« 2006年10月8日 - 2006年10月14日 | トップページ | 2006年10月22日 - 2006年10月28日 »

2006年10月15日 - 2006年10月21日

『ルパン三世 カリオストロの城』この映画を見て!

第122回『ルパン三世 カリオストロの城』
Kariosutoro  今回紹介する映画は宮崎駿監督の初の劇場公開作品であり、今なお絶大な人気を誇る傑作アクション映画『ルパン三世 カリオストロの城』です。この作品は当時人気のあったアニメ『ルパン三世』シリーズの劇場第2作目として制作されました。1作目の『ルパンVS複製人間』は10億円を超える大ヒットをしたのですが、意外にも『カリオストロの城』は公開当時は興行的には不振に終わりました。しかし、評論家からは絶賛され、海外で公開されたときは絶大な人気を誇りました。スピルバーグ監督やキャメロン監督などハリウッドのヒットメーカーもこの作品を高く評価しています。(キャメロン監督の『トゥルーライズ』のオープニングはこの映画の影響が強いです。)
 私はこの映画をテレビで放映されたときに見たのですが、あまりの面白さに画面に釘付けになったものでした。何と言ってもアニメならではの表現を活かしたアクションシーンが素晴らしいです。前半のカーチェイスシーンのダイナミックさとスピード感、中盤の城内潜入シーンの緊張感と躍動感、そして後半の時計台での伯爵との激しい攻防戦とアクションの見せ方がとても巧みです。この映画を見て、アニメという表現の素晴らしさというものを実感したものでした。
 ストーリーもお城に囚われたお姫様を救出するという冒険活劇映画では王道な展開ですが、見せ方の上手さとテンポの良さで一瞬たりとも飽きさせません。愛とロマンとスリルに満ち溢れたストーリーを時にコミカルに、時にシリアスに描く手腕はさすが宮崎監督です。
 映画のルパンは原作のルパンの性格を改変して善人として描いています。宮崎監督はルパンを善人として描くために、原作よりも年齢を高めに設定して描いたそうです。原作ファンからは不評ですが、私はこの映画の年を取り、丸くなったルパンが大好きです。中年の男性の渋い魅力が見事に描かれています。
 またルパンを始めとして次元・五右衛門・不二子・銭形警部と各キャラクターに見せ場があり活き活きと活躍しているのも嬉しい限りです。特に銭形警部は脇役ながら、誰しもが知っている有名なラストのセリフのおかげで強烈な印象を残します。この映画のヒロインであるクラリスも宮崎アニメのヒロインらしく可憐さと気丈さを兼ね備えた印象的なキャラクターです。
 この映画は今見ても一級の娯楽作品であり、宮崎監督の映画の中でも最高に面白い作品だと思います。 
 
製作年度 1979年 
製作国・地域 日本
上映時間 100分
監督 宮崎駿 
原作 モンキー・パンチ 
脚本 宮崎駿 、山崎晴哉 
音楽 大野雄二 
出演 山田康雄 、小林清志 、増山江威子 、井上真樹夫 、納谷悟郎 、島本須美 、石田太郎 、宮内幸平 、永井一郎 、山岡葉子 、常泉忠通 、寺島幹夫 、野島昭生 、阪脩 

| | コメント (2) | トラックバック (6)

