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2006年8月27日 - 2006年9月2日

『下妻物語』この映画を見て!

第104回『下妻物語』
Simotuma  今回紹介する映画は田園風景が広がる美しい茨城県下妻市を舞台に深田恭子が演じるロリータと土屋アンナが演じるヤンキーの友情をコミカルに描いた『下妻物語』です。監督は『嫌われ松子の一生』でも絶賛を浴びた中島哲也。この映画でも彼のキッチュでポップな演出が大きな魅力の一つとなっています。
 私はこの映画をテレビで見たのですが、斬新な映像表現とコミカルでテンポの良いストーリー展開にとてもはまってしまいました。まさかこんなに面白い作品だとは見る前は思ってもいなかったので、良い意味で期待を裏切った作品でした。ストーリー自体は冒頭にも挙げたようにとてもシンプルで、世の中からはみ出した少女2人の友情を描いたものです。別にこれと言って大きなドラマが起こるわけもないのですが、監督の見せ方がとても上手なので映画の話しにぐいぐいと引き込まれていきます。単なるおバカなコメディタッチの映画と最初思わせながら、結構ジーンと来る場面もあり、後味も爽やかで見て損のない映画です。
 『嫌われ松子の一生』でもそうでしたが、監督のカラフルでポップでアニメチックな映像表現が随所に見られ、観客を楽しませてくれます。また途中で挿入されるアメコミ調のアニメもとても面白かったです。 
 また随所に見られる監督の遊び心満載の演出がとても面白く、尼崎のジャージネタや田舎のジャスコ(よくジャスコはOKしたなと思います)、ベルサーチのバッタモンネタ、など大笑いしてしまいました。
主人公2人の生い立ちを多くのカットを使用してコミカルにテンポよく見せるシーンも観客を笑わせながらも主人公の背景がみごとに伝わる演出だったと思います。

 役者も主役2人はもちろんのこと、適材適所というか、出演している人全て役にぴったり当てはまっていました。まずロリータを演じた深田恭子ですが、現実離れしたマイペースな役が本人の普段のイメージにも近く、とてもあっていました。土屋アンナのヤンキー姿も如何にも田舎の熱血ヤンキーといった感じを出しており、とてもはまっていました。脇役も個性的な人ばかりで、特に宮迫博之 、岡田義徳、荒川良々、阿部サダヲは特に強烈なインパクトがありました。
 この映画は軽い映画に見えて、結構グっとくるセリフも多く、「人間は大きな幸せを前にすると、急に臆病になる。幸せを勝ち取ることは、不幸に耐えることより勇気が要る」 というセリフはとても印象に残りました。
 また主人公2人がロリーターにヤンキーと一見世の中から外れたダメ人間に見えながら、実は自分というものをしっかり持った強く逞しい人間であり、彼らの生き方を見るととても励まされるものがあります。2人の友情が単なる馴れ合いでなく、自立した女性同士の付き合いであるところも清清しく、見ていて気持ちが良いです。
 この映画は時代に流されずに我が道を行く自立した少女たちの青春と友情を見事に描いた傑作です。ぜひ多くの人に見て欲しいです。

製作年度 2004年
製作国・地域 日本
上映時間 102分
監督 中島哲也 
原作 嶽本野ばら 
脚本 中島哲也 
音楽 菅野よう子 
出演 深田恭子 、土屋アンナ 、宮迫博之 、篠原涼子 、阿部サダヲ、  岡田義徳、小池栄子、荒川良々、 樹木希林 

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『モンティ・パイソン 人生狂騒曲』この映画を見て!

第103回『モンティ・パイソン 人生狂騒曲』
Monty_pythons  今回紹介する映画はカルト的に人気を誇る英国のコメディ集団「モンティ・パイソン」が制作したブラックコメディ満載の作品『モンティ・パイソン 人生狂騒曲』です。
 モンティ・パイソンは70年~80年代半ばにイギリスを中心に映画・テレビ等で活躍した作家兼俳優の男性6人からなるコメディ・グループです。6人ともイギリスの名門大学出身であり、グレアム・チャップマン 、ジョン・クリーズ 、エリック・アイドルはケンブリッジ大学出身、マイケル・パリン 、テリー・ギリアム  、テリー・ジョーンズはオックスフォード大学出身です。モンティ・パイソンはBBCの企画で集められた6人のメンバーが深夜のコメディ番組「空飛ぶモンティ・パイソン」を手がけたことが結成の始まりだそうです。「空飛ぶモンティ・パイソン」はイギリスの若者の間で人気を博し、45話のテレビシリーズ、映画4本を制作するまでになったそうです。1989年にメンバーのグレアム・チャップマンが亡くなってしまったため、今回紹介する映画がモンティ・パイソンの最後の作品となっています。

