« 2006年2月19日 - 2006年2月25日 | トップページ | 2006年3月5日 - 2006年3月11日 »

2006年2月26日 - 2006年3月4日

『ミュンヘン』この映画を見て!

第58回『ミュンヘン』
見所:「暴力の連鎖の哀しみと虚しさ、そして暗殺者たちの苦悩。」
myunhen  つい先日トリノで冬季オリンピックが行われ、各国の選手が世界一を目指して競っていました。オリンピックは古代ギリシアの神ゼウスを祝う祭典としてギリシャ全土をあげて行われ、ギリシャ各地の都市国家群はたとえ戦争中であっても休戦して参加しなければなりませんでした。しかしそんなオリンピックも古代ローマ帝国にギリシアが併合されてから393年の第293回オリンピックを最後に一度幕を閉じました。しかし、1892年、フランスのピエール・ド・クーベルタン男爵が古代オリンピックの概念を生かし、各国から選手が集まり競技をする中で友好と平和を世界に広める祭典を行おうと呼びかけ、1896年アテネで1500年ぶり年ぶりにオリンピックが復活しました。しかし戦争や国家間の政治問題などの影響を受けて、平和との祭典というオリンピックの理念は脅かされてきました。今回紹介する映画『ミュンヘン』はオリンピックという平和の祭典がテロにより殺戮と悲劇の舞台になった事件を取りあげた実話の作品です。
 1972年ドイツのミュンヘンで行われたオリンピック。各国の選手が世界一を目指して競っている中、イスラエルの選手村にパレスチナのテロリスト黒い9月のメンバーが乱入して、人質11人取り占拠しました。黒い9月のメンバーはイスラエルに収監されているパレスチナ人の解放を求めたがイスラエルは拒否。イスラエルは事態解決にのりだそうとするが、ドイツから拒否されます。交渉の末、エジプトのカイロに脱出することで合意するのですが、これは表向きの約束で、ドイツ政府は空港でテロリストを狙撃し、人質を奪還する作戦を立てていました。しかし、テロリストの狙撃に失敗、人質は全員死亡という最悪の結末を迎えてしまいます。映画『ミュンヘン』はこの最悪の結末から物語が始まります。
 ストーリー:「1972年のミュンヘンオリンピックでのユダヤ人に対するテロ行為に対して、イスラエル政府は犠牲者数と同じ11名のパレスチナ幹部の暗殺を決定。作戦のリーダーに抜擢されたアヴナーは祖国と愛する家族のために任務を受ける。しかし、任務は過酷なもので、イスラエル政府は表向き一切関与せず、自分でターゲットを見つけ出し殺さなければいけなかった。妊娠7ヶ月の妻を残しヨーロッパに旅立つアヴナー。車輌のスペシャリストスティーヴ、後処理専門のカール、爆弾製造のロバート、文書偽造を務めるハンスの4人の仲間と合流して、ヨーロッパにいるターゲットを一人また一人と暗殺をしていく。しかし、いつしか彼らも暗殺する側だけでなく、暗殺される標的にもなっていく。次々と仲間を失うアヴナー。いつしか彼自身も暗殺の恐怖に脅えるようになる。」
 この映画は『標的は11人──モサド暗殺チームの記録』という原作を基に制作されており、 映画で描かれる暗殺事件は全て実話です。またこの映画で描かれる暗殺チーム以外にも多くのチームが結成され、テロに関わった黒い9月の関係者をイスラエル政府とその対外諜報機関「モサド」は暗殺していったそうです。しかし、このモサドによる暗殺は黒い9月側からの報復を受けることにもなり、果てしない報復という名の暴力が2者の間で繰り広げられていくことになります。
