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2007年3月4日 - 2007年3月10日

『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』この映画を見て!

第149回『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』
スタンリー・キューブリック特集7
Drstrangelove  今回紹介する作品は米ソ冷戦下における核戦争の恐怖を鬼才キューブリック監督が徹底的に皮肉ったブラックコメディの傑作『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』です
 私がこの作品を出会ったのはキューブリック作品に熱中していた高校生の時でした。その時は核戦争という重いテーマを扱いながら、これだけ観客を笑わせ考えさせる映画を作れるキューブリック監督にとても尊敬したものでした。

 一人の狂った軍人によるソ連への核攻撃命令。それを何とか食い止めようとする米ソ首脳や軍人たち。しかし、混乱した状況の中で、結局世界の破滅は食い止められず、地球は放射能の灰で包まれるという悲惨なオチで幕を閉じます。
 この作品でキューブリックは情報が遮断された状況で冷静に判断できなくなる人間の脆さや人間が作り出したテクノロジーを人間が制御できなくなる滑稽さをクールに描きます。
その描き方はとてもデフォルメされているにも関わらず、どこか現実的な生々しさがあります。
 どんなに巨大で完璧なシステムを作っても、そのシステムを扱う人間のミスにより、人間に逆に多大なダメージを与えてしまうという悲劇。
 システムが巨大になればなるほど、各部門ごとの動きが分からず、自分は正しいことをしていると思っていたのに実は間違ったことをしてしまっているという恐怖。
 この映画で描かれていることは今現在でも起こりうる悲劇であり恐怖であると思います。 

 またこの作品はセックスを暗示させる映像やエピソードが随所に挿入されています。
 オープニングの空中給油シーンは男女のセックスをイメージさせますし、ラストのコング少佐がまたがる核爆弾はもろペニスを連想させます。
 出てくる登場人部もセックスに強い感心をもっており、ソ連に核攻撃の命令を出した軍人は自分の性欲の衰えがソ連による陰謀が原因だと思い込んでいますし、マッドサイエンティストのDr.ストレンジラブは地下のシェルターを男たちのハーレムにしようと提案します。
 ラストのDr.ストレンジラブ立って「歩けます」と言って終わるシーンの意味が分からないという人もいますが、あのシーンは男として俺はまだまだセックスができるということをアピールしているのです。
 だからタイトルにもあるように博士は心配するのを止めて水爆を愛するようになったのです。
 そのシーンの後に水爆が爆発するシーンが延々と流れますが、それは人類の滅亡を示唆しているだけでなく、戦争によって欲情した男たちの射精を意味しているのです。
 キューブリックはこの作品で男性の性的衝動と戦争の密接な関係を巧みに描いています。

 この作品の大きな見所はストーリーはもちろんのこと、ピーター・セラーズの一人三役の演技とキューブリックのクールな映像と演出です。
 ピーター・セラーズは『ピンク・パンサー』シリーズが有名な俳優ですが、ここでは英国大佐、大統領、マッド・サイエンティストという全くタイプの違う役を一人で見事にこなしています。特にドイツから来たマッド・サイエンティスト・Dr.ストレンジラブの演技は最高に面白いです。
 またキューブリックの演出はドキュメンタリータッチで淡々としているのですが、戦闘シーンはニュース映像を見ているかのような迫力がありますし、国防省作戦室のシーンは独特なセットが印象に残ります。音楽のセンスも素晴らしく、映画のエンディングに甘美な女性の声による「またお会いしましょう」という歌を流すという痛烈さ。さすがキューブリックだなと思える選曲です。

 ここまで完成度の高いブラックコメディの作品はなかなかお目にかかれないと思いますので、ぜひ多くの人に見て欲しいです! 

