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2006年9月10日 - 2006年9月16日

『バックドラフト』この映画を見て!

第110回『バックドラフト』
Back_draft  今回紹介する映画は火災に立ち向かう消防士たちの生き様を描いた『バックドラフト』です。この作品は私が中学校の時に生まれて初めて映画館で見た洋画であり、火災シーンの圧倒的な迫力と人間ドラマとしての素晴らしさに大変感銘を受けたのを今もはっきりと覚えています。この作品に出会い、私は映画館で映画を見ることの素晴らしさに目覚めたといってもいいくらい思い入れのある作品です。
 
 ストーリー:「シカゴの消防署第17分隊で働くブライアンの父。父は火災現場で殉職する。父の後を継ぐかのように消防士となったブライアンは兄スティーブンが隊長を務める17分隊に配属される。しかし、ブライアンは消防士として活躍する兄についていけない自分に葛藤し、17分隊を辞めてしまう。そんな中、バックドラフト現象を利用した連続爆破放火事件が発生する。ブライアンは放火調査員に配転して、連続爆破放火事件を調査することになる。そして調査を進める内に、政治家による消防人員整理を踏み台にした開発計画がらみの金儲けが明らかになる。そして、捜査線上に意外な犯人が浮かび上がる。」
 
 この映画のストーリーは内容が盛りだくさんです。消防士である兄弟の絆をドラマのメインとしながら、そこに親子愛や夫婦愛も盛り込み、さらに放火犯を捜すというサスペンスまで加わるという贅沢なストーリーです。これだけの内容を盛り込みながらも、話しが散漫にならず分かりやすく、感動できるストーリーに仕上がっているのは大したものです。特に火災シーンに負けずとも劣らない熱い人間ドラマは、見ている側の心も熱くさせます。特にクライマックスの火災現場での兄と弟のやり取りからエンディングまでの展開は何回見ても、涙なしでは見られません。また放火犯人を捜すサスペンス映画としても非常に緊張があり、面白く仕上がっています。ただ『羊たちの沈黙』のレクター博士のような放火魔が登場して、ブライアンが犯人像を教えてもらうシーンは笑ってしまいましたが・・・。
 
 映画の見せ場でもある火災シーンもILMの特撮が素晴らしく、劇場で見ると観客はまるで火災現場のど真ん中にいるような感覚にさせてくれます。この映画では炎を生き物のように捉えており、まるで炎が意志をもって人間に襲ってくれるように見えます。特に前半のマネキン工場の火災とラストのビル火災はすざましく、消防士の炎との命がけの闘いに手に汗握ってしまいます。この映画を見ると火災の恐ろしさと消防士という職業の大変さと素晴らしさがよく分かります。
 大阪にあるUSJにも『バックドラフト』のアトラクションがあり、映画の火災現場を再現しており、なかなかの迫力があります。数あるアトラクションの中でもお奨めです。

 またこの映画を語るとき忘れてはいけないのがハンス・ジマーの音楽です。日本では『料理の鉄人』のテーマ曲として使われていたので、聞いたことがある人は多いと思います。ハンス・ジマーの特徴であるシンセサイザーとオーケストラによるダイナミックな音楽が作品を盛り上げています。特に映画のクライマックスからエンディングにかけての音楽は秀逸で、観客の涙腺を刺激してくれます。ぜひ映画を見て気に入ったら、サントラも買ってください。落ち込んだときに聞くととても元気が出ますよ。

 この映画は消防士たちの熱い生き様が描かれており、誰が見ても感動できる作品です。ぜひ見てみてください! 

製作年度 1991年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 136分
監督 ロン・ハワード 
製作総指揮 ブライアン・グレイザー 、ラファエラ・デ・ラウレンティス 
脚本 グレゴリー・ワイデン 
音楽 ハンス・ジマー 
出演 カート・ラッセル 、ウィリアム・ボールドウィン 、ロバート・デ・ニーロ 、スコット・グレン 、ジェニファー・ジェイソン・リー 

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『DEAD OR ALIVE 犯罪者』この映画を見て!

