『スチームボーイ』映画鑑賞日記
今回紹介する映画は『AKIRA』の大友克洋が15年ぶりに発表した長編アニメ映画『スチームボーイ』です。制作期間9年、制作費24億円をかけた超大作アニメです。この映画は製作会社がなかなか決まらなかったり、シナリオがなかなか完成しなかったり、公開が延期されたりと、完成までに紆余曲折ありました。
私は『AKIRA』が大好きだったので、大友監督がついに長編映画を制作するという話しを聞いたときはどんな作品になるのだろうとワクワクしたものでした。イギリスを舞台にスチームバンクな冒険活劇展開するというストーリーにも興味を惹かれ、映画の公開を待ちに待ったものです。しかし、待てど待てどなかなか完成せず、私も忘れかけていた頃についに公開となりました。
公開初日に胸に期待を膨らませ映画館に行ったのですが、あまり観客も入っておらず、あの大友監督の作品なのに誰も興味がないのかなあと思いながら、映画が始まるのを待ったものでした。しかし、映画を見終わると、確かにこの内容だと観客が来ないのもしょうがないかあなと納得している自分がいました。何年も前から楽しみにしていたのに、まさかこんな微妙な作品だとは・・・。映像はさすが大友監督、制作にも時間をかけただけあって見ごたえ十分だったのですが、ストーリーがあまりにもひどすぎて、ぜんぜん映画の世界に入りこめませんでした。また声優の演技もひどく、音楽もいまいちですし、あれだけのお金と期間をかけて、まさかこんな面白くない作品になるとは思ってもいませんでした。
ストーリー:「19世紀の英国。ある日、主人公レイの少年の元に祖父ロイドと父エディが発明した謎の球体・スチームボールが届く。その直後、アメリカのオハラ財団からやってきた怪しげな男たちがそのボールを奪おうとしたため、少年はその“スチームボール”を手に家を飛び出すのだが……。」
この映画は制作期間が長くなりすぎて、シナリオ自体がかなり混迷していたようです。
途中から脚本家の村井さだゆきが参加して、大友監督のシナリオを整理してやっと今のシナリオになったそうです。
この映画は派手なアクションシーンがたくさんあるにも関わらず、あまり盛り上がらない作品です。次々と出てくるメカやスチーム城が暴走するシーンなど、見せ場はたくさんあるのに、あまり盛り上がりません。ラストのロンドン破壊のシーンなど最大の見せ場に関わらず、ぐだぐだした印象しかもてません。
この映画は人類の科学への向き合い方をテーマにしているようなのですが、そのテーマ自体が何度も取り扱われたテーマで古臭く、今さらといった感じです。またそのテーマに対して監督は明確なメッセージを主張しないので、出てくる登場人物たちの行動に共感も反発も感じることが出来ず、観客は傍観者の立場としてしか見ることが出来ません。監督はこの映画を王道の冒険活劇にしたくなかったようで、あえて主人公に感情移入させないような作りにしたそうですが、それが完全に裏目に出ていると思います。この手の冒険活劇映画は明確な悪役がいて、それにどう主人公が立ち向かっていくかが面白さのポイントなのです。それをあえて外してしまうのなら、シナリオの方向性をもっと違う方向にすべきだったと思います。
あとこの映画はヒロインが最悪で、見ていていらいらします。特にストーリーに絡むわけでもないので、別にあの役は不必要だったのでは思います。
またこの映画は声優陣の演技がとても下手です。特に中村嘉葎雄演ずるロイドは何を言っているのか聞き取りにくく、なぜこの人を起用したのか不思議でした。また鈴木杏も主人公の声をがんばって演じていましたが、がんばっているという印象しかもてませんでした。逆に小西真奈美は上手だったと思います。
この映画は観客が期待したものを、悪い意味で裏切った作品です。映像はとても緻密で見所は多いにも関わらず、ストーリーのぐだぐださが足を引っ張ってしまい、とても残念な作品です。
製作年度 2004年
製作国・地域 日本
上映時間 126分
監督 大友克洋
脚本 大友克洋 、村井さだゆき
音楽 スティーヴ・ジャブロンスキー
出演 鈴木杏 、小西真奈美 、中村嘉葎雄 、津嘉山正種 、児玉清
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コメント
コメントありがとうございました。私は映画を見る前の期待がかなり大きかったので、落胆も大きかったのかもしれません。
イギリスの街を破壊するラストはさすが大友監督と思いましたが、イマイチ盛り上がりに欠けていたというか・・・。
声優に関しては小西真奈美はよかったですね、と言うか、他の人がひどすぎというか・・・。
投稿: アシタカ | 2006年9月18日 (月) 23時04分
こんにちは。『トトロ』へのTBありがとうございます。
でも、こちらの記事へも興味をひいたので、こちらにコメントを残させて頂きますね。
私は前半は退屈しながら観ていたんですが(特に最初のシーンは画像が暗くて何をしているのかがわからなかった)、後半は結構楽しめました。
>この手の冒険活劇映画は明確な悪役がいて、それにどう主人公が立ち向かっていくかが面白さのポイントなのです。
というご意見も「そうかも」と共感できますけどね。
キャラクターで言えば、私も小西真奈美が演じたヒロインが一番目を惹きました。
かなり「ムッ」とさせられるお嬢様を好演していたと思います。後半になるにつれ、その天真爛漫さを「愛らしい」と思わせるものにさせていくところも良かったですね。
私は「アニメの仕事は声優にやってほしい」と思う人なんですが、これに関してはハマリ役だったと思います。
それでは、長々とすいません。
投稿: tomekiti | 2006年9月18日 (月) 11時16分