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2007年1月

『007 カジノ・ロワイヤル』この映画を見て!

第138回『007 カジノ・ロワイヤル』
007_casinoroyale  今回紹介する映画は4年ぶり21作目となる大ヒットスパイ映画『007カジノ・ロワイヤル』です。今回の作品は原点回帰を目指して制作されており、主役のジェームス・ボンドを演じる役者も交代し、ストーリーもボンドが最初の任務をこなしスパイとして成長していくまでの姿をドラマティックに描いていきます。
 6代目ジェームス・ボンドを演じるダニエル・クレイグは主にアート系映画に数多く出演しており、昨年スピルバーグが監督した『ミュンヘン』で一躍注目されました。6代目ボンドに彼が決定した当時は金髪で青い目をしたボンドに大ブーイングが巻き起こりましたが、映画が公開されるや否や今までになく人間味溢れるボンドが大絶賛されました。
 
 私は昔から007シリーズが大好きで今まで公開されたほとんどの作品を見ているのですが、今回の作品はここ最近の作品の中では断トツに完成度の高い作品だったと思います。
 ピアース・ブロスナン演じる5代目ジェームス・ボンドの作品も好きなのですが、ストーリーがだんだん荒唐無稽になって非現実的になっていました。しかし、今回は原点回帰と言うこともあり、ストーリーも現実的で人間味溢れる内容になっていました。ボンドが最初の任務を果たすまでを描く本作は近年の作品には見られなかったボンドの人間性が深く描かれています。駆け出しのスパイとして、必死になって任務をこなそうとするボンドの姿はスマートさは欠けますが、繊細で荒削りな男の魅力が感じられました。
 また『女王陛下の007』以来のボンドが真剣に女性に恋をするというストーリー展開もボンドの初々しさやスパイの孤独さや葛藤といったものが感じられ良かったです。
 この作品は脚本に『父親たちの星条旗』や『クラッシュ』などで有名な脚本家ポール・ハギスを参加させたことで、近年の007シリーズには感じられなかった奥行きのある作品に仕上がっています。
 
 アクションシーンも派手なセットや荒唐無稽な武器に頼ることなく、生身のアクション中心に描かれおり、最後まで緊張感をもって見ることができました。
 特にオープニングの追いかけごっこのアクションシーンは今作最大の見せ場と言っても良いほど画面に釘付けになってしまいました。敵役の男の人間離れした身のこなしは凄いの一言です。またそんな男を追うボンドも大胆というか無謀なアクションを数多く見せてくれて、見る者のボルテージを上げてくれます。

 ポーカーのシーンはルールがいまいち分からず、私としては盛り上がりに欠けましたけど、心理的な駆け引きの緊張感は伝わってきました。
 映画の後半の拷問シーンは痛いの一言です。男としてよく耐えられましたね。普通だったら一撃で失神しますね。あの後、普通にボンドがエッチしたり海に入ったりしていたのがびっくりでした。すごい回復力です。

 映画のラストは場面が何回も変わり、少しテンポが悪かったような気はしましたが、最後の最後にあの決めゼリフを言ってくれたのと、有名なテーマソングで流れたことで帳消しです。

 次回作、ボンドがどのような活躍をしていくのかとても楽しみですし、今回出演していないQやマネーペニーがどのように登場するのかも気になるところです。今回はかなり現実的だったので、次回はぜひボンドらしいスパイグッズやスケールの大きな敵を登場させてもらいたいです。

 今回の作品は007好きの人はもちろんのこと、アクション映画好きの人には胸をはってお薦めできる傑作スパイアクション映画です。 

製作年度 2006年 
製作国・地域 アメリカ/イギリス
上映時間 144分
監督 マーティン・キャンベル 
製作総指揮 アンソニー・ウェイ 、カラム・マクドゥガル 
原作 イアン・フレミング 
脚本 ニール・パーヴィス 、ロバート・ウェイド 、ポール・ハギス 
音楽 デヴィッド・アーノルド 
出演 ダニエル・クレイグ 、エヴァ・グリーン 、マッツ・ミケルセン 、ジュディ・デンチ 、ジェフリー・ライト 、ジャンカルロ・ジャンニーニ 、サイモン・アブカリアン 、カテリーナ・ムリーノ

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『私の遺言』街を捨て書を読もう!