 この映画を理解するにはイスラエルとパレスチナの問題をある程度知っておいていたほうがよいと思います。日本人にとっては、パレスチナ問題は遠い国の出来事であまりピンとこないかもしれません。しかし、この問題は国際的に非常に重要なものであり、中東そして世界の平和にも現在暗い影を落としています。長い間、自国を持てず流浪の民族だったユダヤ人にとってイスラエル建国は悲願でありました。しかし、イスラエル建国の為に、長い間その土地に住んでいたアラブ人は追い出されることになりました。そして、イスラエル建国に反対する周辺アラブ諸国とイスラエルはパレスチナの土地をめぐって戦争を開始します。イスラエルは武力を持って、パレスチナ全土を征服。もともとパレスチナにすんでいたイスラム教徒やキリスト教徒は難民となってしまい、ガザや西岸地区に追いやられてしまいます。追いやられたパレスチナ人もPLO(パレスチナ解放機構)を設立。当初はイスラエル抹殺の立場をとり、武力闘争を展開してましたが、途中からパレスチナ人の民族自決権を求めるようになりました。しかし、イスラエル側の入植地拡大やパレスチナ自治区の隔離政策、テロ撲滅の名による無差別虐殺などがパレスチナ人側の反感を買い、パレスチナ側のテロも頻発して、現在も不安定な情勢下であります。
 この映画はイスラエルーパレスチナ問題という非常に複雑で深刻な政治問題を題材にしており、暴力の連鎖の虚しさと哀しみを描きます。暴力に対して暴力で応酬しても、生み出されるものは平和でなく多くの死者だけという事実をこの映画は観客に突きつけます。テロリストを殺しても殺しても次々と新たなテロリストが生み出されるという虚しい構図。この映画は911のテロ後のアメリカの報復戦争に対して痛烈な批判が込められています。それは映画のラストシーンにスピルバーグがあの建物を登場させたことからも如実です。
 またこの映画は主人公たちの暗殺に対する苦悩や葛藤が随所に描かれており、国家と個人の関係性を観客に改めて問いかけます。愛する国、民族のために暗殺を重ねる主人公たち。しかし、果てしない暴力の連鎖の中で、いつしか自分たちがやっていることが正しいことなのかどうなのか迷い始め、主人公は国家から距離を置き始めます。国家を守るための崇高な任務が実は相手側のテロ行為と何ら変わらないという虚しさに苛まされる主人公。この映画は国家の為に自分を犠牲にすることの虚しさを描きます。
 ユダヤ人であるスピルバーグは今までも『シンドラーのリスト』などユダヤ人の悲劇にまつわる映画を撮ってきてました。今回の映画もイスラエル(ユダヤ人)の悲劇を描く作品であることにかわりありませんが、イスラエル側の対応にも疑問を投げかける作品となっています。暴力の応酬は死以外何の悲劇も生まないという事実を示し、和平の道はないかと訴えかけます。そこにはユダヤという民族を愛するが故にあえて苦言を呈すスピルバーグの姿があります。
 この映画の見所は政治的なメッセージだけではありません。ざらついた画質の中で70年代の風景や雰囲気を上手く捉えた映像、暗殺シーンにおけるサスペンスタッチの演出、生々しいバイオレンス描写など見所は多く、3時間ちかい上映時間ながら一瞬足りとも退屈させません。とくに、この映画のバイオレンス描写は陰惨で生々しく見る者に嫌悪感を与えます。肉体を貫通する銃弾、飛び散る肉片、噴き出す血とスプラッターホラーも真っ青の描写が何度も出てきます。徹底したバイオレンス描写はもちろん監督の趣味が大きいと私は思うのですが、テロや暗殺という行為の残酷さと陰惨さを観客に伝えます。
 もちろん、この映画は問題点もあります。この映画はあくまでイスラエエル側の視線で語られた作品であり、イスラエルーパレスチナ問題に関して両者を公平に描いているわけではありません。この映画ではイスラエル側は悲劇の被害者であるのに対して、パレスチナ側はあくまで加害者として描かれます。現実にはイスラエル側もパレスチナ人に対して残虐なことをしてきた加害者でもあります。なぜパレスチナ人がイスラエルを攻撃するのかが、この映画ではそのことに関してはほとんど触れられません。この映画はあくまで暴力の連鎖の悲劇を描くに過ぎず、なぜ暴力の引き金が引かれたのかが描かれていないのはマイナスだと思います。
 この映画は日本人から見るとピンとこない映画化もしれませんが、アメリカの報復戦争に積極的に参加し、日本もテロの標的とされている今、この映画が問いかけるテーマは決して他人事ではないと思います、ぜひ、ご覧になってください!
 
