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『グエムル-漢江の怪物』映画鑑賞日記

Guemuru  今回紹介する作品は韓国で昨年記録的な大ヒットをした怪獣映画『グエムル-漢江の怪物』です。
 私は小さい時から怪獣映画好きで『ゴジラ』を筆頭に古今東西数多くの作品を見てきましたが、本作品はかなり異色の怪獣映画した。

 ストーリー:「ソウルを流れる大河・漢江の河川敷でスルメイカを売るパク一家。店の主人のカンドゥはある日、河から突然現れた謎の怪物グエムルに遭遇する。グエムルは河川敷の人々を襲撃し、カンドゥの娘ヒョンソを連れ去ってしまう。
 その後、グエムルが謎のウィルスに感染していることが判明。パク一家も病院に隔離されてしまう。そんな中、カンドゥの携帯電話に娘から助けて欲しいとの連絡が入る。カンドゥを始めとしたパク一家は病院を脱出し、娘の救出を試みるが……。」

 私はこの作品を実際に見るまで、ソウルの街をグエムルが暴れ周り、軍や科学者が闘いを挑むという典型的な怪獣映画のストーリーを想像していました。しかし、実際に見てみると軍隊や科学者はほとんど登場せず、娘を奪われた一家が怪獣に闘いを挑むという予想外のストーリーに戸惑ってしまいました。
 また思った以上にユーモラスで笑えるシーンや国家権力やアメリカ軍を強烈にシニカルに描いているシーンが多いのも特徴で、緊迫感のあるシリアスな展開を期待していた私としては肩透かしを食らったものでした。 
 主人公の描写も終始変わることなく、何をしてもダメ親父のままであるのも、他の作品と違うところです。ハリウッドなら主人公の家族が変わっていき、最後はスーパーマンのごとく活躍するところですが、この作品は最後まで娘の救出が上手くいかない家族の苛立ちや非力さを見事に描いています。
 良い意味でも悪い意味でも本作品のストーリーには裏切られました。この作品はどこにでもあるような普通の家族が突然巻き込まれた災難の中で右往左往しながら、自らの家族を守ろうとするサバイバル映画です。この作品が韓国らしいのは政府やアメリカ軍が全く役に立っていないところです。日韓併合や朝鮮戦争、軍事政権など数々の悲劇の中を自力で潜り抜けた民衆たちのしたたかさと反権力の意識が垣間見れる作品です。

 グエムルの映像も『ロード・オブ・ザ・リング』のVFXで有名になったWETAが担当しただけのことはあり、大変素晴らしい仕上がりとなっています。グエムルの造形も独特でインパクト大です。一体何の生き物が変異を起こしてあのような怪物となったのかとても気になりました。
 映像的に一番の見所は映画の冒頭の河川敷でグエムルが暴れるシーンです。真昼間の平和な河川敷を突然襲う悪夢のような非日常的災難。このシーンは緊迫感と逃げ惑う人々の恐怖が伝わってくる秀逸なパニックシーンだと思います。

 映像・ストーリー共に大変見ごたえがあり、決して駄作ではありません。ただ個人的に残念に思ったところが幾つかありました。
 家族の絆を描くのがこの作品のテーマなので仕方ないかもしれませんが、怪獣の生態がイマイチ分かりませんでした。また怪獣に対して国家権力やアメリカ軍が何も手出しをしないのも現実感に欠けていたように思います。出来れば、後半家族と軍隊と怪獣の三つ巴の闘いとかになればより面白いと思ってしまいました。
 中盤以降は河川敷と下水道が主な舞台となるのですが、映像的にイマイチ面白みに欠けていました。また、ストーリーも家族の悶々とした姿が中盤からメインとなるのですが、テンポが悪くダラダラとした印象を受けました。
 
 この作品は怪獣映画としてみると異色な作品ですが、決して退屈な作品ではありません。一度は見る価値がある作品だと思います。 

製作年度 2006年
製作国・地域 韓国
上映時間 120分
監督 ポン・ジュノ 
製作総指揮 チョ・ヨンベ 、キム・ウテク 、ジョン・テソン 
脚本 ポン・ジュノ 、ハ・ジョンウォン 、パク・チョルヒョン 
音楽 イ・ビョンウ 
出演 ソン・ガンホ 、ピョン・ヒボン 、パク・ヘイル 、ペ・ドゥナ 、コ・アソン 、イ・ジェウン 、イ・ドンホ 、ヨン・ジェムン 、キム・レハ 、パク・ノシク 、イム・ピルソン 

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