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2007年4月

『ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女』映画鑑賞日記

NO.10『ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女』
Narnia  『指輪物語』『ゲド戦記』と並んで世界三大ファンタジー小説の一つといわれている『ナルニア国物語』。原作は全部で7巻からなり、人間の世界とは別の「ナルニア国」の誕生から死滅までを壮大なスケールで描いています。原作者の C・S・ルイスはイギリス出身で、『指輪物語』の作者トールキンとも親交がありました。ルイスはキリスト教を深く信仰しており、この物語を執筆するにあたっても聖書を下敷きに執筆したそうです。それだけに読めば読むほど気づかされることの多い物語です。しかし、児童向けに書かれている作品だけあって決して難解ではなく、大変読みやすいです。また個性的で魅力的なキャラクターも数多く登場し、読んでいて飽きることがありません。
 
 そんな有名な原作の第1章『ライオンと魔女』をディズニーが完全映画化した本作品。『ロード・オブ・ザ・リング』を大変意識した作りとなっており、『ロード・オブ・ザ・リング』の美術スタッフを招いたり、同じニュージーランドで撮影をするなどしています。しかし、完成度は『ロード・オブ・ザ・リング』と比べると落ちてしまいます。『ロード・オブ・ザ・リング』に比べると『ナルニア国物語』はスタッフやキャストの原作に対するリスペクトやこだわりがあまり感じられませんでした。
 もちろんディズニーが予算をかけて制作しただけあって、ストーリーは誰が見ても分かりやすく楽しいものとなっています。特にナルニア国に存在する言葉を話す動物たちやフォーンやケンタウロス、ミノタウロスなどの架空の生き物たちが登場するシーンは見ていてワクワクするものがありました。
 
 しかし、映画のもつ雰囲気が軽いというか安っぽさを感じさせ、どうしても「ナルニア」という架空の国に入り込むことができませんでした。雪が積もった森や氷の城の映像もセットだとバレバレで、寒さが伝わってきません。CGで作ったクリーチャーたちも作りこみや合成が雑で、見ていて嘘っぽく興ざめしてしまいました。細部へのこだわりがファンタジー映画では大切だと思いますが、この映画は細部の詰めが大変甘いです。

 監督の演出もイマイチで、ナルニア国の魅力や主人公たちの葛藤や成長といったものがもう一つ伝わってきませんでした。その為、ラストの戦闘シーンも盛り上がりに欠けたものになってしまいました。また見せ方もアップが多く、引きの映像が少ないのでスケール感に欠けていたような気がします。
 音楽も単体で聴くと壮大で素晴らしいと思うのですが、いまいち映像とかみ合っていませんでした。もっとファンタジー色を出してもよかったと思います。
 
 この映画を見て改めて『ロード・オブ・ザ・リング』が如何に完成度の高い作品だったか再認識しました。ファンタジー映画の制作に必要なのはお金はもちろんのことですが、やはり監督の原作への愛情とこだわりが大切ですね。  
 
製作年度 2005年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 140分
監督 アンドリュー・アダムソン 
製作総指揮 アンドリュー・アダムソン 、ペリー・ムーア 、フィリップ・ステュアー 
原作 C・S・ルイス 
脚本 アンドリュー・アダムソン 、クリストファー・マルクス 、スティーヴン・マクフィーリー 、アン・ピーコック 
音楽 ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ 
出演 リーアム・ニーソン 、ウィリアム・モーズリー 、アナ・ポップルウェル 、スキャンダー・ケインズ 、ジョージー・ヘンリー

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『男たちの大和 / YAMATO』映画鑑賞日記

Yamato  角川春樹が製作して昨年に大ヒットした戦争映画『男たちの大和 / YAMATO』。実物大の大和のセットを組んだり、長渕剛を主題歌に起用するなど数々の話題を提供した作品ではありました。戦争映画は好きなのですが、角川春樹製作の戦争映画というと派手なだけで中身は薄い作品ではないかと危惧し見る気が起きませんでした。しかし、テレビでたまたま放映されていたので鑑賞したのですが、予想通りの微妙な出来でした。
 戦後60年以上経過して、戦争の悲惨さを忘れかけている日本人にとって過去の悲惨な歴史を学ぶことは大切だと思います。このような映画が製作されること自体は良いことだと思います。 この映画も日本兵の祖国や家族に対する思い、戦争の悲惨さや平和の大切さなど今の日本人が考えさせられるテーマが数多く詰め込まれています。最近の日本映画でこのようなテーマの戦争映画は製作されていなかったので、あえてこの時代にこの映画を製作した心意気は悪くないと思います。

