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2006年6月25日 - 2006年7月1日

『真夜中の弥次さん喜多さん 』この映画を見て!

第78回『真夜中の弥次さん喜多さん
Yazikita  今回紹介する映画は脚本家として人気のある宮藤官九郎初監督作品であり、日本映画の異色作でもある『真夜中の弥次さん喜多さん』です。この映画はしりあがり寿の原作を下に、現実と幻想が入り乱れたシュールな映像とハイテンションなストーリーが展開されていきます。
 私は始めてこの映画を見たとき、ぶっ飛んだ映像とストーリーに非常にはまってしまいました。初監督作品でこのような映画を作るとは宮藤官九郎さすが恐るべしです。シュールでポップな映像は、まるでテリー・ギリアムの映画を見ているかのような感じを受けました。また映画に随所に挟まれるギャグはどれも下らないものばかりですが、そのあまりの下らなさに私は大うけでした。この映画は常識を遥かに超えた
弥次喜多ワールドが展開されており、はまる人ははまるだろうし、生理的に受けつけない人は全く受けつけない映画です。
 ストーリー:「ヤク中の恋人・喜多八を、なんとか立ち直らせたい熱い同性愛者・弥次郎兵衛はお伊勢参りに出かけることを決める。お伊勢さんを目指し江戸を後にする2人。しかし、禁断症状に苦しむ喜多さんを連れての旅は、波乱万丈なものだった。」
 この映画のストーリーを解説することははっきり言って全くナンセンスです。この映画は感性で見るものであり、現実と非現実の間を行き来する主人公たちの姿を楽しむ映画です。この映画は空虚な現実から地に足のついた現実を目指して旅をしていく2人が、結局現実も非現実も自分の世界の一部分だと受容するお話しです。この映画は現実逃避をすることで現実と向き合い、生きる力を得るという非常に奥の深いお話だと私は思っています。全体的に下らない話しであるにも関わらず、生と死のエピソードでは、なぜか分かりませんが切ない気持ちで胸がいっぱいになりました。
 この映画の大きな見所として、豪華な役者たちの出演があります。こんなぶっ飛んだ作品によくこれだけの役者が集まったものだと関心します。特に主人公の弥次さん喜多さんを演じた長瀬智也 と中村七之助 。長瀬は熱血漢な同性愛者という役を、中村は薬物中毒者という役を見事に演じています。また脇を固める役者たちも楽しそうに演技しており、見ていて面白いです。
 この作品は何も考えずに、弥次喜多ワールドに身をゆだねることが出来れば、とても面白い映画です。好き嫌いがはっきり分かれる作品だとは思いますが、日本映画史に名を残すカルト映画だと思います。ぜひ一度見てみてください!

製作年度 2005年
製作国・地域 日本
上映時間 124分
監督 宮藤官九郎 
原作 しりあがり寿 
脚本 宮藤官九郎 
音楽 ZAZEN BOYS 
出演 長瀬智也 、中村七之助 、小池栄子 、阿部サダヲ 、柄本佑 、森下愛子、 岩松了、 板尾創路 、竹内力、 山口智充、 清水ゆみ、 ARATA、 荒川良々、中村勘九郎、 生瀬勝久 、研ナオコ、松尾スズキ、寺島進

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『ターミネーター2』この映画を見て!

