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2006年11月19日 - 2006年11月25日

『トンマッコルへようこそ』この映画を見て!

第131回『トンマッコルへようこそ』
Welcome_to_dongmakgol  今回紹介する作品は昨年に韓国で800万人という記録的観客を動員した反戦ファンタジー映画『トンマッコルへようこそ』です。この作品は元々舞台劇として発表されていたものを映画化したものです。 

 ストーリー:「朝鮮戦争の最中、『トンマッコル』という桃源郷のような村に迷い込んだ3組6人の兵士たち。北の人民兵3人に、南の韓国軍兵士2人、そしてアメリカの連合国軍兵士1人。最初は村の中で敵同士憎みあっていた北と南の兵士たち。しかし、戦争など知らないトンマッコルの純粋な村人たちの姿に影響を受け、いつしかお互いに憎みあうことを止め心の絆を結ぶまでになる。村での牧歌的な生活は戦闘で疲れ果てた兵士たちの心と体を癒し、失われていた人間性を回復させる。しかし、村にも次第に朝鮮戦争の危機が迫ってきていた。そのことを知った6人の兵士たちは村を守るために力を合わせて大きな敵と戦うことを決める。」

 この作品に関しては私の好きな久石譲が音楽を担当していると言うことで、昨年からずっと注目をしていました。日本での公開を楽しみにしながら、韓国で先行発売されたサントラだけは事前に購入して聞いていたものでした。(このサントラは音が悪いです。買うなら今発売されている日本版を買ってくださいね。)久石さんの音楽はまるで宮崎作品を彷彿させるような音楽で、幻想的で心温まる旋律が耳に心地よく、何度も聴いたものでした。音楽を聞けば聞くほど一体この音楽がどのような映像に付いているのかとても気になったものでした。
 韓国公開から1年後、やっと日本でも公開され、私もすぐに劇場に駆けつけ鑑賞しました。最初見たときは久石さんの音楽がどのように使われているかに目が行ってしまったのですが、ファンタジックな映像に久石さんのファンタジックな音楽が見事に融合されていました。なぜ監督が久石さんに音楽を頼んだのかよく分かりました。(監督は昔から久石さんのファンだったようで、自分の作品で久石さんに音楽を担当してもらうのが夢だったようです。)

 私がこの作品で一番印象的なシーンは、農作業や狩りを通していがみ合う兵士たちが仲良くなっていくところです。特に猪の肉を食べるうちに険しい表情だった兵士たちの顔に笑みがこぼれるシーンは、人間の幸せとは何かをハッと気付かされました。美味しいものを食べるという当たり前のことが人間を幸せにしてくれるということをこの映画は教えてくれます。
 
 また私がこの映画で一番ほろっと泣いたシーンは北と南の兵士たちが村の中で初めて出会い、雨の中でいがみ合っているところに村の少女ヨイルが現れ、兵士の顔を布でそっと拭うところです。なぜか見ていて、切なさで胸がいっぱいになってしまいました。

 前半の銃や爆弾など戦争を知らないトンマッコルの村人と兵士たちのちぐはぐなやり取りは、見ていてとても可笑しく、それでいて戦争の愚かさがよく伝わってくる名シーンでした。
 
 この作品は心温まるファンタジー映画のように宣伝されていますが、実際はかなり強いメッセージ性を持った反戦・反米映画です。私も途中まではほのぼのとした癒し系の作品だと思って見ていたのですが、後半から徐々にシリアスな展開となっていきます。あまりにも辛い展開に私も胸が何度も締めつけられました。
 ラストもある意味とても哀しい結末なのですが、なぜか清々しく希望に満ちた仕上がりになっています。兵士たちのラストシーンの笑顔。それは未来への希望が託されていると思います。

 この映画は朝鮮戦争による南北分断の悲劇と南北統合への祈りが込められています。この作品を見ると、大国の思惑や思想に翻弄され、同じ民族が憎みあい、武器を持ち殺し合うことの滑稽さや哀しみが身にしみて分かります。この映画が韓国でなぜ大ヒットしたのか、そこには韓国の人たちの平和と民族統一の願いが背景にあるのでしょう。それに関しては日本人にはピンとこないところがありますが、南北分断には日本の戦前の植民地政策も影響していたりして、決して関係ないわけではありません。それに日本の経済復興は朝鮮戦争のおかげでもあるわけで、日本人も間接的にあの戦争には関わっています。そう考えるとこの映画は日本人にとっても胸の痛む映画です。
 
