『殺しの烙印』この映画を見て!
第157回『殺しの烙印』
今回紹介する作品は独特な映像美学をもつ鈴木清順監督の代表作にして、世界中に熱狂的なファンをもつカルト映画『殺しの烙印』です。
ストーリー:「ご飯の炊ける匂いに興奮する日本でナンバー3の殺し屋・五郎。他の殺し屋に命を狙われながらも、仕事を確実にこなしていく。そんな五郎の前に謎めいた女・美沙子が現われ、4人の男の殺しを依頼する。3人は上手く殺せたが、最後の1人だけ運悪く失敗してしまう。そのために組織から抹殺されそうになる五郎。生き残るために単身組織に立ち向かうのだが、そこに伝説の殺し屋ナンバー1が立ちはだかる。」
ストーリーだけ読むとハードボイルドタッチの硬派な作品のような印象を受けますが、実際に見てみるとシュールなコメディタッチの作品です。
冒頭の主題歌からして摩訶不思議な歌詞で、聴く者に強烈なインパクトを与えます。そして映画のオープニング。主人公・五郎が女とバーに来て、バーテンダーにご飯を炊けと指示します。そしてパロマの炊飯器から立ち上がる湯気を嗅いで恍惚の表情を浮かべる五郎。主人公の理解不能な立ち振る舞いにいきなり面食らってしまいます。カッコいいけど、変態な主人公。冒頭から見る者を鈴木清順ワールドに一気に引きこみます。
その後も意味不明なカットが突然挿入されたり、途中でいきなり話しが飛んだりと見る者を戸惑わす演出が次から次へと出てきます。この意味不明さを面白いと思うか、面白くないと思うかで、この映画の評価は真っ二つに分かれると思います。
映画の前半は主人公の殺しの腕前がハードボイドタッチで描かれるのですが、その殺しのテクニックが非現実的でマンガチックであるので、見ていてカッコいいのにどこか笑いがこみあげてきます。
また主人公の主人公が自宅で妻とセックスをするシーンが合間合間に挿入されるのですが、この描き方が過激というかコミカルというか・・・。当時にしてはかなり大胆な濡れ場だと思います。
また謎の女・美沙子を演じる真理アンヌの無表情な演技はとても不気味であり、毎回雨に打たれて登場するシーンは強烈です。
後半はナンバーワンの殺し屋との対決が描かれるのですが、この描き方がとてもシュールかつナンセンスです。
主人公の前にいきなり現れ、お前を殺すと宣言して、主人公を追い詰めていくのですが、なぜか自ら主人公の家に乗り込んで、一緒に寝泊りをします。その上、ションベンは垂れ流すわ、主人公と腕を組んで食事に行くわ、やることなすこと変の一言です。
この作品は余りにもシュールで理解不能な作品であった為に、鈴木監督が所属していた映画制作会社「日活」を解雇されたという逸話が残っているほどです。しかし、この映画は好きになれば何回も見返したくなる魅力があります。
カルト映画好きな人は必見です!
製作年度 1967年
製作国・地域 日本
上映時間 91分
監督 鈴木清順
脚本 具流八郎
音楽 山本直純
出演 宍戸錠 、小川万里子 、真理アンヌ 、南原宏治 、玉川伊佐男 、南廣 、久松洪介 、緑川宏 、荒井岩衛 、長弘 、伊豆見雄 、宮原徳平 、萩道子 、野村隆[俳優]
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