『インディアスの破壊についての簡潔な報告』街を捨て書を読もう!
『インディアスの破壊についての簡潔な報告』 著:ラス・カサス 岩波文庫
今回紹介する本はアメリカ大陸に侵入したスペイン人たちによるアメリカ先住民の虐殺が記録された書物『インディアスの破壊についての簡潔な報告』です。
著者のラス・カサス(1484-1566)はスペインの聖職者で、<当時スペイン国家が進めていた新大陸における植民地政策に伴う、先住民に対する残虐行為を告発して物議を醸した人物です。
私がこの記録を読んだのは大学生の時でしたが、その時は大変衝撃を受けました。
コロンブスが1492年に新大陸を発見したことは世界史の中で有名な出来事ですが、その後に新大陸で起こった悲劇に関しては余り知られていません。
コロンブスの新大陸発見後、多くの白人が利益を求めて侵入し、邪魔な先住民を大量虐殺していきました。
またスペイン国王は新大陸を自国の植民地にすべく、生き残った先住民たちに強制的にキリスト教化する義務を負わせると同時に、侵略者たちに労働力として一定数のインディオを使役する許可を公式に与えました。これが奴隷制を合法化してしまい更なる悲劇を生むことになりました。
この本は目を背けたくなるようなスペイン人たちによる先住民虐殺の様子が淡々と描かれています。男、女、子ども関係なく、無慈悲かつ残酷に虐殺していく様は読んでいて吐き気を催すほど惨たらしいです。先住民を同じ人間とは思わず。劣ったモノとしか見ないスペイン人たち。その姿は人間という生き物が内に秘める凶暴性の恐ろしさを読む者に印象づけます。別にこの本で描かれているスペイン人たちだけが非人間的なわけでなく、ナチスのホロコーストや日本の東アジア侵略、アメリカの原爆投下など人間の歴史を振りかえると、どの時代、どの国の人間も争いの中で非人間的な行為をしており、人間の持つ深い闇であり、乗り越えていくべき業であるとも言えます。
私はこの本を読み、歴史を学ぶ時には様々な視点から見つめていく必要があることを痛感しました。ヨーロッパ側から見たら新大陸発見も、元々そこに住んでいた人々から見たら侵略にしか過ぎないということに気付かせてくれました。
また、この本で記録されていることは今から500年以上前の出来事ですが、決して遠い過去の話ではなく今も続いている話しです。武力や文明の力を持って、力のない国や民族を侵略する悲劇は現代も世界のあちこちで続いています。この本は現代を生きる私たちにも重い問いかけを投げかけます。
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