 しかし、映画の出来はかなり低いです。『タイタニック』や『プライベート・ライアン』を意識したシーンが数多く見られましたが、出来は遠く及びません。ストーリー、映像、音楽、演技の全てがテレビの2時間ドラマのような薄っぺらい出来です。
 ストーリーはありきたりなお涙頂戴ものに過ぎず、テンポも悪いです。一兵士の視点から描くという発想自体は良いと思うのですが、登場人物が多すぎて感情移入が出来ません。
 
映像は原寸大のセットで撮影した割にはリアリティが感じられませんでした。いかにもセット丸出しであり、大和の巨大さが感じられませんでした。CGもいかにもCGといった映像で安っぽく感じてしまいました。
戦闘シーンも『プライベート・ライアン』を意識しているようですが遠く及びません。アップの映像ばかりで引きの映像がないので迫力に欠けますし、戦闘シーンでの死の描写も綺麗過ぎてリアリティに欠けます。沈没のシーンも何が原因で、どう沈没したのかがいまいち分かりませんでした。
 
音楽も私の好きな久石譲さんが担当しているので期待したのですが、終始鳴りっぱなしでウルサク感じてしまいました。角川春樹が音楽プロデューサーとして、かなり久石さんに指示をしたそうですが、それが裏目に出たと思います。また主題歌も映画とあってなく最悪でした。長渕を起用するセンスも悪いと思いますし、この映画に主題歌は不要だったと思います。
 
演技に関しては、反町隆史と中村獅童を主役に起用していますが、彼らの演技はテンションが高いだけで鬱陶しかったです。もっと静と動のコントラストのある演技をしたほうが良かったと思います。
脇役も演技が下手で、リアリティに欠けています。特に長嶋一茂は最悪でした。なぜ彼を起用したのでしょう。逆に蒼井優は素晴らしかったです!
 兵士たちを演じた役者たちの演技も格好良さばかりが目立ち、死を目前にした恐怖や悲しみといったものがもう一つ伝わってきませんでした。
 あと気になったのが兵士たちが余りにも健康的かつ綺麗すぎて嘘っぽく感じてしまいました。

 「戦艦大和」といういい素材を扱ったにも関わらず、スタッフやキャストの力量の低さから、今ひとつの出来にしかならなかったのが残念です。

製作年度 2005年
製作国・地域 日本
上映時間 145分
監督 佐藤純彌 
製作総指揮 高岩淡 、広瀬道貞 
原作 辺見じゅん 
脚本 佐藤純彌 
音楽 久石譲 
出演 反町隆史 、中村獅童 、鈴木京香 、松山ケンイチ 、渡辺大 、内野謙太 、崎本大海 、橋爪遼 、山田純大 、高岡建治 、高知東生 、平山広行 、森宮隆 、金児憲史 、長嶋一茂 、蒼井優 、高畑淳子 、余貴美子 、池松壮亮 、井川比佐志 、勝野洋 、野崎海太郎 、春田純一 、本田博太郎 、林隆三 、寺島しのぶ 、白石加代子 、奥田瑛二 、渡哲也 、仲代達矢 

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「世界ウルルン滞在記ルネサンス」主題歌

 今日から「世界ウルルン滞在記ルネサンス」の新しい主題歌とエンディングを中島みゆきが担当していますね。『一期一会』というタイトルの今回の主題歌。みゆきさんらしい力強さと繊細さを兼ね備えた歌詞と歌声が今回も素敵でした。みゆきさんらしいサビの盛り上がりがたまらないですね。エンディングテーマ「昔から雨が降ってくる」もしっとりとした良い感じです。早くCDを発売してもらい、ゆっくり聴きたいものです。

 また番組のBGMもみゆきさんの曲が数多く引用されていて、ファンにはたまりませんねえ。それにしても『トロ』や『サーモンダンス』など結構マニアックな曲が引用されていますね。
 

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『ヒストリー・オブ・バイオレンス』この映画を見て!