第77回『ターミネーター2』
2  今回紹介する映画は公開当時大ブームになった傑作SFアクション映画『ターミネーター2』です。私は中学生の時にこの映画を映画館で見たのですがストーリーの面白さとスケールの大きなアクション、特殊効果をふんだんに利用した映像の迫力に圧倒されたのを覚えています。特に当時はまだ珍しかったCG映像を使った液体金属型ターミネーターT1000のインパクトは強烈なものでした。またストーリーも秀逸でラストは涙なしでは見れないほど感動的なものでした。ここまで映像の迫力とストーリーの面白さがかみ合ったアクション映画はなかなかないと思います。制作費に100億円以上かけたそうですが、その投資に見合う面白さになっています。私はこの映画を見てハリウッド映画の力というものを中学生ながらに感じたものでした。
 ストーリー:「 核戦争後の西暦2029年、地球では機械軍と人類の抵抗軍が戦っていた。人類の指導者ジョン・コナーの母親暗殺に失敗した機械軍は、10年後の世界に新型ターミネーターT1000を送り込み、少年時代のコナーを抹殺しようとする。一方、来るべき未来の戦争を知る唯一の人間サラ・コナーは、狂人扱いされ精神病院へ入れられていた。そんな中、未来の人類の抵抗軍から1体のターミネーターT800がジョンを守るためにやってくる。人類の未来を守るため、T1000との壮絶な戦いが始まる。
 この映画はストーリーがとてもよく出来ています。1作目では悪役だったシュワルツェネッガー扮するT800が今回は人類を守る側に回るという設定も面白いですし、感情のないロボットであるはずのT800がジョン・コナーとの交流を通して、人間の感情を学んでいくという展開も非常に面白く、ラストはほろりとさせられます。またジョン・コナーとT800との交流には父と子の絆というテーマが内包されており、子にとって父親とはどういう存在かを描いた作品としてもよく出来ていると思います。さらに1作目では逃げ惑うだけだったサラ・コナーの孤独な戦いを描くハードボイルドドラマとして見ても味わい深いものがあります。
 またアクション映画としても液体金属という完全無敵なT1000という悪役を設定したことで、明らかに不利な人類側がどうやって倒すのかというサスペンスを生み出すことに成功しています。この映画は人間ドラマがしっかり描かれているので、アクションシーンも主人公たちに感情移入しながら見ることができます。脚本がしっかりしているとアクションシーンも盛り上がるという、よいお手本の映画だと思います。またキャメロンらしくアクションシーンはどれも良い意味で派手でしつこく、観客の目を映像に釘付けにします。あと個人的に残酷なシーンはあるものの、無意味に人が殺されないという点も高く評価できます。
 続編の映画というと1作目を超えられない作品が多いのですが、この映画は見事に成功しています。この映画の後、さらに『ターミネーター3』が違う監督によって制作されましたが、ドラマとしてもアクションとしても前作を超える作品には仕上がっておらず、その上前作の結末を否定するようなラストシーンに、なぜパート3を制作したのか疑問にさえ思いました。
2s  この映画は20分ほど追加シーンを挿入した特別編もあり、1作目に出てきたマイケル・ビーン扮するカイルが登場したり、ターミネーターの頭部を切開してチップのセッティングを変えるシーンやT1000の調子が悪くなったことを示すシーンがあったりなど、より深く映画の世界を楽しむことができるようになっています。興味がある人はぜひ見てください。
 この映画は今もってハリウッドアクション映画の最高峰であり、ヒューマンドラマとしても1級です。映画のラストのT800の決断は涙なしでは見られない感動が得られます。

製作年度 1991年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 137分
監督 ジェームズ・キャメロン 
製作総指揮 ゲイル・アン・ハード 、マリオ・カサール 
脚本 ジェームズ・キャメロン 、ウィリアム・ウィッシャー 
音楽 ブラッド・フィーデル 
出演 アーノルド・シュワルツェネッガー 、リンダ・ハミルトン 、エドワード・ファーロング 、ロバート・パトリック 、アール・ボーエン 

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『ジョーズ』この映画を見て!