 私がモンティ・パイソンを知ったのはテリー・ギリアムの作品からです。テリー・ギリアムは『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』などの監督で有名であり、イマジネーション溢れる個性的な映像表現に多くのファンがいます。私も昔からギリアム作品のファンであり、彼が昔モンティ・パイソンのメンバーだったことから、モンティ・パイソンの作品もほとんど鑑賞してました。私がはじめてモンティ・パイソンの作品を見た時は、世の中のタブーを破るブラックユーモアの数々に衝撃を受けたものでした。しかし次第に彼らの作品の強烈な毒が病みつきになり、はまったものでした。
 
 今回紹介する『人生狂騒曲』も彼らの強烈な毒に満ち溢れた映画であり、人間の誕生から死までの人生の意味?をブラックユーモア満載に綴っていきます。この映画は1つの短編「クリムゾン―老人は荒野をめざす―」と「出産」・「成長」・「戦争」・「中年」・「臓器移植」・「晩年」・「死」と7つのエピソードで構成されています。どのエピソードも宗教・戦争・セックス・臓器移植・嘔吐などタブーとされていることを題材に挙げて、人間の生々しい欲望や愚かさ、人生の不条理さや無意味さを描いていきます。
 
 この映画は面白いエピソードもあれば、いまいちなエピソードもあるのですが、私が特に好きなエピソードは冒頭の短編「クリムゾン―老人は荒野をめざす―」と『出産』、『臓器移植』、『晩年』の本編3つです。
 「クリムゾン―老人は荒野をめざす―」はテリー・ギリアムが監督しているのですが、彼らしい独特の映像表現に満ちていますし、ストーリーも高齢化社会を迎えた現代日本にぴったりの内容です。
 『出産』ではカトリックの避妊禁止を皮肉った歌「すべての精子は神聖なり」を子どもから老人まで100人近い人数でミュージカルとして踊り歌う場面があるのですが、こんな下らない歌をまじめに歌い踊る姿に腹を抱えて笑うことができます。『臓器移植』は血が噴き出すホラー映画顔負けのスプラッター演出がとても強烈ですし、『晩年』の超デブのクレオソート氏がレストランでゲロを吐きまくるだけというエピソードは辺り一面ゲロまみれになる映像が圧巻の一言です。(食事中に絶対見てはいけません!)

 この映画はエロ・グロ・ナンセンスに満ちた下品な映画であり、誰が見ても楽しめるコメディ映画ではありませんが、はまる人ははまると思います。人生の意味で悩んでいる人はぜひこの映画を見てください。悩みなんて吹っ飛びますよ!

製作年度 1983年
製作国・地域 イギリス
上映時間 107分
監督 テリー・ギリアム 、テリー・ジョーンズ 
脚本 モンティ・パイソン 
音楽 ジョン・デュプレ 
出演 グレアム・チャップマン 、ジョン・クリーズ 、エリック・アイドル 、マイケル・パリン 、テリー・ギリアム  、テリー・ジョーンズ

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『タイタス』この映画を見て!

