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2006年9月24日 - 2006年9月30日

『ソウ』映画鑑賞日記

Saw  今回紹介する映画はラストの衝撃的などんでん返しが話題になったサスペンススリラー『ソウ』です。この映画は新人監督と新人脚本家がタッグを組み、低予算・短期間で制作されたのですが、公開されると評論家にも絶賛を受け、世界中で大ヒットしました。昨年にはパート2が制作され、今年の秋に全米でパート3が公開される予定になっています。

 ストーリー:「老朽化したバスルームで対角線上に倒れていた2人の男、ゴードンとアダム。その間には頭を銃で撃ち抜いた自殺死体があった。足を鎖でつながれ身動きがとれない男たちに与えられたのは、テープレコーダー・一発の弾・タバコ・着信用携帯電話、2本の糸ノコギリ。テープレコーダーに入っていた犯人からのメッセージは『6時間以内に相手を殺すか、自分が死ぬか。』という内容だった・・・。一体誰が何の目的でこのようなことをしたのか?そして2人が選ばれた理由とは?」
 
 この映画はラストの衝撃的などんでん返しが話題になりましたが、私は昔からどんでん返しのある小説や映画が大好きだったこともあり、早い段階でこの映画の結末が予想できてしまいました。その為、他の人ほど映画のラストに衝撃を受けることができず、非常に残念でした。確かにこの映画の仕掛けに途中で全く気付かずに、あのラストを見たらかなり衝撃的です。ただ実際にあのような事を周囲に気付かれずに実行するのはかなり無理があるような気もします。
 また映画のラストのゴードンの衝撃的な行為も三池崇史監督の『オーディション』を見た後では特に目を覆うほどのシーンではありませんでした。
 
 映画の全体的な雰囲気は『セブン』に近く、かなり残酷なシーンや猟奇的なシーンも多いですし、結末の後味の悪さも『セブン』に勝るとも劣らないものがありました。ただ完成度で言うと『セブン』の方が明らかに上です。
 『ソウ』は結末に向けての伏線の張り方は巧みだと思うのですが、設定や展開、そして犯人の動機にどうしても無理があるように感じました。また人物描写も浅く、中盤の回想シーンを減らして、囚われた2人の心理描写にもっと焦点をあてたらより緊張感のある展開になったと思い残念でした。映画の脚本を担当したリー・ワネルは映画の冒頭と結末をまず思いつき、そこから脚本を書いていったそうで、中盤の展開をどうしていくか苦労したそうです。この映画は結末のどんでん返しが全てであり、話の展開や人間描写も結末に向けて強引に辻褄を合わせた感が否めません。

 私はいろいろこの映画にケチをつけていますが、最近公開されたサスペンススリラーの中では良くできた作品です。映画の途中で出てくる数々の殺人トラップも工夫が凝らされておりインパクトがありますし、伏線の張り方や謎が解明されていく後半の展開は観客を画面に釘付けにします。だからこそ、もう少し中盤の展開や心理描写が洗練されていたらと残念に思う次第です。
 
製作年度 2004年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 103分
監督 ジェームズ・ワン 
製作総指揮 ピーター・ブロック 、ジェイソン・コンスタンティン 、ステイシー・テストロ 
脚本 リー・ワネル 
音楽 チャーリー・クロウザー 、ダニー・ローナー 
出演 ケイリー・エルウィズ 、ダニー・グローヴァー 、モニカ・ポッター 、リー・ワネル 、トビン・ベル 

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『オールド・ボーイ』この映画を見て!

第115回『オールド・ボーイ』
Oldboy  今回紹介する映画は日本の同名漫画を原作に、『JSA』のパク・チャヌク監督が映画化したアクション・サスペンス映画『オールドボーイ』です。この映画は2004年カンヌ国際映画祭で審査委員長のタランティーノ監督も絶賛し、グランプリを受賞しました。この映画はハリウッドがリメイクも予定されています。
 ストーリー:「1988年、平凡なサラリーマン、オ・デスは娘の誕生日プレゼントを買って帰る途中、突然何者かに誘拐され、ある部屋に監禁される。そして15年もの歳月を経て突然解放される。誰が何の目的で自分を監禁したのか真相を突き止め復讐すべく、すぐさま彼は行動に移す。途中、彼は寿司屋で出会った美しい恋人ミドと知り合い、彼女にも犯人捜しを協力してもらうが・・・。犯人はなぜ15年間監禁し、突然解放したのか、その恐るべき理由とは?」
 私はこの映画を見たとき、最初はなぜ彼が監禁されたのかにばかり目がいき、なぜ犯人が15年間も彼を監禁していたのか気にしていなかったので、後半の予想外のどんでん返しに圧倒されました。まさかここまで用意周到に計画された復讐劇だとは・・・。映画の中盤までは監禁された主人公が犯人に復讐をする話しとばかり思っていたのに、まさか監禁後も犯人によって復讐されていたとは・・・。(正確言うと、監禁後が犯人の復讐の始まりだったとは)主人公を待ち受けるあまりにも残酷で悲劇的な結末に衝撃を受けてしまいました。それにしても口は災いの元ですね。
 
