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2007年8月

『耳をすませば』この映画を見て!

第172回『耳をすませば』
Whisper_of_the_heart  今回紹介する作品はスタジオジブリが製作した青春映画の傑作『耳をすませば』です。
 柊あおいの同名漫画を原作にした本作品。宮崎駿が脚本と絵コンテを手がけ、スタジオジブリの数多くの作品で作画監督を務めた近藤喜文が監督を手がけました。
 
 宮崎さんは以前から少女漫画の映画化を検討していたそうです。しかし、なかなか映画化できそうな原作にめぐりあえないでいたそうです。
 そんな中、「りぼん」に連載されていた原作をたまたま読む機会があり、非常に好印象を持ったそうです。そして、原作のピュアな部分を大切にしながら、現代の閉塞した時代の中で豊かに生きることは何かを問う作品を製作することを決めたそうです。
 
 ストーリー:「両親と大学生の姉と東京近郊の団地に住む月島雫は読書好きの中学3年の女の子。夏休みは図書館に通い読書三昧だったが、自分の読む本を全て先に借りて読んでいる「天沢聖司」の名前に気がつく。雫は天沢聖司について調べ、実は同級生だったことを知る。
 そんなある日、図書館への道で変な猫を見つけ、その猫を追いかける。猫に導かれ、丘の上にある小さなアンティークショップ「地球屋」へたどり着く。雫は店の主人である老人・西司朗と出会う。西老人は聖司の祖父で、彼は地球屋のアトリエでヴァイオリンを作っていた。聖司はヴァイオリン職人になるために中学卒業後はイタリアへ留学したいという夢を持っていた。聖司に比べて確固たる夢をもたない雫は自分のこれからについて悩み始める。そして、雫も自分を試そうと自分の夢を求め、小説を書き始める。」
 
 私がこの作品に出会ったのは高校3年生の夏休みでした。ちょうど私も自分の進路や将来について悩んでいた時期で、自分の夢に向かって真直ぐに進もうとする映画の主人公たちに強い影響を受けたものでした。
 特に何がしたいわけでなく、親や教師の言われるままだった当時の自分。そんな自分に「人生これで良いのか?」と人生を見つめ直す機会を与えてくれました。そして、高校卒業後は自分の夢や希望に基づいた人生の選択することができました。私はこの作品に出会ったおかげで今後悔のない人生を送れているといっても過言ではありません。

 この作品の脚本を手がけた宮崎さんは恋愛の駆け引きや内面の揺れ動く感情を描く恋愛ドラマでなく、素直に恋愛感情を表現するラブロマンスを描きたかったそうです。そんな宮崎さんの思いが反映されたストーリーは見ている側が恥ずかしくなるほどとてもストレートな恋愛ドラマが展開されていきます。特にラストシーンの聖司が雫に言うセリフは直球過ぎて始めて見た時は驚きましたが、何回も見返す内にあのセリフに清清しさを感じるようになりました。この作品を見るとお互いが響きあい成長しあう恋愛って素晴らしいなってしみじみ思います。
 またこの作品は恋愛ドラマの側面と共に、夢を追う少年・少女たちの現実と格闘する姿が熱く描かれます。ヴァイオリン職人を目指す聖司。そんな彼の姿に影響され、小説家を目指し始める雫。二人の夢に向かってひたむきに努力する姿は今見ても心打たれるものがあります。厳しい現実にぶつかりながらも夢を持ち続けることの素晴らしさや大切さをこの映画は見る者に思い出させてくれます。
 原作はもっとほんわかした恋愛ドラマなのですが、宮崎さんはそれを見事に改変して、熱い青春ドラマに仕上げています。 

 この作品で初めて監督を手がけた近藤喜文さんは普段見慣れている日常の風景や登場する人物たちの何気ない日常の仕草を丁寧に描くことにこだわったそうです。そんな監督の日常へのこだわりが宮崎さんの理想が反映されたストーリーにリアリティを与えたと思います。
(近藤喜文さんはこの作品を監督した3年後に47歳の若さで亡くなられました。スタジオジブリの中では宮崎監督や高畑監督の跡を継ぐ監督と期待されていただけに残念です。)

 この作品は音楽も素晴らしく、特に主題歌のカントリーロードは映画のテーマにぴったりあっており、映画を見た後に思わず口ずさんでしまうほどです。

 この作品は夢を追い求めることの素晴らしさと厳しさを見る者に教えてくれます。自分の人生を見失いかけたとき、将来について悩んだときはぜひこの作品を見てください!  

製作年度 1995年
製作国・地域 日本
上映時間 111分
監督 近藤喜文 
製作総指揮 徳間康快 
原作 柊あおい 
脚本 宮崎駿 
音楽 野見祐二 
出演もしくは声の出演 本名陽子 、高橋一生 、小林桂樹 、露口茂 、立花隆 、室井滋 、山下容莉枝 、佳山麻衣子 、中島義実 、飯塚真弓 、高山みなみ 、岸部シロー 、

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『キャリー』この映画を見て!