第102回『タイタス』
Titus  今回紹介する映画はシェークスピアの作品の中で最も衝撃的なストーリーと言われている『タイタス・アンドロニカス』を映画化した『タイタス』です。『タイタス・アンドロニカス』は古代ローマを舞台にローマの武将タイタスと、長男を生贄にされたゴート族の女王タモラが血で血を洗う復讐合戦を繰り広げるという暗いストーリーで、謀略・暗殺・レイプ・手や首の切断・カニバリズムと次から次へと残酷で暴力的なシーンが出てくる陰惨な作品です。暴力の連鎖と人間の狂気や醜さ、愚かさをこれでもかと描いており、爽快感はほとんどなく結末も悲劇的で後味のとても悪い作品です。その為、今までもあまり舞台化や映画化もされてきませんでした。そんな難しい作品を監督したのは舞台版『ライオン・キング』の演出を手がけたジュリー・テイモアです。彼女は映画初監督だそうですが、演劇の技法を取り入れたり、現代と古代ローマをシンクロさせるなど、大胆に映像化しています。出演者もアンソニー・ホプキンス 、ジェシカ・ラングとアカデミー賞を受賞したこともあるベテラン俳優を主役に揃え、脇役も演技派の役者で固めています。美術や衣装もとても素晴らしく、美術はフェリーニの作品で有名なダンテ・フレッティ、衣装は『時計じかけのオレンジ』などキューブリック作品で有名なミレーナ・カノネロが担当しています。
 ストーリー:「ゴート族との戦いで勝利をおさめローマへ凱旋した武将タイタス。人質の女王タモラは3人息子がいたが、タイタスに死んだローマ兵に対する生贄として長男を殺されてしまう。タモラは皇帝を誘惑して妃となり殺された長男の復讐を誓う。タイタスの息子に無実の罪を着せて死刑にさせ、タイタスの娘を自分の息子たちにレイプさせて、手と舌を切り落とす。タイタス自体も息子の処刑をやめさせるために片腕を切り落とす。タモラはタイタスは追い詰めていくが、タイタスもタモラによって追い詰められたことを知り、世にも恐ろしい復讐に出る。」
 私は映画館で公開当時にこの作品を見たのですが、重苦しく残酷なストーリー展開に衝撃を受けると同時に、映像の奇抜さや美しさに魅了されたものでした。この作品は古代ローマを舞台にした復讐劇なのですが、監督はこの作品を暴力が蔓延する現代社会と重ねあわせて描こうとしています。その為、映画のオープニングは現代から始まり、古代ローマもバイクや車が走ったり、テレビゲームやコーラが出てきたりします。また映画の冒頭にはファシズムを思わせるような描写もあります。この作品はいつの時代にも変わらない人間のもつ暴力性や文明の成熟に伴う退廃性といったものを見事に描きだしています。またこの作品は人種差別の問題にも踏み込んでいます。この作品で一番の悪人であった黒人のアローンという存在はとても複雑な役所で、彼がなぜ信仰を捨て、悪に走るようになり、最後は子どもを命を捨ててまで守ろうとしたのか、いろいろと考えさせるものがありました。
 
 この作品で一番残酷で美しい場面は沼地に立つラヴィ二アのシーンです。タモラの息子にレイプされた上、手と舌を切断され、両手に枝を突き刺されて、沼地に一人ぽつんと立つ姿は見たくないけど、目が離せない強烈なシーンでした。
 また映画のラストもあまりの残酷さに目を覆いたくなるようなシーンではありますが、復讐にとりつかれた人間の愚かさや醜さが見事に表現されていました。(ただ食事中にみると気分が悪くなるので気をつけてください。)
 
 映画の完成度でいうと、もうひとつのところもあります。安っぽいCG映像が出てきたり、ストーリーの展開が中盤間延びしていたり、ルーシャスの孫の設定を上手く活かせてなかったり・・・。しかし、初監督作品でここまで大胆で意欲的な作品を完成させたのは素晴らしいと思います。
 この映画は見る人をとても選びますし、決して後味の良い作品ではありませんが、人間のもつ醜さや暴力性をここまで描いた作品にはなかなかお目にかかれないと思います。ぜひ興味のある人は見てください!

製作年度 1999年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 162分
監督 ジュリー・テイモア 
原作 ウィリアム・シェイクスピア 
脚本 ジュリー・テイモア 
音楽 エリオット・ゴールデンサール 
出演 アンソニー・ホプキンス 、ジェシカ・ラング 、ジョナサン・リス=マイヤーズ 、アラン・カミング 、コルム・フィオール 

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『マルコヴィッチの穴』この映画を見て!

