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『嫌われ松子の一生』この映画を見て!

第70回『嫌われ松子の一生』
Memory_of_matuko  今回紹介する映画は現在劇場で公開され話題の『嫌われ松子の一生』です。この映画は中谷美紀の体当たりとも言える熱演と『下妻物語』の監督・中島哲也のキッチュでポップな演出が大きな見所となっています。
 ストーリー:「昭和22年・福岡県大野島生まれの川尻松子は、お姫様みたいに幸せな人生に憧れていた。しかし、20代で教師をクビになり、そこから人生は暗転直下、壮絶な不幸の連続にまみれた波乱万丈の人生を送ることになる。ろくでもない男たちと付き合い、風俗嬢になり、ヒモを殺害して刑務所へ送られ、やくざと恋に落ちる松子。幸せを求めながらどんどん泥沼にはまる松子の人生を明るくポジティブに、時に切なく描く。」
 私は最初はあまり興味がなかったのですが、見てきた人の周囲の評判が良く、どんな映画か気になり、先日見てきました。この映画の感想を一言で言うなら、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のストーリーと『ムーランルージュ』の映像や演出を足して2で割ったような感じの印象を私は受けました。(この2作を見たことがある人は分かると思います。)
 終始テンションの高い演出と役者の演技に、カラフルでポップな映像、ミュージカルシーンの音楽の面白さに圧倒されました。暗く救いのない主人公の人生を、どこまで明るくポジティブに捉えていく監督の手腕は素晴らしく、見終わった後、主人公の不器用な生き方にどこか清清しいものさえ感じました。特にミュージカルシーンの演出やセンスのよさは今までの日本映画では見られなかったほど、出来のよいものでした。あと個人的に、監督の片平なぎさを出したお遊びのシーンや時折挟まれるブラックユーモアな演出がツボにはまって笑ってしまいました。ただ後半ストーリーの流れや演出が少しもたつき、テンポが悪くなったのが個人的に残念でした。後20分くらい後半が短ければ、より傑作になったと思います。
 この映画の主人公・松子を演じた中谷美紀は体当たりの熱演をしています。不器用で愚かだけど、妙にポジティブな女性という難しい役どころを演じきったものです。ここまで幅広い演技が出来るとは思っていなかったので、正直びっくりしました。ただ如何にも「私がんばって演技していますよ」という印象も時折受けることがありました。また脇を固める役者もとても豪華で、見ていて楽しめました。とくに宮藤官九朗と黒沢あすかの演技がとても印象的でした。また思わぬ役どころで出る片平なぎさの姿には笑ってしまいました。
 この映画の主人公・松子の人生は一見すると不幸で救いようのない人生に思えますが、私はけっして彼女の人生は不幸なだけで意味がないものではなかったのだろうなと思います。本当に自分のことを気にしてくれる友人や愛人とも出会えましたし、彼女の人生に共感してくれる甥も現れました。この映画は絶望を描きながら、常に希望も描いています。どん底まで落ちていき、もうだめだと何度も思いながらも、希望を求めて生き延びていこうとする松子の姿に人間の生への欲求というものを感じました。人間の愚かさや醜さ、たくましさに切なさと言ったものをデフォルメした形で見事に描いていると思います。
 私はこの映画は今年の邦画ベスト3に入るほどの力作だと思っています。まだ見ていない人はぜひ劇場で見ることをお奨めします!

製作年度 2006年
製作国・地域 日本
上映時間 130分
監督 中島哲也 
原作 山田宗樹 
脚本 中島哲也 
音楽 ガブリエル・ロベルト 、渋谷毅 
出演 中谷美紀 、瑛太 、伊勢谷友介 、香川照之 、市川実日子、黒沢あすか、柄本明、AI、劇団ひとり、ゴリ、宮藤官九朗、片平なぎさ、土屋アンナ

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» 映画 「嫌われ松子の一生」 [ようこそMr.G]
映画 「嫌われ松子の一生」 を観ました。 [続きを読む]

受信: 2006年6月 1日 (木) 23時55分

» 嫌われ松子の一生 / MEMORIES OF MATSUKO [きょうのあしあと]
「不幸って何?」 監督:中島哲也 原作:山田宗樹 出演:中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、市川実日子、黒沢あすか、ゴリ、武田真治、荒川良々、劇団ひとり、マギー、谷原章介、竹山隆範、甲本雅裕、片平なぎさ、他 公式HP:http://kiraware.goo.ne.jp/ 鑑賞:TOHO Cinemas Kawasaki ■ストーリー 18歳。東京でひとり暮らす笙(瑛太)は、ミュージシャンへの夢も諦め自堕落な生活を送っていた。ある日、父親の紀夫(香川照之)が、伯母・松子の死を知らせに... [続きを読む]