第171回『キャリー』
Carrie  今回紹介する作品は超能力を持った少女の悲劇を描いた青春ホラー映画の傑作『キャリー』です。
 ホラー小説の第一人者であるスティーヴン・キングの同名長編小説を映画化した本作品。原作者のキング自身も大変気に入っており、「私の作品の中でもっとも忠実に映像化されている」と絶賛しています。
 監督は独自の映像表現で多くのファンを魅了するブライアン・デ・パルマが担当。本作品でもスローモーションや分割画面、滑らかな移動撮影などデ・パルマらしい映像表現が満載となっています。個人的には彼の監督作の中でこの作品が一番完成度は高いと思います。

 ストーリー:「狂信的なキリスト教信者である母を持つ女子高生キャリーは内気で冴えない容姿の為に学校でいじめられていた。そんなある日、体育の授業後のシャワーを浴びている最中に初潮を経験してパニックを起こす。キャリーは母から月経について今まで教えてもらったことがなかった為に病気と勘違いしていた。クラスメートの多くはパニックになったキャリーを見てバカにする。自宅でも初潮になったことを母から激しく責められるキャリー。
 そんな彼女を励まそうとする友人スーはプロムパーティーに誘おうとする。最初は渋っていたキャリーだが、次第にパーティに行くことに乗り気になる。
 その頃、キャリーをいじめたクラスメートたちは先生からプロムパーティーの出席禁止を言い渡される。キャリーのせいで出席できないと逆恨みをしたクラスメートたちは彼女にパーティで恥をかかそうと恐ろしい計画を立てる。
 パーティー当日、反対する母を押し切って出席するキャリー。クィーンにも選ばれ有頂天になるキャリー。しかし、クラスメートが仕組んだ恐ろしい罠によって、舞台に立ったキャリーに悲劇が訪れる。そして、それはクラスメートたちにとって地獄絵図の始まりだった・・・。」
 
Carrie2  私はこの作品を実際に見るまではポスターだけ見て血まみれの陰惨なホラー映画だと思っていました。しかし、映画を見た後はショッキングなシーンよりも主人公の辿る哀しい運命が記憶に残ったものでした。内気で冴えない女の子が自分の殻を破ろうパーティーに行く姿は見ていて応援したくなりましたし、パーティーでの幸せそうな姿は見ていて、ここえで映画が終わって欲しいとさえ思ってしまいました。
 
 映画のラストは阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されるのですが、そのようなシーンも怖いというよりは切ないものを強く感じてしまいました。特に傷ついた心を慰めてもらおうと母の側に行ったにも関わらず、裏切られるシーンは見ていて辛いものがありました。

 この作品で主人公のキャリーを演じたシシー・スペイセクと狂信的な母を演じたパイパー・ローリーは迫真の演技でアカデミー賞にノミネートされました。悲劇のヒロイン役を見事に演じきったシシー・スペイセクも印象的でしたが、何といってもパイパー・ローリーの圧倒的な存在感が印象に残ります。あと、若かりし頃のジョン・トラヴォルタも登場していますので、ファンの人はお見逃しなく!

 私の中でこの作品はホラー映画というより哀しい青春映画だと思います。ホラー映画が苦手な人にも是非見てもらいたいです。 

製作年度 1976年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 98分
監督 ブライアン・デ・パルマ 
原作 スティーヴン・キング 
脚本 ローレンス・D・コーエン 
音楽 ピノ・ドナッジオ 
出演 シシー・スペイセク 、パイパー・ローリー 、ウィリアム・カット 、ジョン・トラヴォルタ 、エイミー・アーヴィング 、ナンシー・アレン 、ベティ・バックリー 、P・J・ソールズ 、シドニー・ラシック 、プリシラ・ポインター 

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「スティーブン・スピルバーグ」私の愛する映画監督6

 今回はハリウッドきってのヒットメーカー「スティーブン・スピルバーグ」の魅力について語りたいと思います。

Steven_spielberg・スティーブン・スピルバーグ監督の歩み
(ヒットメーカーとなるまで)
 スティーブン・スピルバーグは1947年にオハイオ州で生まれました。小さい時から映画が好きで、8ミリカメラを使って映画をを撮っていたそうです。そして16歳で「ファイヤーライト」という長編映画を制作して、地元の映画館で一晩だけ興行したそうです。その後、ロサンジェルスに引っ越したスピルバーグはユニバーサル・スタジオに遊びに行っては、映画スタジオに忍び込み、ヒッチコック監督の撮影現場を見学していたそうです。そして、大学の時に短編映画『アンブリン』を監督。この映画がユニバーサルテレビの副社長に認められ、テレビドラマの監督に異例の若さで抜擢されます。スピルバーグは日本でも有名な『刑事コロンボ』など数十本のドラマを手がけます。そして、スピルバーグの名を一躍世界中に知らしめたテレビムービー『激突』を監督。このテレビムービーはアメリカで高視聴率を獲得、海外では劇場公開され、興行的にも成功を収めます。
 この作品の後、ハリウッドデビュー作品となる『続・激突!カー・ジャック』を監督。そして、次にスピルバーグの初の大ヒットとなる『ジョーズ』を監督。この作品でスピルバーグは一躍ハリウッドのヒットメーカーとなります。
 その後、脚本も手がけた『未知との遭遇』や『スターウォーズ』のジョージ・ルーカスと手を組んだ『レイダース/失われたアーク』などハリウッドの興行収入を塗り変える大ヒット作を連発します。そして1982年にはスピルバーグ監督最大のヒット作となる『E.T.』を発表。ハリウッドにおいて一番稼ぐ映画監督となります。