 原作が漫画ということもあり、現実離れした設定や描写もあるのですが、監督の演出や役者の演技の圧倒的なパワーに圧されて、映画を見ている間は全く気になりません。ダイナミックでリアルなアクションシーン、見ている側にも痛みが伝わってくるバイオレンス描写、観客をほっと一息させるコミカルな描写、そしてまるでポルノ映画を見るようなエロティックなシーンと見ている間一瞬足りとも飽きさせません。
 主人公のオ・デスを演じたチェ・ミンシクの演技は狂気迫るものがあります。生きた蛸を貪るように食べるシーンや金槌一本持って何人もの敵をなぎ倒していくシーン、そしてラストの犯人に懇願するシーンと彼の演技がこの映画の面白さを支えています。またユ・ジテも冷酷非道でありながら、どこか人間臭さも残る犯人を見事に演じています。
  
 この映画はバイオレンス描写がとても激しく、目を覆いたくなるようなシーンがいくつかありますので、そういう描写が苦手な人は気をつけてください。この映画の結末はとても衝撃的で後味が悪いのですが、復讐することの虚しさや愚かさといったものを強く感じます。韓国映画のパワーを感じさせる傑作アクションサスペンス映画です。ぜひご覧ください! 

製作年度 2003年
製作国・地域 韓国
上映時間 120分
監督 パク・チャヌク 
原作 土屋ガロン 、嶺岸信明 
脚本 - 
音楽 - 
出演 チェ・ミンシク 、ユ・ジテ 、カン・ヘジョン 、チ・デハン 、キム・ビョンオク 

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『呼吸』

お気に入りのCD NO.15『呼吸』 Salyu
Lily_chouchousong_1  今回紹介するCDは岩井俊二監督の異色青春映画『リリイ・シュシュのすべて』で登場した架空のアーティスト・リリイ・シュシュのアルバム『呼吸』です。『リリイ・シュシュのすべて』は地方都市を舞台に思春期の少年・少女の心の闇を鋭く描き、主人公たちのリアルな心の声が伝わってくる作品として大変話題になりました。この映画で閉塞した状況で生きる主人公たちの心の拠り所としてリリイ・シュシュという女性アーティストが登場しました。映画の中ではリリイ・シュシュの姿はほとんど登場しなかったのですが、彼女の歌が随所に挿入され、主人公たちの心の痛みや傷を優しく慰めていました。

 リリイ・シュシュは映画の企画と連動して、音楽プロデューサーの小林武史と映画監督の岩井俊二、そして新人女性ヴォーカリストのSalyuの3人がユニットを組み創り上げました。映画が公開されると同時にリリイ・シュシュ名義でアルバム『呼吸』が発売され、ユニットは解散されました。その後も女性ヴォーカリストのSalyuは音楽プロデューサーの小林武史の下で活動を続け、現在シングルを8枚、アルバムを1枚発表してしています。
*Salyu公式サイト:http://www.salyu.jp/

 アルバム『呼吸』は映画で使用されたリリイ・シュシュの歌が収められたアルバムですが、映画を見たことがなくても充分聞き応えのあるアルバムです。アルバムには9曲入っているのですが、1曲も外れの曲がなく、聴いていると歌の世界にどんどん引きずり込まれていくような感覚になります。とにかくSalyuの声が素晴らしく、優しさと寂しさと暖かさと冷たさが入り混じった彼女の透き通った歌声は一度聴くと虜になってしまします。
 また歌詞も人生の虚しさや切なさ、儚さを語りながら、なぜか聴いていると、心が浄化されて生きる力が湧いてきます。

 このアルバムは聴いている途中は寂しさと切なさで胸がいっぱいになるのですが、聴き終わるとなぜか心が救われたような気がします。このアルバムはエーテルに充たされています。ぜひ皆さんもアルバムを聴いて魂をエーテルで充たしてください。
 
1. アラベスク 
2. 愛の実験 
3. エロティック 
4. 飛行船 
5. 回復する傷 
6. 飽和 
7. 飛べない翼 
8. 共鳴(空虚な石) 
9. グライド 

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『リリイ・シュシュのすべて』この映画を見て!