第109回『DEAD OR ALIVE 犯罪者』
Dead_or_alive  今回紹介する映画はVシネマの帝王、哀川翔と竹内力を主演に据え、驚愕のラストで見る人を圧倒した作品『DEAD OR ALIVE 犯罪者』です。監督は『妖怪大戦争』『ゼブラーマン』『着信アリ』『殺し屋1』など数々の話題作、問題作を手がける三池崇史。この作品では三池監督のアナーキーでパワフルな演出が全開しています。またバイオレンス描写の過激さが有名な三池監督の作品の中でも特に過激なシーンが多く、ウンコまみれのプールに溺れさせられたり、銃で撃たれて食べていたものがお腹からラーメンが飛び出したりと強烈であり、18歳未満の子どもは絶対に見てはいけない作品です。
 
 ストーリー:「中国マフィアとヤクザの抗争事件が多発する東京の歌舞伎町で、チャイニーズマフィアのボスが殺される。事件を追う新宿署の刑事・城島は、その裏に若き新興ギャング団の存在をかぎつける。城島は署内の圧力を振り切り、ギャング団の若きボス・龍を追跡する。龍は裏社会の頂点に立つため台湾マフィアと手を組もうと企んでいた・・・。」
 
 この映画の一番の見所は何と言ってもラスト5分です。私は初めてこの映画のラストを見たときぶっ飛びました。「そんな馬鹿な・・・」言葉をなくすラストです。ラスト5分まではハードボイルド作品ではよくある展開です。どんどん追いつめられるアウトローの主人公たち。その2人がついに対決するラスト。しかし、その対決の全く予想外なラスト。このラスト5分の展開は絶対に誰も予想できないものであり、あまりにもクレイジーな終わり方に圧倒されると思います。もし、初めてこの映画を見て、ラストのオチが途中で分かった人がいたら天才です。このラスト5分の展開はぜひ多くの人に見て欲しいです。きっと呆気にとられると思うので・・・。
 もちろんラスト5分以外にも見せ場は数多くあります。オープニングのスタイリッシュでバイオレンス描写満載のシーンが次々と細かいカット割りで映し出されるシーンは格好いいですし、中盤の刑事やマフィアの人間ドラマも丁寧に描かれており、裏社会で生きるアウトローたちの孤独や哀愁が伝わってきます。
 役者たちもここまで個性派俳優を揃えたら言うことありません。主役の2人の存在感は圧倒的で、ラストの対決はすざましいものがあります。特に一匹狼の刑事役の哀川翔は良い演技をしていたと思います。キレまくってる鶴見辰吾、麻薬を大量に吸う大杉連、変態ヤクザ組長の石橋蓮など強烈なインパクトのある演技を披露しています。
 
 この映画は良識のある人や洒落の分からない人には見ると嫌悪感しか残らないと思いますが、今まで見たことがない映画を見たい人にはお奨めです。ここまでクレイジーで、アナーキーな映画はそうありませんよ。

制作年度 1999年
製作国・地域 日本
上映時間 105分
監督 三池崇史 
脚本 龍一朗 
音楽 遠藤浩二 
出演 哀川翔 、竹内力 、石橋蓮司 、小沢仁志 、鶴見辰吾、 田口トモロヲ、大杉漣、 粕谷みちすけ、 杉田かおる、寺島進、 ダンカン、 塩田時敏 、平泉成、 本田博太郎   

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『魔界転生』この映画を見て!