 私の中でこの映画は今年の映画Best5に入るほど傑作だと思っています。笑って、泣いて、いろいろ考えさせてくれる作品『トンマッコルへようこそ』。ぜひ多くの人に見て欲しいです。
 
製作年度 2005年 
製作国・地域 韓国
上映時間 132分
監督 パク・クァンヒョン 
原作 チャン・ジン 
脚本 チャン・ジン 、パク・クァンヒョン 、キム・ジュン 
音楽 久石譲 
出演 シン・ハギュン 、チョン・ジェヨン 、カン・ヘジョン 、イム・ハリョン 、ソ・ジェギョン 、スティーヴ・テシュラー 、リュ・ドックァン 、チョン・ジェジン 、チョ・ドッキョン 、クォン・オミン 

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『タンポポ』この映画を見て!

第130回『タンポポ』
Tanpopo_1  今回紹介する作品は見た後に無性にラーメンが食べたくなる『タンポポ』です。初監督作品「お葬式」で高い評価を受けた伊丹十三の監督の第2作目に当たるこの作品。伊丹監督は食べ物を素材にすれば実に官能的な映画ができるのではないかと考え、この作品を制作したそうです。伊丹監督はこの作品で100種類以上の食べ物を登場させ、食に関する人間の様々な姿をコミカルに描いていきます。
 伊丹監督はこの作品の脚本を書くとき、様々な食に関するエピソードをどういう風に展開させていけばいいのか悩んだそうです。悩んだあげく、ふと思いついたのが西部劇をベースに話しを展開させることだったそうです。その為、この作品では『シェーン』や『怒りの葡萄』の影響がとても強く感じられる仕上がりになっています。

 ストーリー:「タンクローリーの運転手ゴローとガンは、来々軒というさびれたラーメン屋に偶然立ち寄る。その店はタンポポという女主人が一人で経営していたがラーメンの味は今ひとつだった。タンポポは彼らにラーメンの味がまずいと指摘されてから、街一番のラーメン屋を目指し、ゴローと彼らの仲間の協力を経てラーメン作りに没頭することになる。」
 この映画はラーメン作りの話しをメインにしながらも、それとは無関係な食に関する13の短いエピソードが挿入されています。どれも食に関する人間のこだわりが描かれているのですが、どれも強烈な印象を残すエピソードばかりです。
 
 私がこの映画を初めて見たのは小学生の時でしたが、ラーメンの美味しそうなシーンもさることながら、役所広司のエピソードに釘付けになったのを覚えています。卵黄を口移ししたり、乳房に生クリームをつけてしゃぶったり、生きたエビをお腹に当てて遊んだり、大人の世界の奥深さを小学生ながらに強く感じたものでした。
 また役所広司が生牡蠣を海女の手からほおばるシーンは子どもの時にはその意味がよく分からなかったのですが、大人になって見返して、そのシーンの意味することがようやく分かりました。少女の手から血の付いた牡蠣をほおばる男の意味するところはロストバージンを描いていたのですね。私の中でこの映画以上にエロティシズムを感じさせる映画に未だであったことはありません。
 
 後、私がこの映画を見て強く影響されたのが、ラーメンの食べ方とオムライスの作り方です。
 映画の冒頭で紹介される正しいラーメンの食べ方を見てから、私はラーメンを食べるとき、チャーシューを右後方においてしまします。(見た人は分かると思います)
 またチキンライスの上にふかふかのオムレツを載せ、ナイフを入れると半熟の黄色い卵がどろりと流れ出すオムライスの作り方はとても印象に残り、自分でも何回かその作り方でオムライスを作ったものでした。しかし、どうしてもあのシーンのように上手くできないんですよね。ちなみに、あの映画でオムライスを作るシーンは伊丹監督自らが作っていたそうです!伊丹監督恐るべき才能です。

 この映画、最近DVDを買って久しぶりに見返してみたのですが、出演している役者の豪華さにびっくりしました。山崎努に役所広司に渡辺謙という現在の日本映画を代表する顔ぶれが一つの映画で登場するなど今見るとすごい取り合わせです。また脇役も個性派揃いです。特に歯痛の男を演じる藤田敏八、餅を喉につまらせ掃除機を口に突っ込まれる大滝秀治、死にそうな妻に夕食を作らせる井川比佐志、この3人の演技は脇役ながら強い印象が残りました。

 映画のラストが母乳を飲む赤ん坊で終わるのも、人間が初めて口にするのは母親のおっぱいであるという当たり前のことにハッと気付かされます。

 この映画を超える食を扱った映画は世界広といえどもないと思います。子どもにはあまりお勧めできませんが、大人の方にはぜひ見て欲しいグルメ映画です。きっと見終わるとラーメンが食べたくなるでしょう。