(80年代混迷の時代)
 ハリウッドきってのヒットメーカーとなったスピルバーグ監督は単なる娯楽作品だけでなく、文芸作品も手がけるようになります。人種差別を取り上げた『カラーパープル』や第2次世界大戦を取り上げた『大陽の帝国』などを監督します。しかし、批評家からの評価も悪く、スピルバーグ監督に人間ドラマは描けないというレッテルを貼られます。その後、ピーターパンを題材にした『フック』を監督しますが、制作費の割りに興行収入が低く、スピルバーグ監督にとって低迷の時期でした。

(90年代復活の時代)
 1993年はスピルバーグ監督にとって大きな転換点となる年となりました。リアルな恐竜が暴れまわる『ジュラシック・パーク』とホロコーストの恐怖を描く『シンドラーのリスト』を監督。『ジュラシック・パーク』はスピルバーグ監督久々の大ヒット作となり、『シンドラーのリスト』は念願のアカデミー監督賞・作品賞をもたらしました。その後もコンスタントに作品を発表。そして1997年に第2次世界大戦を描いた『プライベート・ライアン』にてアカデミー監督賞を再度受賞。名実と共にハリウッド一の監督となります。

(21世紀挑戦の時代)
 21世紀に入ってもスピルバーグ監督の勢い衰えることなく次々と作品を発表。キューブリック監督が構想していた『A.I.』やテロの悲劇を描く『ミュンヘン』など話題作・問題作を次々と手がけます。また、それと同時に『マイノリティ・リポート』や『宇宙戦争』などの娯楽作品も手がけヒットさせています。

・スティーブン・スピルバーグ監督作品の特徴
 彼の作品を語るときに欠かせない5つの特徴があります。

①映像革命
 彼の作品は常に今まで誰も見た事がないような世界を描き、観客に驚きを与えます。巨大なUFO、太古の恐竜、異星人、近未来世界。常に最新の映像技術を取り入れ、映像技術の進歩に貢献を与えています。
 また、映像技術だけでなく、撮影方法においても常に工夫を凝らし、観客を映画に引き込みます。『ジョーズ』のサメ目線の映像、『シンドラーのリスト』や『プライベートライアン』のドキュメンタリータッチの映像などインパクトのある映像は他の映画監督にも大きな影響を与えています。

②ユダヤ人としてのアイデンティティ
 彼はユダヤ人であるため、作品の多くにユダヤ人としての意識が反映される描写があります。『シンドラーのリスト』や『ミュンヘン』などはユダヤ人問題を直接扱った作品はもちろんのこと、『インディー・ジョーンズ』シリーズでナチスが悪者として登場することや『A.I.』におけるホロコーストを彷彿させるロボット虐殺のシーンなども監督のユダヤ人としての意識が強く感じられます。

③過激な暴力描写
 彼の作品はしばしば過激な暴力描写が見られます。娯楽作品においては常にユーモアと暴力が表裏一体となったシーンが数多く見られます。また戦争の悲惨さをテーマにした『シンドラーのリスト』『プライベートライアン』などでは目を背けたくなるほど残酷な描写の連続です。
 彼の暴力描写に対するこだわりは暴力が持つ恐怖とカタルシスの両面を熟知した上でのことだと私は思います。日常的空間における暴力に対する恐怖と非日常的空間における暴力のストレス発散機能。その両面を上手く使い分けて描写しているところが、彼の映画の特徴だと思います。

④親子の絆
 彼は10代のときに両親が離婚していることもあり、デビュー作「続・激突!カー・ジャック」から『ミュンヘン』まで常に親と子の関係が描かれます。70年代~80年代にかけては両親の関係がギクシャクしている家庭や母と子の絆を描いた作品がしばしば見られました。
 しかし、90年代~最近の作品にかけては父と子の絆を描いた作品が目立ちます。監督の子どもを持つ父親としての意識が強くなってきたのかなと思います。

⑤ジョン・ウィリアムズ
 彼の作品を語る上でジョン・ウィリアムズの音楽を外すわけにはいけません。『カラーパープル』と『トワイライト・ゾーン』を除いて、全ての音楽を担当しています。ジョン・ウィリアムズのブラスを巧みに用いた音楽は親しみやすいメロディーラインで多くの観客を虜にします。また、それだけでなく映像に更なる臨場感を与えてくれます。

 スピルバーグ監督の作品は映画ファンに常に映画を見る楽しみと喜びを与えてくれます。今後も彼の監督する作品からは目が離せません。

(フィルモグラフィー)
1974年「続・激突!カー・ジャック」
1975年「ジョーズ」
1977年「未知との遭遇」
1979年「1941」
1980年「未知との遭遇・特別編
1981年「レイダース/失われたアーク」
1982年「E.T.」
1983年「トワイライトゾーン」(第2話・「真夜中の遊戯」)
1984年「インディ・ジョーンズ魔宮の伝説」
1985年「カラーパープル」
1987年「太陽の帝国」
1989年「オールウェイズ」「インディジョーンズ最後の聖戦」
1991年「フック」
1993年「ジュラシック・パーク」 「シンドラーのリスト」
1997年「アミスタッド」「ロスト・ワールド ジュラシック・パーク」
1998年「プライベート・ライアン」
2001年「A.I.」
2002年「マイノリティ・リポート」「キャッチ・ミー イフ・ユー・キャン」
2004年「ターミナル」
2005年「宇宙戦争」「ミュンヘン
2008年「インディジョーンズ4」

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劇場初公開版スターウォーズを見る!