受信: 2006年6月 2日 (金) 02時03分

» 嫌われ松子の一生 [きょうのできごと…http://littleblue.chu.jp/]
かなり、映画感想アップしてないのがあるんですけど…。 (約5作品あげてないw) 先に舞台挨拶付きで観せて頂いたし、 大好きな中谷美紀さん主演の映画なので 感謝(宣伝?)の意味も込めてこちらを!(笑) 「嫌われ松子の一生」2006年公開・邦画・PG-12指定...... [続きを読む]

受信: 2006年6月 2日 (金) 06時05分

» 『嫌われ松子の一生』 [紫式子日記]
まず、キャストがすごい。 主演:中谷美紀 ってだけで食いついたけど、片っ端からスゴかった! やっぱり谷原章介の育ちの良さそうな雰囲気は好きだなぁ とか、 クドカン、自身も演技上手いなぁ とか、 悔しいけれどやっぱり伊勢谷勇介はかっこいいなぁ とか。...... [続きを読む]

受信: 2006年6月 2日 (金) 14時30分

» 【劇場映画】 嫌われ松子の一生 [ナマケモノの穴]
≪ストーリー≫ 昭和22年。福岡県でひとりの女の子が誕生した。お姫様のような人生を夢見る彼女の名は川尻松子。教師になり爽やかな同僚とイイ感じになるも、セクハラ教師のせいで辞職に追いやられる。ここから、松子の転落人生が坂を転がり落ちるがごとく、始まっていく。愛を求める松子の前にはさまざまな男が現れるが、彼女の選択はことごとく不幸へと繋がってしまうのだった。53歳、河川敷で死体となって発見された彼女の生涯を探る甥が見たものは? (goo映画より) 中島監督の『下妻物語』がお気に入りだったので、こ... [続きを読む]

受信: 2006年6月 2日 (金) 20時57分

» 嫌われ松子の一生 [Akira's VOICE]
色彩豊かに歌い上げる人間への愛に満ちたドラマ! [続きを読む]

受信: 2006年6月 3日 (土) 10時49分

» 『嫌われ松子の一生』 [京の昼寝〜♪]
松子。人生を100%生きた女。 ■監督・脚本 中島哲也■原作 山田宗樹(「嫌われ松子の一生」幻冬舎文庫)■キャスト 中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、香川照之、市川実日子、黒沢あすか、柄本明、木村カエラ、蒼井そら、柴咲コウ□オフィシャルサイト   『嫌われ松子の一生』 福岡県の大野島で産声を上げた川尻松子(中谷美紀)は、幼い頃からお姫様のような人生を夢見る少女。 生徒に人気の中学教師に成長した彼女だった... [続きを読む]

受信: 2006年6月 3日 (土) 23時34分

» 嫌われ松子の一生 [うぞきあ の場]
〜思わず、予期せず、何度も泣いてしまった〜 予想に反して、切なさがいっぱい。 でも、この作品は、人によって感じ方がいろいろあるんだろうナァ・・・。 ということで、短評でまとめてみました。 中谷美紀 ★ 少なくとも私には、ヨク演じてたと思います。 瑛   太 ★ “語り手”的なよいポジションでした。 伊勢谷友介 ★ “川の乱闘シーン”思わず泣けました。 黒沢あすか ★ あすなろ白書 以来で�... [続きを読む]

受信: 2006年6月 4日 (日) 16時35分

» 嫌われ松子の一生 [ネタバレ映画館]
 波乱万丈転落人生、でも松子は神や天使のような存在。だって相手の男が、クドカン、劇団ひとり、荒川良々etcだもん・・・恋なんて嘘だな・・・ [続きを読む]

受信: 2006年6月 4日 (日) 17時23分

» 日本版「フォレスト・ガンプ」のような「嫌われ松子の一生」 [万歳!映画パラダイス〜京都ほろ酔い日記]
 そもそも25万部を売ったという同名の原作(山田宗樹著、幻冬舎文庫)からして知らない。どっちにしても「嫌われ松子」とはインパクトのある、うまいタイトルだ。その映画「嫌われ松子の一生」(中島哲也監督・脚本)を観てきた。悲惨な生涯(他人から見れば)をたどるの....... [続きを読む]

受信: 2006年6月 4日 (日) 23時06分

» 嫌われ松子の一生 [日っ歩~美味しいもの、映画、子育て...の日々~]
ある日、荒川の河川敷で女性の他殺体が発見されます。川尻松子(中谷美紀)、53歳。今まで彼女の存在を知らずにいた甥の笙(瑛太)は、松子の弟である父親(香川照之)に頼まれ、松子の住んでいた部屋の後片付けをすることになります。乱雑jな部屋を片付けながら、笙は、松子の人... [続きを読む]

受信: 2006年6月 5日 (月) 20時47分

» 嫌われ松子の一生 [欧風]
「下妻物語」と言えば、前も書きましたが、私の終身名誉映画。永遠の1位です。未だに観ていないなどと言う不届き者は、日本にはもう居ないと思いますが、万が一観てない場合は今すぐレンタル屋にダッシュして観るべし! その終身名誉映画を撮った、終身名誉監督の作品が、この「嫌われ松子の一生」。最初この作品は、映画館のチラシで知ったんですが、紹介文などを読むと、なんか不幸だった女の人の話という事で、面白いのか?とちょっと懐疑的だったんですが、そこで同時に見たのが「下妻物語」の文字。下妻物語の監督の最新作と書い... [続きを読む]

