『インプリント ~ぼっけえ、きょうてえ~』この映画を見て!
第183回『インプリント ~ぼっけえ、きょうてえ~』 今回紹介する作品は日本一忙しい映画監督・三池崇史がアメリカ進出を果たした『インプリント ~ぼっけえ、きょうてえ~』です。
本作品は世界のホラー監督13人による米国のTVシリーズ「マスタ-ズ・オブ・ホラー/恐-1グランプリ」の一本として製作されましたが、過激な内容と描写に放映中止となって話題となりました。日本の地方の忌まわしい因習を扱った岩井志麻子の短編小説を原作としていますが、アメリカの視聴者向けにいくつかのアレンジがされています。原作には登場しないアメリカ人を主人公に据えて、日本の田舎の遊郭が舞台にもかかわらず全編セリフが英語となっています。
ストーリー:「明治時代の日本。アメリカ人ジャーナリストのクリスはかつて愛した小桃という女を探して全国の遊郭を転々としていた。そして、川の中の浮島の遊郭にたどり着く。そこで醜い顔をした女郎から小桃が死んだことを告げられる。クリスはなぜ小桃が死んだのか尋ねたところ、女朗は小桃の死の真相と自らのおぞましい過去を語り始める・・・。」
三池監督は低予算のVシネマから『妖怪大戦争』のような大作まで幅広く撮る人で、作品の当たり外れが大きいのですが、本作品は大当たりでした。三池監督の持ち味は型破りな演出と過激な暴力描写にあるのですが、本作品は彼の持ち味が最大限引き出されています。
本作品は遊郭での女郎に対する拷問シーンが過激で話題となっていたので注目していましたが、実際見てみると彼が監督した『オーディション』と『殺し屋1』に比べて言うほど過激ではありませんでした。(そう言いながら、女朗の歯茎や爪に畳針を刺すシーンは余りにも痛そうで目を背けてしまいましたが・・・)
むしろ私が過激と思ったのは昔の日本の田舎で行われていた堕胎を真正面から描いているところです。アメリカで放映禁止となったのも拷問シーンでなく堕胎のシーンが問題だったのだと思います。
家庭内暴力に堕胎そして近親相姦とこの上ない悲惨な日本の歴史の闇がこれでもかと描かれており、人によっては非常に嫌悪感を覚えるかと思います。私も見ていて怖いというよりつらくなる場面の方が多かったです。
ストーリーだけ追うと暗く陰惨な感じがしますが、映像は赤を基調にした妖しく煌びやかな色調で見る者を幻想的かつ妖艶な世界に引きずりこみます。特に遊郭のセットと女朗の衣装の美しさは格別です。
役者の演技も主人公のビリー・ドラゴを除いて大変素晴らしいです。特に醜い顔の女郎の二面性を巧みに演じた工藤夕貴、悲惨な拷問にかけられる小桃を体当たりで演じた美知枝、そして嬉しそうに拷問をする危ない遊郭の女主人を演じた原作者の岩井志麻子の圧倒的な存在感。女優陣の演技が光ります。それに比べるとビリー・ドラゴの演技はオーバーアクト気味で完全に浮いていました。
本作品は誰が見ても楽しめる作品ではありませんが、ホラー映画好きなら一度は見て損はないと思います。ただし痛いのが苦手な人はお勧めできません。
製作年度 2005年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 63分
監督 三池崇史
原作 岩井志麻子
脚本 天願大介
音楽 コージー・エンドウ・Jr.
出演 工藤夕貴 、ビリー・ドラゴ 、美知枝 、根岸季衣 、岩井志麻子
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 『トゥルー・ロマンス』この映画を見て!(2011.01.09)
- 『アンストッパブル』この映画を見て!(2011.01.09)
- 『スカーフェイス』この映画を見て!(2011.01.09)
- 『バトル・ロワイアル』この映画を見て!(2011.01.04)
- 『大地震』映画鑑賞日記(2011.01.03)
「この映画を見て!~お奨め映画紹介~」カテゴリの記事
- 『君の名は』この映画を見て!(2017.01.22)
- 『トゥルー・ロマンス』この映画を見て!(2011.01.09)
- 『アンストッパブル』この映画を見て!(2011.01.09)
- 『スカーフェイス』この映画を見て!(2011.01.09)
「ホラー・サスペンス映画」カテゴリの記事
- 『サバイバル・オブ・ザ・デッド』映画鑑賞日記(2010.12.28)
- 『恋する幼虫』この映画を見て!(2010.09.11)
- 『丑三つの村』この映画を見て!(2010.03.13)
- 『犬神の悪霊』この映画を見て!(2010.02.25)
- 『激突』この映画を見て!(2010.01.03)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント