『地獄の黙示録』この映画を見て!
第158回『地獄の黙示録』
今回紹介する作品はベトナム戦争を舞台に人間の狂気を描いた超大作『地獄の黙示録』です。
『ゴッドファーザー』で富と名声を得たフランシス・フォード・コッポラ監督が、ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』を基に製作された本作品。コッポラ監督の完璧主義やフィリピンロケでの様々なトラブルなどで、完成までに4年の歳月と3,100万ドルの巨費がかかってしまいました。 完成した映画はフィリピンで撮影された映像の圧倒的な迫力と映像にぴったりあった選曲の素晴らしさは多くの人に支持されるものの、後半の抽象的なストーリー展開は難解で賛否両論を巻き起こしました。カンヌ映画祭ではグランプリ、アカデミー賞では2部門を受賞しました。
ストーリー:「1960年代末のベトナム。ウィラード大尉は、ジャングルの奥地で現地の人を率いて王国を築いたとされるカーツ大佐を暗殺する命令を受け、4人部下を引き連れてナング河を溯っていく。その過程でウィラードが遭遇するさまざまな戦争の狂気。何とかジャングルの奥地の王国にたどり着いたウィラードはカーツと対峙するが・・・。 」
私がこの作品を始めてみたのは高校生の時でしたが、当時はヴィットリオ・ストラーロの濃厚な映像とワーグナーやドアーズを引用した音楽の素晴らしさにとても感動したものでした。
特に前半のハイライトとも言えるワーグナーの勇壮な音楽にのせて米軍のヘリコプター舞台がベトナムの村を爆撃するシーンはその圧倒的な迫力に鳥肌がたったものでした。
また、その爆撃の理由がサーフィンをしたいというキルゴー中佐の個人的な理由に過ぎないところに戦争の狂気というものを強く感じたものでした。
当時はジャングルの奥地にいるカーツ大佐を探してジャングルの奥地へと旅をする前半までは戦場の迫力と狂気に満ちており集中して見ることができました。
しかし、王国に到着してカーツ大佐が出てきてから、映画のテンポが悪くなり、見ていて睡魔が襲ってきました。ただ生きた牛を切り刻むシーンだけは強烈なインパクトはありましたが・・。高校生の私には何が言いたいのかイマイチ分りませんでした。
当時は何が言いたいのか良く分らないけど、凄い映画を見てしまったという印象が強く残ったものでした。その後も、この映画の強烈なインパクトが忘れられずLDを買っては何回も見直したものでした。
2001年に50分の未公開映像が追加された特別完全版が公開され、私も劇場に足を運び見たのですが、その時に初めてこの映画の言いたかったことが何となく分ったものでした。
完全版では細かな追加シーンのほかに、大きく3つの新しいフッテージが追加されています。
1つ目が「プレイメートのその後」で、オリジナルではちらっとしか登場しなかったプレイメートがウィラードたちと交流する場面が追加されています。
2つ目は「フランス人植民農園」のシーン。このシーンが撮影されていたことは以前から知っていましたが、オリジナル版でカットされたのが非常に惜しまれるシーンです。このシーンが加わることで、この映画のテーマの一つである「ベトナムでアメリカが戦うことの空しさや無意味さ」がより明確になっています。このシーンの幻想的な美しさは特筆もので、オリジナルにはない甘美さが与えられています。
3つ目は「カーツ大佐のセリフ追加」シーン。オリジナルではよく分らなかったカーツ大佐の思想や狂気に至る理由が明確に分かりますし、この映画の持つ人間の狂気や反戦というメッセージ性がより分りやすく見る者に伝わるようになっています。
特別完全版は監督の意図やメッセージがオリジナル版よりも分りやすくなっていますが、一つ欠点を挙げると3時間20分という上映時間は少し長く、オリジナル版よりもテンポが悪くなっています。
この作品は「人間の内に潜む不条理さや狂気」というものを戦争という人間の本能がむき出しになる状況を舞台にして考察した作品だと思います。戦場という生と死の狭間で生きる人間たちが陥る狂気。道徳や倫理が通用しない戦場という場所で現れる人間の心の闇を生々しく描いています。
製作年度 1979年 (2001年・特別完全版公開)
製作国・地域 アメリカ
上映時間 153分 (特別完全版203分)
監督 フランシス・フォード・コッポラ
原作 ジョセフ・コンラッド
脚本 ジョン・ミリアス 、フランシス・フォード・コッポラ
音楽 カーマイン・コッポラ 、フランシス・フォード・コッポラ
出演 マーロン・ブランド 、マーティン・シーン 、デニス・ホッパー 、ロバート・デュヴァル 、フレデリック・フォレスト 、アルバート・ホール 、サム・ボトムズ 、ラリー・フィッシュバーン 、G・D・スプラドリン 、ハリソン・フォード 、スコット・グレン
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