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『もののけ姫』この映画を見て!

第107回『もののけ姫』
Princess_mononoke  今回紹介する作品は公開当時に大ブームを巻き起こし、日本の興行収入の記録を塗り変えた『もののけ姫』です。監督は日本一有名なアニメ映画監督・宮崎駿。
 監督は若いときから日本を舞台にしたファンタジー映画を作りたいと考えており、1980年には『もののけ姫』の構想を練っていたそうです。
Mononokebook               この時に描かれたイメージボードは絵本『もののけ姫』として現在出版されています。映画とは全く違った内容であり、もののけはトトロみたいな姿で、ディズニーの『美女と野獣』のようなお話しになっています。興味のある人はぜひ読んでみてください。とても面白い絵本です。個人的には絵本版「もののけ姫」に忠実な映画も見てみたい気がします。
 最初の構想から約17年後、20億円近い制作費と3年近い制作期間をかけて、映画版『もののけ姫』が完成するのですが、当初の構想とは全く違う、自然と人間の対立という非常にハードなテーマの作品として完成しました。
 私はこの映画の制作を知った時、どんな作品になるのかとても楽しみにしていたものでした。中世の日本を舞台に、森の神・シシ神の首をめぐって、人間ともののけが壮絶な戦いをするいうストーリーを聞いたときは、『風の谷のナウシカ』のようなスケール大きく、アクション満載で、感動できるドラマが展開されるのだと勝手に予想していました。
 テレビや映画館で予告編が公開された時は、手や首が飛ぶシーンの激しい暴力描写が大変話題になりましたが、宮崎駿はコミック版『風の谷のナウシカ』でかなり激しい暴力を描いていたので、私としては驚きはしませんでしたが、これは今までのジブリ作品とは違うなと感じ、どのような展開になるのか期待が高まったものでした。
 公開当時は友だちと初日に長蛇の列に並んで見たのですが、映像や音楽の美しさはさすが宮崎駿作品だと思いつつ、私が予想したアクション満載の派手な作品とはかなり違う静謐な雰囲気の作品となっており戸惑ったものでした。この映画を最初見たときはあまり面白くないと評価していたのですが、映画を見終わってもこの作品のことが頭から離れず、また次の日も見に行き、また一週間後に見に行き、1ヵ月後に見に行きと、結局6回も劇場に足を運びました。おそらく私の中で一番映画館で何回も見た作品だと思います。(ちなみに二番は『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』)
 
 『もののけ姫』は『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』のような派手なアクションシーンやカタルシスもなく、ストーリーも全編重苦しく、見た後の爽快感といったものはないのですが、心にずしりと残るものありました。
 人間と自然の対立と共存というテーマは映画版『風の谷のナウシカ』でも描かれていましたが、『ナウシカ』は人間は自然に歩み寄ることの大切さだという明確なメッセージがありました。しかし『もののけ姫』では人間は生きるために自然を利用していかなくてはいけない存在であり、そう簡単に自然に歩み寄れない人間の姿が描かれました。人間は長い歴史をかけて自然を支配してきました。人間が『もののけ姫』は、文明という力によって自然を自分たちの支配下に置くまでの歴史を、タタラ場とシシ神の森を舞台に簡潔に描いており、人間と自然の現在の関係性とその問題解決の難しさを見事に表現した作品です。
 自然が破壊されると人間の生存にとっても脅威になると分かりつつも、自然を支配し利用しないと生きていけない現代の人間。人間が人間らしく生きるために自然を支配し利用することを誰が止める権利があるのか?良い意味でも悪い意味でも欲深い生き物である人間が自然をどう節度をもって利用していくことができるのか?この映画が提起する問題は簡単にこうすれば解決できるというものではありません。そのため、この映画のラストも明確な解決策を打ち出せず、アシタカがタタラ場に住み、サンが森に帰るという非常に曖昧な結末になっています。
 
 私はこの映画の大きな魅力の一つに歴史の表舞台に出てこない人たちにスポットライトを当てたところがあると思います。普通の時代劇なら必ず登場する武士や農民がほととんど出てこず、蝦夷をイメージさせる主人公・アシタカを始めとして、製鉄の職人集団、牛飼い、婆娑羅など今までの時代劇に出てこなかったさまざまな人物を登場させ、日本の中世の歴史の多様性を教えてくれる作品となっています。
 またこの映画では遊女や被差別民、ハンセン病と思われる病人など社会の中で虐げられてきた人々がタタラ場という共同体の中で活き活きと活躍している姿がとても印象的でした。もののけ側から見たらタタラ場は破壊の中心にしか見えないと思いますが、社会の中で虐げられてきた人たちにとってタタラ場は救いの場であり、理想的な共同体だと思います。人間にとっての理想郷が自然にとっては脅威になってしまうという悲劇。この映画は単純にタタラ場の人が悪いとも言えず、かと言ってもののけがいっていることも悪いと言えず、明確な悪人が出てこないので、見終わって切なく重い気持ちになってしまう作品です。
 
 私はいつもこの作品を見ると、引き裂かれた状況で生きる主人公2人の哀しみに胸が苦しくなります。人間にもなりきれず、もののけにもなれないサン。サンのアシタカが好きだけど、人間を許せないという思いは見ていて辛いものがあります。またアシタカもタタラ場も好きだし、サンも好きであるが故に、何とか両者を和解させようと努めながら、結局タタラ場も森も崩壊してしまうという悲劇。映画のラストにサンがアシタカに「アシタカは好きだ。でも人間は許すことはできない」と言い、アシタカがサンに「それでもいい、私と共に生きてくれ」というシーンは切なすぎて、泣いてしまいます。

 映画のラストはコダマが一匹だけ登場します。それは一見まだ森は再生する可能性があることを示してるようにも見えますが、よく考えるとコダマがたくさんいる森に戻ることはないことを示しており、哀しい気持ちになります。

 この映画は明るく楽しい作品ではありませんが、見終わった後なぜかもう一度見たくなる作品であり、なぜか生きていくことを励まされる作品です。アシタカがタタリ神の不条理な呪いに立ち向かい、自然と人間の解決策のない課題に立ち向かう姿は、困難な状況でも自分に与えられた課題にどう立ち振る舞っていくべきかの一つのよいお手本だと思います。生きていくことの大切さと哀しみ、人間の宿業を感じさせられる作品です。

製作年度 1997年
製作国・地域 日本
上映時間 133分
監督 宮崎駿 
製作総指揮 徳間康快 
原作 宮崎駿 
脚本 宮崎駿 
音楽 久石譲 
出演 松田洋治 、石田ゆり子 、田中裕子 、小林薫 、西村雅彦 、美輪明宏、森みつ子、森繁久弥

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