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「宮崎駿」私の愛する映画監督5

第5回「宮崎駿」
Hayao  今回紹介する映画監督は日本一有名なアニメ映画の監督である宮崎駿です。私は昔から宮崎作品が大好きで、テレビでの放映があるたびに画面に釘付けになっていたものでした。私が一番好きな宮崎作品は『天空の城ラピュタ』ですが、おそらく30回以上は見ていると思います。何回見ても、観客をハラハラドキドキさせたり、感動させる映画を作ることは並大抵のことではありません。彼の手がける作品はどれも人を引き付けるだけの大きな魅力が詰まっています。
 では宮崎監督の映画の大きな魅力とは何でしょう?私にとっての宮崎作品の魅力を語りたいと思います。

①動きへのこだわり
 彼は原画・動画・レイアウトなど作画畑を長年歩んでおり、動く絵としてのアニメーションの可能性と魅力を追求してきました。そんな彼の作品は動く絵としての面白さや楽しさに常に満ちています。現実の動きとは違うアニメだからこそ出来るデフォルメされた動きの躍動感や解放感が彼の映画の大きな魅力です。
 彼が生み出すキャラクターやメカの造形は、どれも強烈なインパクトを持っていると同時に、線が丸みを帯びており親しみやすくて魅力的です。特にトトロは彼が生んだ最高のキャラクターだと思います。
 またキャラクターの描き方もリアリズムではなく、多少オーバーな表現であっても、キャラクターの感情を大胆かつ細かな表情や動きで見せようとします。ダイナミックに笑い、怒り、泣き、走り、食べ、戦うキャラクターの姿は活き活きとした魅力に満ちています。
 空間の使い方もアニメならではの特性を活かして、実写では生み出せない広がりや奥行きを感じさせてくれます。特に飛行シーンにこだわる宮崎監督だけに上下の空間の使い方が巧みで、ナウシカからハウルまでキャラクターたちが上から下に、下から上にと空間をダイナミックに移動するシーンがとても印象的です。

②色彩の美しさ
 宮崎作品の大きな特徴として透明感溢れる色彩の美しさがあります。派手でもなく、地味でもない、透明感溢れるさわやかな色の使い方は見ていて心が和みます。

③緻密な世界観の構築
 宮崎作品は常にファンタジーの要素が強い作品を作っていますが、ファンタジー作品を作る時に大切なのが世界観の構築です。非現実の世界を描くからこそ、そこにリアリティーがないと、観客はファンタジーの世界には入り込むことができません。世界中で大ヒットした『ロード・オブ・ザ・リング』の監督ピーター・ジャクソンも映画を作るときにいかにリアルな世界を作り上げるかに力を注いだそうです。そういう意味では宮崎作品はどの作品も世界観が緻密に構築されており、観客は架空の世界にすっと入り込むことができます。『ナウシカ』の風の谷や『千と千尋』の湯屋など架空の世界にも関わらず、何ともいえない現実感があります。ストーリーとは関係ない、さりげない登場人物たちの日常描写や、街や家の中などの生活観溢れる細やかな描写が映画の中の世界をぐっと観客に近いものとして感じさせてくれます。

④気持ちの良い登場人物たち
 宮崎作品は登場人物に誰一人として嫌な奴がいないというところがあります。主人公たちは常に清清しく、見ていて気持ちの良い人物ばかりです。悪役もどこか同情できるところがあったりして、人間臭くて憎めない人物ばかりです。彼の作品では善人と悪人と明確に分けて描くようなことはせず、善と悪を併せ持つ人物を常に描こうとしてます。
 またどの映画でも女性が元気がよく、存在感が強いのも宮崎作品の大きな特徴です。特に彼が描く女性は母性としての力強さと少女としての可憐さを併せ持つキャラクターを描くことが多く、彼の理想の女性像が反映されているのかなと思います。

⑤現代社会を反映したストーリー
 彼の作品は現代社会を常に反映したストーリーを描こうとします。自然破壊、若者の自立、戦争の愚かさ、人間と科学との付き合い方・・・。彼の作品が多くの人の関心を引き付ける大きな要因として、現代社会に対する問いかけがあるからだと思います。特に自然と人間というテーマは宮崎作品では何度も取り上げられており、自然の中で生きてきた人間という視点と自然を征服して生きてきた人間という視点を織り交ぜながら、人間と自然の付き合い方に対して問題提起をしており、いろいろ考えさせてくれます。

⑥久石譲の音楽
 宮崎作品を語る上で忘れてはいけないのが久石譲の音楽です。彼の音楽なしでは、宮崎作品はここまで人気を得られなかったと思います。宮崎作品における久石譲の音楽については以前、このブログで別に取り上げていますので、そちらをご覧ください。

 宮崎監督の映画は誰もが安心して見ることができますし、誰もが楽しんで見ることができます。誰もが見たことない世界で繰り広げられる人間ドラマや冒険活劇の面白さ。宮崎作品は常に人を引き付けるだけの魅力に満ちています。また新作を製作しているようですが、次はどんな作品に仕上がるのか今から楽しみにしています。


*宮崎駿監督作品
ハウルの動く城(2004)  監督、脚本 
・ コロの大さんぽ(2002)  監督、原作、脚本
・ めいとこねこバス(2002)  監督、原作、脚本
・ くじらとり(2001)  監督、脚本 
・ 千と千尋の神隠し(2001)  監督、原作、脚本
・ もののけ姫(1997)  監督、原作、脚本 
・ On Your Mark CHAGE & ASKA(1995)  監督、原作
・ 紅の豚(1992)  監督、原作、脚本
・ 魔女の宅急便(1989)  監督、脚本
・ となりのトトロ(1988)  監督、原作、脚本
天空の城ラピュタ(1986)  監督、原作、脚本
風の谷のナウシカ(1984)  監督、原作、脚本
・ 名探偵ホームズ1 青い紅玉(ルビー)の巻(1984)  監督
・ 名探偵ホームズ2 海底の財宝の巻(1984)  監督
・ ルパン三世 カリオストロの城(1979)  監督、脚本

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