『ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女』映画鑑賞日記
NO.10『ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女』
『指輪物語』・『ゲド戦記』と並んで世界三大ファンタジー小説の一つといわれている『ナルニア国物語』。原作は全部で7巻からなり、人間の世界とは別の「ナルニア国」の誕生から死滅までを壮大なスケールで描いています。原作者の C・S・ルイスはイギリス出身で、『指輪物語』の作者トールキンとも親交がありました。ルイスはキリスト教を深く信仰しており、この物語を執筆するにあたっても聖書を下敷きに執筆したそうです。それだけに読めば読むほど気づかされることの多い物語です。しかし、児童向けに書かれている作品だけあって決して難解ではなく、大変読みやすいです。また個性的で魅力的なキャラクターも数多く登場し、読んでいて飽きることがありません。
そんな有名な原作の第1章『ライオンと魔女』をディズニーが完全映画化した本作品。『ロード・オブ・ザ・リング』を大変意識した作りとなっており、『ロード・オブ・ザ・リング』の美術スタッフを招いたり、同じニュージーランドで撮影をするなどしています。しかし、完成度は『ロード・オブ・ザ・リング』と比べると落ちてしまいます。『ロード・オブ・ザ・リング』に比べると『ナルニア国物語』はスタッフやキャストの原作に対するリスペクトやこだわりがあまり感じられませんでした。
もちろんディズニーが予算をかけて制作しただけあって、ストーリーは誰が見ても分かりやすく楽しいものとなっています。特にナルニア国に存在する言葉を話す動物たちやフォーンやケンタウロス、ミノタウロスなどの架空の生き物たちが登場するシーンは見ていてワクワクするものがありました。
しかし、映画のもつ雰囲気が軽いというか安っぽさを感じさせ、どうしても「ナルニア」という架空の国に入り込むことができませんでした。雪が積もった森や氷の城の映像もセットだとバレバレで、寒さが伝わってきません。CGで作ったクリーチャーたちも作りこみや合成が雑で、見ていて嘘っぽく興ざめしてしまいました。細部へのこだわりがファンタジー映画では大切だと思いますが、この映画は細部の詰めが大変甘いです。
監督の演出もイマイチで、ナルニア国の魅力や主人公たちの葛藤や成長といったものがもう一つ伝わってきませんでした。その為、ラストの戦闘シーンも盛り上がりに欠けたものになってしまいました。また見せ方もアップが多く、引きの映像が少ないのでスケール感に欠けていたような気がします。
音楽も単体で聴くと壮大で素晴らしいと思うのですが、いまいち映像とかみ合っていませんでした。もっとファンタジー色を出してもよかったと思います。
この映画を見て改めて『ロード・オブ・ザ・リング』が如何に完成度の高い作品だったか再認識しました。ファンタジー映画の制作に必要なのはお金はもちろんのことですが、やはり監督の原作への愛情とこだわりが大切ですね。
製作年度 2005年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 140分
監督 アンドリュー・アダムソン
製作総指揮 アンドリュー・アダムソン 、ペリー・ムーア 、フィリップ・ステュアー
原作 C・S・ルイス
脚本 アンドリュー・アダムソン 、クリストファー・マルクス 、スティーヴン・マクフィーリー 、アン・ピーコック
音楽 ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演 リーアム・ニーソン 、ウィリアム・モーズリー 、アナ・ポップルウェル 、スキャンダー・ケインズ 、ジョージー・ヘンリー
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