第108回『魔界転生』
Makaitensei  今回紹介する映画は天草四郎役を演じた沢田研二の怪演が印象に残るオカルト時代劇『魔界転生』です。この映画は80年代に話題作を制作し続けてきた角川映画が手がけている作品なのですが、山田風太郎原作の小説を原作にしたこの映画は公開当時大変な話題になりました。監督は『バトル・ロワイヤル』や『里見八犬伝』などの娯楽作品から『家宅の人』などの文芸作品、果ては『宇宙からのメッセージ』などのSF作品まで幅広いジャンル手がけてきた深作欣二が担当。この映画では深作監督のエネルギッシュでケレン味溢れる演出がとても光っています。

 ストーリー:「時は江戸時代。幕府のキリスト教弾圧による島原の乱で殺された天草四郎は徳川幕府に復讐するために魔界から甦る。彼は怨霊を甦らせる秘術を持って、宮本武蔵、宝蔵院胤舜、豊臣家の滅亡とともに亭主に見捨てられた細川ガラシャ夫人、伊賀の霧丸、そして息子・柳生十兵衛をライバル視して病死した柳生但馬守をこの世に復活させる。天草四郎の計画を知った剣豪・柳生十兵衛はこれを迎え撃つため立ち上がる。」

 この映画のストーリーは荒唐無稽で奇想天外なもので、下手するとB級映画になってしまうような内容ですが、登場する役者たちの圧倒的な存在感と監督のパワフルな演出により、完成度の高い娯楽作品に仕上がっています。

 私は初めてこの映画を見たときは出てくる役者の豪華さとその演技の迫力に圧倒されました。特に天草四郎を演じる沢田研二は何とも言えない退廃的な妖しさと色気を醸し出していました。映画の途中で天草四郎が真田広之演じる霧丸と男同士のキスをするシーンなどは特に沢田研二の妖しい美しさが光っていました。映画のラストの自分の首を腕に抱えて笑うシーンも強烈なインパクトがありました。彼の出演がなかったら、この映画はここまで面白くならなかったと思います。
 若山富三郎演じる柳生但馬守も映画の中で圧倒的な存在感があり、彼がこの映画を引き締めたものにしています。特に映画のラストの江戸城での何人もの侍を一人で次々と斬っていく鮮やかな立ち回りと、燃えさかる炎の中での千葉真一演じる柳生十兵衛との親子対決シーンは最近の時代劇にで見られない迫力があります。この映画に登場した時にはすでに60歳を超えてるのですが、あの年でこれだけの剣捌きができるなんてただ者ではないです。
 柳生十兵衛を演じる千葉真一も大袈裟な演技が鼻につくものの、剣捌きの格好良さはさすがです。特に宮本武蔵との対決シーンと映画のラストの親子対決シーン、そして天草四郎との対決シーンはこの映画最大の見せ場です。
 他にも魔界衆を演じた佳那晃子 、緒形拳 、室田日出男の怪演やまだ初々しい真田広之の演技もとても印象的です。特に佳那晃子演ずる細川ガラシャ夫人の妖艶と狂気迫る演技は大きな見所です。緒方拳の宮本武蔵や室田日出男のエロ坊主・宝蔵院胤舜も強烈なインパクトがあります。真田広之は恋をして葛藤する青年の役を初々しく演じてました。これだけ実力派の役者が登場する映画はなかなかありません。これだけの役者を揃えた時点でこの映画の成功は約束されたようなものです。

 深作監督の演出は、登場する役者たちの魅力を引き出しつつ、パワフルなアクションシーンで数々の見せ場を作り上げ、突っ込みどころ満載のストーリーを演出で見事にカバーしています。この映画最大の見せ場である燃えさかる江戸城での対決シーンは本当にセットに火を放ち、その中で役者たちに演技をさせたそうです。その迫力は最近のCGに頼る映画にはないものがあります。
   
Makaitensei2003  この映画は2003年に窪塚洋介を主演にリメイクもされています。私はそちらは見たことがないのですが、深作版に比べて質はかなり劣っていると聞いています。出てくる役者の格が違いますし、監督の力量の差もあり、それも仕方のないことだとは思います。

 
 深作版『魔界転生』はB級テイストの映画でありながら、役者の演技と監督の演出で一度見ると忘れられないインパクトと何回も見返したくなる魅力がある作品に仕上がっています。

