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2006年5月21日 - 2006年5月27日

宮崎駿作品と久石譲

 宮崎駿の映画の魅力の一つに音楽があります。どの作品も映像と音楽がとてもマッチしており、美しく親しみやすいメロディーは聞いていて、とても心地よいものがあります。そんな宮崎作品の音楽を全作品手がけているのが久石譲です。久石さんは『風の谷のナウシカ』から『ハウルの動く城』まで宮崎駿がジブリで監督した7作品全ての音楽を担当しています。久石さんの音楽の魅力はシンプルで押しの強いメロディーと編曲の巧みさにあります。久石さんの音楽はとてもインパクトが強いので、映像に魅力がないと音楽だけが上滑ることも多いです。しかし、宮崎作品では宮崎さんの生み出すインパクトのある映像と久石さんの生み出すインパクトの強い音楽はとても相性がいいのです。久石さんの音楽は透明感が清清しい宮崎作品の映像の素晴らしさをさらに倍増させてくれます。久石さんの音楽がなかったら、おそらく宮崎作品はここまで人気がでなかったのではないかと思うほどです。
 宮崎作品の音楽の制作は大変時間をかけて丁寧に行われています。まず映画公開の半年前から1年前に、映像がない段階で作曲家が自由なイメージでイメージアルバムを作り、どういう音楽が映像に合うか監督と音楽家で話をするそうです。その後、イメージアルバムの曲を参考にしながら、サウンドトラックのためにまた作曲をしなおして、編曲をして完成させるそうです。長い期間をかけて手間隙かけて制作されているので、完成度も高くなるそうです。
 では宮崎駿作品の各サントラの魅力を紹介したいと思います。もし興味が出てきたら、レンタルするなり、購入するなどして、ぜひ宮崎作品の音楽の魅力に浸ってみてください。
 Nausika
『風の谷のナウシカ』1984年
 宮崎駿作品において初めて久石譲が音楽を手がけた作品です。この頃の久石譲はまだ無名の作曲家だったのですが、監督とプロデューサーの高畑勲の強い後押しもあり、大抜擢となりました。(当時は音楽を誰が担当するかで会社上層部と映画制作者の間で揉めに揉めたそうです。)
 ナウシカの音楽の魅力は民族音楽色の強い曲やオーケストラによる壮大な曲、シンセによる打ち込みの曲といろいろな種類の曲が混在しながら、ナウシカの世界観をみごとに音で表現しているところにあります。特に映画のクライマックスのナウシカ復活のシーンで流れる「ラン・ラン・ラ・ラ~」という子どもの歌声の曲はとてもインパクトがある曲です。(ちなみにこの曲の子どもの歌声は久石譲の当時4歳の娘が歌っています。)

Laputa 1986年『天空の城ラピュタ』
 コンビ2作目の『ラピュタ』は名曲ぞろいで音楽の完成度がとても高いです。まずオープニングに流れる『空から降ってきた少女』。オーケストラによる壮大な雰囲気の曲がこれから始まる冒険を予感させて素晴らしいです。またパズーが吹くトランペットの曲『ハトと少年』も清清しい名曲です。また活劇場面で流れる音楽も映像の動きのタイミングときっかり合わして制作されたそうで、観客の緊張感を煽り、盛り上げてくれます。特に映画の中盤でシータをパズーが救い出すシーンで流れる曲は映像の持つスリルと緊張感そして迫力を倍増させてくれて、最高にすばらしい活劇音楽となってます。また映画の後半のラピュタに着いてから流れる音楽も壮大でありながら物悲しく、ラピュタのもつ2面性を音楽で巧みに表現していると思います。そしてラストで流れる主題歌『君をのせて』はアニメ映画の主題歌においてベスト3内に入るほどの名作です。ラピュタの音楽は宮崎&久石コンビのなかでも指折り3本に入るほどの名作です。

Totoro 1988年『となりのトトロ』
 コンビ3作目の『となりのトトロ』。この作品の主題歌『さんぽ』と『となりのトトロ』は小学校の音楽の教科書にも載り、今では国民的愛唱歌となっています。『トトロ』は『ナウシカ』や『ラピュタ』のようなスケールの大きな話でないので、音楽のアプローチも今までの作品とは違っており、優しさと暖かみのある親しみやすいメロディー中心の作品となっています。そんな中、久石さんらしいシンセを使用したミニマム調(同じフレーズが何度も繰り返される曲)の曲などもあり、ありきたりの子ども映画音楽みたいな感じになっていないところが、さすがだなと思います。
  私が『トトロ』の中で特にお気にいりの曲は、映画の中盤でトトロやサツキとメイが傘を持って踊ると木がむくむくと伸びてくるシーンで使われる『風のとおり道』という曲です。この曲は命の持つ神秘さや壮大さ、優しさ、暖かさといったものが聞いていて感じられる名曲です。
Kiki 1989年『魔女の宅急便』
 この映画は宮崎駿作品の中で始めて大ヒットした作品です。この映画の音楽は、聞いていて軽やかで、明るくさわやかな雰囲気を持っています。地中海周辺の地域で流れているようなヨーロピアンエスニック調の曲を意識して作曲された音楽は、映画の舞台となった架空の国の雰囲気を見事に表現しています。
 