第152回 『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
A_history_of_violence  今回紹介する映画は鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督がグラフィック・ノベルを原作に人間の暴力への衝動性を描くバイオレンス映画『ヒストリー・オブ・バイオレンス』です。 

 ストーリー:「アメリカの田舎町で飲食店を経営するトムは、自分の店に押し入った強盗を倒し、人々の命を救う。しかし、その勇敢な行動がマスメディアに取り上げられたことで、謎の男ボブが町にやってきてトムを脅しはじめる。ボブの出現により、妻と2人の子どもと幸せに暮らしていたトムの過去が、ゆっくり明らかになっていく・・・。」

 私の中でデヴィッド・クローネンバーグ 監督というと『ザ・フライ』や『ビデオ・ドローム』のようなドロドログチャグチャした感覚の映画か『裸のランチ』や『クラッシュ』のような難解な映画を撮る人という認識がありました。しかし、この作品は他の作品に比べるとすっきりとした作品に仕上がっています。しかし、彼らしいグロい演出も随所に健在で、主人公が暴力を振る場面の生々しい描写の数々は目を覆いたくなるほどです。
 
 この作品は過去の罪や暴力への衝動性から人は逃れることができるかという重いテーマを扱っています。過去を忘れ、新たな人生を歩もうとする主人公の前に現れる過去の自分。平和に生きたいにも関わらず、暴力を振るってしまう己の性。ヴィゴ・モーテンセンの抑えた演技が主人公の悲しみや葛藤を見事に表現していました。
 また主人公が突然激しい暴力を振るう姿は迫力満点でした。平凡な田舎の男が突然豹変して敵をなぎ倒していく場面は恐ろしくもあり、かっこよくもあり、見ている者に複雑な印象を与えます。
 暴力はいけないと分っていながらも、暴力の持つ効果に惹かれてしまう人間という生き物の本質がこの映画では描かれています。

 また私が印象的だったのが夫婦のセックスのリアルな描き方です。この作品では2回夫婦のセックスが描かれるのですが、主人公が暴力を振るう前と後とでのセックスの仕方の違いがとても印象に残りました。特に2回目の階段での激しいセックスシーンは主人公の暴力的な性衝動と妻に見捨てられたくないという思いが交錯した秀逸なシーンでした。

 ラストシーンも静謐でありながらとても印象的です。家族が夕食を取っているときに帰ってくる主人公。その時の家族の複雑な表情や仕草。父の2面性を知ってしまった家族の苦悩。この後、家族がどうなっていくのか深い余韻を残して終わります。

 日常性の中に突如現れる暴力という非日常性の恐怖とカタルシス。この作品は非日常的な世界に足を踏み込んだ人間たちの日常への憧れと戸惑いを描いた傑作です。

 この作品は1時間半という短い作品でありますが、密度のとても濃い作品です。万人受けはしないかもしれませんが、噛めば噛むほど味わえるスルメのような作品です。暴力に興味のある人はぜひ一度ご覧ください。

製作年度 2005年
製作国・地域 アメリカ/カナダ
上映時間 96分
監督 デヴィッド・クローネンバーグ 
原作 ジョン・ワグナー 、ヴィンス・ロック 
脚本 ジョシュ・オルソン 
音楽 ハワード・ショア 
出演 ヴィゴ・モーテンセン 、マリア・ベロ 、エド・ハリス 、ウィリアム・ハート 、アシュトン・ホームズ 、ハイディ・ヘイズ 、ピーター・マクニール 、スティーヴン・マクハティ 、グレッグ・ブリック 

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『ホビットの冒険』街を捨て書を読もう!