 
製作年度 1985年 
製作国・地域 日本
上映時間 115分
監督 伊丹十三 
脚本 伊丹十三 
音楽 村井邦彦 
出演もしくは声の出演 山崎努 、宮本信子 、役所広司 、渡辺謙 、安岡力也 、桜金造 、池内万作 、加藤嘉 、大滝秀治 、黒田福美 、篠井世津子 、洞口依子 、津川雅彦 、村井邦彦 、松本明子 、榎木兵衛 、粟津潔 、大屋隆俊 、瀬山修 、野口元夫 、嵯峨善兵 、成田次穂 、田中明夫 、高橋長英 、加藤賢崇 、橋爪功 、アンドレ・ルコント 、久保晶 、兼松隆 、大島宇三郎 、川島祐介 、都家歌六 、MARIO ABE 、高木均 、二見忠男 、横山あきお 、辻村真人 、高見映 、ギリヤーク尼ヶ崎 、松井範雄 、佐藤昇 、日本合唱協会 、福原秀雄 、北見唯一 、柴田美保子 、南麻衣子 、鈴木美江 、小熊恭子 、伊藤公子 、上田耕一 、大月ウルフ 、大沢健 、藤田敏八 、原泉 、井川比佐志 、三田和代 、中村伸郎 、田武謙三 、林成年 、大友柳太朗 、岡田茉莉子 

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『ララバイSINGER』

中島みゆきのアルバム紹介No.2『ララバイSINGER』
Luluby_singer  中島みゆき約3年ぶりの全曲書き下ろしの新作アルバム『ララバイSINGER』がついに発売されました!今回のアルバムは曲のバラエティに富んでおり、昔からのファンも最近はまったファンも満足させる仕上がりになっています。
 1曲目の『桜らららら』は2分少々の短い曲ですが、ギターの軽やかな音色が耳に心地よいフォークソング調の曲で初期の中島みゆきの曲を彷彿させるような作品です。
 1曲目からシームレスに続く2曲目の『ただ・愛のためにだけ』。この曲は岩崎宏美に提供した曲ですが、1曲目と同じく軽やかに歌い上げています。中島みゆきらしい切なさと力強さが入り混じった恋愛ソングです。
 3曲目はTOKIOに提供した『宙船(そらふね)』。この歌、TOKIOのバージョンとは全く印象が違います。とにかく中島みゆきのドスの利いた声の迫力に圧倒されます。この曲はぜひコンサートで聞いてみたいです。
 4曲目は華原朋美に提供した『あのさよならにさよならを』。3曲目とは正反対の静かな曲で、中島みゆきの優しい歌声が聞く人の心を包みこみます。
 5曲目は工藤静香に提供した『Clavis-鍵- 』。ラテン調のリズムと歌い方がとても印象的です。歌詞は『with』を彷彿させるような内容でした。
 6曲目『水』は抽象的な歌詞が印象的で、夜会の中の1曲といった感じでした。5曲目からシームレスに続くので、5曲目と何らかの繋がりのある曲なのかなと思いました。この曲で歌われる水は一体何を喩えているのでしょう。心?幸せ?絆?あなたの心にとっての水とは何か、いろいろ考えさせられる味わい深い曲です。
 7曲目『あなたでなければ』は吉田拓郎調の曲です。中島みゆきから吉田拓郎にあてた新たな恋文のような印象を受けました。
 8曲目『五月の陽ざし』は遠い過去の切ない思い出を歌った曲です。ノスタルジックな曲調と中島みゆきの暖かい歌声が印象的です。でもなぜ贈り物がドングリだったのかが非常に気になります。
 9曲目『とろ』はタイトルがとてもインパクトのある曲です。『とろ』って何だろうって最初聞いて思いました。しかし、何回か聞いている内にこれって「とろい」ってこと何だって分かりました。とろい自分への苛立ちをコミカルに歌った曲です。
 10曲目『お月さまほしい』はタイトルだけ見てもどんな曲かイメージがつきにくいですが、無力な自分に対する苛立ちと人に対する熱い思いが込められた曲です。つぶやくような声から力強い歌声に変わっていく歌い方は中島みゆきらしい歌い方です。
 11曲目『重き荷を負いて』は今回のアルバムの中でも一番聴き応えのある曲です。歌詞は『地上の星』や『心守歌』に近い感じです。がんばっている人たちへの熱いエールが胸を打つ名曲です。 
 12曲目『ララバイSINGER 』はデビュー曲『アザミ嬢のララバイ』のコール・アンド・レスポンス的な曲として作られたそうです。孤独な時は自分で自分を励ましていけという力強い歌詞が印象的でした。
 
 今回のアルバムは中島みゆきの奥深い声と歌詞と表現がよく分かるアルバムとなっています。中島みゆきファンはもちろんのこと、ビギナーの方にもお薦めできるアルバムです。ぜひ聞いてみてください!

