『コーラスライン』この映画を見て!
第129回『コーラスライン』
今回紹介する映画はブロードウェイの劇場を舞台にコーラスラインのオーディションに参加する若いダンサー達の姿を描いたミュージカル『コーラスライン』です。この映画は元々ブロードウェイの舞台として制作された作品で、マイケル・ベネット原案・振付・演出により1975年に初演されました。舞台版は大変高い評価と人気を得て、ブロードウェイで6136回という上演記録を残しました。この記録は『キャッツ』に続いて史上2番目のロングラン記録を保っています。日本でも1979年から劇団四季が上演をしており、大変高い人気を得ています。
このミュージカルの大きな特長は劇場のステージという限定された場所で物語が進行する所と舞台を支える無名のバックダンサーたちにスポットを当てた所にあります。ブロードウェイのオーディションの厳しさや様々な人生を辿ってきたダンサーたちの舞台にかける情熱を余すことなく描いたストーリーは今までのミュージカルにはない現実感があります。夢や愛を振りまくミュージカルの舞台裏の厳しい現実。しかし、それでも舞台の魅力に取り憑かれ必死に夢を追う若者たち。その懸命な姿は見る者に深い感動を与えます。
映画版コーラスラインは舞台版を忠実に再現した作品となっており、舞台版と同じく劇場のステージという限定された場所で物語が展開していきます。バックダンサーたちのオーディションを描く作品と言うことでセットや衣装もとても地味です。出演している役者もマイケル・ダグラスを除いて特に有名な役者は出てきません。演出もオーソドックスで、変にカメラワークを凝ったりすることなく、ひたすら若者たちの踊る姿を真正面から撮っています。
映画の作り自体は特に凝ったところはないのですが、それが逆に舞台を観ているような感覚にさせてくれます。またダンスシーンの迫力は観る者を圧倒します。この映画を観ると踊ることの楽しさや面白さが伝わってきます。
私が特に好きなナンバーは映画の中盤に出てくる『サプライズ・サプライズ』と誰もが知っている名曲『ワン』の2つです。
『サプライズ・サプライズ』は黒人ダンサー・リチーの踊りに目を奪われます。そのキレとスピードと柔軟性はすごいの一言です。
ラストに披露される『ワン』はこの映画を知らない人でもどこかで聞いたことがあるほど有名な曲です。その華やかな美しさは過酷な舞台裏のダンサーたちの情熱によって支えられているのかと思うと胸が熱くなります。
またマイノリティを中心に据えたストーリーもとても印象に残りました。中国系アメリカ人・プエルトリコ人・ユダヤ人など様々な人種やゲイなど社会の中で抑圧されてきた人たちが、実力さえあれば認められるショービジネス界で生きていこうとする姿はアメリカの内情を見事に描いています。
この作品はミュージカルが苦手な人でも違和感なく見られる作品だと思います。他のミュジカル映画にはない奥の深いストーリーとダンサーたちの華麗な動きを是非見てみてください!
製作年度 1985年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 118分
監督 リチャード・アッテンボロー
脚本 アーノルド・シュルマン
音楽 マーヴィン・ハムリッシュ
出演 マイケル・ダグラス 、アリソン・リード 、マイケル・ブレビンズ 、テレンス・マン 、グレッグ・バージ 、ジャスティン・ロス 、キャメロン・イングリッシュ 、ブレイン・サヴェージ 、ヴィッキー・フレデリック 、オードリー・ランダース 、ジャネット・ジョーンズ 、ミシェル・ジョンソン 、カンディ・アレクサンダー
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