 「ミュンヘン」公式サイト http://munich.jp/
  

| | コメント (7) | トラックバック (11)

『白い巨塔』この映画を見て!

第57回『白い巨塔』(劇場版)
見所:「田宮二郎のぎらぎらした演技、権力にまみれた人間たちの醜さ」
white_stone  現在、テレビで2004年に放映された唐沢寿明主演の『白い巨塔』が再放映されています。この作品は欲望渦巻く医学界の内幕を描き、何度見ても面白い作品です。この作品は何回も映像化されており、特に有名なのが、2004年の唐沢版『白い巨塔』と1978年の田宮版『白い巨塔』の2作品です。特に1978年のドラマは主演の田宮二郎が収録直後に自殺し、伝説的ドラマとなっています。今回紹介する映画はそんな田宮次郎が初めて財前教授役で主演した映画です。
 原作は山崎豊子が執筆。63年から65年にかけてサンデー毎日で連載され、大評判を呼びました。当初は第一審で財前教授が勝訴し、原告側の証言台に立った里見医師が病院を去るところで終わっていました。しかし、読者からの要望で67年から68年にかけて続編が執筆され、財前教授が第二審で裁判に負け、癌に倒れるラストまでが描かれました。
 今回紹介する映画は、続編が書かれる前に制作されているます。そのため、テレビのラストとは違い、財前教授が裁判に勝訴し、里見教授が去るところで終わります。その為に後味がとても悪く、権力を巡る人間の醜さと嫌らしさが前面に押し出された作品となっています。
 この作品の魅力は大学病院という権力の砦の中に渦まく欲望に対する様々な人間模様を描いたところにあります。権力を握りたい人間たち、権力にしがみつく人間たち、権力にひれ伏す人間たち、権力に反発する人間たち。権力の前で人間は如何に弱い存在か、権力が個人という人間にとって如何に冷酷なものか、この作品は観客に訴えます。
 この映画の見所は前半の教授選を巡る東教授と財前助教授の攻防シーンと後半の医療裁判を巡る財前教授と里見助教授の法廷での対決シーンの2つです。
 前半の選挙戦は何がなんでも教授になりたい財前と何が何でも彼を蹴落としたい東教授の熾烈な裏工作合戦が繰り広げられます。このシーンは派閥の中で自分の保身ばかり考える人間の醜さや嫌らしさがこれでもかと描かれます。
 また後半の裁判では権力の保身が描かれます。前半で財前教授を嫌っていた人間たちも、医学界の威信にかけて、彼を守ろうとします。権力を持つ者たちが権力を維持するために結束する姿は見ていてぞっとします。ラストシーン、里見教授が病院を去るシーンは悪に正義が敗北するという重い結末で、見る者に生々しい現実を突きつけます。
 監督は『真空地帯』『戦争と人間』などの社会派映画の巨匠・山本薩夫。脚本は『七人の侍』『砂の器』『八甲田山』『日本沈没』などの名作を手がけた橋本忍。この2人の力量で、この映画は膨大な原作を150分というコンパクトな時間にまとめ、緊張感漂うドラマに仕上がってます。また手術シーンはとてもリアルで、白黒映像でなかったら正視できないかもしれません。
 役者も田宮二郎を始め、加藤嘉、東野英治郎、田村高広、石山健二郎、小川真由美、藤村志保、下條正巳、加藤武と豪華な顔ぶれです。特に財前を演じた田宮次郎のぎらぎらした演技は見物です。自信過剰で権力欲に取り憑かれた男の嫌らしさや憎らしさを見事に表現しています。また周囲の役者も権力に取り憑かれた人間のあさましさを見事に演じてます。
 古い映画であり、ドラマと比べてはっしょっている部分も多いのですが、役者の演技と緊張感ある脚本と演出で一気に見せてくれます。ぜひ、唐沢版『白い巨塔』に夢中になった人はこの映画も見て損はないと思います。
製作年度 1966年
製作国・地域 日本
監督 山本薩夫 
製作総指揮 - 
原作 山崎豊子 
脚本 橋本忍 
音楽 池野成 
出演 田宮二郎 、小川真由美 、東野英治郎 、滝沢修 、船越英二

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『タワーリング・インフェルノ』この映画を見て!