Porco 1992年『紅の豚』
 この映画は1920年代末期のイタリアを舞台に男と女が繰りひろげる愛と冒険の物語ということで、音楽もアコースティックな音にこだわり、哀愁とロマンチシズム漂う曲が多いです。また飛行シーンで流れる曲が、浮遊感や飛翔感をみごとに音楽で表現しており、映像にとてもマッチしています。夜に洋酒を飲みながら聞きたい感じの曲が多いです。

Mononoke 1997年『もののけ姫』
 公開当時、大ブームを巻き起こした『もののけ姫』。この映画の音楽は宮崎駿と久石譲のコンビの集大成といった感じの名作に仕上がっています。主人公の気持ちや宮崎監督の思想性を音楽で表現しようというスタンスで制作された音楽はどれも重厚で美しく、映像で表現しきれない主人公たちの思いを見事に表現しています。またこの作品では日本的なものを意識して、西洋的コード進行と違う5音階をベースに作曲したそうです。さらにこの作品の主題歌『もののけ姫』は作詞を宮崎駿が手がけ、カウンターテナーである米良美一をボーカルとして起用し、当時大変話題になりました。
 私がこの作品で一番お気に入りの曲が『アシタカせつ記』という曲で、映画の中でも重要なシーンで使用されていますが、フルオーケストラによる重厚な演奏は『もののけ姫』の持つ壮大で深い世界観やアシタカの思いが見事に音で語られた名曲になっています。

Sen_to_tihiro 2001年『千と千尋の神隠し』
 日本映画史上空前の大ヒットを飛ばした『千と千尋の神隠し』。この映画ではフルオーケストラとエスニックな音を巧みに融合し、映像が持つ独特な世界観を音楽で表現しています。映画の最初と中盤のおにぎりを食べるシーン、ラストと流れるピアノによるテーマ曲はとても美しく、千尋の寂しさや切なさといった心情を音で表しています。私がこの作品で一番好きな曲は『6番目の駅』という曲で、千尋が電車に乗るシーンで使われているピアノソロによる曲です。この曲の持つ寂しさ、孤独感、物悲しさは電車に乗った千尋の気持ちを見事に語っています。
Hauru_santra 2004年『ハウルの動く城』
 コンビ7作目となる『ハウルの動く城』。この作品では『人生のメリーゴーランド』というワルツの曲が、とても印象に残ります。今作品では今までと違い、メインとなる曲を一曲作り、随所に流したいという監督の要望があったそうです。その監督の要望に応えて作られた曲が『人生のメリーゴーランド』です。この曲はとても優雅で美しく、それでいて哀愁を帯びていて、映画のキャラクターやストーリーにとてもマッチしています。
 私はこの作品で一番のお気に入りはラスト近くに流れるトランペットの曲です。トランペットの音色の美しさがメロディーの持つ美しさを引き立てており、胸にぐっと響いてくる曲となっています。 

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スタジオジブリの映画と主題歌

お気に入りのCD.NO8「STUDIO GHIBLI SONGS」
Studio_ghibli_song_2  スタジオジブリの作品といえば、毎回主題歌がとても印象的です。映画の主題歌というと、映画の内容と密接に関係なく、人気のある歌手の曲が使用されることが多いです。しかし、ジブリの作品において主題歌は単なるエンディングに流れる曲という以上に重要な役割を持っています。
 ジブリの映画においてラストに流れる主題歌は、どれも映画の雰囲気やテーマにとてもあっており、年代を超えて観客の心を和ませてくれます。そして、映画を見た後にテレビやCDなどで、主題歌が聞こえてくると、映画の内容を喚起させるだけの力があります。
 ジブリの主題歌は映画のためにオリジナルの主題歌が制作されるときもあれば、既成曲を上手く取り入れる時もあります。前者の代表作は『もののけ姫』や『となりのトトロ』・『天空の城ラピュタ』などがあり、後者ではユーミンの曲を主題歌に使用した『魔女の宅急便』などがあります。私はジブリの主題歌では映画のために制作されたオリジナル主題歌がお気に入りです。特に作詞を宮崎駿・作曲を本編音楽を担当した久石譲が手がけたラピュタの主題歌『君をのせて』や『となりのトトロ』『もののけ姫』などの主題歌は、映画の雰囲気やテーマが伝わる主題歌で、とても完成度の高い曲だと思います。
 またジブリの主題歌ではあまり有名でない実力のあるアーティストを起用されることも多いです。特に『千と千尋の神隠し』の主題歌を歌った木村弓や『もののけ姫』の米良美一などは、映画のヒットに伴い、一気に知名度があがったアーティストでした。ジブリの作品では次にどんなアーティストが起用されるのかも楽しみの一つです。
Treru

