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『殺しのドレス』この映画を見て!

第132回『殺しのドレス』
Dressed_to_kill  今回紹介する作品は独特なカメラワークとカット割りでカルト的人気を誇るブライアン・デ・パルマ監督の代表作『殺しのドレス』です。
 公開当時はラズベリー賞で最低主演男優賞・最低主演女優賞・最低監督賞と3冠を獲るほど巷では評判の悪い作品でした。しかし、デ・パルマファンからは熱狂的な支持を受けました。
 ストーリー:「夫との性生活が上手くいかず、精神科を受診する中年の人妻ケイト。ある日、美術館で出会った男と行きずりの情事を楽しむが、エレベーター内でカミソリを持った金髪の女性に殺されてしまう。偶然事件を目撃した娼婦リズはその後金髪の女性に後を付けられ襲われそうになる。リズは被害者の息子ピーターと出会い、一緒に犯人捜しに乗り出すが……。」
 この作品のストーリーは途中で主演の女優が交代するところや、ラストのどんでん返しなどヒッチコック監督の『サイコ』の影響が強く感じられます。『サイコ』を見たことがある人はきっと途中で犯人の正体に気付くと思います。逆に『サイコ』を見たことない人はラストの予想外の展開に驚くと思います。
 ストーリーはサスペンス映画としてはとてもシンプルで分かりやすいです。ある意味、ストーリーの展開がとても強引なところも見られます。
 しかし、この作品はストーリーを楽しむというより、デ・パルマ監督の凝りに凝った映像や演出を楽しむ作品です。それが楽しめないと、この映画はあまり面白くない作品です。
 
 映画の冒頭、いきなりシャワーを浴びる人妻の姿がねちっこく描かれたかと思うと、突然後ろから男が現れ、女の口元を押さえて、抱きしめるシーン。デ・パルマ監督ならではの静と動の演出が巧みです。この後も、静と動の演出が光るシーンが数多く見られます。
 美術館で人妻が見知らぬ男に欲情して後をつけるシーンも、ほとんどセリフがないシーンにも関わらず、映像で人妻の内面の揺れ動く感情を描いており秀逸です。
 そしてこの映画最大の見せ場と言っても良いエレベーターでの惨殺シーン。いきなり人妻の掌がカミソリで切られるカットは観客に強烈なインパクトを与えます。その後も、短いカット割りと役者の表情、鏡という小道具を巧みに利用し、緊張感と恐怖が張りつめたシーンを創り上げています。
 映画の後半は現場を目撃した娼婦に主役が交代するのですが、犯人と思われる金髪の女性に追われ地下鉄を逃げまどうシーンは監督の巧みな演出により手に汗握ります。
 映画のラストシーンも監督の出世作『キャリー』と同じく、一息ついたところで観客をドキッとさせる演出がなされており、最後の最後まで目が離せません。

 小道具の使い方も巧みで、鏡を重要な小道具として登場させ、サスペンスシーンの緊張感を高めると同時に、この映画の犯人を示唆する重要な手がかりとして使っています。
 デ・パルマカットと呼ばれる分割画面やスローモーションなどの映像テクニックも随所で巧みに使われています。特に途中で現れる分割画面のシーンはこの映画の犯人を考える上でとても重要な意味を持っています。
 
 またお色気シーンも満載で、女優の何とも艶めかしく撮っています。特に映画の冒頭のシャワーシーンとタクシーのシーンの中年女性のいやらしさを捉えたシーンは格別です。
ラストのナンシー・アレンのシャワーシーンもたまりません。

 この映画ははまると病みつきになる魅力があります。サスペンス映画好きの人は一度はみて損はないと思いますよ。それにしても最近のデ・パルマ監督はパワーダウンしています。また80年代前半のようなぞくぞくさせるサスペンス映画を作って欲しいものです。

製作年度 1980年 
製作国・地域 アメリカ
上映時間 105分
監督 ブライアン・デ・パルマ 
脚本 ブライアン・デ・パルマ 
音楽 ピノ・ドナッジオ 
出演 マイケル・ケイン 、ナンシー・アレン 、アンジー・ディキンソン 、キース・ゴードン 、デニス・フランツ 、デヴィッド・マーグリーズ 、ブランドン・マガート 

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