第56回『タワーリング・インフェルノ』
見所:「燃える138階建てのグラスタワー、消防士たちの炎との格闘。」
タワーリング・インフェルノ 今回紹介する映画は70年代を代表するパニックアクション大作『タワーリング・インフェルノ』です。この映画は当時流行していたパニック映画の頂点を目指すべく、ハリウッドを代表する20世紀FOXとワーナー・ブラザースという二つの制作会社が手を組み、一流のスタッフとキャストで制作されました。特にキャストは当時人気だったポール・ニューマンとスティーブ・マックィーンの2人をW主演に据え、脇役にウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、名優フレッド・アステア、ジェニファー・ジョーンズ、ロバート・ボーン、ロバート・ワグナーといった大物俳優が起用されました。昔を知っている映画ファンでないと名前を聞いてもあまりピンとこないかもしれませんが、ブラッド・ピットとトムクルーズが主演を演じているようなものです。これだけ大物俳優が大挙出演している作品は現代のハリウッドでもなかなか制作できないと思います。
 私がこの映画を見たのは幼稚園の時です。最初見たときは、迫力のある映像、緊迫したドラマ、スティーブ・マックィーンの格好良さに終始圧倒されっぱなしでした。それからテレビで放映される度に欠かさず見たものでした。パニック映画はこれ以外にも『ポセイドン・アドベンチャー』や『大地震』『エアポートシリーズ』などたくさんありますが、この映画はその集大成といった感じです。
 この映画はもう30年以上前の映画ですが、今見ても色褪せることなく輝く映画です。この映画は撮影のために30メートル以上あるミニチュアのビルを作り、5階建てのセットを各撮影所に作ったそうです。実際にセットやミニチュアに火を放ち撮影した映像は今見ても迫力満点です。またポール・ニューマンとスティーブ・マックィーンというW主演の演技も見物で、特にスティーブ・マックィーンは仕事一筋の消防隊長を渋い演技で、観客に強い印象を残します。
 ストーリー「サンフランシスコに建てられた、地上138階建ての超高層ビル『グラス・タワー』。その落成式当日、電気系統のチェック中に地下にある発電機からぼやが発生。すぐに火は消し止められたが、時同じくして81階の倉庫でもぼやが発生していた。しかし誰も気付くことなく、火は倉庫を燃やしていた。そして夜になり、各界の著名人を集め、134階で落成式のパーティーが始まる。その頃、火災は倉庫から階全体に燃え広がり始める。防火設備の不備の中、またたく間に炎に包まれるグラスタワー。ビルにとり残された人々を救うため、ビル設計者や消防隊長らは救出に向かう。
 昨年末からマンションの偽装問題が日本中を震撼させましたが、この映画もビルのオーナーや工事担当者がコストダウンをするために、設計とは違う電気系統の偽装工事をして、火災に至ります。そういう意味で、この映画は決してフィクションの話しではなく、今見てもリアリティのある話しです。責任をなかなか取ろうとしないオーナーや工場担当者の姿はヒューザーの社長を思い出させます。この映画は人災の恐怖を描き、警鐘を促します。
 この映画は火災が発生するまでのテンポがゆったりしていますが、それ以降は見せ場の連続です。宙づりになったエレベーターの救出、ビルとビルとをロープでつないでのゴンドラによる救出、そしてラストの大胆な消火方法。手に汗握るシーンの連続で、息つく暇がありません。当時はCGもない時代だったので、ほとんど実際の炎を使用し、スタントマンが危険なシーンを演じています。その為、最近にはない生の迫力があります。また人間ドラマとしても、老詐欺師と未亡人との恋などほろりとさせるものがあります。ラストの老詐欺師の表情は見ていて切なかったです。さらに消防士の命がけの活躍も丁寧に描かれおり、好感が持てます。小さいときはこの映画を見て、消防士に尊敬の念を抱いたものでした。映画のラストの消防隊長のセリフなどは建築関係者にとってはとても重い一言です。
 古い映画ではありますが、今見ても充分楽しめる作品です。また現代の建築に対して警鐘を鳴らす作品でもあります。ぜひ見てみてください。

| | コメント (6) | トラックバック (9)

『バット・テイスト』この映画を見て!

