『耳をすませば』この映画を見て!
第172回『耳をすませば』
今回紹介する作品はスタジオジブリが製作した青春映画の傑作『耳をすませば』です。
柊あおいの同名漫画を原作にした本作品。宮崎駿が脚本と絵コンテを手がけ、スタジオジブリの数多くの作品で作画監督を務めた近藤喜文が監督を手がけました。
宮崎さんは以前から少女漫画の映画化を検討していたそうです。しかし、なかなか映画化できそうな原作にめぐりあえないでいたそうです。
そんな中、「りぼん」に連載されていた原作をたまたま読む機会があり、非常に好印象を持ったそうです。そして、原作のピュアな部分を大切にしながら、現代の閉塞した時代の中で豊かに生きることは何かを問う作品を製作することを決めたそうです。
ストーリー:「両親と大学生の姉と東京近郊の団地に住む月島雫は読書好きの中学3年の女の子。夏休みは図書館に通い読書三昧だったが、自分の読む本を全て先に借りて読んでいる「天沢聖司」の名前に気がつく。雫は天沢聖司について調べ、実は同級生だったことを知る。
そんなある日、図書館への道で変な猫を見つけ、その猫を追いかける。猫に導かれ、丘の上にある小さなアンティークショップ「地球屋」へたどり着く。雫は店の主人である老人・西司朗と出会う。西老人は聖司の祖父で、彼は地球屋のアトリエでヴァイオリンを作っていた。聖司はヴァイオリン職人になるために中学卒業後はイタリアへ留学したいという夢を持っていた。聖司に比べて確固たる夢をもたない雫は自分のこれからについて悩み始める。そして、雫も自分を試そうと自分の夢を求め、小説を書き始める。」
私がこの作品に出会ったのは高校3年生の夏休みでした。ちょうど私も自分の進路や将来について悩んでいた時期で、自分の夢に向かって真直ぐに進もうとする映画の主人公たちに強い影響を受けたものでした。
特に何がしたいわけでなく、親や教師の言われるままだった当時の自分。そんな自分に「人生これで良いのか?」と人生を見つめ直す機会を与えてくれました。そして、高校卒業後は自分の夢や希望に基づいた人生の選択することができました。私はこの作品に出会ったおかげで今後悔のない人生を送れているといっても過言ではありません。
この作品の脚本を手がけた宮崎さんは恋愛の駆け引きや内面の揺れ動く感情を描く恋愛ドラマでなく、素直に恋愛感情を表現するラブロマンスを描きたかったそうです。そんな宮崎さんの思いが反映されたストーリーは見ている側が恥ずかしくなるほどとてもストレートな恋愛ドラマが展開されていきます。特にラストシーンの聖司が雫に言うセリフは直球過ぎて始めて見た時は驚きましたが、何回も見返す内にあのセリフに清清しさを感じるようになりました。この作品を見るとお互いが響きあい成長しあう恋愛って素晴らしいなってしみじみ思います。
またこの作品は恋愛ドラマの側面と共に、夢を追う少年・少女たちの現実と格闘する姿が熱く描かれます。ヴァイオリン職人を目指す聖司。そんな彼の姿に影響され、小説家を目指し始める雫。二人の夢に向かってひたむきに努力する姿は今見ても心打たれるものがあります。厳しい現実にぶつかりながらも夢を持ち続けることの素晴らしさや大切さをこの映画は見る者に思い出させてくれます。
原作はもっとほんわかした恋愛ドラマなのですが、宮崎さんはそれを見事に改変して、熱い青春ドラマに仕上げています。
この作品で初めて監督を手がけた近藤喜文さんは普段見慣れている日常の風景や登場する人物たちの何気ない日常の仕草を丁寧に描くことにこだわったそうです。そんな監督の日常へのこだわりが宮崎さんの理想が反映されたストーリーにリアリティを与えたと思います。
(近藤喜文さんはこの作品を監督した3年後に47歳の若さで亡くなられました。スタジオジブリの中では宮崎監督や高畑監督の跡を継ぐ監督と期待されていただけに残念です。)
この作品は音楽も素晴らしく、特に主題歌のカントリーロードは映画のテーマにぴったりあっており、映画を見た後に思わず口ずさんでしまうほどです。
この作品は夢を追い求めることの素晴らしさと厳しさを見る者に教えてくれます。自分の人生を見失いかけたとき、将来について悩んだときはぜひこの作品を見てください!
製作年度 1995年
製作国・地域 日本
上映時間 111分
監督 近藤喜文
製作総指揮 徳間康快
原作 柊あおい
脚本 宮崎駿
音楽 野見祐二
出演もしくは声の出演 本名陽子 、高橋一生 、小林桂樹 、露口茂 、立花隆 、室井滋 、山下容莉枝 、佳山麻衣子 、中島義実 、飯塚真弓 、高山みなみ 、岸部シロー 、
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