Star_wars_trilogy  アマゾンで限定発売されていた「スター・ウォーズ トリロジー リミテッド・エディション 30周年記念特製缶BOX」が自宅に届き、特典映像として収録された劇場初公開版『スターウォーズ』3部作を久しぶりに見返す機会を得ました。
 DVDや最近テレビで放映されている『スターウォーズ旧3部作』は97年に製作された特別編に基づいたものであり、劇場初公開のバージョンに大幅に手直しが加えられたものです。また映像の差し替えや追加シーンもいくつかあります。特に「新たなる希望」と「ジェダイの帰還」は変更している場面が多く、昔からのスターウォーズファンからは雰囲気を壊すと賛否両論がありました。私も「ジェダイの帰還」のラストの変更は微妙だなと思いました。
 私も以前は劇場初公開版のビデオを持っていたのですが、手放して以来、特別編しか見る機会がなく残念に思っていました。
 そんな中、昨年に劇場初公開版が期間限定でDVDとして発売されました。久しぶりに手が加えられていないスターウォーズを見たのですが、今見ても全然違和感がありませんでした。特別編で追加された映像も別になくても困りません。また、久しぶりに昔見た「ジェダイの帰還」のラストシーンを見ることができて感無量でした。やはり旧スターウォーズ3部作のラストはイウォーク族の祭りで終わらないとしっくりきませんね。
 ただ残念なのが、画質が悪い点です。オリジナルのネガでなく、以前発売されていたビデオからの流用なの大画面で見ると荒いです。できれば高画質りマスターで発売してほしかったです。

あと、日本版のみの特典である劇場公開時の吹き替えと字幕の収録は良かったです。さらに欲を言うとテレビ初公開時の吹き替えのバージョンも入れてほしかったです。私の中でルーク:水島裕、ハンソロ:村井国夫、レイア姫:島本須美が一番しっくりきます。

 特別編のスターウォーズしか知らない人は劇場初公開版も見てほしいです!

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「SF映画にはまる」私の映画遍歴12

 私は昔からSFの小説や映画が好きでした。SFという言葉はサイエンス・フィクションの略で、日本語に訳すと「空想科学小説」という意味になります。SFの厳密な定義に関してはSFファンの間でも様々な意見があります。「現代達成されていない科学技術」や「現代の科学が反映された世界」を扱えばSFだという意見もあれば、科学は関係なく未来や宇宙を題材に扱えばSFという意見もあります。個人的にはSFとは現代の人類が現実に未だ遭遇したことがない世界を描いた作品だと定義しています。
 私がSF映画にはまるきっかけとなった作品は『ブレードランナー』と『2001年宇宙の旅』でした。両作品とも中学生のときに見たのですが、これらの作品を始めてみた時は大変衝撃を受けました。人類の未来の世界を緻密に描いた映像と人間とは何かを問いかける深遠なストーリーに感銘したものでした。その後も洋画、邦画問わず数多くのSF映画を見たものでした。これは凄いと思う作品もあれば、くらだないと思う作品もありましたが、SF映画は私の青春時代を語る上で外せないものとなりました。
 SF映画のテーマは分類すると大体に5つに分かれます。

①人類と宇宙をテーマにした作品
 このテーマの作品として有名なのは『2001年宇宙の旅』や『未知との遭遇』です。この手の作品では人間の宇宙や地球外生命体に対する憧れと恐れが描かれることが多いです。

②人類の未来をテーマにした作品
 このテーマの作品として有名なのは『ブレードランナー』や『マトリックス』です。この手の作品では明るい未来を描く作品よりも暗い未来を描く作品が多いです。現代人の環境破壊や核戦争など未来に対する不安が反映されているのでしょう。
 また、この手の作品では人類とロボットやA.Iとの関係を描く作品も多いです。人間と人間が作り出した思考するモノとの共存を問う作品や思考するモノを通して人間の本質は何かを問う作品が多いです。

③タイムスリップをテーマにした作品
 このテーマの作品として有名なのは何といっても『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だと思います。この手の作品では人間のタイムトラベルに対する憧れが強く反映されています。

④バイオテクノロジーをテーマにした作品
 このテーマの作品として有名なのは『ジュラシックパーク』や『アンドロメダ』です。この手の作品では人類の繁栄の為のテクノロジーが人類を危機に陥れるというような科学万能の現代に警鐘を鳴らすストーリーの作品が多いです。

⑤地球とは別の銀河系をテーマにした作品
 このテーマの作品として有名なのは『スターウォーズ』や『砂の惑星』などです。人類よりもはるかに高度な文明を持った世界を舞台に繰り広げられるスケールの大きなストーリーは見る者を魅了します。