第114回『リリイ・シュシュのすべて 』
Lily_chouchou_1  今回紹介する映画は地方都市に住む中学生の心の闇を鋭く描き出した異色の青春映画『リリイ・シュシュのすべて 』です。原作・脚本・監督は『スワロウテイル』で有名な岩井俊二が担当。岩井監督はインターネットの掲示板を使い、複数の投稿者になりすまして話しを書き始め、読者にも話しを書き込んでもらうという実験的なスタイルで原作を完成させました。「遺作を選べたら、これにしたい」と述べるほど、岩井監督はこの映画に深く思い入れがあるそうです。
 
 ストーリー:「田園が広がる地方都市。中学生になった蓮見雄一は同じクラスの優等生・星野修介と仲良くなる。しかし、中学2年の夏休み、2人は仲間たちと西表島へ旅行に行ってから2人の関係は崩れていく。旅行中に2度命の危険にさらされた星野は突如凶悪な人間になり、クラスの皆から恐れられるようになる。そして蓮見は星野のいじめの対象になっていく。星野のいじめに苦しむ蓮見は、唯一の慰めとなっていたカリスマ的女性アーティスト“リリイ・シュシュ”のファンサイトを立ち上げ、心情を吐露していくのだったが・・・・。」
 
 私はこの映画を劇場で公開されていたときに見たのですが、映像や音楽の美しさと裏腹にあまりにもリアルで痛々しいストーリー展開に見ていて胸がとても苦しくなりました。映画を見終わった直後はもう2度と見たくないと思っていたのですが、時間が経つとなぜかまた見たくなって何回もレンタルして見返していた自分がいました。この映画はストーリー自体はかなり現実離れしているのですが、そこで描かれる思春期の少年・少女の心情があまりにも生々しく、自分の思春期時代の心情を思い出させてしまう力があります。そのため、見ていると忘れていた自分の思春期の葛藤や苛立ちを思いだし、当時の苦しさや不安、そして当時への懐かしさで胸がいっぱいになります。
 
 この映画はイジメ・援助交際・レイプ・自殺と現代の少年・少女が抱える問題を数多く取りあげています。イジメやレイプのシーンはあまりにも生々しくて見ていて目を背けたくなるほどです。岩井監督は人間のもつ残酷さや汚さといった一面をこの映画ではかなりクローズアップして描いているので、見ていて嫌悪感を抱いてしまいます。それは映画に対する嫌悪感であると同時に、自分の中にある闇に対する嫌悪感です。この映画は思春期という自分や世界に対して一番過敏に反応する世代を主人公にして、人間のもつ救いようのない闇とその闇とどう人は向き合うのかということを徹底的に描いています。
 
 映像と音楽はストーリーと裏腹にとても美しいのですが、それ故にストーリーの残酷さが際だっています。
 映像はデジタルビデオカメラで撮影されたそうなのですが、全体的にざらついた透明感があり、リアルでありながらどこか幻想的な映像でした。映画の随所に出てくる田園シーンの緑の美しさは格別ですし、自然光やブレを活かしたドキュメンタリータッチの映像演出もストーリーにリアルさを与えていました。
 音楽はドビュッシーのアラベスクなどが地方都市の田園風景の映像ととてもマッチしているのが印象的でした。アラベスクの透明感溢れる美しいピアノの旋律が少年・少女のどろどろした心の闇や残酷なストーリーと対照的で鮮烈な印象を与えてくれました。
Lily_chouchousong  また映画の中で主人公たちの心の拠り所としてカリスマ的女性アーティスト“リリイ・シュシュ”と言う人物が登場するのですが、彼女の歌がとても素晴らしく、救いのないストーリーに希望を与えてくれます。“リリイ・シュシュ”という歌手自体は映画の中の架空の人物で、ヴォーカルのSalyuと小林武史、岩井俊二の3人が創り上げたキャラクターなのですが、リリイ・シュシュ名義のアルバム『呼吸』が現実に1枚発表されています。(このCDは私のとてもお気に入りなので、後日に別にじっくり取りあげます。)彼女の歌はどれも優しく、暖かく、でも切なく、冷たくもあり、聴いた後は無性に寂しさを感じながら、なぜか励まされるという不思議な魅力を持っています。映画の中盤に流れる『飛べない翼』とラストに流れる『グライド』は特に映像やストーリーとマッチしており、生と死の切なさと哀しみで胸が溢れかえります。

 役者の演技も大変素晴らしく、特に援助交際をさせられる津田を演じた蒼井優は映画初出演ながら圧倒的な存在感があります。特に彼女が空を舞う凧を見上げるシーンは鳥肌が立つほど美しくも哀しいシーンです。

 この映画はとても痛い映画です。誰が見ても楽しめる映画ではありません。あまりのつらさに目を背けたくなるかもしれません。しかし、一度はまってしまうと、何回も見たくなる魅力がつまった作品でもあります。誰もが経験する思春期の心の痛みや人間の心の闇を見事に描いています。ぜひ興味のある人は一度見てください!

製作年度 2001年
製作国・地域 日本
上映時間 146分
監督 岩井俊二 
原作 岩井俊二 
脚本 岩井俊二 
音楽 小林武史 
出演 市原隼人 、忍成修吾 、蒼井優 、伊藤歩 、勝地涼 

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