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2006年3月12日 - 2006年3月18日

『茶の味』この映画を見て!

第61回『茶の味』
見所:「田舎の美しい風景の中で展開される変な家族の物語」
taste_of_tea  今回紹介する映画『茶の味』は最近私が観た日本映画の中でも特にお気に入りの作品です。監督は『鮫肌男と桃尻女』『PARTY7』などを撮り、一躍有名になった石井克人。彼は『キル・ビル1』のアニメパートのキャラクター設定や作画を担当していることでも有名です。彼の映画の持ち味はポップでシュールな映像と独特なユーモアのセンス、切れと勢いのある演出です。しかし、今回紹介する『茶の味』は今までの石井作品とはひと味違う作品となっています。もちろんシュールな映像や独特のユーモアセンスはこの映画でも健在ですが、全体を通して、とてもほのぼのまったりとしたゆるい世界が展開されていきます。
 ストーリー:「春野家の家族は皆、他人には言えないモヤモヤを心に抱えている。内気で囲碁好きの長男、ハジメは転校生のアオイに一目ぼれする。また妹の幸子は、ときどき巨大な分身が勝手に自分の前に出現することを悩んでいた。専業主婦の母親、美子は、アニメーターに現場復帰するため奮闘中。父ノブオはそんな妻に取り残された感じの片田舎の催眠治療士。いつも自由な変人オジイ、アキラ。元カノにヒトコト言えずに、橋の上を行ったり来たりの叔父さんアヤノ。皆どこかヘンだけど愛おしい春野一家のピースな物語!」
 この映画はある家族の日常を描いた作品ですが、特に大きなドラマは展開しません。春野家の面々のありふれた日常の中での些細な出来事を淡々と描いていきます。日常の中での些細な出来事に一喜一憂する生活。そんな生活を暖かく愛おしく見つめていく作品です。
 しかし、ただ淡々とした家族の日常生活が描かれている訳ではありません。家族の日常の中に突然非日常的なエピソードが割って入ります。頭にうんこの載ったヤクザの幽霊、ロボットコスプレマニアの若者たち、川辺でダンスする男など強烈なキャラクターやエピソードが次々と出てきます。また春野家の幸子が見る巨大な自分の姿のシーンやオジイ・アキラが「山よ」を唄うシーンはとてもシュールな映像で見る者を魅了します。この映画はありふれた日常の裏に潜む非日常的な世界やありふれた人々の心の中に持っている他の誰にも説明しがたい独特な世界の存在を気付かせてくれます。
 この映画は役者たちの演技もとても魅力的です。特に浅野忠信と我修院達也の演技は印象に残ります。浅野のあまりにも自然体な演技はいつ見ても上手いなと思います。特に元カノに久しぶりに会うシーンは切なかったです。また我修院達也演ずるオジイの演技はとても強烈で一度見ると忘れられません。オジイの歌う「三角定規」は最高でした。また幸子を演じる坂野真弥もとてもかわいいく、見る者の心を和ませます。さらに脇役もとても豪華で、SMAPの草薙剛や『エヴァンゲリオン』監督の庵野秀明、寺島進、樹木希林、和久井映見などが出演しています。
 この映画は日本の田舎の美しい自然がとても綺麗に撮影されています。特に緑の色彩がとても美しく、見る者の心をいやしてくれます。また反面CGを駆使したシュールな映像やアニメの映像なども挿入され、見る者の心を刺激してくれます。音楽もまったりとしたテンポの曲で聞いていて心地よく、この映画の世界観を見事に表現しています。
 この映画を見ると、とても暖かい気持ちになれます。そして「みんな同じ空の下で、いろんなことを感じながら淡々とけなげに生きているんだなあ」という思いを抱くと思います。ぜひ、このユニークで不思議な家族のドラマを見てみてください!
 
製作年度 2003年
製作国・地域 日本
上映時間 143分
監督 石井克人 
原作 石井克人 
脚本 石井克人 
音楽 リトルテンポ 
出演 佐藤貴広 、坂野真弥 、浅野忠信 、手塚理美 、我修院達也 、三浦友和、手塚理美、土屋アンナ

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『プライベート・ライアン』この映画を見て!