1. 桜らららら 
2. ただ・愛のためにだけ 
3. 宙船(そらふね) 
4. あのさよならにさよならを 
5. Clavis-鍵- 
6. 水 
7. あなたでなければ 
8. 五月の陽ざし 
9. とろ 
10. お月さまほしい 
11. 重き荷を負いて 
12. ララバイSINGER 

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『コーラスライン』この映画を見て!

第129回『コーラスライン』
A_chorus_line  今回紹介する映画はブロードウェイの劇場を舞台にコーラスラインのオーディションに参加する若いダンサー達の姿を描いたミュージカル『コーラスライン』です。この映画は元々ブロードウェイの舞台として制作された作品で、マイケル・ベネット原案・振付・演出により1975年に初演されました。舞台版は大変高い評価と人気を得て、ブロードウェイで6136回という上演記録を残しました。この記録は『キャッツ』に続いて史上2番目のロングラン記録を保っています。日本でも1979年から劇団四季が上演をしており、大変高い人気を得ています。
 このミュージカルの大きな特長は劇場のステージという限定された場所で物語が進行する所と舞台を支える無名のバックダンサーたちにスポットを当てた所にあります。ブロードウェイのオーディションの厳しさや様々な人生を辿ってきたダンサーたちの舞台にかける情熱を余すことなく描いたストーリーは今までのミュージカルにはない現実感があります。夢や愛を振りまくミュージカルの舞台裏の厳しい現実。しかし、それでも舞台の魅力に取り憑かれ必死に夢を追う若者たち。その懸命な姿は見る者に深い感動を与えます。
  
 映画版コーラスラインは舞台版を忠実に再現した作品となっており、舞台版と同じく劇場のステージという限定された場所で物語が展開していきます。バックダンサーたちのオーディションを描く作品と言うことでセットや衣装もとても地味です。出演している役者もマイケル・ダグラスを除いて特に有名な役者は出てきません。演出もオーソドックスで、変にカメラワークを凝ったりすることなく、ひたすら若者たちの踊る姿を真正面から撮っています。
 映画の作り自体は特に凝ったところはないのですが、それが逆に舞台を観ているような感覚にさせてくれます。またダンスシーンの迫力は観る者を圧倒します。この映画を観ると踊ることの楽しさや面白さが伝わってきます。
 
 私が特に好きなナンバーは映画の中盤に出てくる『サプライズ・サプライズ』と誰もが知っている名曲『ワン』の2つです。
 『サプライズ・サプライズ』は黒人ダンサー・リチーの踊りに目を奪われます。そのキレとスピードと柔軟性はすごいの一言です。
 ラストに披露される『ワン』はこの映画を知らない人でもどこかで聞いたことがあるほど有名な曲です。その華やかな美しさは過酷な舞台裏のダンサーたちの情熱によって支えられているのかと思うと胸が熱くなります。
 
またマイノリティを中心に据えたストーリーもとても印象に残りました。中国系アメリカ人・プエルトリコ人・ユダヤ人など様々な人種やゲイなど社会の中で抑圧されてきた人たちが、実力さえあれば認められるショービジネス界で生きていこうとする姿はアメリカの内情を見事に描いています。

 この作品はミュージカルが苦手な人でも違和感なく見られる作品だと思います。他のミュジカル映画にはない奥の深いストーリーとダンサーたちの華麗な動きを是非見てみてください! 

製作年度 1985年 
製作国・地域 アメリカ
上映時間 118分
監督 リチャード・アッテンボロー 
脚本 アーノルド・シュルマン 
音楽 マーヴィン・ハムリッシュ 
出演 マイケル・ダグラス 、アリソン・リード 、マイケル・ブレビンズ 、テレンス・マン 、グレッグ・バージ 、ジャスティン・ロス 、キャメロン・イングリッシュ 、ブレイン・サヴェージ 、ヴィッキー・フレデリック 、オードリー・ランダース 、ジャネット・ジョーンズ 、ミシェル・ジョンソン 、カンディ・アレクサンダー 

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『失敗学のすすめ』街を捨て書を読もう!

