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『機動警察パトレイバー2 the Movie』この映画を見て!

第97回『機動警察パトレイバー2 the Movie』
Patlabor2  今回紹介する映画はカルト的人気を誇るアニメ映画監督・押井守の代表作であり、現代日本における戦争状態を緻密にシュミレーションした衝撃作『機動警察パトレイバー2 the Movie』です。この映画は1993年と10年以上前に制作されていますが、2006年の今見ても映画で語られていることは決して古くなく、むしろ今日本がおかれている状況を見事に浮き彫りにしています。
 私がこの映画を始めてみたのは10年くらい前ですが、当時は東京という都市のリアルな描写と自衛隊が東京の都市を行き交う映像に強烈なインパクトを受けました。またストーリーも自衛隊が平和ボケした日本にクーデターを起こし、戦争状態を作り出すという衝撃的な内容にいろいろと考えさせられたものでした。
 ストーリー:「2002年冬。横浜ベイブリッジに謎のミサイル投下…。報道はそれが自衛隊機であることを告げるが、該当する機体は存在しなかった。これを機に続発する事件は警察と自衛隊の対立を招き、事態を重く見た政府は実戦部隊を治安出動させる。東京に戦争を再現した恐るべきテロリストを追って、第2小隊最後の出撃が始まる!」
 この映画はパトレイバーの映画というよりは、パトレイバーの設定を借りた日本の有事の際のシュミレーション映画です。現代日本でテロなどの有事の状態になった時、政府・警察・自衛隊はどのように動くのか?この映画は今の日本の防衛体制について鋭い問題提起を投げかけます。警察と自衛隊の覇権争いの醜さ、組織における上層部と現場の対立、最小限な攻撃による都市機能の混乱。この映画は戦後日本の平和の脆弱さや虚構性を暴いていきます。戦後日本人にとって当たり前の平和な状況、しかしその平和な状況とは一体何なのか?映画の中でも平和と戦争の境目の曖昧さが語られますが、テロが頻発する現代は平和と戦争状況の区別が曖昧な時代になってきています。危機意識のないままいつの間にかテロという戦争に巻き込まれる現代という時代をこの映画は見事に表現しています。
 また、この映画は平和を望みながら、閉塞した日本の状況をどこかで破壊したいという歪んだ私たちの願望をどこか刺激します。
 彼の作品では現実と虚構の曖昧さが常にテーマとして描かれますが、この作品でも情報化社会における虚構のリアルさ、戦争という現実の日本における非リアルさが伝わってきます。
 さらに、この映画は人間ドラマとしても非常に見ごたえがあります。組織の対立や権力争いに巻き込まれる個人の葛藤や苛立ち、かつては不倫関係だった柘植と南雲の苦く切ないラブストーリーなどドラマとしての完成度の高さが印象に残る作品です。
 それと、この映画を語るときに忘れてはいけないのが、緻密でリアルな東京という都市の描写です。無機質なビル街、生活臭の漂う下町やコンビニなどこの映画のもう一つの主役とも言える東京という都市を見事にアニメで再現しています。そして都市をリアルに描けば描くほど、そこに生きる人が自分の存在を非リアルに感じてしまうというアイロニー。この映画は都市という幻想の世界に生きる人々の思いを描いた作品だと思います。
 ここまで重厚で大人が見て楽しめ考えさせられるアニメ映画はなかなかありません。ぜひ多くの人に見て欲しい傑作アニメです。  

製作年度 1993年
製作国・地域 日本
上映時間 113分
監督 押井守 
原作 ヘッドギア 
脚本 伊藤和典 
音楽 川井憲次 
出演 大林隆之介 、榊原良子 、冨永みーな 、古川登志夫 、池水通洋 

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