「ディレクターズカットにはまる」私の映画遍歴10
映画には劇場公開されたバージョンと違うバージョンが存在するときがあります。
映画は芸術であると同時にビジネスです。その為、上映時間が長すぎたり、観客の試写での反応が悪かった時などは監督の意向と異なる編集が収益を重んじるプロデューサーやスタジオの判断でなされる時があります。
現場でスタッフやキャストを指揮して撮影してきた監督としては、自分が当初イメージしていた通りの作品を観客に見せられないのは悔しいものです。そこで映画がヒットした場合などは監督が自らの意向に沿った再編集を行い発表する場合があります。そのような作品をディレクターズカットと言います。
有名な作品としては『ブレードランナー』や『アビス』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』などがあります。
最近はビデオやDVDが普及して上映時間を気にせず見てもらえる環境が整ったこともあり、未公開シーンを追加した劇場公開版より長いディレクターズカット版が販売される作品が増えてきています。
ディレクターズカット版に関しては劇場公開版よりストーリーの説明不足が補われたり、登場人物の描写に深みが増していることが多く、より深く作品を味合うことができます。またディレクターズカット版を見ると、監督の作品に対する思いやこだわりを感じることもでき、映画好きにはたまりません。
その反面、ディレクターズカット版は劇場公開版よりテンポが悪くなり面白くなくなる場合もあります。その良い例が『ニューシネマパラダイス』です。オリジナルが傑作だっただけに、ディレクターズカット版のテンポの悪さにはイライラしました。
また、新しく追加撮影された映像やCGで手直した映像がオリジナルが持っていた雰囲気を壊してしまう場合もあります。『スターウォーズ』シリーズや『エクソシスト』などの追加映像がその際たる例です。アナログの時代の映像の良さがデジタル加工された映像のせいで台無しになっていました。
映画が好きな人にとって、劇場では未公開のシーンが追加されているディレクターズカット版が鑑賞できる機会があるのは嬉しい限りです。
最後に私のお薦めのディレクターズカット作品を5作品紹介します。
・『ロード・オブ・ザ・リング』スペシャル・エクステンデッド・エディション・シリーズ この作品は劇場公開版も3時間近くある大作でしたが、ディレクターズカット版はさらに30分~60分近い未公開映像が追加されています。その分、上映時間も長くなっているのですが、劇場公開版よりもストーリーが分かりやすくなっていますし、中つ国の世界をより深く味わうことができます。
・『アビス』完全版 この作品は劇場公開版とディレクターズカット版で見た後の印象が全く違うという珍しい作品です。劇場公開版のラストは海底版『未知との遭遇』といった感じでしたが、ディレクターズカット版のラストは反核のメッセージが前面に押し出される仕上がりとなっています。 また、劇場版ではカットされた大津波のシーンも追加されているのも大きな見所の1つです。
・『地獄の黙示録』完全版 伝説のベトナム戦争映画『地獄の黙示録』。この作品も2001年に50分近い未公開シーンが追加された完全版が公開されました。オリジナルに比べて、ストーリーや監督の描こうとしたテーマが理解しやすくなっています。
・『アマデウス』完全版 モーツァルトの生涯を映画化した本作品。20分の未公開シーンが追加されたことで人物描写に深みが増しています。特にモーツァルトの妻・コンスタンツェとサリエリとの微妙な関係の理由が理解しやすくなっています。
・『ブレードランナー』最終版 ディレクターズカット作品の先駆けともいえる本作品。劇場公開版にあったナレーションを一切排し、わずかな追加シーンとラストシーンをカットすることでハードボイルドSFとして引き締まった仕上がりになっています。今年の秋にはさらに追加映像と再編集がなされたファイナル・カットが公開されることも決定されており、今から楽しみです。
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