『獄門島』この映画を見て!
第151回『獄門島』
今回紹介する映画は市川崑監督が石坂浩二を主演に据えて制作した金田一耕助シリーズ第3弾『獄門島』です。
ストーリー:「瀬戸内海の小島「獄門島」を舞台に起こる連続殺人事件。その背景にある旧家の勢力争いと複雑な血縁関係。運命の悪戯に翻弄される人間たちの悲しみが金田一耕助の推理と共に描かれいく。」
私がこの映画を初めて見たのは小学生の時でしたが、釣鐘のショッキングなシーンが強烈でトラウマになったものでした。
また派手な見立て殺人のシーンも印象的でした。特に梅の木に逆さづりになった若い女の死体の妖しい美しさは目が釘付けになったものでした
今回の映画の大きな特長として市川崑監督の希望で原作を犯人と変えています。犯人を変えたことは横溝ファンの間では賛否両論分かれるところです。
私としては今までのシリーズにもあった男に振り回された女の人生の悲哀が前面に出て良かったかなと思います。
しかし、否定的な人の意見もよく分かります。私自身何度か見返して気づいたのですが、あの人を犯人にした為に派手な見立て殺人を行った意味が薄くなっています。また前作『悪魔の手毬歌』に比べると犯人がそこまでして殺人を犯さざるえない理由と言うものが感じられないような気もします。
これは制作期間が4ヶ月という短期間であった為に、脚本の練りこみがもう一つ足りなかったのかなと思います。
ストーリーは今までの作品に比べるともう一つですが、それ以外は申し分ありません。4ヶ月で完成度がここまで高い作品を仕上げたスタッフとキャストの力量には驚嘆します。
日本の田舎の夏の緑の鮮やかさや爽やかさを見事に捉えた映像美。日本の閉鎖的な村のドロドロした人間関係を重厚な演技で表現した役者たち。田辺信一の軽快な音楽。そして市川監督独特の短いカット割りや遊び心たっぷりの演出。その完成度の高さは何度見ても飽きない映画に仕上がっています。
役者たちの演技のレベルの高さはこのシリーズの大きな見所ですが、今回は草笛光子 ・東野英治郎・佐分利信の3人の演技が特に光っていました。特に水戸黄門役で有名な東野英治郎の見事な悪人ぶりには圧倒されました。また常連メンバーである加藤武・大滝秀治・三木のり平 ・坂口良子の演技も味わい深いものがありました。
日本の田舎の懐かしい夏の風景と日本映画史上に残る美しい殺人シーンをぜひ皆さまも見てください!
製作年度 1977年
製作国・地域 日本
上映時間 141分
監督 市川崑
原作 横溝正史
脚本 久里子亭
音楽 田辺信一
出演 石坂浩二 、司葉子 、大原麗子 、草笛光子 、東野英治郎 、内藤武敏 、武田洋和 、浅野ゆう子 、中村七枝子 、一ノ瀬康子 、佐分利信 、加藤武 、大滝秀治 、上條恒彦 、松村達雄 、稲葉義男 、辻萬長 、小林昭二 、ピーター 、三木のり平 、坂口良子 、池田秀一 、三谷昇 、荻野目慶子
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