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2006年5月28日 - 2006年6月3日

『ポセイドン・アドベンチャー』この映画を見て!

第71回『ポセイドン・アドベンチャー』
Poseidon  今回紹介する映画はパニック映画の傑作であり、明日から公開される超大作『ポセイドン』のオリジナルに当たる作品です。この作品は72年公開当時に大ヒットを飛ばし、その後、ハリウッドでパニック映画がブームとなりました。この映画の後数々のパニック映画がハリウッドで制作されましたが、設定の面白さとシナリオの素晴らしさでこの映画を超える作品は『タワーリングインフェルノ』を除いてないと思います。
 ストーリー:「ニューイヤーズ・イブの夜、米国豪華客船ポセイドン号は、1400人を乗せてアテネに向かっていた。しかし、その時海底地震が発生し、数分後船は大津波にのまれて転覆、天地が逆転した船内からの脱出にスコット牧師を始めとした10人の男女が挑む。」
 この映画を私が最初に見たのは幼稚園の時でした。テレビで放映されているのを家族と共に見ていたのですが、。非常に強いインパクトを残しました。ひっくり返った船のセット、逃げる人を次々と襲う困難、自らの命を犠牲にして仲間を助けようとする人たちの姿など小さいとき食い入るように見ていたのを覚えています。スコット牧師のラストの行動にとても衝撃を受け、自分が同じ立場ならあのようなことが出来るか、子どもながらに悩んだものでした。さらにこの映画を見終わった後はしばらく船恐怖症にもなってしまい、本気で船に乗るのが嫌でたまりませんでした。(『ジョーズ』を見た後も、しばらく海恐怖症になりましたが・・)小学生の時など、用事でフェリーに乗るときに、船底に近いとこにいたほうがいいのではとか、沈んだら船尾に向かわないとと本気で考えていたものでした。私にとって『ポセイドン・アドベンチャー』は小さいときからとても思い入れの深い作品でした。
 『ポセイドン・アドベンチャー』がリメイクされることを知り、久しぶりにDVDを買って見直してみたのですが、今見ても十分面白い映画でした。まだCGや特殊技術が発達していない時代に、ここまで迫力のある映像が撮られていたことに、改めて見て驚きました。特に船の天地が逆転するシーンの迫力は今見てもすごいものがあります。撮影するときはスタントの人は大変だったと思います。またDVDの特典映像を見ると、役者たちがスタントなしで実際の危険なシーンも演じていたようで、撮影は過酷だったそうです。ストーリーも無駄なシーンが一切なく、アクションシーンの中に濃厚な人間ドラマが展開されており、シナリオの上手さに感心しました。脱出する10人一人一人の個性が丁寧に描きこまれ、ストーリーに反映されているので、見る側も登場人物に感情移入がしやすいです。またストーリーの背景には旧約聖書に記されるモーゼがエジプトからユダヤの民を脱出させる話しがベースにあり、単なるパニック映画にはない奥深さがあります。特にベル婦人がスコット牧師を助けるために水の中に飛び込むシーンと、スコット牧師のラストのシーンは人間ドラマとして最高の見せ場であり、涙なしでは見られません。この映画を改めて見ると、最近の超大作映画が映像の迫力の割りに中身が薄いなと思いました。
 一昔前の作品ではありますが、この作品は完成度の高い娯楽映画であり、今見ても楽しめるものとなっています。リメイク版『ポセイドン』が公開された今、オリジナルの『ポセイドン・アドベンチャー』もぜひ見てみてください!

製作国・地域 アメリカ
上映時間 117分
監督 ロナルド・ニーム 
原作 ポール・ギャリコ 
脚本 スターリング・シリファント 、ウェンデル・メイズ 
音楽 ジョン・ウィリアムズ 
出演 ジーン・ハックマン 、アーネスト・ボーグナイン 、レッド・バトンズ 、キャロル・リンレー 、ロディ・マクドウォール

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『嫌われ松子の一生』この映画を見て!

