『フラガール』この映画を見て!
第162回『フラガール』 今回紹介する作品は昨年度の日本の各映画賞を総なめにした話題作『フラガール』です。この作品は福島県の炭鉱町に誕生した常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)にまつわる実話を基に制作されています。
ストーリー:「時代の波で閉鎖に追い込まれつつある東北の炭坑の村。次々と炭鉱が閉鎖される中、炭鉱会社が目をつけたのは東北にハワイを持ってくることをコンセプトにしたレジャー施設『常磐ハワイアンセンター』の開設だった。ハワイといえばフラダンスということで炭鉱の女性たちをフラダンサーにしようと考えるが、集まったのは盆踊りしか知らないような女性たち。そこで東京からプロのダンサーが呼ばれ、プロのダンサーになるべく特訓が始まる。」
この作品、ストーリー自体はサクセスストーリーにありがちなとてもベタな内容です。親と子の軋轢と和解、主人公の挫折と成功、友人との別れ、先生に対する生徒の反発から信頼関係への発展、全てが観客の予想を裏切ることのない王道の展開です。イギリスで制作された炭坑夫の息子がバレーダンサーを目指す『リトル・ダンサー』や炭坑夫たちが男性ストリッパーを目指す『フル・モンティ』を観た事がある人なら、この作品がどんな展開になるかすぐに察しがつくと思います。
ストーリーの展開だけ見るとありがちな作品に過ぎないのですが、役者の熱演と監督の演出の巧みさで観客の心を惹きつけ、深い感動を与えます。
役者の演技で言えば蒼井優の演技がとても素晴らしく、彼女の魅力でこの映画は支えられていると言っても過言ではないと思います。炭鉱の素朴で勝気な女子高生が母の反対を押し切ってダンスに打ち込む姿は見ていて清清しいです。また肝心のダンスのシーン自体も特訓の甲斐もあって躍動感にあふれおり、見る者を虜にします。
東京から来た訳ありのプロダンサーを演じる松雪泰子の熱演も素晴らしく、栄光も挫折も味わった女性の逞しさと不器用さといったものが感じられました。
また他の脇役の方の演技も素晴らしいの一言でした。特に岸部一徳と富司純子の演技は味があり、この映画に奥行きを与えたと思います。
あとこの作品で印象的だったのが昭和40年代の炭鉱の生活をノスタルジックかつリアルに描いたところでした。石油から石炭にエネルギー政策が変わり、どんどん斜陽になっていく石炭産業。その中で何とか生活と仕事を守ろうとする人々。この部分を丁寧に描いたことで、単なるサクセスストーリーとは違う奥行きが映画に加わったと思います。
時代の流れに抗う人たちと、時代の流れの中で何とか生き延びようとする人たち。炭鉱で働いていた男たちの誇りと、その誇りを奪う時代の流れ・・・。そんな中で若い女性たちがたくましく生き延びようとする姿は時代の変化というものにどう立ち向かっていくべきかを見事に描いていたと思います。
笑って泣けて、清清しい気持ちになれる『フラガール』。多くの人にぜひ見ていただきたい作品です。
製作年度 2006年
製作国・地域 日本
上映時間 120分
監督 李相日
脚本 李相日 、羽原大介
音楽 ジェイク・シマブクロ
出演 松雪泰子 、豊川悦司 、蒼井優 、山崎静代 、池津祥子 、徳永えり 、三宅弘城 、寺島進 、志賀勝 、高橋克実 、岸部一徳 、富司純子
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