宮崎学の本

 私の尊敬する作家に宮崎学がいます。彼は自分のことをアウトロー作家と呼び、国家権力や戦後民主主義に鋭い批判を投げかける一方、ヤクザなどのアウトローへ親近感を寄せる文章を数多く発表しています。
 彼は1945年京都のヤクザの組長の下に生まれ、早稲田大学時代は共産党に入り、ゲバルト体調として数々の活動を指揮するも、共産党に幻滅し脱退。『週刊現代』の記者として何年か過ごした後に、実家の解体業を継ぎ、バブル時代は地上げ屋などもしていたそうです。しかし、解体業が上手くいかず倒産し、莫大な借金を抱えたそうです。森永・グリコ事件の時は重要参考人として警察にマークされた時期やヤクザに銃で腹を撃たれる等数々の修羅場をくぐり抜け、自伝的作品『突破者』でデビューして、ベストセラー作家になります。その後は、裏社会の実態や国家権力に対する批判を書いたノンフィクションや伝説的アウトローを描いた小説を数多く発表しています。近年、『近代の奈落』という被差別部落解放運動を追ったルポにて自らが被差別部落出身であることを発表し話題になりました。
 私が彼の作品と初めて出会ったのは大学生の時でした。その当時は左翼に傾倒しており、マルクス主義の本や国家権力を批判する本をいくつも読んでいました。その当時は革命を起こして国家が変われば、日本という国家は変わるのでないかと真剣に思っていた時期であり、左翼の運動にも積極的に関わっていました。しかし、左翼の運動家の人たちの組織的(レーニン的)な運動の仕方に疑問を感じてもおり、自分がしていることが本当に正しいことか迷っていた時期でもありました。そんな時期にたまたま彼の本を手に取る機会があり目から鱗が落ちたものでした。彼は元共産党党員でありながら「市民」や「党派性」へ批判的であり、組織的な運動の限界について語っており、まさしく当時の自分が疑問に思っていたことへの答えを得ることが出来て救われたものでした。それ以降、私はあくまでも個を出発点として、アウトロー的に闘っていこうと決めたものでした。
 現在、私は彼の本が出るたびに欠かさず買って読ませてもらっています。彼の本はどれも国家や市民社会に対して厳しい批判を投げかけてる一方、そんな混沌とした時代の中で個人がどう生きていくべきか読者に問いかけます。彼は現代に蔓延する合理主義やクリーンな全体主義を否定すると同時に、どこまでも個を貫き、個として闘うことを読者に訴えます。そんな彼の主張は私にとって大きな励ましです。
  
 私のお薦め作品Best3
 3位『叛乱者グラフィティ 』
Manabu1  60年代の学生・若者による運動は何を意味していたのか? 当時活躍していた運動家たちを招き、当時の様子や現代の社会について熱く語り合います。巻末には中核派にスパイとして疑われた作者の反論も掲載されています。

 2位『近代の奈落』
Manabu3  全国各地の部落を訪ね、運動家に会い、かつてその地で激しく闘いつつ悩み葛藤した、姿をいきいきと描いたルポタージュ。部落問題を通して近代日本とは、部落解放運動とはなんだったのかを読者に問いかけます。

1位『突破者―戦後史の陰を駆け抜けた50年』
Manabu2  ヤクザの組長の息子として生まれ、学生運動に身を投じ、雑誌記者を経て全国指名手配。グリコ・森永事件で犯人「キツネ目の男」に擬された男・宮崎学の自伝的作品。この本を読めば宮崎学が分かります。

宮崎学公式サイト http://miyazakimanabu.com/

宮崎学が責任編集しているサイト『直言』http://web.chokugen.jp/miyazaki/cat69319/index.html


  

| | コメント (1) | トラックバック (0)

私の映画遍歴8「ゾンビ映画」

Zombie  私の映画遍歴を語る上で外せないジャンルとしてゾンビ映画があります。ゾンビ映画というとB級感が漂い、良識的な映画ファンからは見向きもされないジャンルでありますが、一度はまると病みつきになる魅力があります。
 私が初めてゾンビ映画と出会ったのは小学生の時にテレビで見た『バタリアン』でした。この映画はゾンビ映画の名作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の続編という形で制作された映画でした。この映画はコメディタッチで描かれており、今見ると大して怖くないのですが、当時は死人が襲ってくる状況が怖くて震え上がったものでした。この映画を見て初めてゾンビ映画というものを意識したものでした。
 そして中学生の時に私をゾンビ映画の虜にしてしまったゾンビ映画の最高傑作『ゾンビ』にめぐりあいました。初めてこの映画に出会ったときは非常に衝撃を受けました。過激なゴアシーン、現代社会を風刺したストーリー、サバイバルアクションとしての面白さ、そして終末観に満ちた雰囲気。今まで見たホラー映画にはない風格といったものを感じ、ビデオを購入して何回も見直したものでした。(恐らく今までに50回以上は見ていると思います。)ショッピングセンターでの人間とゾンビの攻防戦と生き残った人間たちがショッピングモールを占拠する場面はこの映画最大の見所であり、魅力でもあります。私自身この映画を見るたびに自分がショッピングモールに立て籠もったらどう行動すべきかシュミレーションしたものでした。この映画を見ずしてゾンビ映画を語ることはできないと思います。
 『ゾンビ』を見た後、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』・『死霊のえじき』とジョージ・A・ロメロのゾンビ映画を見まくったものでした。ロメロのゾンビ映画は基本的にゾンビが襲う恐怖よりも人間の愚かさや醜さに焦点をあてて描いており、他のゾンビ映画にはない奥の深さがあります。昨年20年ぶりの新作『ランド・オブ・ザ・デッド』が公開されロメロファンを喜ばせした。映画の完成度はもう一つでしたが、ロメロらしい社会風刺が見られ、他のゾンビ映画にはない風格がありました。
 ロメロのゾンビにはまってから、他の監督のゾンビ映画も片っ端からレンタルビデオで借りて見たのですが、『サンゲリア』や『ブレインデッド』など少数の作品を除いては、シナリオがちゃちかったり、ゴアシーンが手抜きだったり外れの作品が多かったものでした。ゾンビ映画で面白いと思える作品はグログロなゴアシーンと大量のゾンビが人間を襲うシーン、そして終末観漂う雰囲気がきちんと描かれています。
 『バイオハザード』や『ドーン・オブ・ザ・デッド』など近年ゾンビ映画が再びブームとなり劇場公開されており、ゾンビ映画ファンとしては嬉しい限りです。特にジョージ・A・ロメロの作品をリスペクトしたコメディタッチのゾンビ映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』は久々の傑作でした。
 ゾンビ映画には人間の死に対する恐怖や人間の本来持つ暴力性・残酷さといった面を刺激し、人間の歪んだ欲望を満たしてくれます。
 