*私のお薦めSF映画ベスト5

Andromeda『アンドロメダ』
 未知の病原体の謎を解明する科学者たちの姿を地道に描いたサイエンス・フィクションの傑作です。派手なシーンもなければ、有名な役者も登場しませんが、緊張感のあるストーリーで最後まで引っ張ります。
 

ディレクターズカット ブレードランナー 最終版『ブレードランナー』
 近未来を描いた作品でこの作品を超えるものは未だ出ていないと思います。混沌とした2029年のロサンゼルスの描写は何回見ても圧巻です。ストーリーもアンドロイドの哀しい運命に最後はいつも泣かされます。
 

2001『2001年宇宙の旅』
 この作品を超えるSF映画は登場するのでしょうか?60年代に製作された作品でありながら、映像・音楽・ストーリー全てが現代見ても遜色ありません。人類の進化の謎、地球外生命体との接触、人類とA.Iとの攻防とSF映画の面白さが凝縮された作品です。

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊『攻殻機動隊』
 電脳化された近未来社会を舞台にした本作品。緻密な映像もさることながら、人間とは何かを深く考えさせられるストーリーに強く惹かれました。



未知との遭遇【ファイナル・カット版】『未知との遭遇』
 人類の地球外知的生命体との接触を描いた本作品。前半のミステリアスな展開は見ていてワクワクします。後半の音楽を利用した地球外知的生命体との交信シーンは圧巻の一言です。

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「ホラー映画人気キャラクター」私の映画遍歴11

 暑い日が続きますが、こういう日には冷えたビール、枝豆、そして背筋が凍りつくようなホラー映画に限りますね。
 そこで今回はホラー映画で人気のある不気味なキャラクターたちを紹介します。

・ジェイソン(『13日の金曜日』シリーズ)
Friday_13  ホラー映画で一番有名な殺人鬼と言えば何といってもホッケーマスクを被った不死身の殺人鬼ジェイソンでしょう。1980年代に登場して、スプラッター映画ブームの先駆けとなりました。サマー・キャンプ場「クリスタル・レイク」を舞台に遊びに来た能天気な若者たちを殺していくジェイソン。この作品、意外にも1作目はジェイソンは登場せず、2作目以降から登場します。またトレードマークのホッケーマスクは3作目から付けます。また5作目の作品もジェイソンは登場しません。
 シリーズが進むにつれてクリスタルレイクを離れ、ニューヨークや宇宙にも進出しています。
 ハリウッドではリメイクも予定されているとのことで、ジェイソンの恐怖はまだまだ続いていきそうです。

・フレディ(『エルム街の悪夢』シリーズ)
Erumu  ジェイソンと並んで有名な殺人鬼と言えばナイフの長い爪をつけて夢の中に現れる殺人鬼フレディでしょう。このシリーズの大きな特長は夢の中を舞台にしていることです。夢の中なので現実ではありえないような恐ろしい出来事が次から次へと起こりますし、殺人シーンも他のホラー映画に比べて大変派手です。1作目は夢か現実か分らない恐怖感にみちていましたが、シリーズが進むにつれてコメディ路線へと転換。フレディも陰惨な殺人鬼からお茶目な殺人鬼になっていきました。
 ジェイソンとも『フレディvsジェイソン』で一度ガチンコ対決をしています。この映画、内容自体は下らないですが、80年代のホラー映画界が生んだ2大殺人鬼が一度に見られるというお得感があります。

・マイケル(『ハロウィン』シリーズ)
Halloween ジョン・カーペンター監督の出世作で、殺人鬼映画の先駆けとなった本シリーズ。姉を殺して精神病院に入院させられたマイケルが脱走して町に戻ってきたところから話しが始まります。不気味なマスクを被り、包丁をもって人に襲いかかる姿は派手さはありませんが、不気味なものがあります。シリーズ化されましたが、1作目が一番怖いです。ちなみに3作目はマイケル自体が登場しない番外編ですので、見る方はご注意を!
 ちなみに今年B級ホラーの帝王ロブ・ゾンビ監督によってリメイクされた作品がアメリカで公開予定となっています。

・レザーフェイス(『悪魔のいけにえ』シリーズ)
Texaschainsaw  エド・ゲインの実犯罪にヒントを得て製作された本シリーズ。第1作目が公開された時は多くの映画ファンに衝撃を与えました。ヒッチハイクをしていた若者たちに襲いかかる殺人鬼レザーフェイス。電動ノコギリを振り回すレザーフェイスの姿は一度見たら忘れらないインパクトがあります。1作目はひたすら怖い作品でしたが、2作目以降はコメディ路線になり、怖さという点では今ひとつでした。『テキサスチェーンソー』という題名でハリウッドでリメイクもされています。