『私の遺言』 著:佐藤愛子 新潮社
Yuigon  今回紹介する本は作家の佐藤愛子さんが体験した驚くべき超常現象に関する記録と現世と霊界との関係が述べられた『私の遺言』です。
 皆さんは死後の世界があるとお思いでしょうか?私は小さいときは死後の世界をずっと信じていました。私の母が霊感があり幽霊を見たという話しを頻繁にしていた影響もありましたし、私自身も一度だけ小学校の時に兵隊の幽霊に遭遇したことがあります。小さいときは多くの人は死ぬとこの世とは違う別の世界にいくものだと思っていました。そして、この世界に未練のあるものだけが、この世とあの世の狭間で彷徨い、生きている人の前に幽霊として現れるものだと考えていました。
 しかし、高校に入り、唯物論の本を読むようになってから、死後の世界は人間が創り出したものであり、全ての人は死ねば無になり土へと還ると考えるようになりました。それからは幽霊という存在も否定する立場になっていたのですが、最近は私の周りでいろいろあり、再び死後の世界や幽霊という存在を信じる立場に戻りました。
 今回紹介する『私の遺言』は著者が56歳から26年にわたって体験された様々な霊現象について書かれています。北海道に別荘を購入されてから、物が勝手になくなったり、動いたり、誰もいないところから物音がしたりと著者の周りでおこる不思議な現象。中盤まではあまりにも壮絶な霊現象の話しばかりで、怖くて背筋が凍りました。このような状況に耐えられた著者は本当に強い人だと思います。
 霊現象の理由を探るために数多くの霊能力者とめぐりあう著者。何とその霊能力者の中にはオーラの泉で有名な江原さんや美輪さんなども登場します。この本を読んで、改めて江原さんや美輪さんの霊能力の高さや素晴らしさを思い知らされました。
 霊能力者との関わりの中で見えてくる著者の前世や因縁、そして業(カルマ)。著者は霊現象と向き合う中で死後の世界というものが如何に現世に影響を与えているか、また現世がいかに死後の世界に影響を与えているか知ることになります。著者は自分に課せられた業や因縁というものを受け入れ、自分に与えられた使命というものに気付きます。
 本の後半は著者の霊体験の話しから、現在の日本や世界をとりまく邪悪な霊の憑依の話しに広がっていきます。荒廃した現代人の精神の裏に潜む邪悪な霊の存在。今こそ現代人は自らに課せられた業を解き放つべく、精神性を高めていく必要があると著者は訴えます。欲望に身を委ねず、絶えず自分を律し生きることの大切さに気付かされます。

 この本を読んで、私は人生観が大きく変わりました。ここまで読んだ後に生き方を考えさせられる本はなかなかありません。この本に書かれていることを最初は半信半疑に思う人もいるかもしれませんが、読み進むに従って、著者の気迫が伝わり、信じざる得なくなります。ぜひ多くの人に読んで欲しい中身の濃い一冊です。
  

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『犬神家の一族』(1976年版)この映画を見て!

第137回『犬神家の一族』(1976年版)
Inukami  今回紹介する作品は今年のお正月映画として市川崑監督が石坂浩二を主演にセルフリメイクした『犬神家の一族』の1976年公開のオリジナル版です。
 この作品は角川書店が映画製作に乗り出した“角川映画”の第1回作品として公開され大ヒットを記録しました。日本を代表する推理小説家・横溝正史の同名小説を原作にしたこの作品は横溝正史のどろどろした世界観を市川崑監督が巧みに映像化して、当時低迷していた日本映画を復活させる足がかりとりました。