『ホビットの冒険』 著:J.R.R.トールキン 訳:瀬田 貞二 岩波書店
Hobitt  今回紹介する本はファンタジー小説の傑作『ホビットの冒険』です。
 この作品は『指輪物語』の前日譚にあたります。『指輪物語』は『ロード・オブ・ザ・リング』として映画化され、日本でも大ヒットをしました。この作品では映画の第一部冒頭で登場していたフロドの叔父にあたるビルボ・バギンズが主人公として活躍します。映画でもビルボが指輪を拾う経緯が少しだけ紹介されていましたが、この作品ではビルボがゴラムからどう指輪を奪ったかが詳細に描かれます。
 また『指輪物語』でおなじみの魔法使いガンダルフも登場し、ビルボの冒険の手助けをします。
 『ロード・オブ・ザ・リング』を見たことある人や『指輪物語』を読んだことある人がこの作品を読むと非常に楽しめる作品です。また児童文学として書かれているので、『指輪物語』と比べると大変読みやすいです。
 
 主人公のホビット「ビルボ・バギンズ」は魔法使いのガンダルフに誘われて、13人のドワーフ達と邪竜スマウグに奪われたドワーフの財宝を取り返すためにはなれ山を目指して冒険の旅に出ます。トロルやゴブリン、巨大な蜘蛛などに襲われながらも、何とか勇気と知恵を持って危機を乗り越えるビルボと仲間たちの姿が生き生きと描かれていきます。

 この作品は最初は奪われた宝物を取り返しに行くだけの単純なストーリーのように思うかもしれませんが、後半は予想外の展開になります。私も始めて読んだときは後半のスケールの大きな展開に釘付けになったものでした。宝を求めた結果、引き起こされる争いの悲しみがこの作品では描かれます。他の勧善懲悪のファンタジー小説にはない深みと面白さがこの作品にはあります。
 またこの作品で登場する姿を消すことができる指輪が、将来中つ国を揺るがすことになるとはビルボもガンダルフもきっと思っていなかったでしょうね。
 
 この作品も『指輪物語』と同じく映画化の話が持ち上がっています。しかし、『ロード・オブ。ザ・リング』を監督したピーター・ジャクソンは製作スタジオと対立しており、監督を降ろされました。今候補としては『スパイダーマン』のサム・ライミがあがっています。個人的にはピーター・ジャクソンに監督してほしいのですが、どうなるでしょうね。

 『ホビットの冒険』は子どもから大人まで誰が読んでも楽しく、味わい深いファンタジー小説の傑作です。ぜひ読んでみてください!

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『生きて泳げ、涙は後ろへ流せ』に行ってきました!

Img_7991_2    3月31日に大阪フェスティバルホールで行われた音楽イベント『生きて泳げ、涙は後ろへ流せ』に行ってきました。このイベントはプロデューサーに詩人・三代目魚武濱田成夫を迎え、中島みゆきの詩と詞と曲のみで構成するステージでした。
 出演アーティストは金子マリ ・ 窪塚洋介・ 小泉今日子・斉藤和義・坂本美雨・ 手嶌葵・ 浜田真理子・ 一青窈 ・ リクオ・ 三代目魚武濱田成夫の10人。それぞれのアーティストの持ち味を活かされたステージとなっていました。

 まず最初に登場したのが、詩人の三代目魚武濱田成夫。いきなり名曲『ファイト』(『予感』に収録)を朗読からスタートするという直球勝負で観客の心を一気に捉えました。朗読の仕方がとても魂がこもっていて素晴らしく、聴いていて胸が熱くなりました。
 そしてファイトが終わったと同時に今回のステージのタイトルでもある『サーモンダンス』(『転生』に収録)のワンフレーズ「生きて泳げ、涙は後ろへ流せ」を力強く朗読して、彼はステージから去っていきました。冒頭から聴く者に中島みゆきの紡ぐ言葉の力を再認識させてくれました。

 続いて登場したのが坂本美雨。『空と君とあいだに』(『LOVE OR NOTHING』に収録)と『銀の龍の背に乗って』(『恋文』に収録)を歌いました。声はきれいでしたが、もうひとつインパクトには欠けていました。中島みゆきと比べても仕方はありませんが、これらの歌が持つ力強さがもう一つ表現できてなかったような気がします。あと歌詞間違いも気になりました。

