『スターシップ・トゥルーパーズ』この映画を見て!
第106回『スターシップ・トゥルーパーズ』 今回紹介する作品は私の大好きな残酷でお馬鹿で皮肉たっぷりのSF戦争映画『スターシップ・トゥルーパーズ』です。監督は『ロボコップ』『氷の微笑』などセンセーショナルな映画を撮ることで有名なポール・ヴァーホーヴェン。彼は壮大な制作費をかけて、毎回パワフルだけど下品で残酷で皮肉たっぷりの映画を撮ることで有名です。この映画はそんな監督の特長が最大限発揮された作品です。
この映画は劇場公開当時、賛否両論分かれました。原作の愛読者はあまりの改変ぶりに激怒し、人間の手足がばらばらに引き裂かれるなどの残酷な殺戮シーンのオンバレードに嫌悪感を抱く人も多かったのですが、ヴァーホーヴェンの強烈な毒に一度はまってしまうととても刺激的で面白く、戦争について深く考えさせられる作品です。
私は初めてこの映画を見たときはヴァーホーヴェンの戦争に対する強烈なブラックユーモアに腹を抱えて笑ってしまいました。この映画はアメリカの軍事主義や戦争を痛烈に皮肉っており、戦争の愚かさや無意味さ、残酷さを見事に表現しています。同時期スピルバーグが『プライベート・ライアン』という戦争映画を公開しましたが、戦争を否定も肯定もしていない曖昧な作品でした。しかしこの映画は、はっきりと反戦という視点で持って制作されており、私としては好感がもてます。能天気な若者たちが戦争を通して兵士として成長していく姿は一見清清しく見えるものの、不気味なものを感じさせます。また随所に挿入される戦争賛美のCMも白々しく見ていて気持ち悪いです。この映画は一見、戦争賛美のプロパガンダ映画のように作られていますが、監督の意図は全く逆であり、戦争を徹底的にコケにした映画です。ここまでの反戦映画は滅多にないと思います。
この映画の大きな見所は巨大昆虫型異生物“バグス”と人類の激しい攻防戦です。虫の造形は『ジュラッシックパーク』などの特殊効果で有名なフィル・ティペットが担当しているのですが、虫嫌いの人は正視できないほど巨大で気持ち悪い虫たちが大量に登場します。虫の軍団が兵士たちを襲うシーンは凄いの一言です。巨大な虫に成す術もなく殺される兵士たちの姿は戦争の虚しさを見事に表現しています。監督は小さいとき、ナチスがユダヤ人を虐殺する現場を目撃しており、そのトラウマから残酷な描写にはこだわるそうです。それにしてもあんな虫の軍団に歩兵だけで立ち向かうのは無理がありすぎです。戦車は爆撃機を使えと突っ込みたくなりますが、監督は意図的にそうしたのでしょうけどね。
あと宇宙船の描写は妙にセット感やCGっぽさが出ていてリアリティに欠け今ひとつでした。監督は別に興味がなかったのかもしれませんが。
役者に関してはアメリカの能天気な若者たちのイメージにぴったりはまっていたと思います。またヴァーホーヴェン映画に欠かせないマイケル・アイアンサイドの鬼軍曹役もまさに適役といった感じでした。
ハリウッドで100億円近い制作費をかけて制作し、こんなお馬鹿でアメリカ軍事主義を批判した映画を作るとはさすがヴァーホーヴェン監督。この映画は残酷描写に耐えられ、なおかつ洒落の分かる人にお薦めの映画です。
製作年度 1997年
製作国・地域 アメリカ
上映時間 128分
監督 ポール・ヴァーホーヴェン
原作 ロバート・A・ハインライン
脚本 エド・ニューマイヤー
音楽 ベイジル・ポールドゥリス
出演 キャスパー・ヴァン・ディーン 、ディナ・メイヤー 、デニース・リチャーズ 、ジェイク・ビューシイ 、ニール・パトリック・ハリス 、マイケル・アイアンサイド
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コメント
こんにちわ。原作はモビルスーツみたいなものに乗って戦います。映画では予算の都合か、演出の都合か、その設定がなくなり、原作ファンからブーイングだったそうです。
監督の悪趣味満載のこの映画、嫌いな人もいると思いますが、はまると癖になりますよね。
投稿: アシタカ | 2006年9月 7日 (木) 10時48分
こんにちは。
原作を読んだことがないので、こんな歩兵で本当に闘えるのか???無謀じゃんなんて思っていたのですが、他の方のレビューを読むとどうやら原作ではガンダムみたいなのに乗ってバグズと闘っていたらしいですね。これを知った時に予算がなかったのかな??なんて思ったのですが、それを差っぴいても、断然面白かったです。
ちょっとエグかったけれど、戦争CMなんかは風刺が効きまくっていて、強烈な反戦映画だったんだなーと感じました。
投稿: chibisaru | 2006年9月 7日 (木) 10時20分