製作年度 1981年
製作国・地域 日本
上映時間 122分
監督 深作欣二 
原作 山田風太郎 
脚本 野上龍雄 、石川孝人 、深作欣二 
音楽 山本邦山 、菅野光亮 
出演 沢田研二 、千葉真一 、真田広之 、佳那晃子 、緒形拳 、若山富三郎、室田日出男、丹波哲郎

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辺見庸の本

 今日9月11日は丁度5年前にアメリカで同時多発テロが起きた日です。あの日を境に世界は大きく変わりました。戦争、テロ、差別、国家による個人の管理と監視の強化・・・。正義と自由と民主主義の名の下に多くの人が殺され、傷つき、自由を奪われました。日本も911以降、自衛隊をイラクに派遣し、有事法制を可決させ、集団的自衛権を行使するために憲法させ改正しようとしています。戦争の20世紀を終え、21世紀は平和の世界に向かって進むと思いきや、どんどん混迷した状況に陥っています。そんなきな臭い時代、私は辺見庸の本を読んでは、現代の社会状況に押し流されることなくどう向き合うかを自問自答しています。
 辺見庸は1944年宮城県生まれで、共同通信の記者を経て作家になりました。91年に「自動起床装置」で第105回芥川賞受賞し、「食」をキーワードに、世界の貧困地域・問題地域を取材したルポルタージュ「もの喰う人々」で大反響を巻き起こしました。その後も、ブッシュ政権やとコイズミ政権の醜い本質を暴き、ジャーナリズムの堕落を鋭く粘り強い文章で告発してきました。2004年に脳出血で倒れ、癌に見舞われるなど再帰が危ぶまれましたが、見事に復帰され、新しい論考を発表されています。
 彼の文章の最大の魅力は特定の組織や思想に頼ることなく一個人として真摯に暗い時代と向き合い発言している所にあります。彼の文章は時に過激だったり、青臭かったり、回りくどかったりしますが、自分の思いを自分なりの言葉で書き記そうとします。彼の文章は論理的には飛躍しすぎたり、破綻していたりしますが、新聞のきれい事のような社説にはない迫力と熱意が感じられます。私は彼の文章を読むと背筋がピンと伸びるような感覚を覚えます。彼の文章は時代に押し流されることなく立ち止まり、そして自分で考えて立ち向かう力を与えてくれます。
 また彼の文章は単なる社会批評の枠にとどまらない奥深さがあります。人間という生き物が持つドロドロとした闇や宿業といったものすら感じさせます。 彼は他の批評家と違い、社会のあらゆる問題を自分に引きつけて考えようとします。そして、自分の中にある弱さや愚かさにも目を向け、自分自身を厳しく問いつめていきます。自分との激しい葛藤や格闘が文章の隅々から滲みだしており、他の批評家の文章にはない生々しさがあります。
 彼の本は現代という社会の影を丹念に描くと同時に、人間という存在の闇を描いています。きな臭く不安が蔓延する時代、ぜひ彼の本を読み、自分や社会と向き合ってみてください。

 私のお薦め作品ベスト3

3位 抵抗の3部作『永遠の不服従のために』『いま、抗暴のときに』『抵抗論―国家からの自由へ』 3冊とも講談社文庫より刊行
 9.11テロ以降の自衛隊派兵、憲法破壊、メディアと戦争の共犯、自由への抑圧に対する作者なりの抵抗のあり方を綴る。
抵抗論―国家からの自由へ いま、抗暴のときに 永遠の不服従のために
2位 『いまここに在ることの恥』 毎日新聞社
 退院後の辺見庸が語る、憲法・マスメディア・国家・自分自身。
いまここに在ることの恥

1位 『もの喰う人々』角川文庫
 「食」を通して、世界の貧困地域・問題地域を取材した衝撃のルポ。
もの食う人びと

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