 私がこの作品を初めて見たのは小学生の時でした。テレビで放映されていたのを家族と一緒に見ていたのですが、見た後は怖さばかりが印象に残ったものでした。特に映像のインパクトが強烈で、ゴムマスクを付けた佐清や菊人形に置かれた生首、そして湖から突き出る足はしばらく脳裏に焼き付いて離れませんでした。
 
 この作品と出会った後、私は金田一耕助の作品が映像化される度に、欠かさず見ていたものですが、市川崑監督&石坂浩二主演の金田一シリーズが一番お気に入りでした。
 市川版金田一作品の大きな魅力は、市川崑監督独特の映像美と軽妙さと重厚さを併せ持った巧みな演出、豪華な俳優陣たちの迫力のある演技、そして石坂浩二演じる飄々とした金田一耕助の魅力にあります。
 映像の深みのある陰影や独特なカット割りなどは単なる娯楽映画にとどまらない芸術性といったものが感じられます。また横溝正史の小説の舞台となる昭和初期の雰囲気をいちばん映像として表現できているとも思います
 またこの作品の俳優に関して言うと、高峰三枝子の演技が素晴らしく、圧倒的な存在感がありました。また脇役も芸達者な人ぞろいで、特に加藤武 、大滝秀治 、岸田今日子、坂口良子はいい味を出しています。この作品を見ると昔の役者は演技がしっかりしているなと思ってしまいます。

 あと私がこの映画で好きなのはエンディングです。事件自体は後味の悪い結末にも関わらず、金田一が電車に乗って街を去っていく場面は爽やかな余韻を観客に与えてくれます。 

 この映画は犯人が誰が分かっても何度でも見たくなるだけの魅力があります。(私も10回以上見ていると思います。)映像の美しさ、重厚なドラマ、耳に残る音楽、そして見た後の爽やかな余韻。この映画は日本ミステリー映画の傑作です。

製作年度 1976年 
製作国・地域 日本
上映時間 146分
監督 市川崑 
原作 横溝正史 
脚本 日高真也 、市川崑 、長田紀生 、浅田英一 、岩下輝幸 
音楽 大野雄二 
出演 石坂浩二 、高峰三枝子 、三条美紀 、草笛光子 、あおい輝彦 、地井武男 、川口晶 、川口恒 、金田龍之介 、小林昭二 、島田陽子 、坂口良子 、小沢栄太郎 、加藤武 、大滝秀治 、寺田稔 、大関優子 、三木のり平 、横溝正史 、角川春樹 、岸田今日子 、三谷昇 、辻萬長 、三国連太郎 

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『インデペンデンス・デイ』この映画を見て!

第136回『インデペンデンス・デイ』
Id4  今回紹介する映画は宇宙人に地球侵略を圧倒的なスケールで描いた『インデペンデンス・デイ』です。この作品のアメリカの有名な都市が次々と破壊されていくシーンが大変話 題となり、アメリカで公開された当時は記録的大ヒットを記録しました。
 私も映画が公開されたときは初日に満員の映画館で見たものでしたが、ハリウッド映画らしいスケールの大きなシーンの連続に圧倒されたものでした。特に半端ではない宇宙船の大きさ、アメリカの都市が木っ端みじんに破壊されるシーンの迫力、そして飛行機対UFOのガチンコ対決と派手な見せ場の連続に興奮したものでした。
 ストーリーはいかにもアメリカ万歳な展開が鼻につきましたが、そこはアメリカ映画ということで余り気にせず見たものでした。またよくよく考えると突っ込みどころ満載のストーリーであるのです。しかし、このようなお祭り映画にそんなリアリティを求めても仕方なく、如何に人類が侵略した宇宙人を倒すかだけに集中して見れば、これほど楽しめる娯楽映画はなかなかありません。
 登場する人物たちもこのような映画に如何にも登場しそうな人物ばかりですが、一人一人の登場人物の成長をきちんと描き、最後には見せ場も与えて、見ている観客に爽快感を与えてくれます。
 また、監督の演出も大変手際が良く、無駄なシーンが一つとしてなく、観客がこの手の映画に求めるシーンを次々と見せてくれるので、145分という長い上映時間も苦痛になりません。ローランド・エメリッヒ監督は基本的に大味な演出の監督なのですが、その大味さがこの映画にはぴったり合っています。 
 とにかく何も考えずひたすら派手なアクション映画をみてスカッとしたい時や映画を見て突っ込みを入れたい時はこの映画を見ることをお薦めします。