第55回『バット・テイスト』
見所:「ぐろっとさわやかな映像、B級テイスト満載なノリ。」
bat_taste  今回紹介する映画は『キング・コング』『ロード・オブ・ザ・リング』を監督して、今やヒットメーカーとなったピーター・ジャクソンのデビュー作品『バット・テイスト』です。この映画は自主制作なので安っぽい作りなのですが、監督の巧みな演出と過激なスプラッターシーン、下らないギャグ満載のストーリー展開でカルト的人気を誇っています。
 この映画は、メジャーデビューする前のピーター・ジャクソンが新聞者に勤めながら、その合間を縫って友人たちと4年以上かけて制作した作品です。ピータージャクソンが監督・脚本・撮影・編集・特殊効果など全て一人で担当しています。自主制作ながら、大胆なカメラワークや巧みな編集の仕方などはほとんどプロ並みです。また特殊効果も気合いが入っており、ミニチュアを使った爆破シーンなどもあります。ちなみにDVDに特典として付いていたメイキングを見るとカメラの機材や大道具・銃器などの小道具に至るまで全て手作りしたということ、その並々ならぬ情熱と努力に頭が下がりました。この映画を見るとピータージャクソン監督のセンスと才能を再認識させられます。この監督だからこそ、あの超大作『ロード・オブ・ザ・リング』を7年かけて制作できたのでしょう。しかし、この映画が劇場公開された当時は、ピータージャクソンが後に大作『ロード・オブ・ザ・リング』を制作し、アカデミー賞で監督賞まで取るとは誰も思わなかったでしょう。
 この映画のストーリーは単純で人間をファーストフードの材料にしようと企む宇宙人を特殊部隊が退治するという内容です。ストーリーは別に大したことがなのですが、その見せ方がとても面白く、飽きることなく最後まで見られます。自主制作なので舞台も小さな村一つです。そこで宇宙人と特殊部隊の対決が描かれるのですが、過激なスプラッターシーンとお馬鹿でブラックなギャグが随所に盛り込まれ、見るものを圧倒し呆れさせます。特にスプラッターシーンは悪のりしすぎで、気持ち悪いを通り越して笑ってしまいます。(但し、そういう映画に免疫のない人は失神すると思います。)また映画のラストシーンのぶっ飛んだ展開は見る者の思考能力を停止させます。このラストシーン、私は映画史に残る名シーンだと思います。
 またこの映画ではピータージャクソン自身が一人3役務めており、最低なキャラクターを最低に演じており、笑ってしまいます。特にピータージャクソン演じる特殊隊員の一人デレクというキャラクターはいかれっぷりが最高です。この映画では美味しい役どころをピータージャクソンが全てさらっています。
 この映画はとても下品でお馬鹿な映画です。しかし、一度はまると病みつきになります。この映画にはピータージャクソンの映画愛が詰まっています。『キング・コング』『ロード・オブ・ザ・リング』の原点がここにあります。是非、見てみてください!
製作年度 1987年
製作国・地域 ニュージーランド
上映時間 99分
監督 ピーター・ジャクソン 
脚本 ピーター・ジャクソン 、ケン・ハモン 
音楽 ミッシェル・スカリオン 
出演 テリー・ポッター 、マイク・ミネット 、ピート・オハーン 、ピーター・ジャクソン 、クレイグ・スミス 

| | コメント (2) | トラックバック (0)

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー 』この映画を見て!