 3番目に登場したのが小泉今日子。彼女がどの曲を取り上げるのか興味津々でしたが、まさか『4.2.3』(『わたしの子供になりなさい』に収録)とは予想外でした。この歌は97年のペルー日本大使館人質事件に対するみゆきさんの思いを辛辣に描いた社会派の作品です。その作品を小泉今日子が柔らかい口調で朗読するとはインパクトがありました。なぜ彼女がこの作品を朗読しようと思ったのか気になるところです。
 朗読が終わると、浜田 真理子が登場。ピアノの弾き語りで『アザミ譲のララバイ』と『世情』をメドレーで歌いました。ピアノの物悲しい音色の美しさがとても印象的でした。
 その後、再び小泉今日子が登場して、『夢の代わりに』(夜会VOL10『海嘯』に収録)を朗読。CD化もされていない夜会の作品を選ぶとは小泉今日子なかなかマニアックでした。
 小泉今日子はこの朗読のあと去っていき、浜田 真理子が『かもめはかもめ』(『御色なおし』に収録)を弾き語りで熱唱。この作品の持つ物悲しい雰囲気を見事に表現していたと思います。

 続いて登場したのが、今『ウエディング・ソング』人気の斉藤 和義が登場。本人のギター演奏による『時代』。斉藤和義の甘い雰囲気漂う時代でした。続いて、本人が本ステージでの選曲にあたって特に印象深かった『キツネ狩りの歌』(『生きていてもいいですか』に収録)を披露。軽快な歌声で楽しそうに歌っていました。

 6番目に登場したのは『ゲド戦記』の挿入歌『テルーの歌』でデビューした手嶌 葵。大阪初上陸となる本ステージでは『心守歌』(『心守歌-こころもりうた』収録)と『ホームにて』(『あ・り・が・と・う』収録)の2曲を披露しました。『心守歌』はバンドの音に彼女の声が負けており聞き取りにくかったです。しかし、『ホームにて』は彼女の素朴で優しい歌声が曲にとてもあっており、胸にジーンときました。初々しい彼女の姿にとても好感が持てました。

 7番目の登場となったのがリクオ。軽快なピアノによる弾き語りで『彼女の生き方』(『みんな去ってしまった』収録)と『流浪の歌』(みんな去ってしまった』収録)を歌い上げました。この人は聴衆の心をつかむのがとても上手く、ステージ慣れをしているなと思いました。中島みゆきの歌をこんなにノリノリに歌えるなんて素敵です。

 8番目に登場したのが窪塚 洋介。マンション転落後、芸能界から遠ざかっていた彼が今回のステージでどのような表現をするのか、個人的にとても気になっていました。本ステージでは『線路の外の風景』と『無限軌道』(『転生』に収録)の歌詞を朗読しました。朗読自体は気合は伝わってきましたが、今ひとつでした。声は大きく迫力はあるのですが、それだけというか言葉の持つ重みが伝わってきませんでした。『無限軌道』のラストを歌うところは少し引いてしましました。

 そして9番目に登場したのが一青窈。『時代』~『しあわせ芝居』(『おかえりなさい』に収録)を熱唱。一青窈のいつもの歌い方で熱唱していました。MCで夜会を見に行き中島みゆきに握手をしてもらったエピソードを披露していました。その後『春なのに』を歌い始めたのですが、歌詞を間違え、演奏が途中で中断。再度歌いなおすと言うハプニングがありました。その後は歌詞カードを床において歌っていましたが、これには少し興ざめでした。プロの歌手なら歌詞ぐらい覚えておいてほしいものです。

 続いて登場したのが金子 マリ。『後悔』と『ヘッドライト・テールライト』(2作とも『短編集』に収録)を歌ったのですが、その独特な歌い方は味があって魅力的であるもの、個人的にはみゆきさんの素晴らしい歌詞が聞きづらくイマイチでした。

 最後は三代目魚武濱田成夫が再度登場。『狼になりたい』を迫力ある歌声で熱唱しました。

 その後、アーティスト紹介があり、出演者たちが再度登場。アンコールで三代目魚武濱田成夫が中島みゆきに対するアンサーポエムを披露。タイトルは分かりませんが、とても素敵な詩でした。(一緒に来ていたパートナーは感極まって泣いていました)