・貞子(『リング』シリーズ)
Ring_2   ジャパニーズホラーブームの先駆けになった本シリーズ。1作目のテレビの画面から抜け出すラストシーンは多くの観客を恐怖の渦に巻き込みました。このシリーズは日本で4作、ハリウッドで2作製作されましたが、第1作目が一番怖いですね。シリーズ化される中で貞子の生い立ちなども語られていきますが、結構かわいそうな女性なんですよね。ただ、それが分かるにつれて恐怖も軽減していくのですが・・・。
 1作目が傑作なのは貞子のインパクトも去ることながら、中田秀夫監督の演出の巧みさが大きいと思います。陰惨で重苦しい雰囲気の映像や音楽が見る者にゾッとするような恐怖感を与えてくれます。

・伽椰子&俊雄(『呪怨』シリーズ)
Juon  清水崇監督による大ヒットホラー『呪怨』シリーズ。今年の夏にハリウッドで製作された続編が日本でも公開されます。ストーリー自体は伽椰子&俊雄が住み着いている家に来た人間たちを呪い殺していくという単純明快なものです。彼らに狙われたら最後、どんな人間も呪い殺されてしまいます。このシリーズはストーリーを楽しむというより、監督が工夫を凝らした観客を怖がらせる手法を楽しめるかどうかで評価が分かれると思います。現在OVA版が2作品、日本で2作品、ハリウッドで2作品と計6作品が製作されていますが、一番怖いのはOVA版の第1作目だと思います。未見の方は一度ご覧になってください。

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「ディレクターズカットにはまる」私の映画遍歴10

 映画には劇場公開されたバージョンと違うバージョンが存在するときがあります。
 映画は芸術であると同時にビジネスです。その為、上映時間が長すぎたり、観客の試写での反応が悪かった時などは監督の意向と異なる編集が収益を重んじるプロデューサーやスタジオの判断でなされる時があります。
 現場でスタッフやキャストを指揮して撮影してきた監督としては、自分が当初イメージしていた通りの作品を観客に見せられないのは悔しいものです。そこで映画がヒットした場合などは監督が自らの意向に沿った再編集を行い発表する場合があります。そのような作品をディレクターズカットと言います。
 有名な作品としては『ブレードランナー』や『アビス』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』などがあります。
 最近はビデオやDVDが普及して上映時間を気にせず見てもらえる環境が整ったこともあり、未公開シーンを追加した劇場公開版より長いディレクターズカット版が販売される作品が増えてきています。
 
 ディレクターズカット版に関しては劇場公開版よりストーリーの説明不足が補われたり、登場人物の描写に深みが増していることが多く、より深く作品を味合うことができます。またディレクターズカット版を見ると、監督の作品に対する思いやこだわりを感じることもでき、映画好きにはたまりません。
 
 その反面、ディレクターズカット版は劇場公開版よりテンポが悪くなり面白くなくなる場合もあります。その良い例が『ニューシネマパラダイス』です。オリジナルが傑作だっただけに、ディレクターズカット版のテンポの悪さにはイライラしました。
 また、新しく追加撮影された映像やCGで手直した映像がオリジナルが持っていた雰囲気を壊してしまう場合もあります。『スターウォーズ』シリーズや『エクソシスト』などの追加映像がその際たる例です。アナログの時代の映像の良さがデジタル加工された映像のせいで台無しになっていました。

 映画が好きな人にとって、劇場では未公開のシーンが追加されているディレクターズカット版が鑑賞できる機会があるのは嬉しい限りです。

 最後に私のお薦めのディレクターズカット作品を5作品紹介します。

・『ロード・オブ・ザ・リング』スペシャル・エクステンデッド・エディション・シリーズ
 この作品は劇場公開版も3時間近くある大作でしたが、ディレクターズカット版はさらに30分~60分近い未公開映像が追加されています。その分、上映時間も長くなっているのですが、劇場公開版よりもストーリーが分かりやすくなっていますし、中つ国の世界をより深く味わうことができます。

・『アビス』完全版
Abyss この作品は劇場公開版とディレクターズカット版で見た後の印象が全く違うという珍しい作品です。劇場公開版のラストは海底版『未知との遭遇』といった感じでしたが、ディレクターズカット版のラストは反核のメッセージが前面に押し出される仕上がりとなっています。 また、劇場版ではカットされた大津波のシーンも追加されているのも大きな見所の1つです。

・『地獄の黙示録』完全版
Apocalypse_now 伝説のベトナム戦争映画『地獄の黙示録』。この作品も2001年に50分近い未公開シーンが追加された完全版が公開されました。オリジナルに比べて、ストーリーや監督の描こうとしたテーマが理解しやすくなっています。


・『アマデウス』完全版
アマデウス ― ディレクターズカット スペシャル・エディション モーツァルトの生涯を映画化した本作品。20分の未公開シーンが追加されたことで人物描写に深みが増しています。特にモーツァルトの妻・コンスタンツェとサリエリとの微妙な関係の理由が理解しやすくなっています。


・『ブレードランナー』最終版
ディレクターズカット ブレードランナー 最終版 ディレクターズカット作品の先駆けともいえる本作品。劇場公開版にあったナレーションを一切排し、わずかな追加シーンとラストシーンをカットすることでハードボイルドSFとして引き締まった仕上がりになっています。今年の秋にはさらに追加映像と再編集がなされたファイナル・カットが公開されることも決定されており、今から楽しみです。 

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中島みゆき新アルバム『I Love You, 答えてくれ 』

