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2006年12月24日 - 2006年12月30日

『硫黄島からの手紙』この映画を見て!

第135回『硫黄島からの手紙』

Letters_from_iow_jima  今回紹介する映画はクリント・イーストウッドが日米双方の視点から“硫黄島の戦い”を描く“硫黄島プロジェクト”第2弾作品『硫黄島からの手紙』です。
 1作目の『父親たちの星条旗』は硫黄島の擂鉢山に星条旗を掲げたアメリカ軍兵士たちが国家によって翻弄される姿を描いた作品でした。戦争で生き残った兵士たちの苦悩や戸惑いに焦点を当てた人間ドラマと硫黄島での激しい戦闘シーンが非常に印象に残る作品でした。
 2作目の『硫黄島からの手紙』は1作目では見えない敵として描かれていた日本兵に焦点を当て、彼らがどのようにしてアメリカ軍を相手に36日間も戦い抜いたのかを描きます。イーストウッド監督は1作目同様にテーマを前面に押し出したり、変に感情に流されることなく、淡々とした語り口で戦争の真実を描き出していきます。
 
 私はこの映画を見たとき、ハリウッド制作のアメリカ映画がここまで違和感なく戦時中の日本人の姿を描いたことに驚きました。今までも日本を舞台にしたアメリカ映画は数多く制作されてきましたが、どの作品も日本人の私から見ると違和感のある描写があったものでした。 しかし、この作品はまるで日本人のスタッフが制作したのかと思えるほど、日本の描写に違和感がありませんでした。監督を始め、制作スタッフたちの日本側に対する敬意が非常に感じられました。
 この映画のストーリーはアメリカ留学の経験を持ち、精神論でなく合理的に戦おうとする指揮官・栗林忠道中将と妻と娘に思いを寄せる兵士・西郷という二人の人物の視点から硫黄島の過酷な戦いが描かれていきます。ストーリー自体は『「玉砕総指揮官」の絵手紙』(小学館文庫)をベースに日系アメリカ人のアイリス・ヤマシタが脚本を手がけたフィクションです。しかし、登場人物の子孫や硫黄島協会にも取材をして、信憑性のある物語を創り上げていったそうです。その甲斐もあって、当時の日本人の天皇制軍国主義に支配された独特な精神性や、その中で葛藤する複雑な心情を見事に描いています。
 
 硫黄島2部作、1作目が生き残った兵士のその後の人生や国家に翻弄される個人を描いた作品なら、2作目である本作は戦争中の兵士の生と死の葛藤、そして家族に寄せる思いを描いた作品となっています。生きることより死ぬことに価値がおかれていた時代。そんな時代の兵士たちの生への欲求とそれを自己否定して死へと自分を追い込まないといけない哀しみ。私は実際に戦争を体験したわけではありませんが、この映画を見ている間、兵士たちの生と死の狭間での葛藤が伝わってきて胸が苦しくなりました。
 
 私がこの映画で特に印象的だったのでは、洞窟内で兵士たちが自決するシーンとアメリカ兵の捕虜の書いた手紙を読むシーンでした。
 洞窟内で手榴弾によって自決するシーンは、あまりにも悲惨で目を背けたくなると同時に、死のあっけなさというものを感じてしまいました。
 またアメリカ兵の捕虜の書いた手紙を読むシーンは、敵味方関わらず、戦場の兵士たちが持っている故郷や家族への思いというものが伝わってきました。手紙を読んでいる最中に座り込んでいる日本兵が立ち上がるシーンは、鬼畜だと思っていたアメリカ兵も実は同じ人間だったことに気付いた兵士たちの葛藤や戸惑いといったものが感じられました。
  