受信: 2006年6月 6日 (火) 06時23分

» 100万hit 次世代情報検索ポータルサイト「フロンティア」の誕生 [100万hit 次世代情報検索ポータルサイト「フロンティア」]
はじめまして。新感覚情報検索ポータルサイト「フロンティア」誕生のご挨拶させていただいております。毎日少しずつ進化する楽しいコンテンツ満載のポータルサイトです。ぜひ一度お越しください。それでは失礼致しました。 [続きを読む]

受信: 2006年6月10日 (土) 05時44分

» 映画よりも面白い 『嫌われ松子の一年』 [海から始まる!?]
 映画『嫌われ松子の一生』は、  ①主人公・松子の堕ちっぷりが見事  ②その松子を演じる中谷美紀の“ここまでやるか”感が凄い!  ③宮藤官九郎、劇団ひとり、武田真治、荒川良々、伊勢谷友介等、松子をめぐる男たち&その他のキャストが豪華で、ゴージャス!  などに関して評価しつつも、そして2006年を代表する映画の1本であることはまず間違いないと思いながらも、(私が)どこかでひっかかってしまうという印象を持ったのにはいくつか理由があるように思います。観ている間中、「凄い、凄い」と思いなが...... [続きを読む]

受信: 2006年6月16日 (金) 01時23分

» 嫌われ松子の一生 [東京には空がないと言う]
あたしはこの上なく、幸せで。 お久しぶりです。 今回は『嫌われ松子の一生』です。 主演は中谷美紀(『ケイゾク』、『電車男』)。 監督は中島哲也(『下妻物語』) そのほかにも、劇団ひとり、クドカン、Bonnie Pink、等見ない顔はありません。 原作は山田宗樹。 暗くて、失望感のある作風です。 下妻もそうですが、中島監督はネタはなんでもいいのです。 映画にしたら、彼のものになるので。 女の子なら誰�... [続きを読む]

受信: 2006年6月16日 (金) 17時56分

» 嫌われ松子の一生/山田宗樹 [文学な?ブログ]
やるせない思いで最終頁を閉じました。些細なことに何度も自分を見失い、流され、それでも死より生きることを選んできた松子。その人生の終わりがこれではあまりに辛すぎます。 体の弱い妹に父の愛情を奪われ、父の希望をかなえようとなった教師の職を追われ、失踪してあちこちを彷徨いながらも、必死に生きてゆく松子。感情に流され、積み重ねてきたものを根底から壊して、また一から、というよりむしろマイナスから人生を何度も繰り返します。 偶然のように起こる事件に翻弄される松子を見ていると、なんでもっと機用に生きら... [続きを読む]

受信: 2006年6月17日 (土) 00時37分

» 映画のご紹介(137) 嫌われ松子の一生 [ヒューマン=ブラック・ボックス]
ヒューマン=ブラック・ボックス -映画のご紹介(137) 嫌われ松子の一生-生きること、愛すること。 三人兄弟の長女。 真ん中は男、末っ子は病弱な女。 こんなきょうだい関係なら、長女は父親から顧みられることが少ないだろうということ....... [続きを読む]

受信: 2006年6月17日 (土) 08時20分

» 嫌われ松子の一生 [ブログ:映画ネット☆ログシアター]
映画、嫌われ松子の一生の一生を見てきました。ネタバレです。最初に松子が死んでいるところから話が始まるのですが本人は、いないのにどうやってこの先話を進めていくのだろうと思っていたらうまい具合に話が繋がっていって見ていて飽きなかったです。もともとの素材としては、充分ですが、映像としてあらわすのは、難しいと思いますが、見事に描かれていたと思います。中島監督に拍手を送りたいです。私は、時々ミュージカルタッチになるところが好きです。中谷美紀の濃厚なキスシーンも見ごたえあります。... [続きを読む]

受信: 2006年6月19日 (月) 09時42分

» 嫌われ松子の一生 [めざせイイ女!]
♪ま〜げて 伸ばしてお星様をつかもぉ♪ラスト 松子は天国への階段を登っていきました。まるで ハッピーエンドのように・・・父親に愛してもらいたかったのに父親... [続きを読む]

受信: 2006年6月22日 (木) 15時14分

» 嫌われ松子の一生 06年134本目 [猫姫じゃ]
嫌われ松子の一生 中谷美紀≒ 濱田マリ≒ 柴咲コウ≒ あたし> 山田花子 2006年  中島哲也 監督  山田宗樹 原作中谷美紀 、瑛太 、伊勢谷友介 、香川照之 、市川実日子 原作って、感動ミステリー巨編 (Official HP)?なの??http://bl...... [続きを読む]

受信: 2006年7月 7日 (金) 14時20分

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