*この映画の突っ込みどころベスト5
5位 7月4日のアメリカ独立記念日に出撃するところ
4位 全く文明の違うUFOを簡単に操縦できる人間たち
3位 核兵器を簡単に自国内で使ってしまうところ
2位 大統領が自ら飛行機に乗り、出撃するところ
1位 宇宙人の使っているパソコンと人間の使っているパソコンのOSが同じであること

製作年度 1996年 
製作国・地域 アメリカ
上映時間 145分
監督 ローランド・エメリッヒ 
製作総指揮 ローランド・エメリッヒ 、ウテ・エメリッヒ 、ウィリアム・フェイ 
脚本 ディーン・デヴリン 、ローランド・エメリッヒ 
音楽 デヴィッド・アーノルド 
出演 ウィル・スミス 、ビル・プルマン 、ジェフ・ゴールドブラム 、メアリー・マクドネル 、ジャド・ハーシュ 、ロバート・ロジア 、ランディ・クエイド 、マーガレット・コリン 、ブレント・スピナー 、ヴィヴィカ・フォックス 、ハリー・コニック・Jr 、ジェームズ・レブホーン 、ハーヴェイ・ファイアスタイン 、ジェームズ・デュヴァル 、リサ・ジャクブ 、アダム・ボールドウィン 、ダン・ローリア 、ジェイ・アコヴォーン 、ロバート・パイン 、ビル・スミトロヴィッチ 

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『輪廻』映画鑑賞日記

Photo_7  今回紹介する映画は『呪怨』シリーズの清水崇監督が輪廻転生をテーマにしたホラー映画『輪廻』です。
 清水監督というと観客に生理的恐怖感を感じさせる演出方法に定評がありますが、今回の作品においても清水監督らしい観客をドキッとさせる演出が随所にみられました。しかし、『呪怨』で見慣れているせいか、そんなに怖くはありませんでした。特に後半のゾンビもどきの幽霊?が出るシーンは怖いと言うより笑ってしまいました。
 またこの映画は、『廃墟となったホテル』・『人形』・『子どもの幽霊』など観客を怖がらせるために欠かせないホラー映画のアイテムが数多く登場するのですが、その使い方が古定番過ぎて、もうひとつインパクトに欠けていました。『廃墟となったホテル』のシーンはキューブリック監督の『シャイニング』を彷彿させるようなシーンでしたが、見せ方が平板であり、『シャイニング』ほどの恐怖は感じられませんでした。また少女の幽霊が持っている『人形』は見た目があまりにも不気味すぎて、逆にリアリティを損ねていました。あんな人形だったら子どもは気持ち悪くて絶対にかわいがらないと思います。
 
 ストーリーはミステリー仕立てになっており、最後の最後まで捻りのきいた展開となっており見応えがありました。誰が誰の前世を引き継いでいるかがこの映画のストーリーの大きなポイントであるのですが、映画の前半の見せ方が観客をミスリードさせるような演出をしており、後半の予想外の展開は観客にちょっとした驚きを与えてくれます。
 ただ残念なのは、今回の惨劇の張本人である大学教授がなぜ今回のような実験をしたのか動機が分からなく、ただの狂った人間にしか見えなかったことです。そこをもう少し描いたら、より深みのある映画となったと思います。

 この映画は日本のホラー映画の中では完成度の高い仕上がりとなっていますが、怖がらせ方が個人的にもう一つでした。

製作年度 2005年 
製作国・地域 日本
上映時間 96分
監督 清水崇 
脚本 清水崇 、安達正軌 
音楽 川井憲次 
出演 優香 、香里奈 、椎名桔平 、杉本哲太 、小栗旬 、松本まりか 、小市慢太郎 、治田敦 、三條美紀 

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