『失敗学のすすめ』 著:畑村洋太郎 講談社文庫
Hatakemura   失敗って誰でも嫌で、隠したいものですよね。日本ではどうしても失敗というと恥ずかしいものとしてマイナスイメージとして捉えがちです。しかし、「失敗は成功の母」という言葉もあるように失敗は決して悪いことではありません。失敗は成功への近道であり、社会技術の発展のための大きな原動力となります。
 この本は失敗をどのように活かすべきか、そのノウハウが書かれています。著者はもともと東大で機械工学を教えている教授で、機械の設計を行う際に必要な知識や技術をどのように教えるか考える内に失敗の重要性を認識し、失敗学という学問の必要性を感じたそうです。
 著者は失敗を「人間が関わって行うひとつの行為が、はじめに定めた目的を達成できないこと」とまず定義します。その上でさらに「良い失敗」と「悪い失敗」とに分けて考えていくことを提案します。「良い失敗」とは未知との遭遇による人間にとって不可避な失敗であり、「悪い失敗」とはシステムの硬直化やマニュアルに頼りすぎた人間の怠慢による失敗であると著者は説明します。そして、良い失敗の場合は物事の新しい側面を発見することが大切であり、悪い失敗の場合はどう回避していくかを常に考えていくことが大切であると説きます。
 その上で、過去の失敗をどう活かしていくか、そして同じ失敗を繰り返さないためにどうしていくべきか、その対策方法を幾つか提案しています。失敗をどう周囲に伝えていくか、失敗をどう成功へと活かしていくか、そしてどのような組織で失敗が起きやすいのか、著者は様々な実例を挙げて、具体的に解説しています。
 失敗は避けたいものですが、それでもなお失敗してしまった時、その失敗をどう活かしていくか?この本には失敗を肯定的に受け止めるヒントが数多く載っています。

 

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『マクドナルド化する社会』街を捨て書を読もう!

『マクドナルド化する社会』 著:ジョージ リッツア  早稲田大学出版部
Mcdonaldization_of_society   マクドナルドは誰もが知っている有名なハンバーガー店で、日本でも多くの人が一度は行ったことがある店だと思います。マクドナルドは現在121か国にあり、その店舗数は約31,000店舗にも及ぶそうです。マクドナルドは今や世界を席巻するファストフード・レストラン・チェーンです。
 マクドナルドはマクドナルド兄弟がアメリカのカルフォニアで1940年に開業し、スピードと効率化を求めた販売システムが話題になりました。しばらくはカルフォニアだけで営業されていたのですが、1954年に大きな転換点が訪れます。企業家のレイ・クロックがマクドナルドの販売方法に注目し、マクドナルドのシステムをフランチャイズ形式にして、システムそのものを売る商売を始めてはどうかと兄弟に勧めたそうです。その後、クロックがマクドナルドシステム会社を設立。その後、マクドナルド兄弟はクロックに全権利を譲り、クロックがマクドナルドを経営し、世界的なファストフード・レストラン・チェーンに発展させてきました。
 マクドナルドの大きな特徴は徹底的な省力化・効率化を行い、注文後すぐに商品が出てくるようになっている所と、世界中どこの店で食べても基本同じ味が提供されているという所にあります。マクドナルドが生み出した省力化・効率化・品質管理のシステムは今やファストフード業界だけでなく、ビジネスを始め、医療・教育など社会の幅広い分野に影響を与えるまでになっています。

 今回紹介する本『マクドナルド化する社会』はマクドナルドを代表とする現代社会の効率化や合理化が現代人に与える問題点を鋭く分析しています。社会学者である著者はマクドナルドのシステムを「効率性」「計算可能性」「予測可能性」「制御」の4つの要素から成り立っていると分析します。
 徹底したマニュアル化やルーチン化、そして人間に頼らない技術の開発。これらにより多くの人間が自律性や創造性を奪われ、システムに対して忠実に動くことだけが求められる脱人間化した現代の社会システム。そんな現代社会の非人間性に対し著者は警鐘を鳴らします。
 もちろん効率化や合理化は現代人に便利さやコストダウンなどの多くの恩恵を与えてきました。今さら効率化や合理化を止めるなどは難しい話しです。
 しかし、このまま効率化や合理化を推し進めることが本当に人間を幸せにするのか?この本は現代社会で生きる私たちに深い問題提起を投げかけています。
 
*内容
第一章 マクドナルド化入門
第二章 マクドナルド化とその先駆者たち
第三章 効率性
第四章 計算可能性
第五章 予測可能性
第六章 制御
第七章 合理性の非合理性
第八章 マクドナルド化の鉄の檻
第九章 マクドナルド化の最先端分野
第十章 マクドナルド化する社会のなかで生きるための実用ガイド
 

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