本
上映時間 91分
監督 鈴木清順 
脚本 具流八郎 
音楽 山本直純 
出演 宍戸錠 、小川万里子 、真理アンヌ 、南原宏治 、玉川伊佐男 、南廣 、久松洪介 、緑川宏 、荒井岩衛 、長弘 、伊豆見雄 、宮原徳平 、萩道子 、野村隆[俳優] 

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