 今年公開されるジブリの新作『ゲド戦記』でも手島葵という新人アーティストが起用されるようですが、予告編で流れる歌を聴くと歌声も美しく、歌詞も心に残るものがありました。歌を聴くだけで、映画を見てみたいと思わせる力がありました。映画が公開されると、手島葵もブームになるような気がします。
  ジブリの主題歌で使われる曲はどれも年代を問わず誰が聞いても楽しめ、心が和まされます。ぜひ家庭に1枚ジブリの主題歌のCDをお持ちすることをお奨めします!

お奨めスタジオジブリ主題歌CD!
『STUDIO GHIBLI SONGS』徳間ジャパンコミュニケーションズ
1. 「風の谷のナウシカ」~風の谷のナウシカ(安田成美) 
2. 「天空の城ラピュタ」~君をのせて(井上あずみ) 
3. 「となりのトトロ」~さんぽ(井上あずみ) 
4. 「となりのトトロ」~となりのトトロ(井上あずみ) 
5. 「火垂るの墓」~はにゅうの宿(アメリーダ・ガル=クリチ) 
6. 「魔女の宅急便」~ルージュの伝言(荒井由実) 
7. 「魔女の宅急便」~やさしさに包まれたなら(荒井由実) 
8. 「おもひでぽろぽろ」~愛は花,君のその種子(都はるみ) 
9. 「紅の豚」~さくらんぼの実る頃(加藤登紀子) 
10. 「紅の豚」~時には昔の話を(加藤登紀子) 
11. 「海がきこえる」~海になれたら(坂本洋子) 
12. 「平成狸合戦ぽんぽこ」~アジアのこの街で(上々颱風) 
13. 「平成狸合戦ぽんぽこ」~いつでも誰かが(上々颱風) 
14. 「耳をすませば」~カントリーロード(本名陽子) 
15. 「On Your Mark」~ON YOUR MARK(CHAGE&ASKA) 
16. 「もののけ姫」~もののけ姫(米良美一) 

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『ナイロビの蜂』この映画を見て!

