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『Vフォー・ヴェンデッタ』この映画を見て!

第167回『Vフォー・ヴェンデッタ』
V_for_vendetta  今回紹介する作品は全体主義国家となった近未来のイギリスを舞台に革命を目指す孤高のテロリスト"V"と彼に協力するヒロイン"イヴィー"の活躍を描く『Vフォー・ヴェンデッタ』です。
 ストーリー:「第三次世界大戦後、独裁者アダム・サトラーにより全体主義国家と化した英国。国営放送BTNに勤務する女性イヴィーは外出禁止時刻に外出してしまい秘密警察ザ・フィンガーの警備員に捕まる。そこに現れた仮面を被る謎の男“V”に助けられる。Vは自分の人生を狂わせた国家への復讐から転覆を企むテロリストだった。イヴィーはVのテロ計画に巻き込まれ、国家から追われる破目に陥る。」

 この作品は『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟が担当しているので、大掛かりなアクションシーンが連続する映画と思って鑑賞すると肩透かしをくらうと思います。私も当初は爽快なアクション映画と思って鑑賞していたので、自分の予想していなかった方向に話しが進んでいき、ある意味期待を裏切られた作品でした。しかし、それは面白くなかったかというと、そんなことはなく個人的にかなりツボにはまった作品でした。管理社会によって独裁体制を敷いている国家に個人が闘いを挑むという作品は昔から数多くありますが、この作品は登場人物の魅力と現代の欧米の保守的な政治体制に対する痛烈な皮肉と批判が込められた内容の濃さで大変見ごたえがあります。
 映画の中では生物テロに怯えた国民が安全を求めて自由を捨て強権的な政治指導者を選びますが、それは911テロ後のアメリカやイギリスの政治状況を見事に反映していると思います。

 Vの仮面はモデルがあり、1605年11月5日に英国国会議事堂の爆破未遂事件を起こし、翌年処刑されたガイ・フォークスという人物がモデルになっています。今でもイギリスでは11月5日を「ガイ・フォークス・デー」として記念し、その夜は花火が打ち上げられています。
 そんなV役を演じたのが『マトリックス』でエージェント・スミス役を演じたヒューゴ・ウィーヴィング。彼は映画の中では一切素顔を現さず、声と体をつかった演技だけで主人公を演じています。演技において役者の表情は非常に大切な要素だと思うのですが、それを封じいられた中で、あれだけの存在感のある演技を見せたヒューゴ・ウィーヴィング恐るべしです。彼が流暢なクイーンズイングリッシュで語る時に哲学的、時に文学的なセリフの数々は耳に心地よく、その言葉の深遠さは胸に大変残りました。

イヴィーを演じたナタリー・ポートマンも映画の中でスキンヘッドにして熱演していますが、一番衝撃的だったのは映画の中のロリコン姿。20歳を超えてあのような姿をするとは凄いです。

 この映画は政治的な色合いの強い作品ですが、とてもロマンティックな作品でもあります。映画後半で徐々に変化するVとイヴィーのお互いに対する思い。ラストは不覚にも涙が出そうになりました。

 またラストで無数のVが登場するシーンは鳥肌が立ちました。Vが一人の超人的な人間を指すわけでなく、多くの人間が希求する自由を象徴した存在であることを見事に映像で表現していたと思います。

 この作品は決して万人受けする作品とは思いませんが、現代のアメリカ政府に不信感を持つ映画好きなら見て損はないと思いますよ。

製作年度 2005年
製作国・地域 イギリス/ドイツ
上映時間 132分
監督 ジェームズ・マクティーグ 
製作総指揮 ベンジャミン・ウェイスブレン 
脚本 アンディ・ウォシャウスキー 、ラリー・ウォシャウスキー 
音楽 ダリオ・マリアネッリ 
出演 ナタリー・ポートマン 、ヒューゴ・ウィーヴィング 、スティーヴン・レイ 、スティーヴン・フライ 、ジョン・ハート 

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