第54回『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー 』
見所:「不条理で幻想的なストーリー。ユートピアという名の友引高校学園祭」
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー 今回は私が大好きなSFアニメ映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー 』を紹介します。「うる星やつら」というと高橋留美子原作で80年代にテレビアニメ化もされ、人気を博した作品でした。私もよくテレビであたるとラムを中心に展開されるラブコメディをいつも楽しみに見ていました。映画化も今回紹介する作品をあわせて、合計4本制作されています。
 さて今回紹介する作品は「うる星やつら」シリーズの中でも異色の作品であり、カルト的な人気を誇っています。監督は『攻殻機動隊』『機動警察パトレイバー』の監督で有名な押井守。この映画は監督の色が強く出ており、「うる星やつら」を知らない人が見ても十分に楽しめる内容になっています。
 ストーリー:「友引高校の文化祭前日”。ラムもあたるも泊まり込んで仲間と共に楽しく準備をしていた。しかし、温泉マーク先生はこの世界のある異変に気付く。“友引高校の文化祭前日”がどういうわけか繰り返し毎日続いているのではないかと考える温泉マーク先生。そして、家に訪問して生きたサクラさんに相談する。しかし、次の日、温泉マーク先生は消えてしまう。そして、その後もあたるやラム、面堂やメガネたちレギュラー陣を除き、友引町から人々が次々と姿を消していく。」
 この映画を最初に見たときは、幻想的で予測不能なストーリーの緊張感に引き込まれ、謎が解き明かされていく後半の怒濤な展開に圧倒されたのを覚えています。中盤に友引高校とその周辺の謎が解き明かされるシーンがあるのですが、そのシーンは何度見ていて鳥肌が立ちます。またその後に描かれるユートピア世界も見ていて魅力的です。
 この映画で描かれるテーマは夢と時間、そしてユートピアです。
 今いる世界が現実に存在するのか、それとも夢という虚構の世界なのか?もしこの世界が誰かが見ている夢の中で、自分は夢の中で存在しているの
だったら・・・。自分が今いる世界は現実か夢なのか?いったいそれを誰が証明できるのか?この映画はそんな現実と虚構の世界の曖昧さを描きます。そして時間という概念が人間の意識が作り出した産物にすぎないのではという哲学的問題提起を観客に投げかけます。
 またこの映画は理想の世界・ユートピアの魅力と虚しさを描きます。退屈な日常から離れ、友だちとワイワイがやがや騒ぎながらお祭りの準備をする楽しさ。ずっと永遠にこの時間が流れたなら、どんなに楽しいことか?こんな思いを皆さんも抱いたことがあると思います。この映画はそんな祭り前日の準備が永遠に続く世界を描きます。そして、映画の後半は友人以外誰もいなくなった廃墟の友引町が描かれます。そこでは時間も社会も存在せず、ただ友だちと遊びほうけるだけの日常が繰り返されます。社会的役割も義務も負わず、自分を邪魔をするものが誰もいない世界。それは自分にとって理想的な世界です。しかし、それと同時にそんな世界の退屈さや虚しさを描きます。自分にとって必要なものしかない時間の止まった世界の退屈さと虚しさ。この映画はユートピアの抱える魅力と虚しさという二面性を描きます。
 映画のラストは、一瞬現実に戻ったようにも思えますが、よく見るとこの世界がまだ夢の世界なのか、現実の世界に帰還したのか曖昧なまま終わります。それは現実と虚構の曖昧になった世界。それは現実の虚構化と虚構の現実化が進んできた現代において決して映画の中の出来事だとは言えない時代になってきています。そういう意味この映画はとても時代を先取りした映画だと思います。
 この映画は今見ても面白く、とても考えさせられるアニメ映画です。原作を知っている人も知らない人もお奨めの一本です!
製作年度 1984年
製作国・地域 日本
上映時間 98分
監督 押井守 
原作 高橋留美子 
脚本 押井守 
音楽 星勝 
声の出演 平野文 、古川登志夫 、神谷明 、杉山佳寿子 、島津冴子

 
 
 
 
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 』この映画を見て!

第53回『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
見所:「ノスタルジックな昭和の風景、野原一家の未来をかけた対決」
映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 昨年大ヒットした邦画『ALWAYS 三丁目の夕日』。この映画は高度成長期を迎える昭和30年代を舞台に庶民の夢と人情に満ちた生活を描き出していました。この映画は昭和33年当時のノスタルジックな風景をリアルに再現して、多くの人を魅了しました。人々はまだ未来に夢を持つことができ、貧しいながらも人々が助け合い希望をもって前に進んでいた時代。未来にも夢を持てず、人と人とのつながりが希薄になった現代。この映画は当時を知る人だけでなく、若い人にも反響を呼び、単なる懐かしさをこえた感動を呼びました。
 さて『ALWAYS 三丁目の夕日』を見て感動した人に、お奨めな映画が
今回紹介する作品。『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 』です。この映画は公開当時、子どもの付き添いで映画館に行った大人たちに感動の嵐を呼びました。そして映画評論家からも大絶賛を受け、その年の邦画ベスト1に選ぶ人も多かったです。子ども向けに作られた映画でありながら、大人に向けて強いメッセージ性を発しており、涙なしでは見られないと思います。
 ストーリー:「春日部市に新しくできたテーマパーク・20世紀博。そこは70年代子どもだった大人たちが懐かしがるもので満ち溢れていた。大人たちは子どもをほったらかし、童心に帰って遊びほうけていた。しかし、20世紀博を計画した秘密結社イエスタデイ・ワンスモアは恐ろしい計画を裏で進行していた。その計画とは輝かしさの失われた日本の未来を捨て、輝かしい未来があったかつての時代に日本を戻そうとするものだった。次第に街は白黒テレビやレコード・古い車で溢れ、大人は仕事も家事もせず、子どものように空き地や路地で遊んでいた。そして、遂に大人たちは20世紀博に行ったまま街に戻ってこなくなった。子どもたちは街に取り残されて途方にくれていた。しんちゃんを先頭にカスカベ防衛隊は大人たちを取り戻そうと秘密結社イエスタデイ・ワンスモアに闘いを挑む。
 この映画は懐かしさで懐かしい昭和の時代で満ち溢れています。まだ未来は輝かしい希望に満ち溢れた時代。みんな貧しかったからこそ、豊かさを求めて一丸となってがんばれた社会。その結果、物質的に豊かになったものの、未来は不透明になり、人々の関係も昔とは大きく変わった現代。そんな現代についていけない人たちは今を否定し、過去を懐かしがる。この映画は混迷する現代の大人たちの様子を見事に描き出しています。
 未来を諦め、昔はよかったと懐かしがる大人たち。それに対してこれから未来が始まる子どもたち。この映画は未来に希望がもてなくなり自信を失った大人たちに「それでも未来に向おう」という強烈なメッセージを発します。映画のラストでしんちゃんが「大人になりたいから」と言うセリフは胸にぐっときます。
 またこの映画では「時代の匂い」というものをテーマとして扱っています。各時代ごとにある匂い。人は時代ごとの匂いの中で生きていて、その匂いに励まされたり、落ち込んだり、癒されたり、いらだったりする存在です。この映画ではかつての高度経済成長期にあった匂いに大人たちが癒されます。では一体、今の時代はどんな匂いが漂っているのでしょう?この映画をみて考えてしまいました。
 この映画は子どもよりも大人が楽しめる映画になっています。未来をめぐる大人と子どもの闘いは感動的です。ぜひ見てみてください。
製作年度 2001年
製作国・地域 日本
上映時間 89分
監督 原恵一 
原作 臼井儀人 
脚本 原恵一 
音楽 荒川敏行 、浜口史郎 
出演 矢島晶子 、ならはしみき 、藤原啓治 、こおろぎさとみ 、真柴摩利 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 』この映画を見て!

