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『かもめ食堂』この映画を見て!

第164回『かもめ食堂』
Kamome  今回紹介する作品はオールフィンランドロケで撮影された日本映画『かもめ食堂』です。群ようこが本作品のために書き下ろした原作を元に制作されたこの作品。最初は2館だけの上映でしたが、口コミで人気が広がり、多くの単館映画館でロングラン上映を記録しました。(私が住んでいる滋賀では7月から滋賀会館でリバイバル上映されます。)

 ストーリー:「フィンランドの日本食堂を経営しているサチエ。お客は、日本おたくの青年1人。そんな青年から聞かれた質問に答えられなかったサチエは図書館で偶然知り合ったミドリに答えを教えてもらう。そのことをきっかけにミドリも食堂の手伝いをすることになる。次第に人が集まるようになるかもめ食堂。悩みをかかえたフィンランド人や荷物が出てこなくなって困っている日本人なども集まってきて、サチエたちの温かな手料理に心が解きほぐされていく。」

 この作品は映像もストーリーも決して派手ではなく、淡々とした作品です。しかし、この淡々とした作りがとても心地よく、見た後にほっこりと幸せな気分に浸ることができます。

 主人公は3人の日本女性なのですが、なぜフィンランドにやって来たのかの説明は最小限しかありません。きっと過去にいろいろな事があったのだろうと匂わせながら、その事はほとんど語らず、主人公たちの今ここでの生活だけに焦点をあてた描き方は観客の想像力を刺激すると共に深い余韻を与えてくれます。
 普通の作品だと主人公たちの人生や感情を描こうとするのですが、この作品は生活にだけ焦点を当て、その生活の中で微妙に変化していく人たちの姿を描いていきます。何気ない日常の生活を丁寧に楽しむことが生きていくうえで如何に大切なことか、この作品は気づかせてくれます。

 この作品の大きな魅力として、小林聡美さん演じる主人公のさりげない優しさや凛とした力強さがあると私は思います。
 かもめ食堂の店主であるサチエさんは決して自分のことも多く語らず、他人のことも深く詮索はしません。余計なことはせず適度な距離感を持って、相手のペースを尊重しながら付き合っていく姿勢はとても好感が持てました。
 また自分の生活に対するこだわりや信念といったものを大切にして、自分のペースを常に乱さず生きていく姿はとても清々しいものがありました。

 もちろん片桐はいりさん演じるミドリさんやもたいまさこが演じるマサコさんも個性的で味のある演技をしています。片桐はいりさんの独特な表情や目の動き、もたいまさこさんの酸いも甘いも経験した大人の女性としての風格。3人の個性派女優の醸し出す独特な雰囲気がこの作品を成功に導いたと言っても過言でないと思います。

 あと、この作品の大きな魅力として忘れてはいけないのは美味しそうなな食べ物の数々です。淹れたてのコーヒー、鮭・梅・おかかのおにぎり、焼きたてのシナモンロール、トンカツにしょうが焼き。出てくる食べ物全てが美味しそうで、観客の胃袋を刺激します。湯気の立ち方とか食べ物をこんなに美味しそうに撮影した作品は邦画では久々だと思います。
 またかもめ食堂のインテリアも無駄がなくシンプルでありながら、とてもおしゃれであり、見ていて心落ち着くものがありました。

 私はこの作品を見て、おにぎりは日本人にとってのソウルフードであることを再認識しました。ノリのぱりっとした食感、程よい塩加減のご飯、そして中に入った鮭・おかか・梅干とご飯の相性の素晴らしさ。映画の中で「おにぎりは人に握ってもらうのが良い」というセリフがありますが、その通りだと思いました。

 日々の生活や仕事に追われてゆとりをなくしている時、この作品を見ると肩の力が抜けてほっと出来ますよ。ただお腹が空いたときに見ると、無性に和食とコーヒーが欲しくなると思うので、あらかじめ腹ごしらえをしておくか、おにぎりとコーヒーを用意しておいたほうが良いですよ。 

製作年度 2005年
製作国・地域 日本
上映時間 102分
監督 荻上直子 
原作 群ようこ 
脚本 荻上直子 
音楽 近藤達郎 
出演 小林聡美 、片桐はいり 、もたいまさこ 、ヤルッコ・ニエミ 、タリア・マルクス 、マルック・ペルトラ 

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コメント

カゴメさん、お久しぶりです。コメントありがとうございます。カゴメさんのおっしゃる通り、この作品は見る者にあれこれ想像させる余韻があるところが素敵ですよね。
人生の多くを語らず、生活の節々から人生を感じる奥ゆかしさがこの映画の魅力ですね。

投稿: とろとろ | 2007年7月17日 (火) 00時57分

登場人物の前半生がほとんど語られないので、
ちょっとそのヒントっぽい言葉に触れると、
ついつい色んな事を想像しちゃいますね。
それさえも何だか楽しい作品です。
そして、料理を作るシーンのシズル感の素晴らしさ!
全編から伝わるの生成りの清々しさ。
日本映画の良い所が随所に発揮された作品だと思うです。
最近では一頭地抜き出た佳作(傑作というよりも)だと思ったですよ。

投稿: カゴメ | 2007年7月16日 (月) 16時36分

こんばんわ。コメントありがとうございます。ほっこりしたい時はこの映画ですね。ガッチャマンの歌のシーンは私もサチエさんと一緒になって歌を思い出そうとしたものでした。

投稿: とろとろ | 2007年7月 5日 (木) 21時26分

TBありがとうございました。
なんとも幸せになれる映画でしたね。
ほんとにおにぎりもおいしそうで、心のそこからほっこりできました。
ガッチャマンもつぼでした。

投稿: sakurai | 2007年7月 2日 (月) 15時00分

あははは、、、
これはちょっと、TB出来ませんわ、、、

投稿: 猫姫少佐現品限り | 2007年7月 2日 (月) 03時43分

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