 10人のアーティストによる2時間半のステージでしたが、印象的だったのは三代目魚武濱田成夫のパフォーマンスと手島葵の『ホームにて』、リクオの『流浪の歌』でした。

 このステージをプロデュースした三代目魚武濱田成夫は以前から中島みゆきの大ファンであり、また夜会VOL13に役者として出演した経験もあります。それだけにこのステージにかける情熱も並々ならぬものがあったと思います。そんな彼の情熱が見事に伝わってくるステージとなっていました。

 今回のステージを見て、中島みゆきの歌の素晴らしさを改めて認識しました。次回はぜひ中島みゆき本人のコンサートが見たいものです。

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『獄門島』この映画を見て!

第151回『獄門島』
Gokumontou  今回紹介する映画は市川崑監督が石坂浩二を主演に据えて制作した金田一耕助シリーズ第3弾『獄門島』です。
 ストーリー:「瀬戸内海の小島「獄門島」を舞台に起こる連続殺人事件。その背景にある旧家の勢力争いと複雑な血縁関係。運命の悪戯に翻弄される人間たちの悲しみが金田一耕助の推理と共に描かれいく。」

 私がこの映画を初めて見たのは小学生の時でしたが、釣鐘のショッキングなシーンが強烈でトラウマになったものでした。
 また派手な見立て殺人のシーンも印象的でした。特に梅の木に逆さづりになった若い女の死体の妖しい美しさは目が釘付けになったものでした

 今回の映画の大きな特長として市川崑監督の希望で原作を犯人と変えています。犯人を変えたことは横溝ファンの間では賛否両論分かれるところです。
 私としては今までのシリーズにもあった男に振り回された女の人生の悲哀が前面に出て良かったかなと思います。
 しかし、否定的な人の意見もよく分かります。私自身何度か見返して気づいたのですが、あの人を犯人にした為に派手な見立て殺人を行った意味が薄くなっています。また前作『悪魔の手毬歌』に比べると犯人がそこまでして殺人を犯さざるえない理由と言うものが感じられないような気もします。
 これは制作期間が4ヶ月という短期間であった為に、脚本の練りこみがもう一つ足りなかったのかなと思います。
 
 ストーリーは今までの作品に比べるともう一つですが、それ以外は申し分ありません。4ヶ月で完成度がここまで高い作品を仕上げたスタッフとキャストの力量には驚嘆します。 
 日本の田舎の夏の緑の鮮やかさや爽やかさを見事に捉えた映像美。日本の閉鎖的な村のドロドロした人間関係を重厚な演技で表現した役者たち。田辺信一の軽快な音楽。そして市川監督独特の短いカット割りや遊び心たっぷりの演出。その完成度の高さは何度見ても飽きない映画に仕上がっています。  
 
 役者たちの演技のレベルの高さはこのシリーズの大きな見所ですが、今回は草笛光子 ・東野英治郎・佐分利信の3人の演技が特に光っていました。特に水戸黄門役で有名な東野英治郎の見事な悪人ぶりには圧倒されました。また常連メンバーである加藤武・大滝秀治・三木のり平 ・坂口良子の演技も味わい深いものがありました。

 日本の田舎の懐かしい夏の風景と日本映画史上に残る美しい殺人シーンをぜひ皆さまも見てください!  

製作年度 1977年 
製作国・地域 日本
上映時間 141分
監督 市川崑 
原作 横溝正史 
脚本 久里子亭 
音楽 田辺信一 
出演 石坂浩二 、司葉子 、大原麗子 、草笛光子 、東野英治郎 、内藤武敏 、武田洋和 、浅野ゆう子 、中村七枝子 、一ノ瀬康子 、佐分利信 、加藤武 、大滝秀治 、上條恒彦 、松村達雄 、稲葉義男 、辻萬長 、小林昭二 、ピーター 、三木のり平 、坂口良子 、池田秀一 、三谷昇 、荻野目慶子 

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