第69回『ナイロビの蜂』
Nairobi  今回紹介する映画は今年度アカデミー賞でレイチェル・ワイズが助演女優賞を取った作品『ナイロビの蜂』です。この作品、日本では同時期公開の『ダヴィンチ・コード』の影に隠れてしまっていますが、とても素晴らしい作品です。冒険小説の巨匠ジョン・ル・カレの同名ベストセラーを、『シティ・オブ・ゴッド』で一躍有名になったフェルナンド・メイレレス監督が見事な手腕で映画化しています。『シティ・オブ・ゴッド』はブラジルのスラム街におけるギャングの盛衰と、その中でジャーナリストになることを夢見る少年の話を躍動感ある映像で見せた傑作でしたが、今回の作品も監督の持ち味が存分に発揮された映画です。
 私はこの作品を実際に映画館で見るまでは、宣伝の仕方からして、異国の地で白人たちが織り成す甘いメロドラマかと思いこんでいました。ところがいざ見てみると、非常に骨太な社会派作品であったので、びっくりしました。もちろん宣伝なので言われているように、夫婦の愛や絆が描かれている作品なのですが、それよりも夫婦がアフリカで直面する多国籍企業による搾取の生々しい現状のほうに目が奪われてしまいました。
 ストーリー:「ケニアのナイロビ。ガーデニングが趣味の英国外務省一等書記官ジャスティン。彼にはアフリカの貧困層に対して救援活動を続ける妻テッサがいた。しかし彼は妻の行動には関心を持たず、見ない振りをして、ガーデニングに熱中していた。そんなある日、テッサは救援活動中に何者かに殺されてしまう。現地の警察はよくある殺人事件の一つとして処理しようとしていた。しかし、事件に不審なものを感じたジャスティンは、自ら調査に乗り出す。やがて、彼は事件に新薬開発をめぐる国際的陰謀が絡んでいたことを知る。妻が一体アフリカの貧困層で何をしようとしていたのか懸命に探ろうとするジャスティン。しかし、そんな彼にも身の危険が迫っていた・・・。」
 この作品はラブストーリーを期待して見た人は、予想外のストーリーにかなり衝撃を受けるはずです。アフリカの貧困層の過酷な現状や、先進国が開発途上国を食い物にして利益を得ようとする姿がストレートに描かれており、非常に考えさせられる作品です。命の重さとは何か映画を見終わって考え込んでしまいました。
 見て見ぬふりをする夫と見て見ぬふりができなかった妻。妻はアフリカの貧困層の現状を変えようと戦い死んでいき、夫はそんな妻の亡き後を追う中でアフリカの厳しい現実と向き合い、妻が何をしようとしていたのか理解するようになる。この作品は妻の遺志を夫が継いで果たすまでを描く作品であり、夫が妻を理解し彼女の元に返るまでを描いた作品です。映画のラストはとても物悲しいですが、夫婦の絆が深まったという点では良かったのかもしれません。
 この作品はストーリーの素晴らしさはもちろんのこと、映像や演技においても見ごたえのある作品です。映像においては手持ちカメラによるドキュメンタリータッチの生々しい映像やアフリカの雄大な大地をロングショットで捉えた美しい映像が印象に残りました。また映像の色彩がアフリカのパートでの鮮やかな色彩とヨーロッパのパートでのくすんだ映像のコントラストが印象的でした。また現代と過去と時系列が交錯した編集の仕方も素晴らしかったです。
 また演技においては、レイチェル・ワイズがアカデミー賞を取っただけあって印象的です。『ハムナプトラ』シリーズのヒロイン役としか個人的に印象がなかった彼女がこんなに演技が上手いとは驚きました。彼女演じる妻テッサの母性と女性と両方の魅力を持ち合わせた姿がとても印象的でした。レイフ・ファインズも最初は頼りなさそうな夫でありながら、後半は妻を思いながら孤独に戦う男の葛藤を見事に演じていました。ラストの湖での全てを受け入れた彼の姿は胸にぐっときました。またストーリーとは関係ないですが、時折映るスラム街の子どもたちの笑顔もとても心に残りました。
 この映画は、ラブストーリーとしても、社会派サスペンスとしても味わいがある作品です。ラストは切なく、そして重いです。しかし見終った後、愛とは何か、命とは何かなど、いろいろと考えさせてくれる作品です。現在劇場で公開されているので、ぜひ見てみてください。

制作国 イギリス
製作年度 2005年
上映時間 128分
監督 フェルナンド・メイレレス 
原作 ジョン・ル・カレ
脚本 ジェフリー・ケイン
出演 レイフ・ファインズ 、レイチェル・ワイズ 、ユベール・クンデ 、ダニー・ヒューストン 、ビル・ナイ 

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『べてるの家の「非」援助論―そのままでいいと思えるための25章』街を捨て書を読もう!

『べてるの家の「非」援助論―そのままでいいと思えるための25章』
Beteru  
日本ではまだまだ精神障害を持つ人に対して偏見や差別が根強く、彼らを異質な者、危険な者としてみなしてしまう風潮があり、精神障害を持つ人は大変生きづらい状況に置かれています。
 そんな中、北海道・浦河町にある浦河べてるの家では、精神障害をもつ人たちが地域の一員としていきいきとした生活を送っています。べてるの家は精神障害を持っている人が共同で生活をしたり、昆布の販売を行ったり、自分の病の研究をしたりしています。べてるの家の特徴は、精神障害を病気捉えて治療し、社会復帰をめざすのではなく、精神障害をもっている人の悩みや弱さをそのまま受けいれ、問題だらけの人生を肯定する援助を行っているところです。今回紹介する本はそんな「べてるの家」の非援助論を当事者たちや関係者が熱く語った本です。この本は福祉関係者の人はもちろんのこと、現代社会で生きにくさを感じている人にぜひ読んで欲しい本です。「成功」や「効率」「合理化」という右肩上がりを目指す社会の中で「失敗」「非効率」「不合理」な右肩下がりの生き方を大切にしようとするべてるの家。そんなべてるの家の考えは現代社会の問題点を見事に浮かび上がらせます。べてるの家では生きる苦労・失敗や弱い自分の尊重、仲間同士の語り合いをとても大切にします。そして精神障害者がもつネガティブなものをポジティブなものへと転換させ、心の病があっても充実した生き方ができることを提示します。
 私はこの本を読んでとても衝撃を受けると同時に、能力主義がはびこるこの社会で生きるのがとても楽になりました。今まで自分の中ではびこっていた価値観に大きくヒビが入り、今までにない風が吹き込んできました。そして一人一人の人が抱える弱さや苦労そのものを尊重し、見守っているべてるの人たちの姿に、これからの自分の援助の姿勢を問われたような気がしました。
 ぜひ、みなさまも読んでみてください!
 

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