第76回『ジョーズ』
Photo_4   今回紹介する映画はサメの恐怖を描き、世界中の映画ファンを虜にした映画『ジョーズ』です。この映画はテレビで何度も放映されているので、多くの人が一度は見たことがあると思います。また映画自体見たことがないという人でもジョン・ウィリアムスが手がけた印象に残るスコアーはどこかで聞いたことがあると思います。この映画が制作されたのは1975年ですが、公開当時は一大ブームとなり、興行収入も大成功を収めました。この映画を監督したのは今やハリウッド映画界の巨匠となったスティーブン・スピルバーグ。彼は当時まだ20代で、監督として駆け出しだったのですが、自ら製作者に監督をさせて欲しいと名乗りを上げて、この大作映画の監督をつかんだそうです。彼はこの映画の成功で一躍有名になり、その後も次々と大作・ヒット作を連発しました。
 私がこの映画を初めて見たのは幼稚園のときですが、あまりの恐ろしさにトラウマになり、しばらく海で泳げなくなりました。特に海の底で人間の生首が見つかるシーンとクイントがサメに食いちぎられる場面は子どもには刺激的過ぎて、ショックを受けたものでした。しかし、怖いながらもテレビで放映される度に、手で目を覆いながら最後まで見ていたものでした。
 この映画はショッキングなシーンも多いのですが、最後まで目の離せない作品に仕上がっています。その大きな理由として、前半はサメの全体像を映し出さず観客の恐怖感をあおり、後半に全体像を明らかにさせ人間対サメのアクションドラマに観客を集中させるように映画が組み立てられている所が大きいと思います。前半はサメの恐怖に慌てふためく人々の姿をじっくり描き、後半、サメに戦いを挑む3人の男たちの姿に焦点を絞って描いていく。このストーリーの流れの上手さが観客の心をつかむのでしょう。
 スピルバーグ監督は観客を映画に集中させようと様々な工夫をしています。海面すれすれの視点の映像や海中から人の足を映し出す映像が生み出す緊張感、突然現れる人の死体や襲い掛かるサメの映像のインパクト。映画の後半の男たち3人の船の上でのドラマの面白さ、そして伏線をしっかり張った上での予想外のサメの倒し方。この映画は全編にわたりスピルバーグの巧みな演出が冴え渡っています。
 またこの映画は音楽による演出がとても効果を生んでいます。サメの登場前に流れるジョン・ウィリアムスの緊張感溢れる音楽は観客の心に何が起こるのかという身構えを起こさせます。また観客がこの音楽が鳴ったときにサメが現れるんだと思い込んでいると、突然音楽が鳴らないうちに静粛の中からサメが現れ、観客を驚かせるという演出の巧みさ。この映画はジョン・ウィリアムスの音楽がなかったら、ここまでヒットしなかったと思います。
 最近『ジョーズ』のDVDを買い、特典映像のメイキングを見たのですが、この映画の海の上での撮影は過酷で大変だったようです。サメはもちろん本物でなく、ロボットなんですが、このロボットの制作・撮影が大変だったようです。映画ではあの張りぼてのサメがあんなに怖く見えるのですから、スピルバーグの演出は大したものです。
 『ジョーズ』はこのあとシリーズ化され3本の続編が生まれました。第2作目はブロディ署長の息子たちがサメに襲われ、3作目では水族館で働く息子の下にジョーズが現れ、4作目では妻のロレインの下にサメが現われと、なぜブロディ署長一家の前ばかりサメが現れるのかと突っ込みを入れたくなるような代物ばかりでした。もちろん、どれも1作目の面白さには到底及ぶことなく、パッとしない作品ばかりでした。『ジョーズ』公開後、この続編以外にも数多くのサメ映画が公開されましたが、どれもいまいちな作品ばかりでした。しかし、レニー・ハーリンが監督した『ディープ・ブルー』という作品は知能を持ったサメという荒唐無稽な設定ながら、とても面白い作品に仕上がっていました。
 また大阪のUSJにあるジョーズのアトラクションも体験してきたのですが、映画に比べて今一つ盛り上がりに欠けてぱっとしませんでした。
 『ジョーズ』は本当に良く出来た娯楽映画だと思いますし、スピルバーグの代表作であり、傑作だと思います。夏の暑い時期にぴったりの『ジョーズ』。ぜひ見てください!

製作年度 1975年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 124分
監督 スティーヴン・スピルバーグ 
原作 ピーター・ベンチリー 
脚本 ピーター・ベンチリー 、カール・ゴットリーブ 
音楽 ジョン・ウィリアムズ 
出演 ロイ・シャイダー 、ロバート・ショウ 、リチャード・ドレイファス 、ロレイン・ゲイリー 、カール・ゴットリーブ 

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『ゲド戦記最後の書 帰還』街を捨て書を読もう!