 監督は硫黄島2部作を撮るに当たって、正義や悪という単純な図式で戦争を描くのでなく、「あの戦争が人間にどんな影響を与えたか、そして戦争がなければもっと長く生きられたであろう人々のことを描いている」とコメントしています。そんな監督の制作動機がしっかりと作品にも反映されており、映画を見た多くの人は戦争の哀しみや虚しさ、そして家族や祖国の為に死んでいった兵士たちへの敬意といったものを感じることが出来ると思います。できれば、今回の作品と併せて、前作『父親たちの星条旗』を見てもらうと、より監督のコメントや制作動機が理解できると思います。

  この映画はお正月映画としては重い映画ですが、ぜひ多くの人に見てもらいたい作品です。

製作年度 2006年 
製作国・地域 アメリカ
上映時間 141分
監督 クリント・イーストウッド 
製作総指揮 ポール・ハギス 
原作 栗林忠道 、吉田津由子 
脚本 アイリス・ヤマシタ 
音楽 クリント・イーストウッド 
出演 渡辺謙 、二宮和也 、伊原剛志 、加瀬亮 、松崎悠希 、中村獅童 、裕木奈江 

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 『ダイハード』この映画を見て!

第134回『ダイハード』
Die  今回はクリスマスイブにお薦めのアクション映画『ダイハード』を紹介します。この映画はテレビで何度も放映されているので見たことある人も多いと思います。テロリストに占拠された高層ハイテクビルを舞台に、妻を訪ねた中年の冴えない刑事マクレーンが孤立無援で戦う姿を描き、多くの映画ファンの心をつかみました。脚本の伏線の張り方、各キャラクターの魅力、ダイナミックなアクションシーンと見所の多い映画です。
 私がこの映画を初めて見たのはもう20年くらい前になりますが、あまりの面白さに何回も繰り返し見たものでした。80年代のアクション映画というとスタローンやシュワルツネッガーなどマッチョ系のスターが活躍する作品が主流でした。そんな中、禿げ気味でお腹もたるんでいる中年の刑事が主人公というアクション映画は非常に新鮮に感じたものでした。

 完全無欠なヒーローでなく、弱音や文句を吐きながら敵を倒していくマクレーンの姿は見ていて、感情移入しやすいキャラクターでした。
 また脇役の描き方も魅力的で、テロリスト(強盗)のリーダーを演じたアラン・リックマンの狡猾さは見ていて本当に憎々しいですし、マクレーンとパウエル警官との無線だけで結ばれた友情は見ていて胸が熱くなったものでした。
 アクションシーンも限定された空間を巧みに利用して、緊張感溢れる展開の連続で手に汗握って見たものでした。特に映画のラストの爆破する屋上から消火栓を体に巻いて飛び降りるシーンは大胆な脱出方法に画面に釘付けになりました。
 
 『ダイハード』は続編が3本制作されていますが(来年に『ダイハード4』が公開予定)、1作目を超えることはないと思います。2作目は空港を舞台に1作目を超えるダイナミックなアクションシーンが数多くありましたが、マクレーンが超人的なヒーローとなりすぎており、もう一つでした。3作目に至っては限定された空間や時間の中でのアクション映画というダイハードの魅力が活かされておらず、続編として制作する必要があったのかさえ疑問でした。来年にはダイハード4が公開されますが、サイバーテロと戦うというストーリーは一体どういう展開になるのか興味はあるものの、恐らく1作目は超えられないと思います。
 
 もしまだ見たことのない人がいたら絶対見てください。ここまで面白いアクション映画はなかなか見つかりませんよ。

製作年度 1988年 
製作国・地域 アメリカ
上映時間 131分
監督 ジョン・マクティアナン 
製作総指揮 チャールズ・ゴードン 
脚本 ジェブ・スチュアート 、スティーヴン・E・デ・スーザ  音楽 マイケル・ケイメン 
出演 ブルース・ウィリス 、アラン・リックマン 、ボニー・ベデリア 、アレクサンダー・ゴドノフ 、レジナルド・ヴェルジョンソン 、ポール・グリーソン 、ウィリアム・アザートン 、ハート・ボックナー 、ジェームズ繁田

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