 私のお気に入りゾンビ映画 Best5

5位 『バタリアン』
バタリアン
見所:ユニークなゾンビの面々たち。そして衝撃の結末

4位  『サンゲリア』 
サンゲリア
見所:海中でのサメ対ゾンビの対決、目玉串刺しシーン。

3位 『ショーン・オブ・ザ・デッド』
ショーン・オブ・ザ・デッド

見所:イギリスらしいウエットとブラックに富んだユーモアの数々。

2位 『ブレインデッド』
ブレインデッド
見所:プール一杯の血糊を使ったラスト30分の展開の怒濤の展開。

1位 『ゾンビ』 
ゾンビ 米国劇場公開版 GEORGE A ROMERO’S DAWN OF THE DEAD ZOMBIE
見所:この映画を見ずゾンビ映画は語れません!全て見所です。

| | コメント (12) | トラックバック (4)

『子連れ狼 三途の川の乳母車』この映画を見て!

第121回『子連れ狼 三途の川の乳母車』
The_river_styx  今回紹介する映画はカルト的人気を誇る時代劇『子連れ狼 三途の川の乳母車』です。この映画はタランティーノ監督も大絶賛をしており、『キル・ビル vol1』のラストの青葉屋のチャンバラシーンはこの映画の影響を強く受けています。
 若山富三郎主演による『子連れ狼』シリーズは6本制作されており、今回紹介する映画『三途の川の乳母車』は3作目に当たります。ストーリーは乳母車を押しながら旅する拝一刀と彼の命を狙う柳生一族との激しい闘い、そして阿波藩から依頼された公儀護送役<弁・天・来>の三兄弟の抹殺の任務を描きます。ストーリーは全く無駄がなく、スピーディーに展開していきます。
 この映画の最大の見所はスプラッター映画顔負けの残酷描写です。血が噴き出すのは当たり前で、手足が飛び、頭が二つに割れるなど過激なシーンの連続です。そのあまりの過激さにはもはやギャグと言ってもよく、見ていて嫌な感じはほとんどしません。また大五郎がのる乳母車が様々な仕掛けが装備されており、笑ってしまいます。
 また松尾嘉代がヌードになるシーンがあるのですが、そのシーンがものすごく艶めかしく、目が釘付けになります。
 若山富三郎の刀さばきも格好いいですし、彼の渋さがとても魅力的です。
 この映画は現在日本版DVDは発売されておらず、私も台湾版DVDを購入して鑑賞しました。レンタルビデオで貸し出している所もあるようなので、もし見つけたら借りて見てください。お薦めのカルト時代劇です。

制作年度 1972年 
製作国・地域 日本
上映時間 85分
監督 三隅研次 
製作総指揮 - 
原作 小池一雄 、小島剛夕 
脚本 小池一雄 
音楽 桜井英顕 
出演 若山富三郎 、富川晶宏 、松尾嘉代 、岸田森 、新田昌玄 、鮎川いづみ 、大木実 

| | コメント (0) | トラックバック (1)

『スピード』この映画を見て!