製作年度 1964年 
製作国・地域 イギリス/アメリカ
上映時間 93分
監督 スタンリー・キューブリック 
原作 ピーター・ジョージ 
脚本 スタンリー・キューブリック 、ピーター・ジョージ 、テリー・サザーン 
音楽 ローリー・ジョンソン 
出演 ピーター・セラーズ 、ジョージ・C・スコット 、スターリング・ヘイドン 、キーナン・ウィン 、スリム・ピケンズ 、ピーター・ブル 、トレイシー・リード 、ジェームズ・アール・ジョーンズ 

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『ゴッドファーザー』この映画を見て!

第148回『ゴッドファーザー』
Godfather_1  今回紹介する映画はイタリア系マフィアの一族の栄光と悲劇の歴史を描いた傑作『ゴッドファーザー』です。

 私がこの映画を始めてみたのは高校の時でしたが、陰影深い画面の中でドン・コルレオーネが威厳のある低い声で語り始める重厚なオープニングシーンから一気に映画の中の世界に引き込まれてしまいました。
 マフィアの家族愛の強い一面と抗争や策略という血なまぐさい一面を穏やかで静謐な描写と激しいバイオレンス描写と対比的に用いて描いていくストーリー展開は3時間という長い上映時間を全く感じさせませんでした。
 義理と人情を大切にしてきたヴィトからクールでビジネスライクな息子のマイケルに権力が移り変わっていく展開は高校生ながらに時の流れの無常といった感じたものでした。時代の流れの中でも自分の掟を貫こうとするヴィトと時代の流れに乗り何とか家族を守ろうとするマイケル。別にどちらが良い悪いとかいうわけでなく、時代は絶えず流れ変わっていくものであるということを強烈に感じました。

 また最初は穏やかで優しそうだったマイケルの表情が抗争に巻き込まれ権力を持つに従って冷たく険しい表情になっていく姿は見ていて切なさを感じたものでした。偉大な父をもつマイケルにかかる重圧や葛藤といったものが、後半の冷たい表情の中に垣間見れ、胸が締め付けられました。(2作目はマイケルのファミリーのドンとなった葛藤や苦悩が映画のより大きなテーマとなっていきます。)
 映画のラストシーンで妻ケイのマイケルを不安そうな表情で見つめるシーン。コルレオーネ家の行く末を暗示しているようで、とても印象的に残りました。
 
 ストーリーのことばかり語ってきましたが、映像・音楽・演技においても語るべき所の多い映画です。撮影監督ゴードン・ウィリスの陰影のある映像、ニーノ・ロータの哀愁溢れる音楽、重厚なセットにシチリア島の美しい風景、役者たちの迫真の演技、静と動のコントラストが印象的な編集と演出。全てにおいて完璧であり、芸術性と娯楽性が見事に融合された映画です。

 演技に関してはアカデミー賞を受賞したマーロン・ブランドはもちろんのこと 、マイケルを演じたアル・パチーノ 、血の気の多い長男ソニーを演じたジェームズ・カーン 、頼りない次男ジョン・カザール、いつも冷静沈着な弁護士トムを演じたロバート・デュヴァル、全ての役者が存在感があり、魅力的です。
 
 マローン・ブランドはこの映画が制作された当時は落ち目で、起死回生の為に何とか主役のヴィト役をつかもうと、かなりの工夫や努力をしたそうです。例えば渋みのある演技をするために口に中に綿を詰めて演技したそうです。そんな甲斐もあって、誰からも畏怖され、頼られるゴッドファーザーという役どころを見事に演じていました。

 この映画は激しいバイオレンス描写もありますが、家族の愛と絆、そして家族を守る父親の役割とは何かを描いた傑作です。見たことない人はぜひ見てください! 

製作年度 1972年 
製作国・地域 アメリカ
上映時間 175分
監督 フランシス・フォード・コッポラ 
原作 マリオ・プーゾ 
脚本 フランシス・フォード・コッポラ 、マリオ・プーゾ 
音楽 ニーノ・ロータ 
出演 マーロン・ブランド 、アル・パチーノ 、ジェームズ・カーン 、ジョン・カザール 、ダイアン・キートン 、ロバート・デュヴァル 、リチャード・カステラーノ 、タリア・シャイア 、スターリング・ヘイドン 、ジョン・マーリー

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