『ショート・カッツ』この映画を見て!
第187回『ショート・カッツ』
今回紹介する作品は鬼才ロバート・アルトマン監督がロサンゼルス郊外の住宅地に住む22人の日常を描く群像劇『ショート・カッツ』です。
本作品は日本では村上春樹が翻訳をしているアメリカの短編小説家レイモンド・カーヴァーの9つの短編と1つの詩を原作にしています。接点がないようでどこかで繋がりあっている22人の登場人物たちの悲喜交々の日常ドラマを同時並行で描いていきます。
公開当時はヴェネチア国際映画祭ではロバート・アルトマン監督が金獅子賞を受賞し、さらに主要キャスト22名に特別賞が授与されるなど高い評価を受けました。
ストーリー:「メド・フライと呼ばれる害虫を駆除するため、農薬散布のヘリコプターが市街地を飛び回るロサンゼルス郊外の住宅地。そんな住宅地で今日も様々なドラマが展開されていた。」
本作品は登場人物たちの平凡だけど満たされない日常生活の中で揺れ動く感情をドライかつシニカルに描いていきます。3時間という長丁場ですが、豪華俳優人たちの巧みな演技と監督のテンポのよい語り口で最後まで飽きることなく見ることが出来ます。
最初見た時は同時並行で語られている複数のストーリーを一体どうやって最後をまとめるのか気になったものですが、まさかあのようなオチを持ってくるとはやられました。
私はこのオチを見て、私は『マグノリア』という群像劇の映画を真っ先に思い出しました。『マグノリア』もロサンゼルス郊外を舞台に複雑に絡み合う10人近い登場人物たちの1日が同時並行で描かれており、ラストにあっと驚く展開があります。きっと『マグノリア』の監督は本作品に強い影響を受けたのでしょうね。
ただ本作品と『マグノリア』の大きな違いは登場人物たちの描き方です。『マグノリア』は登場人物の感情に寄り添う視点で描いていますが、本作品は登場人物たちをどこか突き放した視点から描いています。
また『マグノリア』ではラストの予想外のオチで登場人物たちの苦悩をリセットさせていましたが、本作品では予想外のオチも人生のイベントの一つに過ぎず、人間は苦悩を抱えて生き続けていくしかないという監督のシニカルな視線を強く感じました。
本作品は人間の中に潜む欲望と嫉妬、孤独の寂しさといったものを見ている者に強く感じさせてくる傑作です。3時間と長い作品ですが一度は見てみる価値があります。出来れば『マグノリア』とセットで見ることをお勧めします。DVDも販売されるのでこれを機会に是非ご覧ください!
製作国:アメリカ
製作年度: 1994年
上映時間: 189分
監督 ロバート・アルトマン
製作総指揮 スコット・ブッシュネル
原作 レイモンド・カーヴァー
脚本 ロバート・アルトマン 、フランク・バーハイト
音楽 ハル・ウィルナー
出演 アンディ・マクダウェル、ブルース・デイヴィソン、ジャック・レモン、 ジュリアン・ムーア 、マシュー・モディーン、アン・アーチャー、フレッド・ウォード、ジェニファー・ジェイソン・リー、クリス・ペン リリ・テイラー、ロバート・ダウニー・Jr、マデリーン・ストー、ティム・ロビンス
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