I_love_you  今年の秋から3年ぶりの全国ツアーを行うみゆきさんですが、ツアーに先駆けて、10月3日に新アルバム『I Love You, 答えてくれ 』が発売されることが決まりました!
 今回のアルバムはロックという形式にこだわったとのことで、パワフルなみゆきさんに出会うことが期待できそうです。
 また、日本テレビで放映中の『受験の王様』の主題歌『本日、未熟者』や 『世界ウルルン滞在記~ルネサンス~ 』の主題歌『一期一会』などの話題作も数多く収録されています。
 今回の収録曲も個性的な題名が多く、一体どんな歌なのか予測がつきません。それ故に今から発売が待ち遠しいです。

  
(収録曲)
1.本日、未熟者
2.顔のない街の中で
3.惜しみなく愛の言葉を
4.一期一会
5.サバイバル・ロード
6.Nobody Is Right
7.アイス・フィッシュ
8.ボディ・トーク
9.背広の下のロックンロール
10.昔から雨が降ってくる
11. I Love You, 答えてくれ

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『トランスフォーマー』この映画を見て!

第170回『トランスフォーマー』
Transformers_2  今年の夏は『スパイダーマン3』に始まり『パイレーツ・オブ・カリビアン3』、『ダイハード4.0』など人気シリーズ作品の最新作が数多く公開されていますが、個人的に今年の夏一番お薦めの作品は今回紹介する作品『トランスフォーマー』です。製作総指揮・スティーヴン・スピルバーグ、監督マイケル・ベイという現在のハリウッドを代表するヒットメーカーがタッグを組んだ本作品。80年代日本でタカラより発売され大ブームとなった変形ロボット玩具トランスフォーマーシリーズ。玩具だけでなく、マンガ化やアニメ化もされ、多くの男の子の心を虜にしました。
昨年に『トランスフォーマー』がハリウッドで映画化されると知ったときは、玩具を主人公に映画を撮ることに大変驚きました。CGが発達した現在なら、リアルな映像に仕上がるのだろうとは予想していましたが、ハリウッドで巨大ロボットを扱った作品が意外にも今までほとんどなかったので一体どんな映像に仕上がるのか大変興味がありました。
今年に入ってから予告編が公開され、徐々にトランスフォーマーの姿が明らかになるつれて、その迫力のある戦闘シーンに圧倒され、公開を待ち遠しく思ったものでした。

そして、公開日である今日朝一番に映画館に行き鑑賞してきたのですが、ド迫力の映像にひたすら圧倒された2時間20分でした。個人的には『ターミネーター2』や『ジュラシックパーク』、『マトリックス』に匹敵するほどのインパクトのある映像でした。
特にトランスフォーマーたちがトランスフォームするシーンはワンカットで描かれるのですが、その映像のリアルさとカッコよさには感激しました。
また後半の白昼の市街地でのロボット同士の戦闘シーンも今まで見たことないほど物凄い迫力あるシーンの連続で、一瞬たりとも目を離す隙がありませんでした。車が宙を舞い、ビルが吹っ飛び、ロボット同士が取っ組み合う姿は見ていて壮観です。ここまでリアルにロボット同士の闘いを描いた作品は見たことがありません!
ハリウッドきってのVFX工房のILMが350人もの人員を投入して制作しただけのことはあります。きっと今年のアカデミー視覚効果賞は本作品が受賞するでしょう。

もちろんこの映像の迫力はCGだけでなくマイケル・ベイ監督こだわりのライブアクションが効果を挙げているのだと思います。アメリカ国防総省に協力してもらい、実際の戦闘機や基地を借りて撮影をした映像の数々はCGや模型では出せない迫力があります。(ただ、裏を返せばアメリカ軍のプロパガンダ映画的な要素も強く、どうかなとも思いますが・・。特に映画の前半で米兵がイラクの子どもを守ろうとするシーンは米兵のうそ臭いヒューマニズムを感じてしました。) 

本作品のストーリーで特に私が良かったのは少し内気な普通の男の子を主人公に持ってきたことです。どこにでもいるカッコ良くもなければ、特に才能があるわけでない男の子。その子がある日突然世界を揺るがす闘いに巻き込まれるという展開は男の子心をくすぐる展開です。(逆に女性にはイマイチかもしれませんが・・・。)
マイケル・ベイ監督の作品はストーリーが間延びしているものが多いのですが、本作品は無駄なシーンがなく、メリハリのある展開で最後まで飽きることなく見れました。そこはスピルバーグ監督が製作総指揮で関わっていることが強く影響していると思います。内向的な少年が未知の生命体と友情をはぐくむという展開は『ET』を彷彿させますし、突然未知の生命体が侵略するという展開は『ジョーズ』や『宇宙戦争』を彷彿させます。スピルバーグの嗜好が反映されたストーリーをダイナミックなアクションで定評のあるマイケル・ベイ監督が映像化したことが本作品を成功に導いたのだと思います。

本作品はすでに続編の製作が決定されたようですが、次回作もどのような展開になるのか今から楽しみです。

暑い夏、スカッとした映画を見たいなら、『トランスフォーマー』お薦めです!