『ゲド戦記最後の書 帰還』 著:ル=グウィン 訳:清水真砂子 岩波書店
Return_gedo  今回紹介する本はゲド戦記シリーズ第4弾『帰還』です。第4巻は今までのゲド戦記シリーズとだいぶ作風が違っており、子どもが読むにはテーマや内容が難しく、大人向きの作品になっています。
 ゲド戦記はアースシーという架空の世界を舞台に、魔法使いゲドの人生とゲドと出会い運命が変わっていった人たちの姿を描いた傑作ファンタジーです。第4巻は第2巻『こわれた腕輪』で登場したヒロイン・テナーとひどい火傷を全身に負った謎の少女テルーを中心に話しが進みます。
 ストーリー:「テナーがアチュアンの墓所からゲドの手によって連れ出されから約20年。テナーは一時期ゲドの師匠・オジオンの下で指導を受けていたが、女として生きる道を選び、農夫と結婚し、子どもを生み育て、現在は未亡人となっていた。そんな彼女の下に現れる体の半分にひどい火傷を負った謎の少女テルー。テルーは大人たちによって虐待され、火の中に放り込まれていた。テナーは傷ついたテルーを養女として育てることを決める。そんな折、オジオンの容態が悪いことがテナーに伝えられる。オジオンの下に向かうテナーとテルー。オジオンはテナーに看取られ亡くなる。しばらくオジオンの家に留まる2人だが、そこに生死両界をしきる扉を閉めて、全ての力を使いきったゲドが現れる。」
 この作品は前3作までにあったファンタジー色はほとんどなく、生々しい現実の世界での話しが展開されていきます。女として人生の曲がり角を向かえたテナー。魔法の力を失ったゲドの葛藤や苦しみ。虐待され体にも心にも癒えない傷を負った少女テルーの哀しみ。この作品は力を奪われた(失った)者たちが、そんな状態の自分たちをどう受容していきながら生きていくかを描いています。
 私はこの作品を最初読んだとき、登場人物たちのあまりの痛々しい姿になかなか読み進むことが出来ませんでした。アースシーの大賢人であったゲドが魔法を失い、自信をなくし、弱々しくなった姿を見るのはとてもつらいものがありました。魔法を失ったゲドの喪失感の深さに読んでいて胸が痛くなりました。また今作の影の主人公とも言えるテルー。虐待により心を閉ざした彼女の姿には幼くして癒えない傷を背負った少女の過酷な未来を思うと、胸が締め付けられました。 
 そんな痛々しい登場人物たちの中、今作の主人公であるテナーが、何とかしてゲドやテルーに生きる希望や力を与えようとする姿に私はとても感銘を受けました。テナーは夫を失い、子どもも成人し、人生の節目を迎えた女性として、これからの人生をどうしていくかを考えているところにテルーとゲドが現れます。テナーは女性として抑圧されている自分に苛立ちを感じながら、日常のささやかな生活を大切にしている人間として描かれます。テナーの日々の何気ない生活を大切にしようとする姿勢の中で、ゲドやテルーが生きる力を取り戻していく姿がとても印象的でした。『帰還』はテナーの母親としての愛、女としての愛の姿を丁寧に描いた作品です。この物語のテーマの一つとしての愛の力強さというものがあると私は思います。
 また、この作品にはフェミニズムの思想がとても色濃く反映されています。女であるテナーに対する魔法使いたちの嫉妬と蔑み、テルーに対する男たちの所有欲、そしてテナー自身が持つ女としての生き方への捉われ。この作品では抑圧されてきた女たちの悲しみと女を抑圧する男たちの愚かさや弱さというものが描かれています。この作品は女性を取り囲む抑圧からの解放と男からの自立いう作者の思いが込められいます。
 今年の夏に公開されるスタジオジブリ制作の『ゲド戦記』は3作目『さいはての島』をベースにしながら、4作目である『帰還』のテナーやテルーも登場するみたいです。いったいどういうストーリーになるのか楽しみでもあり、不安でもあります。私が特に気になるのはテルーの描写です。激しい虐待を受けて、心を閉ざした少女テルーの姿をジブリが描くことが出来るのか、かなり心配です。映画の予告編を見る限り、原作のテルーとは少し印象が違うような気がしました。
 『帰還』は前3作から比べると、スケールも小さく、淡々としたストーリーです。前3作との印象の違いに戸惑うかもしれませんが、人間の弱さや愚かさ、悲しみを丁寧に描いた傑作です。ファンタジー小説として読むより、人間の内面描写に焦点をあてた文学として読まれたほうが良いと思います。お世辞にも明るく楽しい話しとは言えませんが、最後まで読むと生きる力が湧いてくる作品です。 
 

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『ぐろぐろ』街を捨て書を読もう

『ぐろぐろ』 作:松沢呉一 ちくま文庫
Guroguro  今回紹介する本は私が大好きなライター・松沢呉一の非常識で下品なエッセイ『ぐろぐろ』です。この本は下品、下劣、下ネタなエッセイが満載です。常識や公序良俗といったものを信奉している人が読むと気持ち悪くなったり、不愉快になったりするかもしれません。しかし、常識や公序良俗を気にしない人は、げらげら笑いながらあっという間に読むことが出来ると思います。
 この本で書かれている内容はとてもここで書けるようなものではないですが、普通に生きていたら考えられないようなことが数多く書かれています。こんなお下品でお馬鹿なことをこんな真剣に考える人がいるのかと思うと、ある意味尊敬の念が湧きますし、人間という生き物の深遠さを感じさえします。
 公序良俗や常識に疑問を感じている人、下品なことが好きな人、人生にいき詰っている人はこの本を読んでみてください。グロっとさわやかな気分になれます。

・内容
連載タイトルについて
謝罪と反省
インド料理屋にて
平賀源内と屁
皮膚病図鑑
人の死と動物の死
タレ物語
尿道炎とともに生きる〔ほか〕

 

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