第120回『スピード』
Speed  今回紹介する映画はノンストップアクション映画の傑作『スピード』です。この映画は次々と危機が訪れる息つく暇のない展開の面白さと主演のキアヌ・リーヴスのかっこよさが受けて大ヒットしました。
 監督はヤン・デ・ボンという人で、この映画が初監督作品でした。彼は『ダイ・ハード』や『リーサル・ウェポン』等のアクション映画の撮影を数多く手がけており、以前からアクション映画に関するノウハウをたくさん持っていました。この映画ではそんな彼の経験が最大限活かされています。(しかし、この映画以降の監督作品はどれもパットしませんが・・・)無駄の一切ない緊張感溢れる展開やアクションシーンの見せ方の上手さなどはさすが数多くのアクション映画の撮影を手がけてきただけのことがあります。 
 脚本も新人の脚本家グラハム・ヨスト が担当しているのですが、邦画の影響を強く受けています。彼は黒澤明監督が映画化する予定で書いていた『暴走機関車』の脚本や高倉健が出演していた日本映画『新幹線大爆発』を見て、この映画のアイデアを思いついたそうです。次々と主人公を襲う危機また危機。多少強引な展開がありますが、ここまで盛り上げられたら大したものです。
 この映画は何も考えずに勢いにのって見ると楽しい映画です。突っ込もうと思ったらいくらでも突っ込みどころがある映画ですが、それは目をつむって見てください。次々と襲う危機をどう乗り越えるかを楽しむ映画です。
 あと私がこの映画を評価する点として、無駄な死人がいないところにあります。ハリウッドのアクション映画は無駄に死人が多い映画多いのですが、この映画は必要最低限の人しか死にません。そこが非常に好感が持てるところです。
 スカッとしたいとき、派手なアクションが見たいときは是非この映画をご覧ください。

製作年度 1994年 
製作国・地域 アメリカ
上映時間 115分
監督 ヤン・デ・ボン 
製作総指揮 イアン・ブライス 
脚本 グラハム・ヨスト 
音楽 マーク・マンシーナ 
出演 キアヌ・リーヴス 、デニス・ホッパー 、サンドラ・ブロック 、ジョー・モートン 、ジェフ・ダニエルズ 、アラン・ラック 、グレン・プラマー 、リチャード・ラインバック 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『千と千尋の神隠し』この映画を見て!

第119回『千と千尋の神隠し』
「トンネルの向こうは、不思議の町でした。」
Spirited_away  今回紹介する映画は国内映画興行記録を全て塗り替える大ヒットとなった宮崎アニメ『千と千尋の神隠し』です。この映画は興行記録だけでなく、世界中で大変高い評価を受け、2002年のベルリン国際映画祭でグランプリである金熊賞をアニメ作品としてはじめて受賞しました。また日本アニメで初のアカデミー長編アニメ賞を受賞して、宮崎アニメを世界中に知らしめました。
私は『もののけ姫』という大変密度の濃い作品を創り上げた宮崎監督の次回作と言うことで公開されるまでは大変期待したものでした。予告編で木村弓が歌う『いつでも何度でも』が流れたときは歌のあまりの美しさに鳥肌が立つほど感動したものでした。また予告編で説明される異世界の温泉街に迷い込んだ10歳の少女の成長を描くという物語にも大変興味を持ち、どんな映画になるのか公開までとても楽しみにしていたものでした。
 公開当時は初日に立ち見が出るほどの満員状態の映画館で見たものでした。映画の内容はさすが宮崎監督らしく2時間という上映時間があっという間に感じられる作品でした。宮崎作品だけあって映像や音楽の美しさはさすがです。飛翔シーンや高低差や上下の動きを活かしたアクションシーンも宮崎作品ならではです。しかし、今までの宮崎作品に比べると、どこかあっさりとしているような印象も受け、インパクトが弱いような気もしました。

 この映画の一番の見所はイマジネーション溢れる映像の数々です。温泉街の奇抜でカラフルな街並み、温泉街に集まる八百万の神々たち、海の上を走る電車、空を飛ぶ白い竜・・・。この作品はストーリーがどうこうと言うより、宮崎駿のイマジネーションが創り出す摩訶不思議な世界を楽しむ作品です。
 特に湯屋の赤を基調にした派手で個性的な外観や内装は観客を圧倒します。監督は日本近代の和洋折衷された建築文化を反映させ、異世界でありながらも、どこか懐かしさが感じらるような美術を目指したそうです。その甲斐あって、観客はまるで夢の世界を彷徨っているような感覚になります。
 また湯屋を取り囲む海の描写も美しく、建物の派手で賑やかな色調と対照的に、どこまで静謐で透きとおるような青は観客の心を落ち着かせます。
 