第60回『プライベート・ライアン』
見所:「冒頭30分の壮絶な上陸作戦の戦闘シーン!」
プライベート・ライアン

 私がこの映画を映画館で最初に見たときは大変衝撃を受けました。今まで見てきた戦争映画の中でこの映画ほど生々しい戦闘シーンはなかったです。まるで自分が戦場の中に放り込まれたような気分に陥りました。特に冒頭30分に及ぶオハマビーチ上陸作戦のシーンはすざましく正視出来ないほどでした。闘う準備もする間もなく撃たれて死んでいく兵士、なくなった自分の手を探す兵士、内蔵が飛び出し泣け叫ぶ兵士、そして海岸を埋め尽くす死体。この映画ほど戦争の現場の実態をリアルに描いた映画はないと思います。
  この映画の最大の見所は映像と音響です。映像の彩度を落として、まるで当時の従軍記者が撮影したような映像を見ているような雰囲気、ハンディ・カメラを使用して、ドキュメンタリータッチで撮影された映像は当時の戦闘現場を見ているような感覚を観客に与えます。また音響も素晴らしく、ドルビーデジタルサラウンドの性能を最大限に生かしています。冒頭の上陸作戦での360度さまざまな方向から飛んでくる銃弾の音、後半の市街地の闘いでの戦車の迫り来る重低音など音響も戦場のリアリズムが追求されています。この映画を見るときは是非ホームシアターをそろえて液晶やプラズマなどの大画面テレビで見ることをお奨めします。
 ストーリー:「戦闘で3人の兄を亡くしたライアン2等兵。軍上層部は兄弟全部を死なすわけにはいかないとライアンを故郷に戻すことを決める。そこでオハマビーチで過酷な闘いを生き延びたミラー大尉をリーダーに8人の特命隊が組まれる。軍上層部のこの命令に疑問をもちながらも、8人は過酷な戦況をくぐり抜けてライアンを探す。」
 ストーリーの方ですが映像や音響に比べるとあまり魅力はありません。戦地から兵士を連れ戻す任務に就いた兵士たち葛藤というドラマも生々しい戦闘シーンの前ではかすんでしまいます。また任務の途中で描かれる兵士たちのエピソードも戦争映画ではありきたりな内容です。またどこか第2次世界大戦におけるアメリカ賛美や偽善的なヒューマニズムの匂いが感じられる映画でもあります。私はこの映画のストーリー自体はあまり評価できません。
 この映画はストーリーや人間ドラマをじっくりと味あう映画でも、戦争の本質を描く映画でもなく、第2次世界大戦の生々しい戦闘シーンを疑似体験する映画です。そういう意味ではスピルバーグらしいテーマパークのアトラクション型タイプの映画です。(しかし、楽しく面白いアトラクションではありませんが・・・)この映画は戦争の悲劇を伝える反戦映画でも国の為に闘った兵士たちを哀悼し、愛国心を煽る映画でもないと私は思います。この映画はスピルバーグが今まで撮ってきた『ジュラシックパーク』や『ジョーズ』などのアトラクション型映画の延長にあり、観客が生々しい戦闘シーンを追体験することに主眼が置かれています。そういう意味ではこの映画は成功だったと思います。
 この映画以降、戦争映画における戦闘シーンの描き方は大きく変わりました。どの映画も、生々しく残酷な戦闘現場を前面に見せる手法を取るようになりました。それがいいかどうかは評価の分かれる所だと思います。しかし、この映画は戦争映画において記念碑的、また革命的な作品です。興味のある方はぜひ一度見てみてください!


製作年度 1998年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 170分
監督 スティーヴン・スピルバーグ 
脚本 ロバート・ロダット 、フランク・ダラボン 
音楽 ジョン・ウィリアムズ 
出演 トム・ハンクス 、トム・サイズモア 、エドワード・バーンズ 、バリー・ペッパー 、アダム・ゴールドバーグ 

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