『ブルーベルベット』この映画を見て!
第169回『ブルーベルベット』
今回紹介する作品は鬼才デイヴィッド・リンチ監督が描く日常の裏に潜む狂気と暴力の世界『ブルーベルベット』です。
ストーリー:「アメリカの典型的な田舎町ランバートン。都会の大学に通っていたジェフリーは病院に父を見舞った帰り道の野原で切り落とされた人間の片耳を見つける。ジェフリーは父の知り合いのウィリアムズ刑事に耳を届ける。切り取られた耳の謎に興味を持つジェフリー。そんな彼はウィリアム刑事の娘サンディから街のアパートに住む歌手ドロシーが耳に関係しているという話を聞く。彼は真相に近づきたく、サンディの協力を得て、ドロシーの自宅に忍び込む。そこで彼は静かな街の裏に潜むSEXとSMのアブノーマルな世界を覗いてしまう。そして、彼自身もアブノーマルな裏世界に巻き込まれてしまう。」
デヴィッド・リンチ監督の作品というと悪夢のような非日常的な世界を舞台にアブノーマルな登場人物たちが織り成すシュールなストーリーが特長ですが、本作品はそんなリンチワールドが確立された記念すべき作品です。
オープニングのボビー・ビントンの歌う同名ヒット曲をバックに映し出される、赤い薔薇・白いフェンス・青い空という明るく牧歌的な風景。そこから一転して映し出される草の下の蠢く虫たち。非常にインパクトのあるオープニングシーンですが、この作品のテーマである日常の中の非日常性を見事に打ち出しています。
草むらに落ちていた耳を拾ったために、今まで知らなかった裏世界に足を踏みいれる主人公。そんな主人公が悪夢のような体験をして、この世界に存在する闇を知り大人として成長していく過程を描いた本作品。ストーリーは最近のリンチ作品と比べると破綻しておらず、分かりやすいです。また、ラストもカタルシスがあり、後味も悪くありません。
もちろん、リンチ作品特有の異様な世界観もしっかりと体感できる仕上がりとなっています。主人公がクローゼットの隙間から垣間見る狂気の世界。酸素吸入機を吸いながら、放送禁止用語を連発する男が妖しい雰囲気を漂わせる女とSMプレイをする姿は強烈なインパクトを見る者に与えます。こんな世界を覗いてしまった主人公はさぞ驚いたことでしょう。その後も主人公は狂気と暴力と官能が入り混じった異様な世界を次々と体験していくのですが、監督のダークなイマジーネーションの豊かさには感心してしまいます。
この作品の異様な世界を作り出すのに当たって一番貢献しているのは何と言ってもイザベラ・ロッセリーニとデニス・ホッパーの演技です。イザベラ・ロッセリーニの艶かしい雰囲気は見る者を惹きつけます。特に全裸での登場は強烈です!またデニス・ホッパーのエキセントリックな演技は圧巻の一言です。
彼らの異様な演技と対照的なカイル・マクラクランやローラ・ダーンの清純な演技も印象的で、この作品の光と闇のコントラストを見事に表現していたと思います。
この作品は誰が見ても楽しい作品とは言えませんが、好きな人ははまると思います。日常の中の非日常性を求めている人はぜひ見てください!
製作年度 1986年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 121分
監督 デヴィッド・リンチ
製作総指揮 リチャード・ロス
脚本 デヴィッド・リンチ
音楽 アンジェロ・バダラメンティ
出演 、イザベラ・ロッセリーニ 、デニス・ホッパー 、ローラ・ダーン 、ホープ・ラング 、プリシラ・ポインター 、ディーン・ストックウェル 、ジョージ・ディッカーソン 、ブラッド・ドゥーリフ 、ジャック・ナンス
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コメント
こんばんわ、いつもコメントありがとうござます!
「ストレート・ストーリー」はリンチ作品とは思えないとても観易い作品ですよね。
「ワイルド・アット・ハート」と「砂の惑星」ですか!懐かしい。
私は『エレファント・マン』や『イレイザー・ヘッド』など初期の作品が好きです。
それにしても「ブルーベルベット」は見れば見るほど味わいのあるスルメのような作品ですね。
それにしてもデニス・ホッパー、ぶっ飛んだ俳優ですよね。
投稿: とろとろ | 2007年8月 4日 (土) 22時04分
こんばんわー!! お邪魔するですよ♪♪♪
リンチは初期の作品と、一瞬“まとも”に戻ったかのような(笑)「ストレート・ストーリー」なんぞはとても観易い作品ですよね。
カゴメは、「ワイルド・アット・ハート」とこれと「砂の惑星」はとりわけ好きであります。
特にローラ・ダーン!
うーむむ、なんて可愛いんだろう!!(笑)
ラスト、青い空からぬめる様なベルベッドに変わるシーンが印象的ですね。
寓話と隠喩に満ちた作品。
も一度、こんな分かりいい作品を作って欲しいもんです・・・。
投稿: カゴメ | 2007年7月30日 (月) 22時14分