 久石さんの音楽もカラフルで美しいメロディーが多く、映像の雰囲気とよくあっています。今回はフルオーケストラとエスニックな音を融合させることにこだわったそうです。フルオケで演奏されているのにどこかアジアンテイストな雰囲気が漂う曲の数々は千と千尋の世界観をよく表しています。それと対照的に千尋の心情を語る場面ではピアノをメインにした静かな曲が流れており、印象に残りました。特におにぎりを食べるシーンと海の上を走る電車のシーンで流れるピアノをメインとした曲は、千尋の不安や切なさが伝わってくる名スコアーだと思います。

 ストーリーに関しては宮沢賢治の作品の影響を強く感じました。ストーリーの随所に見られるブラックユーモアの数々は賢治の作品にも見られますし、後半の電車に乗るシーンは宮崎駿版銀河鉄道の夜」といった感じを受けました。また宮沢賢治の作品以外にも「ゲド戦記」や「クラバート」「不思議の国のアリス」など様々な児童文学に影響を受けている場面や設定が多く見られました。
 宮崎監督はこの作品のストーリーを考えるに当たって電車に乗るシーンをクライマックスに持ってきたかったそうです。千尋が異世界で成長することを描くより、異世界で自分の意志で電車に乗って、幻想の世界と現実の世界を全部自分の世界として引き受けていくことを描きたかったそうです。この映画は千尋が変わっていく姿を追った作品でなく、自分の力を信じて一歩踏み出すまでの姿を描いた作品です。
 監督は現代社会に対する様々な風刺やメッセージを映画の随所に込めています。お金で何でも解決しようとする滑稽さ、小さな自我と欲望にこだわり身動きの取れない現代人の悲哀、自然破壊に対する怒り・・・・。この映画はファンタジーでありならが極めてリアルな面を持ち合わせています。カオナシは現代の日本人そのものであり、見ていて胸が痛くなります。
 あと私がこの映画を見て面白いと思ったのは、映画の舞台となる湯屋がどうみてもソープランドであるところです。宮崎監督自身もこの映画の舞台は神様のソープランドであることを認めています。10歳の少女がソープランドという性風俗で働かされるファンタジー映画なんて世界広しといえどもないと思います。宮崎監督はこの映画で現代の少女を取り巻く性風俗の現状を描きたかったとインタビューで答えています。
 (千と千尋の神隠しと性風俗の関係を詳細に解説した記事が下記のサイトで読めます。)
 http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20040314

 この映画のストーリーは省略されているところや説明不足な所が多く、観客の想像に任す部分が大きくなっています。監督は意図的にこのようなストーリーにしたそうです。千尋から見た世界を千尋自身が変えていくことを描くために、千尋が知らなくて良いことは全て省略したそうです。
 ストーリーの流れは起承転結の起承に当たる部分は丁寧に描かれているのに反して、転結はとても駆け足で唐突な展開になっています。(これは『ハウルの動く城』に関してもですが・・・)この映画は監督の当初の構想では3時間くらいの上映時間になるような話しを考えていたようで、それを無理に2時間で収めたそうです。そのためにストーリーの展開が後半強引なものになってしまそうです。カオナシを登場させたのも映画を2時間で収めるために急遽考えついた設定で、本来は湯婆婆と銭婆がもっと登場する作品になっていたようです。
 またそのような制作の裏事情とは別に監督はこの映画やハウルなど最近の宮崎作品はストーリーを語ることよりも自分のイマジネーションをどう表現するかに力点を置いて制作しているような気がします。その為、最近の宮崎映画はストーリーを楽しむというより、夢の世界のような映像そのものを楽しむことが正しい見方だと思います。

製作年度 2001年 
製作国・地域 日本
上映時間 125分
監督 宮崎駿 
製作総指揮 徳間康快 
原作 宮崎駿 
脚本 宮崎駿 
音楽 久石譲 
出演 柊瑠美 、入野自由 、夏木マリ 、内藤剛志 、沢口靖子 、上條恒彦 、小野武彦 、我修院達也 、はやしこば 、神木隆之介 、玉井夕海 、大泉洋 、菅原文太 

| | コメント (2) | トラックバック (2)

« 2006年10月8日 - 2006年10月14日 | トップページ | 2006年10月22日 - 2006年10月28日 »