第101回『マルコヴィッチの穴』
Markovich  今回紹介する映画は15分間だけ俳優ジョン・マルコヴィッチの頭に入り込むことができるという摩訶不思議な穴を見つけた人々の姿を時にコミカルに、時にシリアスに描いた『マルコヴィッチの穴』です。
 
 私はこの映画を劇場で見たときは、シュールで哲学的なストーリー、ユーモアとウエットに富んだ演出、独特な映像の雰囲気に大変虜になりました。最初は不条理なブラックコメディーかと思わせながら、中盤からどんどんシリアスになっていき、ラストは切なさを感じさせる展開はとても巧みで、観客を画面に釘付けにします。
 
 監督のスパイク・ジョーンズはこの映画がデビュー作なのですが、いきなりこのような作品を完成させるとはすごいです。もともと編集者、カメラマン、スケートボーダー、俳優などいくつもの顔を持ち、ビョークやケミカル・ブラザーズなど数々のミュージック・ビデオやNIKIのCMなどを手掛けて、そのシニカルでブラックなユーモアと独特な映像センスには人気がありました。この映画でもそんな彼独特のユーモアと映像センスが随所に光っていました。

ストーリー:「人形使いのクレイグは、ペットショップに勤める妻ロッテと貧乏な二人暮らしをしていた。ある日、彼はマンハッタンのビルの71/2階にある会社、レスター社でファイル検索の職を得る。そこで彼は美人OLのマキシンに一目惚れして、彼女を追いかけるが相手にしてもらえない。
 そんな時、会社の一室で、俳優ジョン・マルコヴィッチの頭の中に15分間だけ入れる穴を見つけてしまう。彼はマキシンを誘い、その穴で商売を始める。妻のロッテも穴に入るが、そこで彼女は自分が男のほうが適していると思い始める。そして、ロッテはマキシンと恋に落ちてしまい、マルコビッチの体を借りて性交渉まで行ってしまう。それに嫉妬したクレイブは妻を監禁し、妻がマルコヴィッチの中に入っているかのようにだまして、マキシンとセックスをする。
 最初、15分しかマルコヴィッチの中に入れなかったクレイブも次第に長い時間入れるようになり、ついにはマルコヴィッチを意のままにコントロールできるようになる。クレイブはマルコヴィッチを支配し、マキシンと巨万の富と名声を手に入れるが・・・。」

 この映画のストーリーは不条理で超現実的でありますが、そこで描かれているテーマはとても現実的で深く考えさせられるものがあります。
 誰しも一度は今の自分とは違う他人になりたいと願ったことがあると思います。もし自分が有名人だったら、もし自分が女だったら、人間は自我を持っているが故に、他者の自我と自分の自我を比較したり、自分が自分以外の他者になることを憧れたりします。この映画はそんな自我を持った人間故の願望を見事に表現しています。
 また理想の自分にこだわるが故に、現実の自分に絶望し、今の自分を捨て他者になりたいという屈折した願望を持つ人間たちの姿を悲哀とユーモアを交えながら描いていきます。
あと私はこの映画を見て、輪廻転生についてもいろいろ考えてしまいました。前世とか生まれ変わりとか言われますが、それは肉体という器を魂という自我が渡り歩くことなのかなと、映画を見た後に思ったりしました。

 この映画は役者の演技がとても素晴らしく、映画のタイトルとなっているジョン・マルコビッチはもちろんのこと、主役のジョン・キューザック 、キャメロン・ディアス 、キャサリン・キーナー の3人がとても役にはまっています。ジョン・キューザックは自分に自信がなく、人形を通してしか自己表現できない弱気な男を見事に演じています。またキャメロン・ディアスは一見誰か分からないほど、不細工な姿で登場して、観客を驚かせると同時に、生活に疲れた女性を巧みに演じています。キャサリン・キーナーもクールでしたたかで情熱的な女性・マキシンを大胆に演じていました。
 またブラット・ピッド、チャーリー・シーン、ショーン・ペンなど豪華有名人も特別出演しています。特にチャーリー・シーンはとても驚くような姿で登場し、笑ってしまいました。

 『マルコビッチの穴』は非常に哲学的で芸術的な作品でありながら、エンターテイメントとしても非常に面白い作品として仕上がっています。是非見てみてください!

製作年度 1999年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 112分
監督 スパイク・ジョーンズ 
製作総指揮 チャーリー・カウフマン 、マイケル・クーン 
脚本 チャーリー・カウフマン 
音楽 カーター・バーウェル 
出演 ジョン・キューザック 、キャメロン・ディアス 、キャサリン・キーナー 、ジョン・マルコビッチ、オーソン・ビーン 、メアリー・ケイ・プレイス 

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