第70回『嫌われ松子の一生』
Memory_of_matuko  今回紹介する映画は現在劇場で公開され話題の『嫌われ松子の一生』です。この映画は中谷美紀の体当たりとも言える熱演と『下妻物語』の監督・中島哲也のキッチュでポップな演出が大きな見所となっています。
 ストーリー:「昭和22年・福岡県大野島生まれの川尻松子は、お姫様みたいに幸せな人生に憧れていた。しかし、20代で教師をクビになり、そこから人生は暗転直下、壮絶な不幸の連続にまみれた波乱万丈の人生を送ることになる。ろくでもない男たちと付き合い、風俗嬢になり、ヒモを殺害して刑務所へ送られ、やくざと恋に落ちる松子。幸せを求めながらどんどん泥沼にはまる松子の人生を明るくポジティブに、時に切なく描く。」
 私は最初はあまり興味がなかったのですが、見てきた人の周囲の評判が良く、どんな映画か気になり、先日見てきました。この映画の感想を一言で言うなら、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のストーリーと『ムーランルージュ』の映像や演出を足して2で割ったような感じの印象を私は受けました。(この2作を見たことがある人は分かると思います。)
 終始テンションの高い演出と役者の演技に、カラフルでポップな映像、ミュージカルシーンの音楽の面白さに圧倒されました。暗く救いのない主人公の人生を、どこまで明るくポジティブに捉えていく監督の手腕は素晴らしく、見終わった後、主人公の不器用な生き方にどこか清清しいものさえ感じました。特にミュージカルシーンの演出やセンスのよさは今までの日本映画では見られなかったほど、出来のよいものでした。あと個人的に、監督の片平なぎさを出したお遊びのシーンや時折挟まれるブラックユーモアな演出がツボにはまって笑ってしまいました。ただ後半ストーリーの流れや演出が少しもたつき、テンポが悪くなったのが個人的に残念でした。後20分くらい後半が短ければ、より傑作になったと思います。
 この映画の主人公・松子を演じた中谷美紀は体当たりの熱演をしています。不器用で愚かだけど、妙にポジティブな女性という難しい役どころを演じきったものです。ここまで幅広い演技が出来るとは思っていなかったので、正直びっくりしました。ただ如何にも「私がんばって演技していますよ」という印象も時折受けることがありました。また脇を固める役者もとても豪華で、見ていて楽しめました。とくに宮藤官九朗と黒沢あすかの演技がとても印象的でした。また思わぬ役どころで出る片平なぎさの姿には笑ってしまいました。
 この映画の主人公・松子の人生は一見すると不幸で救いようのない人生に思えますが、私はけっして彼女の人生は不幸なだけで意味がないものではなかったのだろうなと思います。本当に自分のことを気にしてくれる友人や愛人とも出会えましたし、彼女の人生に共感してくれる甥も現れました。この映画は絶望を描きながら、常に希望も描いています。どん底まで落ちていき、もうだめだと何度も思いながらも、希望を求めて生き延びていこうとする松子の姿に人間の生への欲求というものを感じました。人間の愚かさや醜さ、たくましさに切なさと言ったものをデフォルメした形で見事に描いていると思います。
 私はこの映画は今年の邦画ベスト3に入るほどの力作だと思っています。まだ見ていない人はぜひ劇場で見ることをお奨めします!

製作年度 2006年
製作国・地域 日本
上映時間 130分
監督 中島哲也 
原作 山田宗樹 
脚本 中島哲也 
音楽 ガブリエル・ロベルト 、渋谷毅 
出演 中谷美紀 、瑛太 、伊勢谷友介 、香川照之 、市川実日子、黒沢あすか、柄本明、AI、劇団ひとり、ゴリ、宮藤官九朗、片平なぎさ、土屋アンナ

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上原隆の本 街を捨て書を読もう!

Uehara3『友がみな我よりえらく見える日は』
『喜びは悲しみのあとに』
『雨にぬれても』
・三冊とも幻冬舎アウトロー文庫より発行
 私は中島みゆきが昔から好きなのですが、今回紹介する上原隆の本を読むと、中島みゆきの大ヒットした歌『地上の星』がいつも頭に流れてきます。『地上の星』は中島みゆきの名もなき人たちへの温かいエールや共感が歌詞に込められていましたが、上原隆の本にも同じような思いが込められています。
Uehara2 上原隆は「ルポルタージュ・コラム」と名付けるノンフィクションの作品を発表し続けています。彼は名もなき人たちのさまざまな生き様を、時に淡々と、時 にユーモラスに描いていきます。さまざまな職業に従事する人、会社をリストラされた人、夫や妻と離婚した人、父子家庭や母子家庭の親子、登校拒否やうつ病になった人、仕事で悩む人々・・・。彼の作品に出てくる人は、どこにでもいそうな人たちであり、出てくる話もどこにでもありそうな話しです。そんなどこにでもいそうな人の話にも関わらず、読者は読んでいる間、彼らの生き様に引き込まれ、深く共感させられます。それは作者のルポの仕方や文章の力がとても大きいです。彼は相手と常に一定の距離を保ちながら接し、ありのまま の相手の姿を彼の言葉でつむいでいきます。ありのままをありのままに自分の言葉で描くということは簡単なようでいて、とても難しいと思います。作者が淡々と描いているからこそ、読者は描かれている人たちの生き方に自分を重ね合わせたり、思いを寄せることが出来るのでしょう。
Uehara それにしても彼の作品に出てくる人の生き方を読んでいると、普通の人生なんてなくて、みんなそれぞれ時に迷い、時に格闘し、時に涙しながらドラマチックに生きているのだなという当たり前のことを思い出させてくれます。また彼の文章を読むと、生きることに良いも悪いも正解はないということに気づき、生きることに対して肩の力がふっと抜けます。

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