« 『エクソシスト2』映画鑑賞日記 | トップページ | 選択肢は一つ以上ある »

2006年7月21日 (金)

『わたしを束ねないで』 新川 和江

『わたしを束ねないで』 新川 和江

わたしを束ねないで
あらせいとう花のように
白い葱のように
束ねないでください わたしは稲穂
秋 大地が胸を焦がす
見渡すかぎりの金色の稲穂

わたしを止めないで
標本箱の昆虫のように
高原からきた絵葉書のように
止めないでください わたしは羽ばたき
こやみなく空のひろさをかいさぐっている
目には見えないつばさの音

わたしを注がないで
日常性に薄められた牛乳のように
ぬるい酒のように
注がないでください わたしは海
夜 とほうもなく満ちてくる
苦い潮 ふちのない水

わたしを名付けないで 
娘という名 妻という名
重々しい母という名でしつらえた座に
座りきりにさせないでください わたしは風
りんごの木と
泉のありかを知っている風

わたしを区切らないで
,や.いくつかの段落
そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには
こまめにけりをつけないでください わたしは終わりのない文章
川と同じに
はてしなく流れていく 拡がっていく 一行の詩

|

« 『エクソシスト2』映画鑑賞日記 | トップページ | 選択肢は一つ以上ある »

コメント

わたしを束ねないで
いいよね~(◎´∀`)ノ

投稿: はま様 | 2009年6月 8日 (月) 21時32分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/105630/11047281

この記事へのトラックバック一覧です: 『わたしを束ねないで』 新川 和江:

« 『エクソシスト2』映画鑑賞日記 | トップページ | 選択肢は一つ以上ある »