第52回『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』
見所:「戦国時代のリアルな合戦シーン、野原一家の家族愛、涙なしでは見られないラスト」
映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 『ドラえもん』『名探偵コナン』と並んで毎年公開される『クレヨンしんちゃん』の映画。『クレヨンしんちゃん』の映画は毎回質が高く、ストーリーの巧みさ、大人が見ても笑えるギャグ、野原一家の家族愛など、大人が見ても楽しめる作品が多いです。今回紹介する映画は、その中でも特に評判の高い『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 』です。
 ストーリー:「ある日の夜、しんのすけは空をみつめるお姫様の夢を見る。次の日の朝、庭を掘り返した飼い犬のシロが、古い文箱を発見。それは書いた覚えのないしんのすけの手紙だった。そして、手紙には「おひめさまはちょーびじんだぞ」と書いてあった。そして、手紙に書いてあったお姫様が、夢に出てきた「おひめさま」なんだと思った瞬間、しんのすけは戦国時代にいた。そこで春日家の家臣・井尻又兵衛と知り合う。」
 私はこの作品はビデオで見たのですが、その完成度の高さに驚きました。タイムトラベルを扱った作品としてみても、伏線の張り方が巧みでラストはそういう手できたかというオチで見る者の涙を誘います。
 また戦国時代を扱った映画としても、歴史考証をきちんとしており、当時の生活や習慣を丁寧に再現しています。特に合戦シーンは当時の戦法が忠実に再現されており、下手な時代劇よりとてもリアリティがあります。まさかクレヨンしんちゃんでここまで質の高い時代劇が見られるとは思いませんでした。
 ストーリーも野原一家よりも戦国時代の姫と侍の恋に重点が置かれており、大人が見ても充分楽しめるドラマとなっています。身分の違う2人のプラトニックな恋愛は見ていて切なく、胸が締めつけられます。もちろん、いつもの如く、野原一家も大活躍し、見る者に笑いと感動を誘います。
 そして、涙なしでは見られないラスト。予想外の展開に涙腺がゆるんでしまいます。これは子どもよりも大人が見た方が感動できると思います。
 この映画は子ども映画とは思えないほど質の高い作品です。ぜひ見てみてください!
製作年度 2002年
製作国・地域 日本
上映時間 95分
監督 原恵一 
原作 臼井儀人 
脚本 原恵一 
音楽 荒川敏行 、浜口史郎 
声の出演 矢島晶子 、ならはしみき 、藤原啓治 、こおろぎさとみ 、真柴摩利 

| | コメント (4) | トラックバック (2)

« 2006年2月19日 - 2006年2月25日 | トップページ | 2006年3月5日 - 2006年3月11日 »