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2007年4月8日 - 2007年4月14日

『ヒストリー・オブ・バイオレンス』この映画を見て!

第152回 『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
A_history_of_violence  今回紹介する映画は鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督がグラフィック・ノベルを原作に人間の暴力への衝動性を描くバイオレンス映画『ヒストリー・オブ・バイオレンス』です。 

 ストーリー:「アメリカの田舎町で飲食店を経営するトムは、自分の店に押し入った強盗を倒し、人々の命を救う。しかし、その勇敢な行動がマスメディアに取り上げられたことで、謎の男ボブが町にやってきてトムを脅しはじめる。ボブの出現により、妻と2人の子どもと幸せに暮らしていたトムの過去が、ゆっくり明らかになっていく・・・。」

 私の中でデヴィッド・クローネンバーグ 監督というと『ザ・フライ』や『ビデオ・ドローム』のようなドロドログチャグチャした感覚の映画か『裸のランチ』や『クラッシュ』のような難解な映画を撮る人という認識がありました。しかし、この作品は他の作品に比べるとすっきりとした作品に仕上がっています。しかし、彼らしいグロい演出も随所に健在で、主人公が暴力を振る場面の生々しい描写の数々は目を覆いたくなるほどです。
 
 この作品は過去の罪や暴力への衝動性から人は逃れることができるかという重いテーマを扱っています。過去を忘れ、新たな人生を歩もうとする主人公の前に現れる過去の自分。平和に生きたいにも関わらず、暴力を振るってしまう己の性。ヴィゴ・モーテンセンの抑えた演技が主人公の悲しみや葛藤を見事に表現していました。
 また主人公が突然激しい暴力を振るう姿は迫力満点でした。平凡な田舎の男が突然豹変して敵をなぎ倒していく場面は恐ろしくもあり、かっこよくもあり、見ている者に複雑な印象を与えます。
 暴力はいけないと分っていながらも、暴力の持つ効果に惹かれてしまう人間という生き物の本質がこの映画では描かれています。

 また私が印象的だったのが夫婦のセックスのリアルな描き方です。この作品では2回夫婦のセックスが描かれるのですが、主人公が暴力を振るう前と後とでのセックスの仕方の違いがとても印象に残りました。特に2回目の階段での激しいセックスシーンは主人公の暴力的な性衝動と妻に見捨てられたくないという思いが交錯した秀逸なシーンでした。

 ラストシーンも静謐でありながらとても印象的です。家族が夕食を取っているときに帰ってくる主人公。その時の家族の複雑な表情や仕草。父の2面性を知ってしまった家族の苦悩。この後、家族がどうなっていくのか深い余韻を残して終わります。

 日常性の中に突如現れる暴力という非日常性の恐怖とカタルシス。この作品は非日常的な世界に足を踏み込んだ人間たちの日常への憧れと戸惑いを描いた傑作です。

 この作品は1時間半という短い作品でありますが、密度のとても濃い作品です。万人受けはしないかもしれませんが、噛めば噛むほど味わえるスルメのような作品です。暴力に興味のある人はぜひ一度ご覧ください。

製作年度 2005年
製作国・地域 アメリカ/カナダ
上映時間 96分
監督 デヴィッド・クローネンバーグ 
原作 ジョン・ワグナー 、ヴィンス・ロック 
脚本 ジョシュ・オルソン 
音楽 ハワード・ショア 
出演 ヴィゴ・モーテンセン 、マリア・ベロ 、エド・ハリス 、ウィリアム・ハート 、アシュトン・ホームズ 、ハイディ・ヘイズ 、ピーター・マクニール 、スティーヴン・マクハティ 、グレッグ・ブリック 

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『ホビットの冒険』街を捨て書を読もう!

『ホビットの冒険』 著:J.R.R.トールキン 訳:瀬田 貞二 岩波書店
Hobitt  今回紹介する本はファンタジー小説の傑作『ホビットの冒険』です。
 この作品は『指輪物語』の前日譚にあたります。『指輪物語』は『ロード・オブ・ザ・リング』として映画化され、日本でも大ヒットをしました。この作品では映画の第一部冒頭で登場していたフロドの叔父にあたるビルボ・バギンズが主人公として活躍します。映画でもビルボが指輪を拾う経緯が少しだけ紹介されていましたが、この作品ではビルボがゴラムからどう指輪を奪ったかが詳細に描かれます。
 また『指輪物語』でおなじみの魔法使いガンダルフも登場し、ビルボの冒険の手助けをします。
 『ロード・オブ・ザ・リング』を見たことある人や『指輪物語』を読んだことある人がこの作品を読むと非常に楽しめる作品です。また児童文学として書かれているので、『指輪物語』と比べると大変読みやすいです。
 
 主人公のホビット「ビルボ・バギンズ」は魔法使いのガンダルフに誘われて、13人のドワーフ達と邪竜スマウグに奪われたドワーフの財宝を取り返すためにはなれ山を目指して冒険の旅に出ます。トロルやゴブリン、巨大な蜘蛛などに襲われながらも、何とか勇気と知恵を持って危機を乗り越えるビルボと仲間たちの姿が生き生きと描かれていきます。

 この作品は最初は奪われた宝物を取り返しに行くだけの単純なストーリーのように思うかもしれませんが、後半は予想外の展開になります。私も始めて読んだときは後半のスケールの大きな展開に釘付けになったものでした。宝を求めた結果、引き起こされる争いの悲しみがこの作品では描かれます。他の勧善懲悪のファンタジー小説にはない深みと面白さがこの作品にはあります。
 またこの作品で登場する姿を消すことができる指輪が、将来中つ国を揺るがすことになるとはビルボもガンダルフもきっと思っていなかったでしょうね。
 
 この作品も『指輪物語』と同じく映画化の話が持ち上がっています。しかし、『ロード・オブ。ザ・リング』を監督したピーター・ジャクソンは製作スタジオと対立しており、監督を降ろされました。今候補としては『スパイダーマン』のサム・ライミがあがっています。個人的にはピーター・ジャクソンに監督してほしいのですが、どうなるでしょうね。

 『ホビットの冒険』は子どもから大人まで誰が読んでも楽しく、味わい深いファンタジー小説の傑作です。ぜひ読んでみてください!

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