製作年度 2007年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 144分
監督 マイケル・ベイ 
製作総指揮 スティーヴン・スピルバーグ 、マイケル・ベイ 、ブライアン・ゴールドナー 、マーク・ヴァーラディアン 
脚本 アレックス・カーツマン 、ロベルト・オーチー 
音楽 スティーヴ・ジャブロンスキー 
出演 シャイア・ラブーフ 、タイリース・ギブソン 、ジョシュ・デュアメル 、アンソニー・アンダーソン 、ミーガン・フォックス 、レイチェル・テイラー 、ジョン・タートゥーロ 、ジョン・ヴォイト 、ケヴィン・ダン 、マイケル・オニール 、ジュリー・ホワイト 

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『グエムル-漢江の怪物』映画鑑賞日記

Guemuru  今回紹介する作品は韓国で昨年記録的な大ヒットをした怪獣映画『グエムル-漢江の怪物』です。
 私は小さい時から怪獣映画好きで『ゴジラ』を筆頭に古今東西数多くの作品を見てきましたが、本作品はかなり異色の怪獣映画した。

 ストーリー:「ソウルを流れる大河・漢江の河川敷でスルメイカを売るパク一家。店の主人のカンドゥはある日、河から突然現れた謎の怪物グエムルに遭遇する。グエムルは河川敷の人々を襲撃し、カンドゥの娘ヒョンソを連れ去ってしまう。
 その後、グエムルが謎のウィルスに感染していることが判明。パク一家も病院に隔離されてしまう。そんな中、カンドゥの携帯電話に娘から助けて欲しいとの連絡が入る。カンドゥを始めとしたパク一家は病院を脱出し、娘の救出を試みるが……。」

 私はこの作品を実際に見るまで、ソウルの街をグエムルが暴れ周り、軍や科学者が闘いを挑むという典型的な怪獣映画のストーリーを想像していました。しかし、実際に見てみると軍隊や科学者はほとんど登場せず、娘を奪われた一家が怪獣に闘いを挑むという予想外のストーリーに戸惑ってしまいました。
 また思った以上にユーモラスで笑えるシーンや国家権力やアメリカ軍を強烈にシニカルに描いているシーンが多いのも特徴で、緊迫感のあるシリアスな展開を期待していた私としては肩透かしを食らったものでした。 
 主人公の描写も終始変わることなく、何をしてもダメ親父のままであるのも、他の作品と違うところです。ハリウッドなら主人公の家族が変わっていき、最後はスーパーマンのごとく活躍するところですが、この作品は最後まで娘の救出が上手くいかない家族の苛立ちや非力さを見事に描いています。
 良い意味でも悪い意味でも本作品のストーリーには裏切られました。この作品はどこにでもあるような普通の家族が突然巻き込まれた災難の中で右往左往しながら、自らの家族を守ろうとするサバイバル映画です。この作品が韓国らしいのは政府やアメリカ軍が全く役に立っていないところです。日韓併合や朝鮮戦争、軍事政権など数々の悲劇の中を自力で潜り抜けた民衆たちのしたたかさと反権力の意識が垣間見れる作品です。

 グエムルの映像も『ロード・オブ・ザ・リング』のVFXで有名になったWETAが担当しただけのことはあり、大変素晴らしい仕上がりとなっています。グエムルの造形も独特でインパクト大です。一体何の生き物が変異を起こしてあのような怪物となったのかとても気になりました。
 映像的に一番の見所は映画の冒頭の河川敷でグエムルが暴れるシーンです。真昼間の平和な河川敷を突然襲う悪夢のような非日常的災難。このシーンは緊迫感と逃げ惑う人々の恐怖が伝わってくる秀逸なパニックシーンだと思います。

 映像・ストーリー共に大変見ごたえがあり、決して駄作ではありません。ただ個人的に残念に思ったところが幾つかありました。
 家族の絆を描くのがこの作品のテーマなので仕方ないかもしれませんが、怪獣の生態がイマイチ分かりませんでした。また怪獣に対して国家権力やアメリカ軍が何も手出しをしないのも現実感に欠けていたように思います。出来れば、後半家族と軍隊と怪獣の三つ巴の闘いとかになればより面白いと思ってしまいました。
 中盤以降は河川敷と下水道が主な舞台となるのですが、映像的にイマイチ面白みに欠けていました。また、ストーリーも家族の悶々とした姿が中盤からメインとなるのですが、テンポが悪くダラダラとした印象を受けました。
 
 この作品は怪獣映画としてみると異色な作品ですが、決して退屈な作品ではありません。一度は見る価値がある作品だと思います。 

製作年度 2006年
製作国・地域 韓国
上映時間 120分
監督 ポン・ジュノ 
製作総指揮 チョ・ヨンベ 、キム・ウテク 、ジョン・テソン 
脚本 ポン・ジュノ 、ハ・ジョンウォン 、パク・チョルヒョン 
音楽 イ・ビョンウ 
出演 ソン・ガンホ 、ピョン・ヒボン 、パク・ヘイル 、ペ・ドゥナ 、コ・アソン 、イ・ジェウン 、イ・ドンホ 、ヨン・ジェムン 、キム・レハ 、パク・ノシク 、イム・ピルソン 

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